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新規事業とは:その定義と「新しい収益の仕組み」を作る必要性

                   
プロセス
公開日:2019.03.06更新日:2023年4月20日

企業が長期間にわたって事業を存続させる方法の1つに新規事業がある。

「プロダクトライフサイクルが早すぎて既存事業は明日をもしれぬ。新規事業が必要だ」と焦っている経営者や、「いきなり新規事業と言われても、何をやればいいのだろう」と迷っている新規事業の担当者が多く存在する。

そこで今回の記事では、こういった新規事業の担当者や経営者のために、次のポイントで紹介する。

  1.  そもそも新規事業とは何なのか?
  2.  どのような事業が「新規事業」と言えるのか?
  3.  新規事業を立ち上げる・企画するときのポイントは何なのか?

それでは、ひとつずつについて詳しく解説する。
その事業案が本当に新規事業と言えるものなのかどうか、確認していただければと思う。
【関連記事】新規事業のアイデアの考え方とは?簡単に出すための7つの方法

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目次

新規事業とは何か?その定義は「新しい収益の仕組み」を作ること

まずは「新規事業とはなにか?」の部分を解説していきたい。

新規事業の言葉の定義

新規事業とは、文字通り「自社にとって新しく事業を展開すること」を指す。
一般的に、商品やサービスを新たに開発することを「新商品(サービス)の開発」、これまで対象外であったターゲット層に向けてアプローチすることを「新市場の開拓」と呼ぶが、中には、これまでになかった商品やサービスを、新たな顧客層に向けて生み出すという「事業の多角化」を目指すケースもある。

とはいえ、全く関連のない業界に参入するのは安易ではないため、自社の技術や専門性を活かせる分野に参入するのが基本だ。
そこでまずは、自社が持つ資源を有効活用できる市場を調査するために、自社の持つ資源の洗い出しから始めるのが良い。

新規事業の立ち上げが必要な理由

新規事業を立ち上げることは、企業の発展を支え、一方で衰退を阻止する役割を担う。
どんな大企業であっても、今ある事業(既存事業)だけで成長していくことは難しいし、後継者がいる限り成長し続けるという事業はない。

流行が終われば事業は縮小され、他社が同等商品を安価で販売すれば価格競争に負けることは想像に容易いはずだ。つまり自社の事業は変化しながら形を変え進化していき結果としては発展する。
新規事業で新たな可能性を見出すことは、すなわち企業の発展や存続には不可欠と言える。

【関連記事】新規事業の4つの失敗パターンとそれぞれの解決法

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新規事業と新商品開発の違い

「新規事業を始める」というと、「新商品の開発」とよく混同されることがあるが、新商品の開発と新規事業は決定的に異なる部分がある。

新商品の開発は、既存の収益の仕組みをそのまま使って、新しい商品を開発・展開することをいう。
そのため、新商品開発では、商品ラインナップが増えるだけだ。
新しい収益の仕組みを作る新規事業とは定義が異なるのである。

例えばある飲料メーカーがペットボトルを出す、缶を出す、フレーバーのアイスを出すなどは、新商品の開発であり、新規事業にならない。

新規事業の収益の仕組みは「見えにくくする」のがポイント

新規事業は、「新しい収益の仕組みを作ること」と定義した。
そこで、新規事業の「収益の仕組み」について、詳しく掘り下げてみよう。

このとき、「その企業が何で儲けているのか」という収益の仕組みは、通常のユーザーの立場では見えにくいという部分を気をつけて欲しい。

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任天堂の事例

例えばゲーム機で有名な任天堂は、もともとは京都のカルタ屋だった。

1977年に家庭用ゲーム機の「カラーテレビゲーム15」を開発、1980年代にはファミコン市場をつくりだし、爆発的に成長した。
そして、1985年発売のファミコンのソフト「スーパーマリオブラザーズ」は世界的に大ヒットした。

収益の仕組みはファミコン本体ではなく、ソフトの半導体

任天堂の場合、テレビゲーム機(ファミコン)のハードの販売が「収益の仕組み」のように見えるが、実際は異なる。
収益の仕組みは、ファミコンのゲームソフト(カセット)に搭載されている半導体の販売だ。

