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新規事業企画が思いつかない時に踏まえるべき2つの要素

新規事業・商品開発2020.03.01

0から1の新規事業を思いつくために「考えること」から始めてはいけないことは、前回の記事新規事業の探し方:「考えること」より先に取るべき6つの行動で紹介した。
前回の記事のポイントは、既存事業にはない新規事業にとって必要な企業との関係作りと人的ネットワーク作りが重要ということだ。

そして、新規事業のタネを探し当てた時、今度はタネを企画まで育てる必要がある。 『企画』という言葉には、いろいろな定義があるが、この記事では新規事業の企画とは「企業が、予算と人を投入して取り組むのに値する事業アイデア」と定義する。

企画作りのポイントを掘り下げると、そのポイントはたった2つしかない。それは、「コンペリングイベント」と「ペインポイント」をそれぞれ明確にするということだ。

今回の記事は、新規事業の企画を考えるときに最重要の指針となるコンペリングイベントとペインポイントとは何かを事例とともに紹介しよう。

なぜ、コンペリングイベントとペインポイントが大事なのか

コンペリングイベントとは「今取り組むべき理由」のことで、ペインポイントとは「事業として成り立つ理由」のことを指す。

確かに、新規事業の企画を考えるためには、ひらめきやアイデアも必要になる場面がある。
また、企画を資料に落とし込んだ「企画書」のフォーマットや、抜け漏れのない内容であることも求められるだろう。

しかし、それ以上にコンペリングイベントとペインポイントの2つを捉えていることが最重要だ。
なぜならば、この2つを捉えていない事業アイデアに対して、企業は既存事業のリソースを割いてまで、予算と人を投入するジャッジ(Goサイン)を出さないからだ。

一度、新規事業として立ち上げていくことが決まれば、多くの予算だけでなく、様々なメンバーが関与していくことになる。この時、あなたは自信を持って参画メンバーに対して、「なぜこの企画を立ち上げるべきなのか」「なぜこの企画はうまくいく見通しのか」を説明できる必要がある。

つまり、コンペリングイベントとペインポイントの2つは、ブレない事業アイデアの背骨に相当する。

コンペリングイベントとは、今取り組む蓋然性(がいぜんせい)

フィンチジャパンが定義するコンペリングイベントとは「その新規事業に今、取り組む蓋然性(がいぜんせい)の背景となるイベント」の総称を指す。

言い換えれば、新規事業を決裁する立場から見て、「今決裁する理由」とも言える。

蓋然性と必然性の違い

普段生活する中で、蓋然性という言葉を耳にすることはないだろう。 似た様な言葉として「必然性」という言葉があるが、蓋然性は必然性と全く意味が異なる。

必然性とは、そのイベントが起こることは確実で、それ以外は起こり得ないことを指す。

例えば、ゴールデンウィークがいつからいつまでなのかは明らかで、ゴールデンウィークに多くの人たちが旅行をしたり外出したりすることも確実だ。そのため、「平日と比べてゴールデンウィークに旅行者が増えるのは必然だ」という言い方になる。

「蓋然性」とは将来の起こり得る出来事の度合い

一方で蓋然性は、「多分そうなる。そうかもしれないだろうが、確実ではない」という事象を指し、必然ではない。 使い方としては、「蓋然性が高い/低い」という言い方をする。

例えば、先程のゴールデンウィークの例で言えば、連休期間は確定しており人の移動が多いことは確実だ。

すると、「旅行の中でも海外に行く人が毎年増えているので、外国語を短期集中で勉強する人たちが増える蓋然性が高い」という言い方ができる。 つまり、蓋然性は「将来の不確実さ」の度合いを示している。

新規事業で蓋然性に着目する理由

新規事業の企画においては、必然性ではなく蓋然性に注目するのがポイントだ。

なぜならば、必然性の方に新規事業の着眼点を置いてしまうと、他の企業もすでに注目している渦中に身を投じることになる。必然性の高い事業は、他の企業とシェアを取り合う資本比べになる。

新規事業を企画している中で、蓋然性が高くなってくると世の中の方から、自分達の立てた企画を受け入れてくれて、まるでそのサービスを利用することが必然であるかの様な錯覚を得ることがある。

これは、もちろん錯覚だが、頃良いタイミングでコンペリングイベントを捉えると、その新規事業は世の中を先導している状態になるため、市場において有利な立ち位置に立てる権利を得る。

蓋然性を判断するコンペリングイベントの事例:電気自動車と家庭用充電器

2019年にメルセデス・ベンツなどの高級車ブランドを保有するダイムラー・グループが、内燃機関つまりエンジンの新規開発を中止して今後は電気自動車専用のパワートレインの開発に集中するという方針を発表し業界で大きな話題になった。

それにより、電気自動車の販売台数が拡大することは必然性があり間違いない。 しかし「各家庭が電気自動車に備えて、今すぐに家庭用充電器を購入する」という蓋然性は『まだ低い』と直感的に理解できるだろう。

なぜならば、費用の面から、まだまだ多くの消費者はガソリン車やディーゼル車を選択し、近い将来に電気自動車を選ぶとしても、そんな未来がすぐにやってくるとは考えにくい。

ただし、消費者が当たり前の様に電気自動車を最優先で検討し始めた瞬間、それに備えて家庭用充電器を設置する蓋然性が高まることになる。

例えば、次のようなイベントが発生したとしたら、それは家庭用充電器事業のコンペリングイベントとなり得る。

  •  例:電気代に関する規制緩和検討
  •  例:ガソリンスタンド等の関連業者に対する法改正検討
  •  例:電気自動車の選択が得をするような消費者還元の実施検討

