新規事業とは:その定義と「新しい収益の仕組み」を作る必要性

企業が長期間にわたって事業を存続させる方法の1つに新規事業がある。
「プロダクトライフサイクルが早すぎて既存事業は明日をもしれぬ。新規事業が必要だ」と焦っている経営者や、「いきなり新規事業と言われても、何をやればいいのだろう」と迷っている新規事業の担当者が多く存在する。
そこで今回の記事では、こういった新規事業の担当者や経営者のために、次のポイントで紹介する。
- そもそも新規事業とは何なのか?
- どのような事業が「新規事業」と言えるのか?
- 新規事業を立ち上げる・企画するときのポイントは何なのか?
それでは、ひとつずつについて詳しく解説する。
その事業案が本当に新規事業と言えるものなのかどうか、確認していただければと思う。
新規事業とは何か?その定義は「新しい収益の仕組み」を作ること
どのような会社でも利益を得るための「収益の仕組み」を持っている。ビジネスモデルと言い換えることもできるだろう。この収益の仕組みがなければ、企業を存続させることはできない。
しかし、収益の仕組みは永劫には続かない。なぜなら、環境の変化にともなって、確実に陳腐化するからだ。そのため、企業は生き残りをかけて、新しい収益の仕組み作りに挑戦し続けなければならない。
この新しい収益の仕組みを構築することが「新規事業」だ。
例えば、次のような仕組みの構築を新規事業と定義できる。
- BtoCからBtoBへ等、新しい市場でビジネス展開
- 異なった業種に挑戦
- 今までとは違う分野の商品を投入
- 収益の比重をハード販売から消耗品やサービスに遷移
新規事業と新商品開発の違い
「新規事業を始める」というと、「新商品の開発」とよく混同されることがあるが、新商品の開発と新規事業は決定的に異なる部分がある。
新商品の開発は、既存の収益の仕組みをそのまま使って、新しい商品を開発・展開することをいう。そのため、新商品開発では、商品ラインナップが増えるだけだ。新しい収益の仕組みを作る新規事業とは定義が異なるのである。
例えばある飲料メーカーがペットボトルを出す、缶を出す、フレーバーのアイスを出すなどは、新商品の開発であり、新規事業にならない。
新規事業の収益の仕組みは「見えにくくする」のがポイント
新規事業は、「新しい収益の仕組みを作ること」と定義した。そこで、新規事業の「収益の仕組み」について、詳しく掘り下げてみよう。
このとき、「その企業が何で儲けているのか」という収益の仕組みは、通常のユーザーの立場では見えにくいという部分を気をつけて欲しい。
任天堂の事例
例えばゲーム機で有名な任天堂は、もともとは京都のカルタ屋だった。
1977年に家庭用ゲーム機の「カラーテレビゲーム15」を開発、1980年代にはファミコン市場をつくりだし、爆発的に成長した。そして、1985年発売のファミコンのソフト「スーパーマリオブラザーズ」は世界的に大ヒットした。
収益の仕組みはファミコン本体ではなく、ソフトの半導体
任天堂の場合、テレビゲーム機(ファミコン)のハードの販売が「収益の仕組み」のように見えるが、実際は異なる。収益の仕組みは、ファミコンのゲームソフト(カセット)に搭載されている半導体の販売だ。
ゲームソフト(カセット)には半導体チップが内蔵されている。ファミコンを遊ぶ時には、任天堂製の半導体でなければ利用することができない仕組みになっている。
つまり、テレビゲーム機(ファミコン)は一家に一台あればそれ以上の需要は見込めないが、ゲームソフト(カセット)は次々と販売され、購入され続ける。
似た事例を挙げれば、インクジェットプリンターの分野でも、キヤノンはプリンター本体を安く販売し、収益源を消耗品であるインクカートリッジにしている。
収益の仕組みを見えにくくするメリット
このように、企業の収益の仕組みというのは、世間が認識している部分とは異なることがあり、外部からは収益の仕組み自体が見えにくいことが多い。
これは、逆に言えば、「収益の仕組み」を外部から見えにくくすることで、真似されにくい事業を作り出し、中長期的な収益源の確保にもつながる。つまり、新規事業を立案するときは、この収益の仕組みを「見えにくくする」という工夫がポイントとなる。
収益の仕組みの破壊者は必ず現れる
しかし、前述の収益の仕組みはいくら見えにくくしても、次第に、そして着実に破壊され陳腐化する。
紹介した任天堂は1990年代、ソニーの「PlayStation」に押されていくことになる。
「PlayStation」はCDを活用していたため、ファミコンのゲーム開発よりも、コストを大幅に削減できたのである。その結果、任天堂のように半導体チップを使わないと開発できないファミコンは、陳腐化していった。
収益の仕組みは新陳代謝を繰り返す
そして現在。2017年に任天堂が巻き返しとして開発したのが「Nintendo Switch」だ。
Nintendo Switchはソニーのゲーム開発コストよりも開発コストを抑えながら、ゲームボーイからニンテンドー3DSなどで培った「持ち歩くゲーム」の特徴を生かした家庭用ゲーム機である。
この特徴を生かし、任天堂はソニーから巻き返しを図り、再逆転している。このように、長く続いている企業でも、収益の仕組みを自在に変えながら事業を継続させている。
逆に、収益の仕組みを変更することができず、消えていった企業も多くある。米国のポラロイド社はポラロイドカメラを開発して大成功した。しかし、デジタルカメラに押されて経営破綻している。古い収益源(ポラロイドカメラ)に固執したのが大きな要因だ。
スーパーのダイエーもコンビニに押されていった。大型店舗で大量の商品を仕入れ低価格で販売するという収益の仕組みを、「安くはないけど便利なコンビニ」が破壊したのである。顧客はスーパーの低価格よりもコンビニの利便性を選んだ形になる。
まとめ
事業には盛衰があり、潮流となる事業は代替を迫られ、その周期が30年とされていた。しかし、その周期はさらに短くなるだろう。例えばエネルギーであれば、石炭から火力へ、そして自然エネルギーへと進化している。電話なら固定電話から携帯電話へ、さらにスマートフォンへと移り変わる。
このような新しい収益の仕組みを生み出していくサイクルは短縮している。いつまでも同じ事業にしがみついているわけにはいかないのである。新しい収益の仕組みづくりに挑戦しなければならない時が来るはずだ。既存の収益の仕組みにしがみつくことなく、常に挑戦してほしいと思う。
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- 新規事業・商品開発
コンサルティングの成功事例 - など

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