新規事業が思いつかないときどうする?打開のためのアイデア発想術とは
公開日:2020.03.01更新日:2023年4月20日
0から1の新規事業を思いつくために「考えること」から始めてはいけないことは、前回の記事『新規事業の探し方:「考えること」より先に取るべき6つの行動』で紹介した。
前回の記事のポイントは、新規事業を考えるにあたっては他企業との関係作りや人的ネットワークが重要という点だった。
そして、新規事業のタネを探し当てた時、今度はタネを企画まで育てる必要がある。
『企画』という言葉には、いろいろな定義があるが、この記事では「企業が、予算と人を投入して取り組むのに値する事業アイデア」と定義する。
企画作りで重要視するべき点を掘り下げると、そのポイントはたった2つしかない。
それは、「コンペリングイベント」と「ペインポイント」をそれぞれ明確にすることだ。
本記事では、新規事業のアイデアが思いつかない原因や、知っておくと便利なフレームワークを解説する。
そして、新規事業の企画を考えるときに最重要な指針となる、コンペリングイベントとペインポイントとは何かを事例とともに紹介しよう。
新規事業企画のアイデアが思いつかない原因
まず新規事業のアイデアがなかなか思いつかない原因には、以下の4つの理由が考えられる。
これら4つの原因は簡単には解決しない。
まず、自分自身がこうした原因を少なからず持っているということの自己認識を持つことが実は第一歩になる。
- 原因①斬新なアイデアを出そうとしすぎている
- 原因②知っているという知識の罠にとらわれている
- 原因③反対された時の対応が先に気になってしまう
- 原因④アイデアを出すことの量が少ない
それぞれを詳しく解説しよう。
原因①斬新なアイデアを出そうとしすぎている
「新しいことをしなくては」「斬新さで注目を集めなくては」、このような思考にとらわれてしまう人は多い。
今まで誰もやったことがないようなアイデアは確かに注目を集める可能性が高いが、画期的な事業というのはそう簡単に生まれないというくらい気楽な気持ちでアイデアを出して良い。
数多く出すことで、多くは他にあるアイデアだとしても、ほんの一握りには新しい気づきがあるかもしれない、そのくらいの感覚で始めてほしい。
自分では珍しいサービスを思いついても大概は誰かが思いついている。
それに先人たちがそれをやってこなかったのは出来ない理由があったり、致命的な失敗が多かったりする可能性がある。
同業界の先駆者たちも同じ道をとおってきたはずであり、誰もが工夫を凝らしているのだ。
こうした状況のなかで、斬新さばかりに注目してしまうとアイデアが出てこなくなってしまう。
まずは、質より量を優先し、小さなアイデアでもどんどん提案していくのが良いだろう。
その後でそれらのアイデアを組み合わせていけばいい。
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原因②知っているという知識の罠にとらわれている
一般的に業界のしきたりや常識にとらわれている人は、新しいアイデアの着想が苦手な傾向にある。
「こうしなくてはいけない」「昔からこう決まっている」といった知識の罠や固定概念を一度、手放してみよう。
例えば、携帯電話にはじめて指紋認証などのプライバシー保護機能が搭載されたとき、多くの人は「携帯電話は会話をするものだからプライバシー保護機能なんて使わない」と多くの人が反対した(当時は鞄の中で勝手に電話してしまうのを防ぐキーロック操作機能はあった)。
ご存知のとおり現代では、プライバシー保護機能がない携帯電話(スマートフォン)は一台も入れないだろう。
このように「これは〇〇だ」といった常識を超越したときに、素晴らしいアイデアが生まれることがある。
ではどうやって常識を手放せるのか。
例えばそれは問いかけを工夫することで知識の罠や固定概念から少し離れて発想することができる。
それは以下の様な問いかけをすることになる。
「一般的には、○○と言われているが、事実はその逆で実は△△△である」
こうした問い掛けを繰り返すことで、少しずつ常識的な範囲で出てくるアイデアから離れた発想ができる様になってくる。
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原因③反対された時の対応が先に気になってしまう
