パーソナライズとは?消費財メーカーの次世代One to Oneマーケティングのやり方
公開日:2018.02.28更新日:2023年5月23日
「One to Oneマーケティング」は、1990年代後半にブームとなったマーケティング手法だ。
企業が顧客の消費を喚起するために行うマーケティング活動において、特定のセグメントをターゲットにして行うのではなく、顧客一人一人の嗜好や属性を踏まえて訴求する手法だ。
このマーケティング手法はデジタルマーケティングの世界で大いに注目を集めてきた。現在では、Amazonのリコメンデーションの様に、すでにウェブサービスにおいては当たり前の様に実施されている。
しかし今スマートフォンアプリや3Dプリンタの進化、そして企業のデジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)によって、One to Oneマーケティングは、「パーソナライズマーケティング」として、言い換えれば「One to Oneメーカー」として再発明されようとしている。
この記事では、メーカーが行う次世代のOne to Oneマーケティング(パーソナライズマーケティング)のインパクトについて紹介する。
目次
One to Oneマーケティングの進化
One to Oneマーケティングの登場以前のマス・マーケティング
大量生産・大量消費が求められた時代では、マス・マーケティングという考えが主流だった。
マス・マーケティングとは、すべての顧客を同質とみなしたマーケティング手法である。ある特定の商品を大量に生産し、多額の広告宣伝費、流通コストをかけて消費者に届ける。大量生産で製造コストを削減すると同時に、コストをかけて市場へ大量に流通させることで、圧倒的な市場シェアを獲得できる。
しかし、本来は顧客一人ひとりで好みも特性も違うため、求めているものが違うのは当然だ。インターネットの普及に伴い、消費者は一人ひとりが自分に合った情報や商品を求めるようになった。こうなると企業は、従来のマス・マーケティングの考え方で顧客のニーズに対応できなくなる。
そこで1990年代の注目されたのがOne to Oneマーケティングだった。
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1990年台のOne to Oneマーケティングとは、広告手法
One to Oneマーケティングとは、顧客の属性別に合わせた個別のマーケティングを展開する方法である。例えば、次のような項目をそれぞれ分類して、男性向けや女性向けにマーケティング施策を分けたりする。
切り口は他にもたくさん考えられる。
- 顧客のニーズ
- 性別
- 年齢
- 身長
- 好み
Webマーケティングが発達している現在では、One to Oneマーケティングは当たり前の様に行われている。Eコマースやメディア、検索エンジンでは個人の嗜好に合わせた商品提案や情報提供がなされており、広義にはFacebookやInstagramの広告もOne to Oneマーケティングと言っていいだろう。
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事例:すかいらーくグループのケース
「ガスト」「ジョナサン」等を展開しているすかいらーくグループは、2014年に自社開発した「ガスト」のスマートフォンアプリでOne to Oneマーケティングを行い大きな成果をあげた。これにより、2014年上半期の広告宣伝費を前年同期比で10%以上減らしつつも、売上高を2.9%も増やしたのである。
ガストのアプリの特徴は、「顧客一人一人に合わせて異なる情報発信」をしていることだ。ユーザーがスマートフォンアプリをインストールし、会員登録時に年齢や性別、子供の有無などの顧客情報を入力する。そうした入力情報と、顧客の状況やGPSの位置情報に合わせて、最適なタイミングでクーポンを配信している。
例えば、子供がいるユーザーにはお子様向けのクーポンを配信したりすることなどがそれにあたる。これにより、顧客の来店率は通常のメールマガジンと比べると約10倍となり、広告宣伝費を新聞の約100分の1まで減少させることに成功した。
One to Oneマーケティングは、顧客の嗜好に合わせた情報発信だけではなく、顧客の状況に合わせた情報提供にも活用できる。
One to Oneマーケティングから、パーソナライズへ
消費財メーカーが引き起こすOne to Oneマーケティング革命
これまでのOne to Oneマーケティングは、すでに決まった商品やサービスを顧客に提案するために活用されてきた。
購買履歴に合わせて提案するリコメンデーションや、場所に合わせて提案するジオマーケティングは、顧客データを活用した提案である。
しかし今、消費財メーカーのデジタルトランスフォーメーションが、製造工程を巻き込んだ革新的なOne to Oneマーケティングを引き起こしつつある。それらは英語では「パーソナライズ」と呼ばれている。
このパーソナライズは、製造過程から一人ひとりに合わせた形で商品が作られるのだ。
事例:AmorepacificのTailored Mask
韓国の化粧品メーカーであるAmorepacific(アモーレ・パシフィック社)は顧客ニーズに合わせた商品開発から顧客フォローまでをOne to Oneマーケティングで行う新たなサービスを発表した。
同社は、2017年11月、顧客一人一人の皮膚の状態や顔の形に合わせ、カスタマイズされたフェイシャルマスク「Tailored Mask」の発売を発表。パーソナライズされたフェイシャルマスクの提供は、世界初の試みとして大きな話題となった。
顔の大きさと形、目・口・鼻・額の位置などをスマートフォンアプリで顧客自身が測定することで、顧客一人一人に合わせたTailored Maskを作成できるのだ。
さらに、このTailored Maskの製作には量産できる最新の3Dプリンタが活用されている。従来の3Dプリンタで製作可能なものは、プラスチックのような硬い素材の商品のみであったが、同社ではフェイシャルマスクのような柔らかい素材でできた商品を3Dプリンタで製作する技術を確立したのである。
スマートフォンと3Dプリンタ、そしてビッグデータ解析やAI技術が、消費財メーカーをOne to Oneメーカーへと変貌させる現実的な方策を示しつつあり、「オーダーメイド」という古い時代の方法が、デジタル技術を取り入れることによって、低コストでカスタマイズ商品を販売できる方法として再発明されたと言えるだろう。
実は、One to Oneマーケティングの世界ではいつの日かと夢見た世界であるが、いよいよその時代が来たと言っていい。全てのカテゴリーでは無いにせよ、嗜好性が強く、個人のニーズや形状が異なるカテゴリーにおいては、消費財メーカーによるOne to Oneメーカーがどんどん登場してくることと筆者は予測している。
まとめ
One to OneマーケティングからOne to Oneメーカーへ。スマートフォンと3Dプリンタ、そしてビッグデータ解析やAI技術と言った技術革新が、消費財メーカーをOne to Oneメーカーへと変貌させる道筋を見せている。
それにより、「オーダーメイド」という古い時代の高付加価値高価格な製造販売方法が、高付加価値で低コストな製造販売方法として、再発明された。
今回は韓国の化粧品メーカーであるAmorePacific(アモーレ・パシフィック社)を事例として取り上げたが、近い将来日本企業からも新規事業として発表されることを期待している。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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