新規事業開発にコンサルは必要か?成功に導く支援プロセスと活用メリットを実務目線で解説
公開日:2018.01.22更新日:2025年6月13日
目次
はじめに
市場環境の変化がますます激しくなる中、企業が持続的に成長を遂げるためには「新規事業の立ち上げ」が欠かせません。しかし、既存事業の運営に人材やリソースを割かれている企業にとって、社内だけで新規事業をゼロから推進するのは容易ではなく、多くの企業が立ちはだかる壁に直面しています。
こうした課題に対する解決策として、近年注目されているのが「新規事業開発に特化したコンサルタント」の活用です。外部の専門家による支援は、事業アイデアの構想段階から立ち上げ・運用フェーズまで、多様な場面で企業を力強くサポートしてくれます。
本記事では、新規事業コンサルタントが果たす具体的な役割や支援プロセス、導入によるメリット、さらには活用時の注意点まで、実務の現場目線でわかりやすく解説します。新規事業の成功確率を高めたいと考えている方は、ぜひご一読ください。
なぜ新規事業にコンサルが必要とされるのか?
人材・時間・ノウハウの不足がボトルネックに
新規事業の立ち上げには、構想段階から検証・実行まで、膨大なリソースと継続的な意思決定が求められます。特に専任の人材や検証にかける時間を確保するのが難しい中小企業においては、既存業務との両立が大きな負担となり、社内リソースだけで推進するのは現実的に困難です。また、事業開発に特化したノウハウが蓄積されていないことも、大きな障壁となります。
社内では得にくい「第三者視点」と「客観的知見」
外部のコンサルタントは、さまざまな業界・企業のプロジェクトを通じて培った知見をもとに、社内では見落としがちな論点やリスクを浮き彫りにしてくれます。組織内の力学や既存の思い込みに左右されることなく、フラットな視点で提言を行えることは、意思決定の質を高めるうえで大きな強みです。事業開発の方向性に悩んでいる場合でも、コンサルタントの客観的なフィードバックが突破口となることは少なくありません。
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新規事業開発プロセスとコンサルタントの支援範囲
新規事業の立ち上げは、大きく3つのフェーズに分かれます。それぞれの段階で、コンサルタントは専門的な知見と第三者視点から支援を提供し、プロジェクトの前進を後押しします。
構想フェーズ:事業アイデアの創出と仮説の検証
この段階では、どのような領域で事業を立ち上げるかを見極め、方向性を固めていきます。
- 事業ドメインの選定:既存事業とのシナジーや外部環境の変化を踏まえ、注力すべき領域を明確化
- 市場変化の把握:業界トレンドや社会動向から、将来性あるテーマを抽出
- 顧客ペルソナの設計:ターゲットとなる顧客像を仮説ベースで具体化し、ニーズを可視化
企画・戦略フェーズ:市場調査とビジネスモデルの構築
方向性が定まった後は、競争環境や顧客ニーズを深掘りし、実現可能な戦略を構築します。
- 海外を含む競合調査:先行事例や競合プレイヤーの分析を通じて差別化ポイントを明確に
- 顧客ニーズの深掘り:インタビューや定性調査を通じ、表面的でない課題を抽出
- ビジネスモデル仮説の構築:誰に・何を・どう届けるかを体系化し、収益モデルを設計
実行フェーズ:事業の立ち上げと継続的な改善
仮説をもとに事業を具体化し、実際の運用体制を整えながら、検証と改善を繰り返します。
- 商品・サービスの定義と標準化:最小実行可能なプロダクト(MVP)の明確化と提供体制の整備
- 初期顧客の獲得と事例化:ターゲット顧客へのアプローチと成功事例の創出
- KPI設計とモニタリング体制整備:成果指標の明確化と定期的な改善サイクルの構築
これらの各フェーズにおいて、外部コンサルタントの伴走支援を受けることで、社内だけでは見落としがちな視点や実行力が加わり、新規事業の成功確度を大きく高めることが可能になります。限られたリソースの中でも成果を出すためには、適切なタイミングで専門家の力を活用する判断が、今後ますます重要になっていくでしょう。
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コンサルタントを活用する3つのメリットと注意点
外部コンサルタントを活用することで得られるメリットは多岐にわたりますが、特に新規事業の立ち上げにおいて効果を発揮するのは、以下の3点です。
メリット①:ノウハウの蓄積と“思考の型”を学べる
コンサルタントは、多様な業界・企業での支援経験を通じて、成功確率の高いプロセスや失敗回避の「型(フレームワーク)」を熟知しています。こうした思考の枠組みや判断の基準を吸収することで、社内に再現性のあるナレッジを蓄積でき、将来的には自走力のある新規事業チームの育成にもつながります。
メリット②:スケジュールとフェーズ管理のスピードアップ