アイデア出しの会議の際に、「反対されてしまうかも」と心配になる人も多くいるだろう。
社内でブレストする際には、相手の意見を否定することや、出来ないと決めつける行為は行わないようにすることが重要だ。
根本的な考えとして、以下の認識で進めてほしい。
「誰もが良いアイデアはそう簡単に出ない。誰もが良いと思うアイデアが良いとは限らない。」
小さなアイデアや意見を何人もの人が繰り返し提案して、やっと光が見えてくるものだ。
アイデアの着想に勤務歴や就業年数は一切関係ない。
むしろフレッシュな目線でこそ感じる意見も多いはずなので、上司部下関係なくストレートな意見を出しあうことでヒントが見つかることもある。
誰もが発言しやすい雰囲気を作ることで、良いアイデアが生まれる可能性を高められるだろう。
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原因④アイデアを出すことの量が少ない
アイデアのタネを見つけるにはいくつかのコツがある。
これまでアイデアを考えた経験が少ない人は、タネの見つけ方を覚えていくことが大切だ。
具体的には、「メモ」を使うことを習慣化するのがおすすめだ。
経験値の少ないうちは、とにかく気になったことをメモや付箋などに書いていくと良い。
業務中に気になったことや、日常でふと感じた疑問などを記録してみよう。
特に日常で「困った」や「不便だな」と感じたことは、アイデアのヒントになりやすい。
例えば、「〇〇がいつも混んでいる」という事実があったとき、それを解消するサービスや製品が作れないか考えてみる。
自社の事業とは直接関係のないことでも、大きなヒントになる可能性があるだろう。
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新規事業のアイデアが思いつかないときにおすすめのフレームワーク
最後に新規事業のアイデアが思い浮かばないときに役立つフレームワークを、5つ紹介する。
- フレームワーク①SCAMPER法
- フレームワーク②5W1H
- フレームワーク③マインドアップ
- フレームワーク④形態分析法
- フレームワーク⑤Kj法
以下でそれぞれを詳しく解説しよう。
フレームワーク①SCAMPER法
この方法はアイデア量産法とも言われていて、効率的にたくさんのアイデアを出すことができる。
アイデア同士をくっつけてみてもいいし、今あるものとアイデアを組み合わせても良い。
通常、私たちが自然にやっていることを意識してやる方法と言えるだろう。
SCAMPER法の概要は以下のとおりだ。
概要
以下7つのカテゴリーに分かれた質問に解答しながら、アイデアを深めていく方法
- Substitute(代用できないか)
- Combine(組み合わせできないか)
- Adapt(適応させられるか)
- Modify(修正/変更できるか)
- Put to other uses(ほかの用途はないか)
- Eliminate(省略/排除できるか)
- Rearrange(再調整/並べ替えできるか)
7つの質問の頭文字をとってSCAMPER(スキャンパー)と呼ばれている
やり方
テーマや課題を決めて、その対象に7つの質問を当てはめてみる
質問を繰り返していくと自然とアイデアの深堀りができている
例:「このデバイスは他のもので代用できないか?(Substitute)」、「このサービスに他の用途はないだろうか(Put to other uses)」など、それぞれの視点から既存の自社製品を見直してみる
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メリット
さまざまな角度からアイデアを出せる
質問が決まっているので時短でアイデアを深堀りできる
SCAMPER法は、7つの質問カテゴリーに分けてアイデアを深堀りしていく方法だ。
自社の既存製品からバージョンアップした新規事業を生み出す際に、活用できるだろう。
7つの質問を頭に入れておけば、日頃からアイデアの選定に役立つので暗記しておくことがおすすめだ。常に多角的な視点から物事を見る癖をつけておくとよいだろう。
フレームワーク②5W1H
