新規事業開発に必要なスキルと成功までのプロセスを紹介
公開日:2022.10.03更新日:2023年4月20日
新規事業を創出し、社会に新たな価値をもたらし自社の売上を伸ばしていきたいと考える企業は多いはず。
しかし、新規事業の内容を考案し、スタートさせ運営するまでの具体的なプロセスを知らないという企業も意外と多いのではないだろうか。
新規事業を始めるには、論理的な思考力やチームメンバーを引っ張る統率力、事業の魅力を伝えるプレゼン力など、多岐にわたる能力が求められる。
そこで本記事では、新規事業を始める上で必要なスキルやプロセス、具体的な分析方法まで解説していく。
目次
新規事業開発とは
新規事業開発とは、自社として新しいビジネスをゼロから始めることをいう。
消費者ニーズの多様化やデジタル技術の発展、グローバリゼーションや経済情勢の変化など、時代の流れに合わせて多くの企業が新たな事業を展開し、未来への投資を図っている。
新規事業開発を進める上では、いくら実績のある企業であっても、十分な労力と準備が必要だ。
これまでの既存事業で培った知見や能力を駆使し、新たな商売を生み出さなければならない。
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新規事業開発に必要とされるスキル
新規事業開発においては、主に4つのスキルが求められる。
以下で、それぞれのスキルの特徴や応用方法を見ていこう。
スキル①データ収集・分析能力
新規事業を開発するためには、対象とする市場の見通しや需要の変化や競合他社の動向、ターゲットとなる顧客のニーズ、必要となる技術に関する情報など、様々なデータを集めなければならない。
現代では、デジタル機器の普及によりインターネットやSNSを使用して、豊富なデータを収集できる。一方で、信憑性の低いデータや情報も紛れているため、正しく読み取るためのリテラシーが必要だ。
さらにそれらの膨大なデータから事業企画に必要な形で編集加工して、必要な気づきを得るための分析能力(アナリティクススキル)が重要となる。
新規事業で失敗しやすい原因の一つに、データ不足や情報源の偏りからくるミスリードが特に初期場面において起こりうる。
新規事業を成功に導くためには、重要で適切かつ役立つ情報をより多く集める、データ収集能力が欠かせない。
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スキル②ロジカルな思考力
新規事業の仮テーマや方向性が定まったら、より具体的で現実的なアイデアへとブラッシュアップしていく。
仮説の実現可能性や問題点を検証するためには、ロジカルな思考力が必要だ。
ロジカルシンキングとも呼ばれるこのスキルでは、論理性や理屈が重要視される。
ロジカルな思考力があれば、新しい製品やサービスの開発作業に際し、あらゆる手法で市場調査を行い、その結果を統計分析し、定量的に市場性を推定できる。
物事を数値や数量から判断することによって説得力が増し、説明責任を果たしやすくなる。
スキル③プレゼン能力
相手に物事を分かりやすく明確に伝えるプレゼン能力は、新規事業を開発する上で欠かせないスキルだ。
どんなに魅力的な事業アイデアを持っていたとしても、十分な予算を確保して実行に導くためには、事業について漏れなく説明し、社内の理解を得なければならない。
また、銀行に融資を受けるためにも、将来性のある事業であることを証明する必要がある。
プレゼン能力には、情報を整理する力や説得力のある話し方、相手を理解するコミュニケーション術、プレゼンを有意義なものにする資料の作成技術などが含まれる。
スキル④チームビルディング力
新規事業を立ち上げる際は、数人のチーム単位で動く場合が多い。
企画・開発だけでなく営業や販路確保、業務管理など、複数の部門にまたがった実務が発生するため、チーム内外をまとめる統率力が求められる。
それぞれの役割を定めて各人が連携しながらも自律した仕事ができる様なチームに組み立てていくことが不可欠だ。
毎回指示を出さないと動かないチームでは不確実で答えが無い新規事業開発では機能しないことは明白だからだ。
率先して実践できる人材が一人でもいることで、チーム全体の意識が共有され、まとまりが生まれやすい。
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新規事業開発を成功させるためのプロセス
では、新規事業開発を進める上では、段階を踏んだ流れがある。
事業を成功させるためのプロセスを見ていこう。
プロセス①目的の明確化
まずは、新規事業を始める目的を明確にしなければならない。
新規事業開発の方針や戦略を経営陣と現場で共有し、浸透させていくことで、事業の確実性や実現可能性が高まり、成功確率も上がっていく。
目的を明確化するためには、事業ビジョンや課題を洗い出し、現時点で必要となる取り組みや、一定期間で達成すべき目標を考えるべきだ。
プロセス②社内の体制づくり
新規事業を成功させる上では、確固たる社内体制を整えることが重要だ。
開発・実施・運営管理・人事・会計財務体制など、どのような組織を作るべきかを考えなければならない。
責任者や推進者の人材配置の際も、それぞれがチーム内での自分の役割を認識し、動きやすいような環境を作り上げる必要がある。
さらに、何に対しいくら投資するか、適切な資金計画の策定も欠かせない。
