新規事業開発のコンサルティングの進め方

Teamwork Togetherness Unity Varation Support Concept
新規事業への着手が不可欠である一方で、新規事業の推進が上手くいかないと悩む経営者も少なくないだろう。そうした場合、コンサルタントを活用することもある。ここでは新規事業を支援するコンサルタントが何をするのか、何を意識して取り組んでいるのかを説明する。
新規事業の支援でコンサルタントがすること
新規事業とは、既存の得意な市場ではなく新しい市場でマネタイズをしようとする試みだ。「言うは易く行うは難し」という言葉のように、実際にどんなビジネスを実らせ、どのように行なうかという時に、迷ってしまうケースは往々にある。
そこで、コンサルタントを雇う場合、まず新規事業の策定段階には、ステータスが大きく2種類あることを念頭に入れて欲しい。
- 新規事業の立案:「何をやるかが決まっていない」
- 新規事業の実行支援:「やると決めた事業をどうすれば実行できるのかがわからない」
そこで、このような大枠の中で、コンサルタントがどのような支援を進めていくかのか、これから一つずつ見ていこう。
1.新規事業の立案
新規事業支援においてコンサルタントが関与するポイントはさまざまだが、主な内容は実に幅広い。
- 新規事業の探索
- 戦略の立案
- 事業計画づくり
- 事業化
ただし基本的にはマーケット変化に基づく、新規事業の展開が基本となる。
1-1.現状把握支援
コンサルタントは、依頼企業が検討する新規事業のドメイン(領域)を理解するとともに、経営資源の分析を行う。主にその企業の「強み」と「マーケットの機会」の組み合わせの中から、現状実施し得る新規事業のタネを模索する。この時点では、新規事業に活用できる自社の強みを特定できないことも少なくないため、その新規事業に取り組む必然性がどの程度あるかを模索するレベルと言っていいだろう。
1-2.マーケット変化の把握支援
その企業が持つどの「強み」でどの有望市場、長市場で勝てるか、どのようなマーケット変化に対応できるのかについて分析・検討する。マーケット変化を把握する上で気をつけることは、『過度に技術から入らないこと』だ。
例えば「AIで何ができるか」「特定解析技術で何ができるか」というアプローチを行うと「できること」探しになってしまい、事業を描きにくくなってしまう。
技術から入らない方法としては、コンペリングイベントと呼ばれる、『変化せざるを得ない差し迫った状況は何か』を探索した方が効率的に事業のタネを発見することができるだろう。例えば、2020年の東京オリンピックの開催や、消費税10%というのは、非常に大きなコンペリングイベントであるが同時にほとんどの企業に当てはまる。
捉えるべきマーケット変化が絞り込めてくると、新規事業を展開する領域も具体的になってくる。そこでより詳細の市場調査を行う。
1-3.市場調査
市場調査は3つの視点で調査を行う。
- 顧客
- 類似事業(競合)
- パートナーシップ
現時点では顧客は想定顧客であるが、マーケットの変化に対してどう取り組むのか、何に投資していくのかが見えてくれば大きなヒントになる。
国内外の類似事業の調査も行う。X-tech系の事業は、海外スタートアップが先行している場合が多いため、海外調査を多めに行うと良いだろう。この段階で競合との優位性を深掘りする必要はなく、類似事業がビジネスとして成り立っているのかどうかを重点的に見る。
最後に協業可能なパートナー探しも並行して行う。近年では自社資源だけで事業を立ち上げるのではなく外部と協業していくケースが増えているため、早い段階で有力なパートナーと出会うことができれば、新規事業の確度は大きく高まる。
1-4.商品開発
これまで集めて情報を踏まえて、商品やサービスを企画する。商品開発とは簡単にまとめると、次の3つの要素でできている
- 誰の
- どんな悩みを
- どうやって解決するか
具体的な商品のイメージを出すことで、新規事業のイメージがより鮮明になっていく。小粒な商品企画や多少的外れな商品企画も出てくるだろうが、議論を重ねて1〜2個の商品やサービス企画に絞り込む。この後の調査やプレセールス活動で検証する。
1-5.事業計画づくり