5W1Hはよく知られたアイデア発想・整理の方法で、アイデアの深掘りする時にも、漏れなく整理するときにも有効な方法だ。
概要
以下の6つの項目に分けてアイデアを考える方法
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
やり方
それぞれの項目にテーマを当てはめてアイデアを発想する
商品開発や新規事業を考える際は「なぜ(Why)」に注目すると、顧客のニーズを拾いやすい
メリット
分かりやすい項目なので誰でも取り入れやすい
5W1Hの項目に当てはめることで、過不足ない情報を共有しやすくなる
5W1Hの考え方は、シンプルで分かりやすいため、複数メンバーで一緒に議論する時にも使いやすい。5W1Hは、アイデアの着想だけでなくマーケティングやコミュニケーションにも広く活用されている。ビジネスで使う場合はHow muchを付け加えて、5W2Hで整理するときもある。
新規事業のアイデアを考える際には、なぜ(Why)を深堀りをしていくと効果的だ。そのほかの項目はやりやすい順番で埋めていけば問題ない。すべての項目を埋めることで、顧客の行動心理が見えてくるだろう。
フレームワーク③マインドマップ
マインドマップはアイデアの連鎖を強制的に実施する方法で、手書きでもやれるがマインドマップツールを使って深掘りすることもできる。その概要は以下のとおりだ。
概要
中心となるアイデアから関連する情報を膨らませ、それを図にしたもの
やり方
テーマを紙の中央に書き、その周囲に関連するアイデアを広げていく
画像やイラストも取り入れながらマップを拡大していくと発想も広がる
メリット
マップを作ることで関連する情報が把握しやすくなる
関連するキーワードを見つけていくことで新しいアイデアが思い浮かびやすくなる
マインドマップは学習にもよく取り入れられる手法で、記憶の定着にも効果があると言われている。中央に書いたテーマから連想ゲームのようにアイデアを膨らませていくことで、新たな着眼点に辿り着くこともあるだろう。
マップの書き方に決まりはないので、手書きやパソコン、アプリの利用などやりやすい方法を探してみることがおすすめだ。
フレームワーク④形態分析法
形態分析法は課題やアイデア、テーマなどを要素分類して新しい組み合わせを見つけるための方法で、その概要は以下のとおりだ。
概要
課題に関係する要素と変数をピックアップし、それらを掛け合わせて考える手法
やり方
テーマに関する「要素」と「変数」を洗い出す
要素と変数を表にし、どの掛け合わせで、どういった変化が生まれるのかを考える
メリット
行う工程が明確なので取り組みやすい
様々な検証を行うことで信ぴょう性の高いデータになる
形態分析法は要素分解を行うことがポイントになるので、ロジカルに物事を考えたい人に向いている手法だ。
1つのキーワードから自由に発想を広げていくマインドマップとは対照的で、あらかじめ設定した要素の掛け合わせを検証していく。
「要素A×変数1、要素B×変数2……」といった具合に、組み合わせた要素から考えられる効果や課題を洗い出す。こうした繰り返しで、これまで見えてこなかった新しいアイデアが生まれることがあるだろう。
フレームワーク⑤Kj法
KJ法の概要は以下のとおりだ。
概要
1960年代に開発されたデータの整理方法
学校教育や研修などでよく利用されている
使い方
付箋やカードにアイデアを書き、同じ分類と思えるものをまとめる
グループ化されたら、さらにそのなかで深堀りして、意見やアイデアをまとめていく
メリット
アイデアをしっかりと可視化できる
散らばった発想を1つにまとめられる
KJ法では付箋を用いることが多いので、業務の合間にふと思いついたことを書きためておける。「今からアイデアを考えよう」と身構えずに、日々のひらめきを付箋に書いておくことで、フラットな視点でのアイデアが出やすい点がメリットだ。
複数人のアイデアをまとめてグループ化することで、お互いに気付かなかったポイントを
発見することもできるだろう。
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新規事業のアイデアに必要な3つの要素
新規事業を成功させるためのアイデアは、以下の3つの要素を網羅している必要がある。
- 課題を解決できるか?
- 目新しさがあるか?
- 収益化できるか?