プロジェクトマネジメントに長けたコンサルタントが関与することで、プロジェクト全体の進行管理が明確になります。各フェーズの区切りやマイルストーンが整理され、成果物に対する責任意識も強まるため、結果として事業の立ち上げスピードが加速します。
メリット③:新たな視点での仮説検証と市場洞察
外部の客観的な視点を取り入れることで、社内では見落としがちな市場の変化や顧客ニーズに気づくことができます。異なる業界の事例やトレンドを踏まえた仮説提案は、既存の枠組みにとらわれない発想を促し、事業の可能性を広げる重要なきっかけとなります。
注意点:依存せず、「自分ごと」として取り組む姿勢が不可欠
ただし、コンサルタントはあくまで支援者であり、最終的な意思決定や実行の責任は社内にあります。すべてを任せきりにしてしまうと、現場に主体性が生まれず、事業が定着しないリスクがあります。コンサルの知見を活かしつつも、自らの事業として当事者意識を持つことが、成功への鍵となります。
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支援事例から見る「今注目の新規事業タイプ」
近年の支援事例からは、共通して「顧客体験の変革」や「テクノロジー活用」に軸足を置いた新規事業が成果を上げています。以下に、注目されている4つのタイプと代表的な事例を紹介します。
DX活用型:体験価値の再設計による差別化
事例:ジブンハウス(スマホ完結型の住宅販売)
住宅購入という高関与商材において、VRやスマホを活用した“非対面かつ直感的”な購買体験を提供。デジタル上で完結するプロセスが、若年層を中心に支持を集め、新たな顧客層の獲得に成功しています。
サブスクリプション型:継続課金モデルで収益の安定化
事例:DOLLAR SHAVE CLUB(定額カミソリの配送サービス)
「毎回の購入が面倒」というユーザーの潜在ニーズをとらえ、定額・自動配送モデルを確立。利便性と価格の手頃さが支持され、サブスク型モデルの成功事例として定着しました。
データ活用型:AIとビッグデータによる高度なニーズ把握
事例:Amazon(購買履歴を活用したレコメンド)
膨大なユーザーデータを活用し、一人ひとりに最適化された商品提案を実現。行動履歴や嗜好分析を活かした“予測型マーケティング”が競争優位の源泉となっています。
スタートアップ連携型:外部の技術とスピードを取り込む
事例:AI・自動運転技術を持つスタートアップとの協業
自社だけでは保有しきれない最先端技術や実証フィールドを外部と連携することで補完し、開発スピードとイノベーションの両立を実現。特に大企業においては、スピーディな事業化の手段として注目が集まっています。
このように、新規事業の成功パターンは多様化しており、いずれも「顧客起点の発想」と「テクノロジーの活用」が共通のカギとなっています。自社の強みや課題に応じて、どのタイプのアプローチが適しているかを見極め、柔軟に取り入れていく姿勢が、これからの事業開発には不可欠です。
新規事業コンサルを効果的に活用するための4つのポイント
外部コンサルタントの力を最大限に引き出すには、導入前後のスタンスと進め方が重要です。以下の4つのポイントを意識することで、共創型のプロジェクトをより実りあるものにすることができます。
1. コンサルとの役割分担を明確にする
「何を社内で担い、何をコンサルに任せるのか」を事前に整理しておくことが、スムーズな連携のカギとなります。調査・仮説構築・実行支援など、フェーズごとの役割を明文化することで、責任の所在が曖昧にならず、成果にも直結しやすくなります。
2. 自社のWill(やりたいこと)をしっかり共有する
新規事業における“意思”の不在は、プロジェクトの迷走につながりかねません。なぜその事業をやりたいのか、何を実現したいのかという自社の想いや背景を、コンサルタントと最初に共有することで、より的確で一貫性のある提案が生まれます。
3. 社内のミーティング・意思統一の場を事前に設ける
コンサルとの打ち合わせを効果的に進めるには、事前に社内での合意形成を済ませておくことが不可欠です。経営層や関係部署との認識がズレたまま進行すると、意思決定の遅れや軌道修正のリスクが高まります。
4. 必要に応じてスポット契約・短期契約を活用する
すべてのフェーズで長期的に依頼する必要はありません。戦略構築やPoC検討など、要所だけを切り出してスポットで依頼することで、費用対効果を高めることも可能です。状況に応じて、柔軟な契約形態を選びましょう。
これらのポイントを押さえておくことで、単なる“外注”ではなく、社内と外部が一体となった実践的なパートナーシップを築くことができます。コンサルタントの知見と自社の意思をうまく組み合わせることが、新規事業の成功確率を高める近道です。
コンサル費用の目安と契約の考え方
新規事業におけるコンサルティング費用は、依頼するテーマや支援範囲によって大きく異なります。コンサル選定支援サービス「PROFIT」の実績データによると、新規事業開発をテーマにしたコンサルティングの費用は平均で約2,000万円程度とされています。