プロセス③データ収集
市場や競合他社の動向、顧客のニーズ、経済情勢、自社の過去の実績や評価など、関連するあらゆるデータを収集し、新規事業開発に必要なものをピックアップする。
集めたデータは仮説を立てる作業で必要となる。
プロセス④ターゲットの明確化
新規事業のターゲットが明確に定まっていると、アイデアをブラッシュアップしたり、他社と差別化したりしやすくなる。
性別・年代・居住地・職業・趣味・ライフスタイルといったプロフィールから決めるターゲット像に加えて、インターネットやスマートフォンでの行動特性やよく利用するメディア等の行動から特徴づけられるターゲット像の深掘りも重要になってくる。
プロセス⑤データをもとにアイデアを創出能力
データや決定したターゲット像をもとに、新規事業のアイデアを創出し磨いていく。
チーム内で些細なことから豊富な意見を積極的に出し合うことで、アイデアが膨らんでいき、新規事業に柔軟性が生まれるだろう。
プロセス⑥アイデアを具体化し要件を固める能力
複数のアイデアの中から有望なものを選び、フレームワークを用いながら、ビジネスプランを立てていく。
同時に、損益計算書や事業計画書の作成、融資や補助金など資金調達に関する要件や情報を集める必要がある。
プロセス⑦繰り返し検証する能力
事業は市場で検証を重ね、フィードバックを受けて改善を重ねながら成長していく。
最初から完璧な状態でのリリースを目指すのではなく、最低限の状態が整い次第どんどん検証を進めていくのがポイントだ。
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新規事業開発に役立つフレームワーク活用能力
ビジネスプランを具体化していく際、フレームワークに当てはめて考えることが効果的だ。
こうしたフレームワークは能力を補うことにも有効であるし、チーム内での共有を円滑に行う際にも有効になる。
以下で、新規事業開発に使えるフレームワークを見ていこう。
①PEST分析
PEST分析とは、「政治(Political)」「経済(Economical)」「社会・ライフスタイル(Social・Cultural)」「技術(Technological)」の4つのマクロ環境を分析するというものだ。
世間の全体のトレンドを意識することで、企業は長く安定して成長できる。
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②SWOT分析
SWOT分析とは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要因から自社を分析するというものだ。
「強み」と「弱み」は社内の従業員数や技術力などの内部要因について、「機会」と「脅威」は市場の動向や経済情勢などの外部要因について評価する軸となる。
③アンゾフのマトリクス分析
アンゾフの事業拡大マトリクスは、縦軸に「市場(新規・既存)」、横軸に「製品(新規・既存)」を取り、それぞれ「既存」「新規」の2区分を分ける4象限のマトリクスによって分析するもの。
この4象限から、新規事業を「既存市場」×「新規商品」で展開するか「新規市場」×「既存商品」で進めるか「新規市場」×「新規商品」の飛地でチャレンジするかを議論することができる。
④3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つのマーケティング環境を分析するというものだ。
自社を取り巻く業界環境の整理に役立つ。
⑤ビジネスモデルキャンパス
ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは顧客やチャネル、提供価値、売上、費用などの9つの項目からビジネスモデルを可視化するものだ。
俯瞰的にビジネスモデルを組み立てる上で必要な要素を洗い出し、過不足を確認することができる。
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⑥バリュー・プロポジション・キャンバス
バリュープロポジションキャンバス(VPC)とは、新規事業の製品やサービスが提供することと顧客のニーズ(ペインポイントとゲインポイント)のずれを確認するために使う。
VPCの検討は新規事業の検討では重要性が増している。
新規事業は検討する上で顧客視点が少しずつずれてしまうため、顧客視点で検証する際に繰り返し活用していくことを意識しよう。
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まとめ
今回は新規事業開発に必要なスキルと新規事業検討に役立つフレームワークを紹介した。
新規事業を始める際は、データを収集し論理的に考えることが重要だ。
社内の理解を得て、チームの意識を高めるためには、プレゼン能力や統率力も必要となる。
また、目的やターゲットを明確化した上で社内の体制を整え、データを元にアイデアを具体化・検証していかなければならない。
SWOT分析やPEST分析、3C分析、ビジネスモデルキャンパスなどのフレームワークを活用するのが効果的だ。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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