顧客の課題を解決できる製品やサービスであることはもっとも重要だ。
自社が「作りたい」「提供したい」と思っていても、ニーズがなければ新規事業の成功は難しい。
新規事業として打ち出す際には、これまでにない斬新さも必要だろう。
利便性を兼ね備えながらも、人々が目を惹くデザインや感動できる仕掛けは欠かせない。
そして、企業にとって収益アップになる事業かどうかも重要だ。
良いプロダクトであっても、採算が取れなければ継続して提供することができない。
アイデアを深堀りをする際には、これらの要素も忘れずに確認しておくことが大切である。
コンペリングイベントとは、今取り組む蓋然性(がいぜんせい)
フィンチジャパンが定義するコンペリングイベントとは「その新規事業に今、取り組む蓋然性(がいぜんせい)の背景となるイベント」の総称を指す。
言い換えれば、新規事業を決裁する立場から見て、「今決裁する理由」とも言える。
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蓋然性と必然性の違い
普段生活する中で、蓋然性という言葉を耳にすることはないだろう。
似た様な言葉として「必然性」という言葉があるが、蓋然性は必然性と全く意味が異なる。
必然性とは、そのイベントが起こることは確実で、それ以外は起こり得ないことを指す。
例えば、ゴールデンウィークがいつからいつまでなのかは明らかで、ゴールデンウィークに多くの人たちが旅行をしたり外出したりすることも確実だ。
そのため、「平日と比べてゴールデンウィークに旅行者が増えるのは必然だ」という言い方になる。
「蓋然性」とは将来の起こり得る出来事の度合い
一方で蓋然性は、「多分そうなる。そうかもしれないだろうが、確実ではない」という事象を指し、必然ではない。
使い方としては、「蓋然性が高い/低い」という言い方をする。
例えば、先程のゴールデンウィークの例で言えば、連休期間は確定しており人の移動が多いことは確実だ。
すると、「旅行の中でも海外に行く人が毎年増えているので、外国語を短期集中で勉強する人たちが増える蓋然性が高い」という言い方ができる。
つまり、蓋然性は「将来の不確実さ」の度合いを示している。
新規事業で蓋然性に着目する理由
新規事業の企画においては、必然性ではなく蓋然性に注目するのがポイントだ。
なぜならば、必然性の方に新規事業の着眼点を置いてしまうと、他の企業もすでに注目している渦中に身を投じることになる。
必然性の高い事業は、他の企業とシェアを取り合う資本比べになる。
新規事業を企画している中で、蓋然性が高くなってくると世の中の方から、自分達の立てた企画を受け入れてくれて、まるでそのサービスを利用することが必然であるかの様な錯覚を得ることがある。
これは、もちろん錯覚だが、頃良いタイミングでコンペリングイベントを捉えると、その新規事業は世の中を先導している状態になるため、市場において有利な立ち位置に立てる権利を得る。
蓋然性を判断するコンペリングイベントの事例:電気自動車と家庭用充電器
2019年にメルセデス・ベンツなどの高級車ブランドを保有するダイムラー・グループが、内燃機関つまりエンジンの新規開発を中止して今後は電気自動車専用のパワートレインの開発に集中するという方針を発表し業界で大きな話題になった。
それにより、電気自動車の販売台数が拡大することは必然性があり間違いない。
しかし「各家庭が電気自動車に備えて、今すぐに家庭用充電器を購入する」という蓋然性は『まだ低い』と直感的に理解できるだろう。
なぜならば、費用の面から、まだまだ多くの消費者はガソリン車やディーゼル車を選択し、近い将来に電気自動車を選ぶとしても、そんな未来がすぐにやってくるとは考えにくい。
ただし、消費者が当たり前の様に電気自動車を最優先で検討し始めた瞬間、それに備えて家庭用充電器を設置する蓋然性が高まることになる。
例えば、次のようなイベントが発生したとしたら、それは家庭用充電器事業のコンペリングイベントとなり得る。
- 例:電気代に関する規制緩和検討
- 例:ガソリンスタンド等の関連業者に対する法改正検討
- 例:電気自動車の選択が得をするような消費者還元の実施検討
コンペリングイベントを見つけるときに気をつけること
気をつけなければいけないことは、新規事業に必要なコンペリングイベントの多くは、表立っては見えにくい状態にあるということだ。
つまり、インターネットで検索していてもコンペリングイベントは見逃しやすい。
業界内では次に何が起こるか分かっていても、業界外の人や一般的なメディアにはイベントがなかなか伝達されない。
正しくコンペリングイベントを見つけるためには、業界の中の細かな動きに敏感になれる様に、絞り込んだ市場や業界の中で企業や人に継続して会い、議論を重ねることが不可欠になる。
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ペインポイントとは、「お金で解決する方が楽なこと」
「ペインポイント」とは、利用者の強いニーズとなる『頭痛の種』のことだ。