ゲームソフト(カセット)には半導体チップが内蔵されている。
ファミコンを遊ぶ時には、任天堂製の半導体でなければ利用することができない仕組みになっている。

つまり、テレビゲーム機(ファミコン)は一家に一台あればそれ以上の需要は見込めないが、ゲームソフト(カセット)は次々と販売され、購入され続ける。

似た事例を挙げれば、インクジェットプリンターの分野でも、キヤノンはプリンター本体を安く販売し、収益源を消耗品であるインクカートリッジにしている。

収益の仕組みを見えにくくするメリット

このように、企業の収益の仕組みというのは、世間が認識している部分とは異なることがあり、外部からは収益の仕組み自体が見えにくいことが多い。

これは、逆に言えば、「収益の仕組み」を外部から見えにくくすることで、真似されにくい事業を作り出し、中長期的な収益源の確保にもつながる。
つまり、新規事業を立案するときは、この収益の仕組みを「見えにくくする」という工夫がポイントとなる。

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収益の仕組みの破壊者は必ず現れる

しかし、前述の収益の仕組みはいくら見えにくくしても、次第に、そして着実に破壊され陳腐化する。
紹介した任天堂は1990年代、ソニーの「PlayStation」に押されていくことになる。

「PlayStation」はCDを活用していたため、ファミコンのゲーム開発よりも、コストを大幅に削減できたのである。
その結果、任天堂のように半導体チップを使わないと開発できないファミコンは、陳腐化していった。

収益の仕組みは新陳代謝を繰り返す

そして現在。2017年に任天堂が巻き返しとして開発したのが「Nintendo Switch」だ。

Nintendo Switchはソニーのゲーム開発コストよりも開発コストを抑えながら、ゲームボーイからニンテンドー3DSなどで培った「持ち歩くゲーム」の特徴を生かした家庭用ゲーム機である。

この特徴を生かし、任天堂はソニーから巻き返しを図り、再逆転している。
このように、長く続いている企業でも、収益の仕組みを自在に変えながら事業を継続させている。

逆に、収益の仕組みを変更することができず、消えていった企業も多くある。
米国のポラロイド社はポラロイドカメラを開発して大成功した。
しかし、デジタルカメラに押されて経営破綻している。古い収益源(ポラロイドカメラ)に固執したのが大きな要因だ。

スーパーのダイエーもコンビニに押されていった。
大型店舗で大量の商品を仕入れ低価格で販売するという収益の仕組みを、「安くはないけど便利なコンビニ」が破壊したのである。
顧客はスーパーの低価格よりもコンビニの利便性を選んだ形になる。
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新規事業を立ち上げるタイミング

「新規事業はタイミングが命」という言葉がある。
兎角、新規事業を検討する際に、販路や技術、ノウハウ、顧客リストなどに注目が行きがちだが、新規事業の開発は新規事業を立ち上げるタイミングが非常に重要でタイミングがあれば参入確率は高まる。
そのためにコンペリングイベントと呼ぶ、新規事業にとっての市場の兆しを分析し、適切なタイミングを見極めよう。

立ち上げ期

新規参入から数年間は新規事業の立ち上げ期にあたり、経営陣への進捗報告を行いながら、資金が途絶えない様に考慮していきながら、事業として確立していく非常に重要な時期であるため、まずは基盤を固めることに集中する。
この段階では、立ち上げメンバー自らが商品やサービスを開発・生産し、ユーザーに広く認知してもらうことが第一目的である。

つまりできるだけ効率的にターゲットユーザーに認知され、利用されることを目指すということである。
この時点で新しい収益を生み出す仕組みの準備をしていく。

拡大期

新規事業で顧客獲得ができ始めると、グロースハックという技術が必要となる。

グロースハックとは、事業の急速な成長に焦点を当てたマーケティング手法のことを指す。
どの指標に注目すると計画的に成長させることができるか見極めて、経営資源をその指標拡大に集中させることによって、急速な成長が実現する。

顧客やリピーターが増え、従業員もポジティブな姿勢で従事できるこの時期に到達することが新規事業開発の最初の目標になる。
なぜなら事業の成長に伴い人員や社内での説得もしやすくなるたり、チャレンジの機会が増えるからである。

成熟期

新規事業が立ち上げ期に投入したサービスで成長することに成功すると、競合の登場などで市場の構造に変化が生まれる。
それによってサービスの競争力が下がるのである。
市場のライフサイクルとしては成熟期に近づいてきていると言える。

そこで新規事業としても、新たなサービスや新機能を投入していくことによって、競争力を高めたり、顧客の活性化を促していくのである。

実績を上げるにつれ、自社ならではの強みや知見が明確になり、それらを活かすことができれば新規事業の成功も期待できる。
この時点で新規事業は既存事業に並ぶ自社にとって重要な事業になってくる。

