新規事業の立ち上げ方「新規事業の企画書に必要な8つの項目」
新規事業の立ち上げ・アイデアを出す方法に関する記事
この記事では新規事業の立ち上げ方法・アイデアの出し方について複数回にわたって解説している。
新規事業や新商品の企画書を作るとき、担当者はいつも頭を悩ませるものだ。しかし、一度作り方を知れば、ポイントを抑えて作ることができるようになる。
「企画書」とは企画を説明する書類というだけではなく、『実行する人間の情熱を共有するツール』である。
良い企画書が機能すれば、企画担当者だけでなく、意思決定層が同じ視点で企画について熟考できるようになる。
本記事では、企業内で新規事業を企画する場合の企画書に必要な8つの項目を説明し、意思決定者を納得させるためののポイントを1つずつ解説しよう。
新規事業の企画書を作成するための8つの項目とポイント
新規事業の企画書に書くべきポイントは、大きく分けると8つある。これらのポイントを整理した上で説明することで、その企画を経営者が一緒にチャレンジできる様にすることが企画書を作成する目的になる。
- なぜ企画したのか(Background)
- なにを解くのか(Issue)
- なにを目指すのか(Who we are)
- なにをするのか(What we do)
- どうやって提供するのか(How we work)
- 勝てるのか(Why we can win)
- どんなチームで戦うのか(Collaboration)
- 実現できるのか(Challenge)
1.なぜ企画したのか(Background)
新規事業には、必ずその企画を立てた背景認識がある。マーケットの変化もそうだが、自社の課題も含まれる。その企画を取り組む必然性を説明することがポイントだ。
「なぜ当社が取り組む必要があるのか?」という質問を投げかける経営者は少なくない。こうした質問に明快に答えられる様にするためにもクロスSWOTフレームワークを活用して、企画に取り組む意義を磨き込む。
point.「なぜ当社が取り組むのか?」に2つ以上の情報を合わせて明確に答えよう
意思決定者を納得させる「なぜ当社が?」という質問に答えるためには、2つ以上の情報を掛け合わせて説明する必要がある。
この時、『新技術が到来したから』という外部環境の脅威だけでは理由として弱い。
また、『自社の売上が下がっているから』という社内状況だけでは企画に取り組む必然性として片手落ちである。
- 社外要因:
- 政治
- 経済
- 法律
- 業界
- 技術動向
- 競合企業の動向
- 顧客の動向等
- 社内要因:
- 人材
- 商品・サービス
- 技術力・マーケティング能力
こうした外部・内部の情報を総合的に考慮して、文章で説明できるようにすることを目指す。
2.なにを解くのか(Issue)
新規事業の企画の中で最も難しく、また最も重要なのが、『なにを解くのか』(Issue)の設定である。
Issueを設定するためには、3つの情報が必要になる。
- 一般的に言われている通説だが、Issueではないこと
- 本当の課題となっているIssue
- Issueを解くために当社がするべきこと
この3つの情報を組み合わせると、次のような文章で説明することができるようになる。
「常識的には、こう言われている(A)
しかし、真実はそれとは異なり(真逆で)こうなっている(B)
従って、このようにして解くことが重要である(C)」
- A:一般的に言われている課題や、思われている通説(一般論)
- B:Aとは異なる(真逆の)ユーザーが抱える問題や構造(Issue)
- C:Bのユーザーが抱える問題や構造を解くための方法(事業や商品)
このように整理して、事業が解くべき命題を明確にできるといいだろう。
point.本当に解くべきIssueの設定の具体例:住宅の場合
例えば、住宅で新しいサービスを立ち上げる企画書を作る場合、次のような説明ができるだろう。
「一般に、住宅は実物を見ないと購入決定はしないと言われている。(A)
しかし、事実はそれとは異なり、心の中での購入決定はWebサイトでの閲覧と営業担当者とのファーストコンタクトで決まっている。(B)
従って、ネットを使った接客サービスを行うことが重要である(C)」
この場合、次のように3つの情報を分解できる。
- A:「住宅は実物を見ないと購入決定はしない」(一般論)
- B:「心の中での購入決定はWebサイトでの閲覧と営業担当者とのファーストコンタクトで決まっている」(Issue)
