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モビリティ事業の未来を切り拓く!MaaSの国内導入事例と成功のヒントを徹底解説

                   
事業開発
公開日:2025.06.04更新日:2025年6月4日

MaaSとは?モビリティを変革するサービスの基本

MaaSの定義と目的

MaaS(Mobility as a Service)とは、複数の交通手段を一つのサービスとして統合し、検索・予約・決済を一括で行える仕組みです。
自家用車や公共交通、タクシー、シェアサイクルなど、従来は個別に存在していた移動手段を一つのプラットフォームにまとめ、ユーザーに最適な移動体験を提供します。

MaaSの本質は「所有から利用へ」の転換にあります。これにより、交通の利便性向上だけでなく、交通渋滞の緩和、環境負荷の低減、地域経済の活性化といった社会的課題の解決にもつながります。

MaaSが実現する統合型モビリティとは

MaaSの導入によって、ユーザーは以下のような価値を得られます。

  • アプリ一つで複数の移動手段をスムーズに利用可能
  • 利用者ごとの移動ニーズに応じた最適経路の提示
  • 移動履歴や行動パターンに基づくカスタマイズ提案
  • 地域交通と都市交通のギャップを埋める「ラストワンマイル」解決

また、サービスレベルの統合も重要です。単なる「交通機関の束ね」ではなく、交通インフラとIT技術(AI・IoT・ビッグデータ)を組み合わせ、移動のUX(ユーザー体験)そのものを再設計する取り組みが進んでいます。

モビリティ業界における導入メリット

企業にとって、MaaSの導入は以下のようなビジネス上のメリットももたらします。

  • 新たな顧客接点の創出(例:観光客・高齢者・外国人)
  • 既存資産の有効活用(駅、車両、顧客データ)
  • サブスクリプションモデル等への収益多角化
  • 自治体・他社との連携を通じた地域施策との親和性

特に経営資源が限定される企業にとって、他事業との連携による「共創モデルの確立」は重要な戦略ポイントとなるでしょう。

分野別に見る国内MaaS事業の最新事例

日本国内では、多様な社会課題や地域特性に対応するかたちで、MaaSの導入が急速に進んでいます。ここでは、モビリティ戦略の検討に役立つ主要5分野の代表的な事例をご紹介します。

都市型MaaSの導入例:都市の移動をなめらかに

都市部では、公共交通やタクシー、カーシェア、自転車シェアなど多様な移動手段が混在しています。それらを一元的に管理・活用する都市型MaaSは、利用者にとっての利便性を大きく向上させています。

  • トヨタ自動車/「my route」
    地域のバス・タクシー・シェアサイクルを統合し、経路検索から予約・決済までを一つのアプリで実現。福岡市などで展開。
  • JR西日本 × アイリッジ/「WESTER」
    電車の経路検索やチケット購入に加え、地域バスやタクシーの情報も組み込み、都市内モビリティの総合プラットフォーム化を目指す。

不動産MaaS:生活インフラと移動の融合

住宅やオフィスエリアにおけるMaaS導入は、「住む場所」と「移動手段」が連動した新たな価値を創出します。

  • 日鉄興和不動産 × モネ・テクノロジーズ
    大規模マンション居住者向けのオンデマンドバス運行。居住者アプリと連携した移動最適化を実現。
  • 三井不動産 × Whim/NearMe
    再開発エリア内で、目的地検索、エリア情報、支払いを一つのアプリで完結させる「生活者起点型MaaS」を展開。

観光型MaaS:地域活性と周遊性向上を両立

観光地では、交通手段が分断されがちな1次・2次交通(鉄道・バス・レンタカー等)の統合が課題でした。観光MaaSは、その課題を解決し、滞在満足度や周遊促進を高めています。

  • 小田急電鉄/「EMot」
    箱根を中心とした観光エリアで、複数交通の統合チケットと観光情報を一元提供。
  • ANA × 宮崎県・大分県
    空港からのアクセス・レンタカー・観光施設予約を1つのデジタルパスで完結させる観光MaaSを実装。

医療・福祉MaaS:誰もが安心して移動できる社会へ

高齢化が進む中で、医療機関への移動支援や訪問診療の移動支援をMaaSで補完する取り組みも拡がりつつあります。

  • 長野県伊那市/モバイルクリニックMaaS
    移動診療車とオンライン診療を組み合わせ、山間部の住民の医療アクセスを向上させる取り組み。

物流MaaS:配送の効率化と脱炭素の両立

物流分野でも、MaaSの考え方は活用されています。AIや量子コンピューティングを用いた配送最適化、EV活用による脱炭素など、複数企業の事例が登場しています。

  • NEXT Logistics Japan
    量子コンピューティングを活用し、大型車の動的配車やクロスドック(結節点)運用を実現。
  • 日立物流/IoT・AI活用
    走行中の事故リスク検知や最適経路選定により、安全性と効率性の両立を実 現。

MaaS事業推進のポイントと課題

MaaS導入においては、実証段階を経て本格展開へ移行する中で、多くの企業・自治体が共通して直面する課題があります。一方で、成功事例には一定のパターンが見られ、そこから事業推進のヒントを得ることができます。

