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B2B新規事業の仮説検証は営業から始めよ|未ローンチでも受注できる「早期導入特典」の実践法

                   
リサーチ
公開日:2020.04.10更新日:2025年6月19日
B2B新規事業の仮説検証は営業から始めよ|未ローンチでも受注できる「早期導入特典」の実践法

はじめに  B2B新規事業でなぜ営業による仮説検証が重要か

B2B領域で新規事業を立ち上げる際、多くの企業が「市場にニーズはあるはず」といった仮説を前提に、プロダクト開発やマーケティング、営業活動に着手します。しかし、こうした前提が実際の市場と乖離していたことで、立ち上げに失敗するケースは少なくありません。

特にB2B型の新規事業では、顧客企業ごとに異なる業務プロセスや意思決定構造が存在し、投資回収までのリードタイムも長期化しがちです。そのため、「どの企業が顧客になり得るのか」「誰がキーパーソンか」「何を価値と感じるか」といった仮説を、より早い段階で実務的に検証する必要があります。

このとき有効なのが、営業活動を起点とした仮説検証です。プロダクトが未ローンチの段階でも、営業現場での対話を通じて、顧客のリアルな反応を直接確認できます。表面的なニーズではなく、「本当に困っていること」や「導入判断の障壁」といった深層のインサイトを引き出せる点が、一般的なインタビュー調査やプレサイト運用とは異なる大きな強みです。

本記事では、B2B新規事業における仮説検証を営業から始めるべき理由を整理するとともに、未完成のサービスでも受注を獲得するための実践的手法として、「早期導入特典」戦略の考え方と展開方法について詳しく解説します。

B2B新規事業の3モデルと仮説検証アプローチの違い

B2B型の新規事業と一括りにしても、法人との関係性によってビジネスモデルは大きく異なります。その違いは、どこに価値を届け、誰を巻き込み、どのように収益化するかという構造に表れます。そして当然ながら、仮説検証のアプローチもモデルごとに最適解が異なります。

以下に、代表的な3つのモデルと、それぞれにおける仮説検証の主な観点を整理しました:

モデル 概要 仮説検証の主な観点
B2B 法人に対して直接サービスや製品を提供するモデル。
顧客は法人そのもので、導入判断も法人内で完結する。
例:経理・人事支援ツール、営業支援SaaSなど。
・法人内部の業務フローや課題に対するニーズの有無
・決裁者や予算の所在など意思決定構造の理解
・提案価値が実務にどう響くかの初期反応
・導入ハードル(セキュリティ要件、IT環境、業務への影響)
B2B2C 法人(パートナー企業)を介して最終消費者に価値を提供するモデル。
例:通信キャリア経由で提供される保険や動画サービスなど。
・エンドユーザー(消費者)のニーズや期待の検証(間接的)
・法人が取り扱う理由と収益インセンティブの整合性
・法人によるマーケティング・販売支援体制の有無
・パートナー企業が“売る”モチベーションを持てるか
B2B4C 法人と共同で商品やサービスを企画・開発し、消費者に届ける協業型モデル。
例:メーカーと小売が共創するPB商品、共通プラットフォーム開発など。
・共創体制の構築可否(開発負担・ブランドリスクなど)
・法人側の戦略や目的との整合性
・最終顧客への提供価値と市場性の評価
・役割分担・収益配分・KPI設定といった事業スキームの設計

 

このように、どのモデルに属するかによって、仮説検証で向き合うべき相手も、確認すべき論点も大きく変わります。

たとえばB2Bモデルでは、営業現場での仮説検証が特に有効です。顧客の課題を直接ヒアリングでき、プロダクト未完成でも「刺さる」かどうかを判断する材料が豊富に得られます。一方、B2B2CやB2B4Cでは、法人とエンドユーザー双方の理解や、提携構造の成立性も含めて複層的な検証が求められます。

営業活動でできる仮説検証とは?何が見えるのか

B2B型の新規事業において、営業活動は単なるプロダクトの売り込みではありません。むしろ、市場と顧客の実態を探る“動的なリサーチ活動”として、大きな価値を持ちます。特に、プロダクトが未完成の段階でも、実際の対話を通じて次のような重要な仮説検証が可能です。

1. 導入検討企業のペインポイント

顧客企業は、どの業務に課題を抱えているのか。表層的な不満だけでなく、「わざわざコストを払ってでも解決したい」と思う真の課題(ペイン)を把握することができます。

2. 意思決定構造と導入障壁

誰が導入のキーマンで、どの部門が影響を与えるのか。導入までの意思決定プロセスや、検討時にネックになるセキュリティ基準・既存業務との整合性・予算の扱いなど、実運用上の障壁が見えてきます。

3. 訴求軸の仮説検証

どの価値訴求が、顧客の共感や反応を引き出すのか。機能説明に反応が薄くても、「業務時間の削減」「属人化の解消」「他社との差別化」といった切り口に変えることで、意思決定者の心が動く場面もあります。

