新規事業の立ち上げ方「新規ビジネスアイデアの探し方と6つの行動」

新規事業の立ち上げ・アイデアを出す方法に関する記事
この記事では新規事業の立ち上げ方法・アイデアの出し方について複数回にわたって解説している。
デジタル隆盛の今の時代、利用者はインターネットを日常的に利用して情報を集め自分の気に入った商品やサービスを選んでいく。そして毎日の様に世界中でスタートアップが次々と新たなサービスを立ち上げ、それらをインターネットで世界中に発信している。
過去10年で身の回りにサービスが一変した様に、今後10年であなたの身の回りのサービスは今とは全く異なったものになっているだろう。つまりデジタルファースト時代では、自社の経営を支えている「既存事業」は常に脅威にさらされていると言っても過言ではない。
そのため企業は常に「新規事業」を検討しチャンスがあれば、それら事業にチャレンジするファイティングポーズを取り続けなければならないだろう。しかし、既存事業に匹敵する新たな事業が社内から次々と生み出させる可能性は、歴史を紐解いてみてもそれは容易でないことは明らかだ。
そして、実はその理由も明らかになっている。
我々のビジネス行動は合理的にできているが故に、限られた時間を既存事業に関連する企業との関係や人的ネットワークに費やさざるを得ない。その結果、どうしても新規事業に対する優先度が下がるからだ。
つまり、0から1の新規事業を思いつくためには、時間を掛けて「何を考えるか」ということよりも、今使っている時間を新規事業に関連する企業との関係や人的ネットワークに振り分ける「行動」から始めなければならない。
今回は、0から1の新規事業を思いつくために、「誰」と関係を築き、人的ネットワークを構築するべきなのか、そのときどのようなことに気をつけなければいけないのかを紹介しよう。
0から1の新規事業を思いつかないときに、「考えること」から始めてはいけない理由
まず、0から1の新規事業を考える際、『新規』と言う言葉がポイントだ。これにはいろいろな意見があると思うが、このWebマガジン[FINCH]では、決して『新規』という言葉を「この世界で誰もやったことがない」と言う意味でとらえる必要はない、と考えている。
『新規』という言葉は、「これまで自社で取り組んだことがほとんど無い」という程度に捉えるべきだ。そう考えれば、「自社で取り組んだことがない」事業は、この世の中にいくらでもあるはずだ。
例えば半導体企業の中で、飲食店チェーン事業を取り組んだことがある企業は少ないだろう。
また、I T会社が鉄道インフラ事業に取り組んだと言う話も聞いたことがない。
言い換えれば、事業収支がそれなりに成り立っている企業の中で、取り組み実績のほとんどない事業というのは山程ある。
すなわち、新規事業のヒントは、周囲を見渡せば無数にある。したがって、0から1の新規事業が思いつかないときには、自社で取り組んだことがない事業に携わっている人との接触機会を多く作ることの方が、新規事業を考えることよりも大切だ。
「何を考えるか」ではなく、「誰と話すか」
例えばスタートアップが次々と生まれるカルフォルニアに行くと、カフェではスタートアップの経営者が活発に意見交換している風景がよく見られる。
実際に、FINCHでも現地知人の紹介でその輪に入り、話に参加したことがあるが、その内容は意外にシンプルだった。
- 「今、成長する話題のサービスは何か」
- 「成長を手助けしている人はだれか(紹介してほしい)」
- 「こんな人材を探している」
つまり、0から1の新規事業を思いつくために、「何か」を考えることから始めるのではなく、「誰」と話すかにより意識と行動を向けた方がいいということだ。
新規事業が思いつかない時に「誰」と話すかに意識と行動を向けた方がいい理由
しかし、どうしても新規事業に携わるビジネスパーソンは、まず「考えること」から始めてしまう。その理由は実にシンプルだ。
それは、多くのビジネスパーソンは限られた時間を既存事業の推進のために使うからだ。
既存事業を取り巻く企業との関係や人間関係のために多くの時間を割くことは、ビジネスマンの行動としては合理的であるし至極自然だ。しかし、新規事業にとっては不合理だ。
これまで自社で取り組んだことがほとんど無い事業に取り組むためには、今まで多くの時間を割いている業務や関係性ではなく、新規事業に必要な企業との関係・人間関係目を向け時間を割かなければならないのだ。