ただし、これはあくまで一例であり、実際の費用は以下の要因によって大きく変動します。
■ 費用の幅とその要因
- 支援範囲・検討内容の複雑さ:アイデア段階の構想支援から、PoC、事業ローンチ支援までどこまでを依頼するかによって金額が変動します。
- ファームの規模や単価:大手ファームは高額になる傾向があり、スタートアップ支援に特化した中小規模のコンサルは比較的リーズナブルです。
- 契約形態の違い:プロジェクト単位での包括的な支援だけでなく、短期のスポット支援や時間単位契約など、柔軟な契約形態が選べます。
■ コンサル費用の目安(参考)
- プロジェクト単位:約300万円〜2,000万円程度
- 高額帯:最大で5,000万円規模の案件も存在
- 時間契約:1時間あたり5,000円〜10万円超まで幅あり
- 契約形態:プロジェクト型、スポット支援型、成果報酬型など、柔軟に選択可能
■ 契約時のポイント
重要なのは、「すべてを外部に丸投げする」のではなく、自社の目的・体制・ノウハウ蓄積の必要性に応じて、最適な契約形態と支援範囲を見極めることです。
たとえば、戦略立案のみを外部に依頼し、実行は社内で進めるハイブリッド型の活用も有効です。予算に合わせた段階的な活用も選択肢の一つとなります。
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コンサル導入までの進め方と準備ポイント
コンサルタントを効果的に活用するには、導入前の準備と社内での合意形成が非常に重要です。以下の4ステップを踏むことで、スムーズな連携とプロジェクトの成功確率を高めることができます。
1. 現状の整理と依頼内容の明確化
まずは、自社が抱える課題や現在の検討状況を棚卸しし、「どの部分を外部に依頼するべきか」を明確にします。曖昧な依頼内容では、コンサルから適切な提案を受けづらくなるため、整理の精度がその後の成功を左右します。
2. SWOT分析などを活用した環境分析
自社の強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)を可視化することで、事業アイデアの実現性や潜在的なリスクを具体的に把握できます。客観的な視点で環境を俯瞰しておくことが、コンサルとの戦略検討の土台になります。
3. コンサルタントとの対話と提案内容の検証
複数回の打ち合わせやヒアリングを通じて、提案される支援内容の妥当性や実行可能性を検討します。提案が自社の目的や制約条件に合っているかを見極め、必要に応じて調整を行うことがポイントです。
4. 契約締結とプロジェクトのスタート
提案内容に合意した後は、支援範囲・スケジュール・成果物・費用などを明記した契約を締結し、プロジェクトの実行フェーズに移行します。キックオフ時には、社内外の関係者で役割分担とゴールを再確認しておくと、実行力が高まります。
※事前に自社内で方向性や課題認識を共有しておくことで、コンサルタントとの打ち合わせや提案内容の検討がより効果的かつスピーディに進みます。準備の質が、支援の質を引き上げる鍵となります。
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まとめ
新規事業の立ち上げは、優れたアイデアだけで成功するものではありません。重要なのは、実現までのプロセスをどう設計し、どれだけ確実に実行していけるかという点です。
外部コンサルタントの活用は、そのプロセスにおける「スピード」と「質」を高める有効な手段です。ただし、あくまでも自社の目的や意思を軸に据え、“共創パートナー”としてコンサルタントと対等な立場で向き合う姿勢が、最終的な成果を左右します。
フェーズごとに必要な支援を見極め、主体性を持ってプロジェクトを推進していくことが、変化の激しい市場で成果につながる新規事業を実現する第一歩となります。
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フィンチジャパンからのご提案|新規事業開発における伴走支援の活用をお考えの方へ
私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。
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私たちフィンチジャパンは、こうした悩みに真摯に寄り添い、構想から実行までを伴走型で支援いたします。
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コンサルティングの成功事例 - など
この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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