衰退期

新規事業も常に「新しい」わけでは無い。
市場が収益が低下の一途を辿る衰退期は継続していくか、事業縮小するかの判断が必要になってくる。市場形成が想定ほど大きくならない場合も計画よりも早く衰退期が来ることもある。
つまり今は市場がどの様になっているかについて定期的に調査・分析をしていく必要がある。

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新規事業を立ち上げる際の段取り

一般的に、新規事業を開発を始める際には一定の段取りが存在する。
以下の段取りを意識しながら進めていけると良いだろう。

段取り①責任者のアサイン

まず新規事業は、事業立ち上げの中心となる人物をアサインすることから始まる。
責任者は、人材や環境の調整、市場リサーチ、事業内容の立案や検討など一切を取りまとめる役を担うため、人望がありリーダーシップが務まるような人選であることが望ましい。

段取り②市場の兆し(コンペリングイベント)の調査と分析

新規事業の検討には、まず市場の兆しを調べる調査が必要となる。
市場の動向だけでなく、情勢や消費者のニーズなどを的確に捉え、分析する能力が求められるため、自社だけでなく社外の情報収集にも長けている人物を中心に進めるのが良いだろう。
デスクリサーチや観察調査だけでなく、利害関係者からも生のデータを集めることができる実行力があると事業開発は円滑に進めることができる。

段取り③アイデア立案

市場の兆しの調査やスタートアップの分析を踏まえて、新規事業のアイデア立案の分析結果を元に、少しでも多くのアイデアを収集する。
アイデアを出し終えたら、その中から事業として利益が出せるものを選定していくが、自社で実現が可能であるか、どれくらいニーズがあるかといったことも考慮しなければならない。

自社の持つ技術や知見を活用できる内容であれば成功する可能性があるため、立場や部署などに関係なく、さまざまな視点で意見が出し合える環境作りも重要と言える。

段取り③顧客ニーズの把握と事業計画の作成

理想的なアイデアを選定したら、顧客ニーズを把握と事業計画の立案に移る。

必要なプロセスを取りこぼすことなく書き出し、実現までの道筋を組み立てるが、顧客ニーズからブレずに実現性が高い計画を立てていく。
綿密に立てられた計画であっても予測でしかないことを踏まえて、事業立ち上げを最終決定する最後まで、顧客ニーズの検証を継続して行っていくことも念頭に入れておこう。

段取り⑤事業性の評価

事業性が高いと判断されなければ、経営陣の承認を受けることはできない。

顧客ニーズを確実に捉えて、それらを解決す製品・サービスの構築シナリオを立てて、売上・費用のバランスをとって収支計画を評価していく。
立ち上げることは前提であるが、「失敗しない」ことは前提にしない。
そのため、リスクの洗い出しや予測から外れた場合の対応策まで考慮する必要がある。

収益性や回収率を客観的に評価した上でプレゼンに臨むことが好ましい。

段取り⑥予算と体制の確保

事業計画の承認が得られたら、新規事業の分野でノウハウや知見のある人材や立ち上げ経験のある人材を中心にチームを構成する。

同時に予算確保も必要だが、事業内容によっては国からの補助金や社外からの出資金を得られるケースもあるため、費用削減につながる助成金などの調査はこの時点で実施する。

段取り⑦開発

人材の確保と予算の確保ができた段階で商品・サービスの開発やサービス開始までの実行計画の段取りを順次進めていく。

これまでに企画してきた内容を社会に出していくために、企業内の新規事業だからこそできる良さを活かして、関連する部署と連携を取りながら製品やサービス開発を取り組む。

段取り⑧評価

新規事業は常に不安定でため、定期的に密な評価・振り返りを行いモニタリングする。
当初のプランやスケジュールから外れていないか、予測通り進んでいるかといった確認に加え、それまでに起きたトラブルの原因や対処法について見直していく。

またノックアウトファクターと呼ばれる事業撤退を余儀なくされる様な大きなイベントに会う確率が高いのも立ち上げ前後のタイミングである。
そのため事業立ち上げの内容や参加するメンバーについてこまめなモニタリングをしていこう。
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まとめ

事業には盛衰があり、周期は30年とされていたが、近年その周期が短くなりつつある。
つまり、いつまでも同じ事業にしがみついていれば、収益性が下がり衰退の一途を辿ることは確実である。

実際、新しい収益の仕組み作りに挑戦しなければやらないと自覚している企業も多いだろう。
自社が現在どの段階にあるのかを見極め、正しいフェーズを踏むことで新たな可能性を見つけることができる。
既存の事業にとらわれず、常に新しい視点を持って事業開発に取り組んでほしい。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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