0から1の新規事業を生み出すために接触するべき6つの相手
では、0から1の新規事業を思いつくためには、どんな企業や人と話すのがいいのだろうか。新規事業のヒントを得るために話すべき相手は、以下の6つ有力だと考えている。
- スタートアップの幹部社員
- いくつもの会社(事業)を経営したことがあるビジネスマン
- 他会社の新規事業を担当する社員
- 不動産屋
- 広告をよく見かける企業(または業種)
- 新規事業支援を専門に手がけるコンサルティング会社
ただし、あなたが時間を割いて話をする場合、気をつけるべきポイントがそれぞれ存在する。ここから、なぜこの6つの相手が新規事業のヒントを得ることに繋がるのか、そして何に気をつけるべきなのかについてひとつずつ紹介しよう。
1.スタートアップの幹部社員
まず一番リアリティがあるのは、スタートアップの幹部社員の話だろう。一般的にスタートアップの幹部社員は自身でもリスクを取り事業を立ち上げているので事業推進には貪欲だ。どこに事業のヒントがあり成長のために何をすべきかをいつも考えている。
そのため自分たちの利得を中心に考える傾向はあるものの、「新規事業」のヒントになる話題はたくさんあると言っていいだろう。
気をつけるべきこと
スタートアップ幹部と話を聞くときに、気をつけなければいけないことは、大きく2つある。
1つ目は、「スタートアップが取組んでいる事業≠必ず成功する事業」ということだ。
スタートアップが取り組む事業の多くはあくまで仮説だということを忘れてはいけない。仮説に対しリスクをとって検証するからこそスタートアップに価値があるのだが、仮説がいつも正しいとは言えないことを前提にしなければいけない。
2つ目は、スタートアップの事業アイデアを黙ってそのまま模倣してはいけない。
もし仮にスタートアップの取り組んでいる事業を自社の新規事業として取り組みたいということになったら、その旨スタートアップに申し入れをするのをルールにしたい。
そもそも表面的なサービスをそのまま真似てもうまくいくはずがない。なにより、スタートアップの幹部社員と接点があるにもかかわらず、彼らが汗をかいて取り組んでいるサービスをそのまま使うというのは長い目で見れば、あなたの企業の信用を大きく損なうことになり、新規事業に取り組む道を閉ざしてしまう。
2.いくつもの会社(事業)を経営したことがあるビジネスマン
いくつもの会社(事業)を経営したことがあるビジネスマンも非常に有力な相談相手になる。彼らは日常的に新しい商売を見つける行動をとっており、それら商売に必要な経営資源や人的ネットワークに接触することに長けている。
そのため、相応の信頼関係を築くことができれば、商売のタネやヒントを色々教えてくれる様になるはずだ。「商売のセンスがいい」「商売の勘や嗅覚に鋭い」とよく評される人たちがいるが、その実情は驚くほど多くの人たちとのコミュニケーションに気を配り、絶えず情報を集めフィードバックしていることが多い。
つまりセンスや商売の勘というのは、新規事業のための努力の上に成り立っていると言えるだろう。
気をつけるべきこと
気をつけなければいけないことは、彼らは、基本的に事業の立ち上げのプロである故に、当該者が本気でコミットするかどうかに対して敏感だ。「ただ情報を集めているだけ」というのを嫌厭する傾向があるし、社内調整をしてでも事業を立ち上げたいという熱意を大事にする傾向がある。
その意味では彼らと接する上で、あなたの側にも覚悟が必要になるだろう。
3.他会社の新規事業を担当する社員
他の会社で新規事業を検討している社員と意見交換するのも悪くない。情報交換をどのレベルで行うかということが課題になるものの、どの分野に可能性があるかということについて、その勘所を確認するには有効なアプローチと言っていい。
気をつけるべきこと
担当する社員の全員が新規事業企画立案を志しているわけではないのも周知の事実だろう。「未来のために身を粉にして新規事業に取り組みたい」という熱意あふれる社員もいれば、「経営が新規事業をやれというので担当しています」という受け身な社員も存在する。
前者のような、会社の未来のために身を粉にして新規事業に取り組む決意を持った社員は会社にとって財産であり、そういう人との出会いはあなた自身の大きな刺激になるに違いない。したがって気をつけなければいけないのは、新規事業の取り組みに対して温度感が人それぞれ異なるということだろう。