ビジネス用語では「ニーズ」や「ウォンツ」という言葉があるが、それら言葉の仲間と言える。
ニーズとウォンツ、ペインポイントの違い
ニーズというのは、理想の状態と現実で起きているギャップのことを指す。
- 「リラックスしたい(今はリラックスできていない)」
- 「自分の時間がほしい(今は自分の時間が確保できていない)」
それに対してウォンツは、ニーズを満たすための解決手段に対する欲求だ。
- 「リラックスしたい(今はリラックスできていない)」(ニーズ)
→「だからマッサージに行きたい。」(ウォンツ) - 「自分の時間がほしい(今は自分の時間が確保できていない)」(ニーズ)
→「だから家事代行を使いたい。」(ウォンツ)
リラックスするための解決手段は複数ある様に、一般的に一つのニーズに対して複数のウォンツが紐づく。事業開発や商品開発の世界では、ウォンツよりもニーズを正しく(深く)捉える方が大切とされている。
しかし新規事業においては、それらよりもペインポイントの方がもっと大切だ。
ペインポイントとは、「その悩みやジレンマを取り除くためなら、ユーザーがお金や時間で解決してもいいと思うニーズ」のことだ。
つまり、より強いニーズと言える。
ペインポイントの見つけ方事例:消臭芳香剤のヘビーユーザーの心理
多くの人たちが使っている消臭芳香剤は、日本国内で1,000億円相当の市場規模がある。
消臭芳香剤には室内用、衣類用、トイレ用、車内用など様々な用途がある。
すでに1,000億近い市場規模があり、これらの消臭芳香剤のニーズやウォンツは一つではない。
「空間をきれいにしたい」というニーズに対して、「悪臭を消す消臭剤がほしい」というウォンツの一つがある。
しかしペインポイントの視点では、「消臭芳香剤を使う人は、何かをお金で解決する方が楽だと考えている」と考察し、その何かを見つける。
この場合はペインポイントを明らかにするために、消臭芳香剤のヘビーユーザーを調査する。
ヘビーユーザーはペインポイントをより強く認識して利用している可能性があるからだ。
単価400円の消臭芳香剤を月間10本も使っていれば何かしら特徴があると考えられる。
実際にヘビーユーザーを訪問調査すると以下の様なことがわかった。
- 消費量が多い理由は1回の利用が多いから。
- 家の複数の箇所に消臭芳香剤が置いてある。
- 家があまり綺麗ではない(布団が敷きっぱなしなど)。
さらにデプスインタビューという調査方法で考えを掘り下げていくと、ヘビーユーザーの心理は以下があることが分かってきた。
「掃除や家事は嫌い。掃除機を使ったり、布巾がけしたりするよりも消臭芳香剤を吹き付けた方が楽。自分の時間を家事に使わなくてもいいし、自分の時間を使えるなら月数千円は安い。」
つまり月間数千円分の消臭芳香剤によって「掃除や家事は嫌いだけどやらなければいけないというジレンマと、自分の時間が欲しいという欲求を一度に解消している」という結論が得られる。
ペインポイントを見つけるときに気をつけること
気をつけなければいけないことは、ユーザーがペインポイントを『頭痛の種だ』と正確に説明できない場合があることだ。
例えば、消臭芳香剤の悩みをユーザーに聞いたとき、「消臭効果を強力にしてほしい」「香りをよくしてほしい」「価格を下げてほしい」という要望を受け取ることがあるが、それはペインポイントではない。
正しくペインポイントを見つけるためには、なぜその行動に至ったのかという原理や構造を読み解く作業が不可欠になる。 ペインポイントの分析では、以下の発見を得ることが肝になる。
- お金によって購入者がどんな対価を得ているのか
- その対価はお金よりも大きいか
まとめ
新規事業のアイデア出しを効果的に行うには、自社に合うフレームワークを取り入れることが最適である。アイデアの発想は日々の何気ない行動から発見されることもあるので、常にアンテナを立てておき、社内でもこまめに意見を出しあうと良いだろう。
アイデアと情報を可視化し、コンペリングイベントとペインポイントを発見し、整理分析することも非常に重要だ。
事例で挙げた電気自動車の家庭用充電器の場合、仮にコンペリングイベントを捉えたとしても、「電気自動車がユーザーのどんなペインポイントを解決しているか」を見つけていなければならない。
そして、消臭芳香剤についても「こんなコンペリングイベントが存在している」という背景を捉えていなければ、新規事業として具体化することは不可能だ。「新規事業の企画を思いつく」というのは、ビジネスアイデアだけでは足りない。
どんなコンペリングイベントがあり、どんなペインポイントを解決するか、この2つが両輪のように明確になっている状態になって初めて『新規事業を思いついた』と言えるステータスと呼べる。
この2つを満たしたとき、新規事業の企画がようやくスタート地点に立ったと言えるのだ。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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