絞り込んだ商品企画を元に事業計画を作る。最も重要なのは事業規模だ。
この時点で事業規模が持続的に大きくできる見込みがなければ、商品企画の見直しが必要になる。
反対に、徐々に大きくできる計画が立てられるならば、それは商品企画としてまずは及第点と言える。
また新規事業を展開する上で、必要な人員や資金についても大枠決めておく。四半期毎やフェーズ毎に段階的に事業が成長していくイメージを数字で捉えておく。ここで作られる事業計画は、常にブラッシュアップをしていく土台になる。
1-6.ビジョンづくり
これまで議論してきた内容を3つに仕分けする。
- Will:やりたいこと
- Can:できること
- Must:やらなければならないこと
そして、プロジェクトチームとしての「Will(やりたいこと)」を明文化する。これから多くのチームメイトを集めるためにも、できるだけ大きな「Will(やりたいこと)」がいいだろう。
例えば大きな明文化というと、次のような文章がいいだろう。
- 「これからの時代を〜にする」
- 「〜を当たり前にする」
- 「圧倒的に〜になる」
こう言った表現ができると共感性が高まる。
1-7.パートナーシップづくり
パートナーとの関係構築のタイミングはケースバイケースであるが、新規事業具体的に進めるためにも、事業実現のカギとなる事業会社やスタートアップを早い段階でパートナーシップを構築しておくのが有効である。
ただし企業文化が異なるパートナーと同じ目標に向かって共同事業を推進できるだけの関係構築には相応の時間がかかるため、「この会社」と決めたら積極的に関係構築すべきである。
1-8.投資判断
事業会社の中で新規事業を立ち上げる際には、経営による事業投資判断を得る必要がある。経営は新規事業からすると投資家である。また、新会社設立なのか社内事業なのかによっても、投資判断のポイントは変わってくるため、投資判断の内容に合わせて綿密な準備を行う。投資判断を説明するタイミングは様々であるので、1枚、3枚、10枚、30枚の4パターン位でいつでも説明できる様にしていく。
2.新規事業の実行支援
新規事業として承認され、いよいよ事業開始となっても多くの難関が立ちはだかる。当初の想定とはかなり違っていたということが起こることも少なくない。
また、新規事業を企画するフェーズと、実行するフェーズでは必要なスキルが変わってくる。そのため新規事業はチームで推進することで成功確率は高くなる。
2-1.ミッションとメンバーの設定
事業化初期段階では、業務別にミッションを決めて各々の業務を立ち上げていく。
- 営業担当
- 開発担当
- 管理担当
このタイミングでは役割別に組織化するのではなく、メンバーは自分が担当する領域と事業全体は最低でも半々くらいで関わっていた方が、今後、事業規模が大きくなっていった時のズレを小さくできる
コンサルタントがメンバーの選出に協力することもある。選出の際には事業立ち上げの経験だけでなくスキルについても客観的に評価する。
2-2.商品・サービスの確定とローンチ
社内外からもらった様々な意見を踏まえつつ、提供する商品・サービスを確定させる。
その際、特定の顧客の意見を聞きすぎたり、社内の声を反映しすぎたりせず、できるだけ多くの顧客に当てはまる様な標準的な商品・サービスを決める。この標準商品の決定には多くの困難があるが、メンバーによる徹底的な議論を行い、価格も含めて標準を確定させる。
2-3.顧客の獲得
「お金を払って導入しよう」と判断してくれる顧客を獲得する。
商品・サービスを確定させる前に、できるだけ多くの見込み顧客にはコンタクトして、その反応を見ておく。初期顧客は、できるだけその商品・サービスのシンボルになる顧客を狙う。次の顧客を獲得する上で大きな弾みになる。そして、初期顧客には「導入事例として企業名を開示して紹介できるか」を何度もお願いする。
2-4.コミュニケーション
徐々に顧客が獲得され始め、関与するメンバーが増えてくると、事業としては順調であってもチーム内の課題も顕在化してくる。よくあるのはコミュニケーション不足だ。
ITを活用して情報共有を徹底するのはもちろんのこと、オフィシャル、アンオフィシャルなコミュニケーション双方の質と量を配慮する。またコミュニケーションは、指示ではなく各メンバーの自律的な活動を支援することを目的にする。