コンペリングイベントを見つけるときに気をつけること

気をつけなければいけないことは、新規事業に必要なコンペリングイベントの多くは、表立っては見えにくい状態にあるということだ。

つまり、インターネットで検索していてもコンペリングイベントは見逃しやすい。業界内では次に何が起こるか分かっていても、業界外の人や一般的なメディアにはイベントがなかなか伝達されない。

正しくコンペリングイベントを見つけるためには、業界の中の細かな動きに敏感になれる様に、絞り込んだ市場や業界の中で企業や人に継続して会い、議論を重ねることが不可欠になる。

ペインポイントとは、「お金で解決する方が楽なこと」

「ペインポイント」とは、利用者の強いニーズとなる『頭痛の種』のことだ。ビジネス用語では「ニーズ」や「ウォンツ」という言葉があるが、それら言葉の仲間と言える。

ニーズとウォンツ、ペインポイントの違い

ニーズというのは、理想の状態と現実で起きているギャップのことを指す。

  • 「リラックスしたい(今はリラックスできていない)」
  • 「自分の時間がほしい(今は自分の時間が確保できていない)」

それに対してウォンツは、ニーズを満たすための解決手段に対する欲求だ。

  • 「リラックスしたい(今はリラックスできていない)」(ニーズ)
    →「だからマッサージに行きたい。」(ウォンツ)
  • 「自分の時間がほしい(今は自分の時間が確保できていない)」(ニーズ)
    →「だから家事代行を使いたい。」(ウォンツ)

リラックスするための解決手段は複数ある様に、一般的に一つのニーズに対して複数のウォンツが紐づく。事業開発や商品開発の世界では、ウォンツよりもニーズを正しく(深く)捉える方が大切とされている。

しかし新規事業においては、それらよりもペインポイントの方がもっと大切だ。

ペインポイントとは、「その悩みやジレンマを取り除くためなら、ユーザーがお金や時間で解決してもいいと思うニーズ」のことだ。つまり、より強いニーズと言える。

ペインポイントの見つけ方事例:消臭芳香剤のヘビーユーザーの心理

多くの人たちが使っている消臭芳香剤は、日本国内で1,000億円相当の市場規模がある。消臭芳香剤には室内用、衣類用、トイレ用、車内用など様々な用途がある。

すでに1,000億近い市場規模があり、これらの消臭芳香剤のニーズやウォンツは一つではない。「空間をきれいにしたい」というニーズに対して、「悪臭を消す消臭剤がほしい」というウォンツの一つがある。

しかしペインポイントの視点では、「消臭芳香剤を使う人は、何かをお金で解決する方が楽だと考えている」と考察し、その何かを見つける。

この場合はペインポイントを明らかにするために、消臭芳香剤のヘビーユーザーを調査する。ヘビーユーザーはペインポイントをより強く認識して利用している可能性があるからだ。

単価400円の消臭芳香剤を月間10本も使っていれば何かしら特徴があると考えられる。 実際にヘビーユーザーを訪問調査すると以下の様なことがわかった。

  • 消費量が多い理由は1回の利用が多いから。
  • 家の複数の箇所に消臭芳香剤が置いてある。
  • 家があまり綺麗ではない(布団が敷きっぱなしなど)。

さらにデプスインタビューという調査方法で考えを掘り下げていくと、ヘビーユーザーの心理は以下があることが分かってきた。

「掃除や家事は嫌い。掃除機を使ったり、布巾がけしたりするよりも消臭芳香剤を吹き付けた方が楽。自分の時間を家事に使わなくてもいいし、自分の時間を使えるなら月数千円は安い。」

つまり月間数千円分の消臭芳香剤によって「掃除や家事は嫌いだけどやらなければいけないというジレンマと、自分の時間が欲しいという欲求を一度に解消している」という結論が得られる。

ペインポイントを見つけるときに気をつけること

気をつけなければいけないことは、ユーザーがペインポイントを『頭痛の種だ』と正確に説明できない場合があることだ。

例えば、消臭芳香剤の悩みをユーザーに聞いたとき、「消臭効果を強力にしてほしい」「香りをよくしてほしい」「価格を下げてほしい」という要望を受け取ることがあるが、それはペインポイントではない。

正しくペインポイントを見つけるためには、なぜその行動に至ったのかという原理や構造を読み解く作業が不可欠になる。 ペインポイントの分析では、以下の発見を得ることが肝になる。

  •  お金によって購入者がどんな対価を得ているのか
  •  その対価はお金よりも大きいか

まとめ

事実を積み重ねてコンペリングイベントとペインポイントの二つを発見して、整理分析することが新規事業の企画のスタートとなる。

事例で挙げた電気自動車の家庭用充電器の場合、仮にコンペリングイベントを捉えたとしても、「電気自動車がユーザーのどんなペインポイントを解決しているか」を見つけていなければならない。

そして、消臭芳香剤についても「こんなコンペリングイベントが存在している」という背景を捉えていなければ、新規事業として具体化することは不可能だ。「新規事業の企画を思いつく」というのは、ビジネスアイデアだけでは足りない。

どんなコンペリングイベントがあり、どんなペインポイントを解決するか、この2つが両輪のように明確になっている状態になって初めて『新規事業を思いついた』と言えるステータスと呼べる。

この2つを満たしたとき、新規事業の企画がようやくスタート地点に立ったと言えるのだ。

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