推進上の壁:制度、データ、体制の課題

MaaS事業の推進には、以下のような障壁が存在します。

  • 法制度の未整備:特にタクシー・バスの運行ルール、エリア限定運行、シェアリング関連法制などが、民間主導の事業展開にブレーキとなっているケースがあります。
  • データの非連携:交通事業者ごとに保有するデータの仕様や粒度が異なり、統合・活用に高いハードルがある。
  • 自治体・民間の連携体制構築の難しさ:地域主導でMaaSを推進するには、自治体、交通事業者、観光協会、デベロッパーなど多様なプレイヤーの合意形成が必要。

先進事例に学ぶ「成功要因」

一方で、全国で先行的に成果を出している事例には、いくつかの共通要因が存在します。

  • 「既存資産の再編集」による収益モデルの確立
    例:日鉄興和不動産のマンションMaaSでは、自社施設とモビリティを連携させ、新たな生活価値を創出。
  • 官民連携の初期からの設計
    例:群馬県・JR東日本など、自治体と鉄道会社が共同で設計した観光MaaSでは、利用者の体験設計とデジタルインフラ整備が一体化。
  • 「交通」以外の目的と結びつけたMaaSの再定義
    例:ANAの観光型MaaSでは、移動そのものではなく「旅の全体体験」を軸にしたサービス設計が特徴的。

社内推進のフレームワーク例

フィンチジャパンでは、MaaSのような新規事業の立ち上げにおいて、以下のような3つの観点から社内推進を設計することを推奨しています。

  1. 経営資源の棚卸しと再編集
    自社の保有アセット(交通網、顧客基盤、決済手段、地域ネットワークなど)を再評価し、MaaS事業と結びつけられる資源を明確化する。
  2. 仮説駆動型の事業設計
    小規模実証と検証を繰り返しながら、提供価値とオペレーションモデルをブラッシュアップする「ラーニング型」の構築。
  3. クロスセクター連携の体制構築
    営業・経営企画・システム・法務など部門横断のMaaSタスクフォースを組成し、持続的な事業開発体制を整える。

このように、単に「先端事例を真似る」だけでなく、自社なりのMaaSの目的と役割を定義することが成功の第一歩です。

モビリティ事業の成長に向けた戦略視点

MaaSは単なる移動の効率化ではなく、企業の新たな成長戦略の柱になりうる領域です。ここでは、モビリティ事業を将来的に自立・拡張させていくために不可欠な、3つの戦略的な視点を紹介します。

既存アセットを活かしたビジネスモデル構築

自社の強みや既存資産を活用しながら、新しい提供価値を構築することは、モビリティ事業においても重要です。

たとえば、以下のような観点が挙げられます。

  • 鉄道・バス・タクシー事業者 → 地域交通ネットワーク、乗客データ
  • デベロッパー → マンション・商業施設と連動した移動の最適化
  • 小売・流通 → 店舗への送客手段としてのモビリティ設計
  • 通信・IT企業 → アプリ・決済・データ基盤の提供

これらの資源を「移動の課題」ではなく「生活や業務の課題」から再構成することが、MaaSの戦略的な価値創造につながります。

パートナー連携・プラットフォーム構想の重要性

一社単独ではMaaSの実現は難しく、複数のステークホルダーが参加するプラットフォーム設計が不可欠です。

  • 交通事業者・IT企業・自治体・不動産会社・観光協会などが連携
  • APIやデータ連携によって、エコシステムを構築
  • 利用者視点での“体験の一貫性”を担保するUX設計

成功している事例ほど、最初から「連携ありき」の構想で動いており、利害調整・データ共有・役割分担のルール設計に力を入れています

MaaS×デジタル活用で生まれる新たな収益源

MaaSは、単なる移動手段の統合にとどまらず、「移動に関するデータ活用」や「行動起点のマーケティング」にも可能性を秘めています。

  • 移動履歴を活用したプロモーション(例:観光施設や店舗との連携)
  • サブスクリプションモデルによる継続収益化(例:通勤者向け定額MaaS)
  • 行動予測を活用した広告・販促プラットフォーム化

これにより、交通サービス=コストセンターではなく、マーケティング・サービス基盤としての収益センター化も実現可能です。

まとめ:自社らしいMaaS事業を成功に導くには

MaaSは「移動の最適化」という技術的なテーマにとどまらず、企業が抱えるさまざまな経営課題に対する包括的な解決策として機能するポテンシャルを持っています。観光、不動産、物流、医療、都市交通など、多様な業種で導入が進む今こそ、自社にとっての「モビリティの意味」を再定義することが求められています。

本記事で紹介した国内事例には、「小さく始めて試す」「既存資産を活かす」「連携とUXを重視する」といった共通点がありました。これらはすべて、MaaSの事業化における実践的なヒントとなります。

そして、成功の鍵は「最初から完璧を目指す」のではなく、スモールスタートと検証を重ねながら、柔軟に戦略を調整する姿勢にあります。

今後、モビリティの価値は「移動距離」ではなく「移動によって得られる体験」や「移動を通じて生まれる関係性」に移っていくでしょう。
その変化の波に、どのように乗るか。自社の強みと社会課題をつなぐ“モビリティ戦略”を描くことが、MaaS時代の成長の鍵となります。

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この記事の監修者

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株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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