引き続き事業化していくためには、パートナーとの関係構築や事業目標となるKPIの管理や組織づくりなど非常に多くのテーマに対処していく必要がある。
新たな4つのタイプの新規事業への対応
ここまで、新規事業開発のコンサルティングを行なう際の進め方と意識するべきことを紹介した。
しかし、IoTやAIなど新しい技術の登場により、マーケットは大きく変化し、これまでとは異なったタイプのビジネスが登場している。新規事業企画ではこうした新しい流れに対応することも求められている。
そこで、特に目新しい新規事業の4つのタイプについて、事例を交えて紹介しよう。
1.デジタルトランスフォーメーション(DX)のビジネスへの参入
デジタル技術の活用で新たなビジネスモデルを創出し、顧客に新たな価値を提供するというデジタルトランスフォーメーションに対応する新規事業も多数登場してきた。
例えば、セミオーダー住宅をスマートフォンで販売するジブンハウスは、VR技術を活用して、顧客に工務店に行く前から購入判断ができるサービスを展開している。設立2年で70社以上が同社サービスを利用し、50棟以上の住宅が上棟している。彼らの業務プロセスはほとんどスマートフォンなどによるデジタルコミュニケーションで完結している。
2.サブスクリプション型ビジネスの立ち上げ
米国のDOLLAR SHAVE CLUB社はひげ剃り用カミソリを1カ月単位で、細かく提供サービスを分けて提供している。
- 2枚刃×5個で1ドル
- 4枚刃×4個で6ドル
- 6枚刃×4個で9ドル
このサブスクリプション型ビジネスは定額・定期利用の販売形態で、海外だけでなく国内でも増加しており従来の売り切り型ビジネス市場を切り崩しつつある。
このビジネスはITを活用した顧客管理で長期的な利用を促すため安定収益が期待できる。また、購入より契約時の金銭的負担が少ないため新規顧客の開拓が売り切り型よりも容易で、「すること重視」の顧客ニーズを捉えやすい。
3.AI、IoT、ビッグデータを活用した潜在ニーズ把握
アマゾンはデジタル技術の活用で従来型の書籍販売のビジネスプロセスを変えている。同社はITの活用で豊富な品揃えや快適な検索、購入履歴に基づく商品紹介などのサービスを導入して業績を伸ばし、実店舗の販売プロセスを陳腐化させた。
今後はAI、IoT、ビッグデータなどの活用により顧客・商品等の情報を収集・分析して潜在化している顧客ニーズを把握することが重要となるだろう。そして、それを新たな価値として創出し提供するビジネスが求められている。コンサルタントはこうした新しいタイプのビジネスの開発支援にも応える必要がある。
4.スタートアップとのコラボレーション
有望な技術・商品等を有するスタートアップとの連携は、新規事業開発を進める上で今後ますます重要になってくる。AIやIoT、ブロックチェーン、VR、自動運転などさまざま新技術やそれを活用したサービスを提供するスタートアップが誕生しており、利用しない手はないだろう。
依頼企業の新規事業開発のコンセプトにあったスタートアップを探し、連携の仲介及び協力体制の構築もコンサルタントの重要な支援となるはずだ。
まとめ
新規事業の開発支援は、マーケティング戦略の考えに基づいた方法で実施されるケースが多い。支援においては計画ベースの支援よりも計画実行への支援、実行する組織や人への支援を重視するコンサルタントのほうが望ましいだろう。また、従来型以外の新たなビジネスに進出したい場合は、それに対応できるコンサルタントを選ぶ必要がある。
新規事業の開発のステップは、業種業界を超えて共通点が多い。最近はマーケットの変化が早いため、自社の強みを起点にした事業開発よりも機会を起点にした事業開発が求められてくる。また開発ステップによって、必要とされるコンサルタントなどの外部リソースに求めるスキルが異なるため、フェーズごとにうまく使い分けることも大切だ。
- 新規事業の事業計画書サンプル
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コンサルティングの成功事例 - など

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