4.不動産屋
一般的に不動産屋は商売の変化に敏感だ。「どの会社がオフィスを増床した」とか、「どの業界が景気良さそう」とかそういうことを肌感として掴んでいることが多い。そのため懇意にしている不動産屋と情報交換するのも一案と言えるだろう。
例えば不動産屋と話をすると、住宅業界周辺の企業が色々動いている話を聞く。新会社を作ったとか、リフォーム事業のために地域営業所を作ったとかそういう話だ。
そうすると、「人口減少・世帯減少の中でいよいよ住宅業界が本気でいろいろな取り組みを始めてきた」「住宅業界向けの新規事業のチャンスがあるかもしれない」とアイデアのヒントが得られる。
気をつけるべきこと
無論、不動産屋は「なぜ」景気が良さそうかということ背景を掴んでいるわけではない。それは一時的かもしれないし、その会社特有なことも少なくない。だからあくまでヒントとしてとらえた方がいいだろう。
5.広告をよく見かける企業(または業種)
広告をよく見かける企業や業種が展開している製品・サービスも新規事業のヒントになる。最近で言えばキャッシュレス業界では企業の広告合戦が繰り広げられた。
明らかに先行投資による広告投下だった。広告投下が大規模に行われている業界は、市場を大きくしようという意思があるので、周辺サービスも含めて新規事業のチャンスがあると言っていいだろう。
「これからキャッシュレスがどんどん広がるから、そうなると消費者や企業にどんな変化があるだろう」という風に考えるヒントにしてみてもいいだろう。
気をつけるべきこと
だたし、気をつけなければいけないのは、広告投下した企業は、当然その後投資を回収する前提でいるため周辺サービスも含めて自社事業として取り組もうとしている可能性があるということだ。
そのため、広告投下が大規模に行われている業界が新規事業のチャンスであることには変わりないものの、自社で参入できるチャンスになるとは必ずしも言えないということに注意しよう。
6.新規事業支援を専門に手がけるコンサルティング会社
新規事業支援を専門に手がけるコンサルティング会社が多数ある。これら企業は業界横断的に新規事業支援を行っていることが多いため、0から1の新規事業を思いつくためのヒントを持っていると言っていいだろう。
気をつけるべき
コンサルティング会社は新規事業の立ち上げを支援する立場にあるため、それぞれの企業で得意な領域が異なっていることが多い。そのためコンサルティング会社を選定するときは以下を考慮するといいだろう。
うまく条件が合えば自社に必要な支援が得られるはずだ。
- 支援企業の新規事業を本当に立ち上げたことがあるかどうか。
(実績がある領域やその新規事業の規模など) - 得意とする産業領域や業界はどこか。
- 新規事業の立ち上げから成長までのどのフェーズが得意か。
- 支援(関与)の仕方はどの様なパターンがあるか。
まとめ:「考える」よりも先に取るべき行動
本当に0から1の新規事業を思いつくためには、一人デスクで考えることよりも、今使っている時間を新規事業に関連する企業との関係や人的ネットワークに振り分ける「行動」から始めなければならない。
FINCHが取り組んできたプロジェクトでも、新規事業の担当者が自身の努力によって新規事業に必要な企業との関係や人間関係を構築し、見事に新規事業を立ち上げた姿を見てきている。
これは決して容易ではないが、日常から自分の時間がどの様に使われているかを意識することで、半年後には目に見えて変化が出てくるはずだ。
そして、新規事業のタネを見つけたら、今度は新規事業の『企画』に成長させる必要がある。
この時、意識してほしいポイントが2つ存在する。
- 「なぜ今やるべき新規事業なのか(コンペリングイベントはなにか)」
- 「事業として収益が成り立つのか(ペインポイントはなにか)」
この2つについては、新規事業企画が思いつかない時に踏まえるべき2つの要素という記事で、事例を交えて紹介しているので、参考にしてほしい。
新規事業の立ち上げ・アイデアを出す方法に関する記事
この記事では新規事業の立ち上げ方法・アイデアの出し方について複数回にわたって解説している。
- 新規事業の事業計画書サンプル
- 新規事業を成功させる22のステップ
- 新規事業・商品開発
コンサルティングの成功事例 - など

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