- C:「ネットを使った接客サービス」(事業)
このように明確に伝えることができれば、企画の骨組みは理解してもらえるだろう。
そして、企画書を作る際には、B(Issue)を見つけ出すことが最も注力するべき課題になる。
3.なにを目指すのか(Who we are)
新規事業の全体像を示す青写真を示す。パワーポイントの資料であれば、一枚で表現できると良いだろう。
- こんな世界を達成したい
- こんな時代を作りたい
ポイントは理屈ではなく直感的に伝えることだ。
point.何度も修正して作り直す
上で説明した『1.なぜ企画したのか(Background)』と『2.なにを解くのか(Issue)』は、統計や調査で定量的に示したり、事実(ファクト)ベースに客観的に推進することが出来る。
しかし、3の「何を目指すのか」という直感的なヴィジョンを実際に検討すると、気の利いた文章が閃かないことはよくある。加えて、一枚でまとまった綺麗な資料を作ることに苦慮する経験をすることも多いだろう。
しかし、「目指す姿」を描くことを諦めてはいけない。なぜならば、この一枚の青写真が、全員が共有する軸になるからだ。
このポイントは、一見遠回りに見えるが、できるだけ多くの人に何度も叩いてもらって継続的にブラッシュアップするのが最短の道だ。
4.なにをするのか(What we do)
自分たちが何をやるのかを説明する。つまり、商品やサービスの「標準」を決めると言い換えることができる。
標準を決めるためには、次の要素に分類すると全体が把握しやすくなる。
- 誰向けに、何を提供するのか
- それは商品なのかサービスなのか
- お金を払ってでも買いたいという人は誰か
商品やサービスのコンセプトだけではなく、具体的なパッケージや画面のイメージを示す場合もある。
提供する商品やサービスは企画書の中で具体的になる部分なので、総論賛成だったとしても、各論となる商品やサービスに反対が起きることも少なくない。その際は、商品やサービス単体で議論するのではなく、『3.なにを目指すのか(Who we are)』の目指す姿と合わせて議論を重ねた方が有効だ。
Point.事業や商品の方向転換を恐れない
PayPal創業者のピーター・ティールは自著の中で、PayPalのサービスにたどり着くまで、自分たちが何度もピボット(商品やサービスのコンセプトや内容を見直すこと)を行ったと回顧している。実際に企画書が承認された後に、ピボットを何度も行なって成功した事業もたくさんある。
重要なことは、自分たちが目指す標準の商品やサービスを決めて、試行錯誤することである。
企画書では「NO」と言われることを恐れず、第一弾として標準と決めた商品やサービスを提案しよう。
5.どうやって提供するのか(How we work)
標準と決めた商品やサービスをどうやって顧客に提供するのか。提供方法を示すことがこれまでのポイントに結び付けることができる。
例えば、商品を提供する場合は、次のような方法が考えられるだろう。
- 商品をコンビニエンスストアで販売する
- スマホで注文を受けて、直接宅配する
商品やサービスは既存だが提供方法が新しい、という事例はたくさんある。
Point.レストランとアルバイト志望者をマッチングさせた提供:DoorDashの事例
シリコンバレーで始まった食事宅配サービスDoorDashは、デリバリーの注文履歴に対応できないレストランとデリバリーのアルバイトで稼ぎたい主婦や学生をマッチングさせて、食事のデリバリーネットワークを実現した。
これは提供する方法に新しいアイデアがあり商品やサービスは既存だった場合である。この様に提供方法に革新性がある企画書も今後増えてくるだろう。
6.勝てるのか(Why we can win)
企画書で頭を悩ます質問の一つに「事業アイデアは良いが、うちがやって勝てるのか」という意思決定者の質問が立ちはだかる。
企画担当者の心の中では(そんなのやってみなければわからないじゃないか)と叫んでいるけれど、それは声を大にして言うことは難しいだろう。
つまり「勝てるのか」という質問に答えるためには、企画書がすでに実現に向けて行動していなければいけないということだ。
point.すでに行動をしていなければ、勝てるかどうかわからない
企画書だけを見ながらの机上の空論ではなく、具体的なアクションを伴った話が意思決定者にとって最も説得力がある。
例えば、こうした話が出来るといいだろう。
- 「A社とは独占販売権の契約を締結できる可能性があります」