こうしたインサイトは、どれも座学的な市場調査やアンケートでは得にくいものです。現場のリアルな対話のなかでこそ得られる「温度感のある情報」こそ、営業起点の仮説検証の強みです。

さらに営業活動は、仮説の検証にとどまりません。対話を重ねる中で、

  • 「本当に刺さるプロダクト説明」
  • 「受注につながるプレゼン資料」
  • 「導入の決め手になる訴求ポイント」

といった営業コンテンツそのものを磨き込んでいく機会にもなります。結果として、仮説精度だけでなく、“受注力”そのものを高めながら事業の立ち上がりを加速させることができるのです。

未ローンチでも受注を得る「早期導入特典」の設計手法

営業活動において、「製品やサービスがまだ完成していないこと」は、必ずしも不利とは限りません。むしろ、開発中だからこそ提供できる特別なメリット=『早期導入特典』を提示することで、検証段階から受注につなげることが可能です。

この特典は、以下のような“先進企業ならではの悩みや関心”を持つ法人に対して、強力な訴求力を持ちます。

【早期導入特典が刺さる企業のニーズ】

  • 業界内での先進的な取り組みとして注目されたい
  • 社内に新しい業務手法やツールを導入し、変革を促したい
  • 社会的意義のあるプロジェクトに関与し、企業価値を高めたい

こうした企業に対しては、単なる値引きや無料提供ではなく、「企業の目的達成に直結する特典」を提案することが重要です。

【特典設計の具体例】

  • 導入企業としてのメディア掲載・共同プレスリリース
    → 社外への認知拡大・広報効果を提供
  • ブランド共創パートナーとしての位置づけ
    → 開発フィードバックや共同企画の機会を通じた共創体験
  • 初期費用の一部無償化や優先サポートの提供
    → 社内稟議通過を後押しする経済的・実務的なメリット
  • ユーザーインタビューの冊子化・社内報への活用支援
    → 導入担当者の社内評価向上に寄与するリターン設計

【設計時のポイント】

最も重要なのは、自社都合の“お願い”ではなく、「相手企業が得られる価値」に立脚した設計を徹底することです。
単に「使ってもらいたい」ではなく、「この段階で導入するからこそ得られる成果や立場がある」と、合理的かつ感情的な納得感を提供できるかがカギとなります。

営業×仮説検証の実例|RPA導入プロジェクトのケース

たとえば、営業業務の効率化を目的としたRPAツールのB2B型新規事業では、サービスローンチの約半年前から仮説検証を目的とした営業活動がスタートしました。
このプロジェクトでは、製品完成を待たずに以下のようなアプローチが取られました:

【営業活動の工夫】

  • 営業部門の人手不足が顕在化している業種を重点ターゲットに設定
    例:不動産業・人材紹介業など、反復作業が多い業界を選定
  • 新しいツール導入に積極的な企業にアプローチし、「早期導入特典」を提示
    例:導入事例としてのメディア露出、初期費用の優遇など
  • 製品のプロトタイプ画面と簡易資料をもとに“プレ提案”を実施
    あくまで「共創パートナー」として協力を募る姿勢を重視

【顧客から得られたリアルな声】

  • 記者発表に掲載されるなら、ぜひ協力したい
  • 他社より早く導入できるなら、社内稟議も通しやすい
  • 社内で『新しい挑戦をしている』という評価が得られるのは大きい

これらのフィードバックは、製品が完成してからでは得られにくい、仮説検証フェーズならではの貴重なインサイトです。
単なるアンケートや市場調査とは異なり、実際の提案と会話を通じて「何が価値になるのか」「導入判断を左右する要因は何か」を具体的に把握できます。

このように、営業を通じた仮説検証は、「受注につながるポイントの発見」と「プロダクト改善のヒント収集」を同時に実現できる極めて実践的な手法です。
事業開発と営業活動を並走させることが、B2B型新規事業を成功へと導く鍵になります。

まとめ:営業活動を起点に仮説検証と受注を両立する戦略へ

法人向けの新規事業において、スピーディかつ実効性の高い仮説検証を実現するカギは、「営業活動」の戦略的活用にあります。

従来のヒアリング調査や市場分析だけでは得られない、

  • 顧客が本当に困っている課題(=ペインポイント)
  • ニーズを顕在化させるトリガー(=コンペリングイベント)
    といった「現場のリアルな情報」は、営業担当者との対話の中からこそ見えてくるものです。

こうした生のフィードバックをもとに、顧客の立場に立った早期導入特典や導入メリットを設計すれば、仮説検証フェーズであっても実際の受注を得ることが可能になります。
つまり、仮説の精度向上と売上創出を同時に達成できるのが、営業起点型のアプローチの最大の魅力です。

ぜひ、皆様の新規事業開発においても、「営業による仮説検証」+「早期導入特典の設計・提供」という実践的な戦略を組み込み、再現性ある立ち上げモデルの構築を目指してみてください。

また、過去公開した『新規事業企画が思いつかない時に踏まえるべき2つの要素』という記事の中で『コンペリングイベント』と『ペインポイント』を取り上げておりますので、合わせて参考にしていただけると幸いです。

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私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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