- 「この課題を知っているのは、100社の事業者にインタビューができている当社しかありません」
- 「AIに強いスタートアップD社との共同事業を立ち上げる準備ができています」
こういった、勝てる要素を有言実行できる可能性を示す必要がある。良い企画書は、メンバーがすでに動き始めている場合が多いのはそのためだろう。
7.どんなチームで戦うのか(Collaboration)
最近は、企画書の中でもチームビルディングの重要性が高まっている。新規事業を立ち上げる上で必要十分なメンバーを社内外から集めることができるかどうかが、新規事業の成功可否に大きな影響を及ぼすことが周知されてきたからだろう。
point.ノウハウの偏在性を高める
チーム構築が重要視される背景は、ノウハウの偏在性(偏っていること)がますます高まっていることも理由に挙げられる。
例えば、ブロックチェーン技術を使ったサービスを手がけたくても、その分野に長けたエンジニアがいなければ、それは絵に描いた餅である。
また、自治体や病院と協力して事業を手がけるならば、それに協力する機関とのネットワークに目処が立っていなければ、その実現は不透明になる。
新規事業を立ち上げるための必要十分なメンバーを事前に口説くことができていれば、企画書が自律歩行する可能性は飛躍的に高まる。
8.実現できるのか(Challenge)
最後は「実現できるのか」である。企画段階で目指すべき実現性の目処として、30〜40%を目指したい。
70〜80%の実現性がある企画書というのは、すでに市場でタイミングを逸している可能性がある。
一方で、10〜20%ではここまで示したポイントを満たしていない企画書である。
point.30%〜40%の実現性に、10〜20%を足してもらう
理想としては、30%〜40%の実現性の段階で経営にプレゼンテーションを行ない、残りの10〜20%の実現性を補うために経営資源(人、金、モノ、情報)のサポートをしてもらうバランスが良い。そうすることで、企画書の成功確率は五分五分(またはちょっと上回る)となる。
最後は持論になってしまうが。企画書というのはあくまで担当者個人のチャレンジではなく、会社全体のチャレンジのためにあるべきなのだ。
まとめ:新規事業の企画書は、情熱を共有するツール
新規事業の企画書を作成する際には、様々な情報を書き込む必要がある。
しかし、企画書というフォーマットも重要だが、それよりも大事なのは作法だろう。
「企画書」とは企画を説明する書類というだけではなく、実行する人間の情熱を共有するツールである。
良い企画書が機能すれば、企画者と聞く側が同じ視点で、企画について熟考できるようになる。
もちろん、この8つのポイント以外に企業によっては精緻な事業計画や要員計画、資本政策など求められるケースも少なくない。
新規事業の企画書の8つのポイントを満たすためには多くのスキルが求められる。
- 客観的な環境分析や考察
- 論理的な思考
- 周りが気づいていない点に気づく着眼力、などなど
事業アイデアをひらめいたら、歯抜けでもいいから8つのポイントを描き、共有しながらブラッシュアップすることをお勧めしたい。
そして、ポイントとして、新規事業企画のどの段階のブラッシュアップが必要なのかを検討する必要がある。
- 新規事業アイデア出し
- 新規事業アイデア評価
- 新規事業アイデア検証・企画化
もし、新規事業の企画書の成功確度が低いと判断した場合、この3段階のどこをブラッシュアップするか検討することになる。
このウェブマガジンFINCHでは、最も成功確度の高い新規事業企画書を作成するためには、合計10種類の書類を作る必要があると定義している。
この10種類の書類は同時に作る必要はない。このウェブマガジンFINCHが無料配布しているダウンロード資料には、10種類の書類の詳細と、それぞれの作成方法のフレームワークを紹介している。
具体的に新規事業の企画書を作成する場合は、是非活用してほしい。
新規事業の立ち上げ・アイデアを出す方法に関する記事
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- 新規事業の事業計画書サンプル
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コンサルティングの成功事例 - など

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