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AIエージェントとは何か?「道具」から「相棒」へ、変わりゆく私たちの関係

                   
経営
公開日:2025.11.11更新日:2025年11月11日

 

でじどうラジオは、株式会社フィンチジャパンが配信する、AIエージェントと人が“共に番組を運営する”新感覚の実践型トークシリーズです。「答えるAI」ではなく、番組制作に実際に関わるエージェントを“デジタル同僚”として取り上げることで、「人とAIがどのように一緒に働くのかを体感的に知る」ラジオです。本記事はフィンチジャパン代表高橋とひげおぢによるポッドキャスト『でじどうラジオ』で『AIエージェント(日経文庫)』を読み、二人が語った「人間の役割」と「信頼の速度」に関する対談記事です。

はじめに──前書きと目次だけで、本は読めるのか

ひげおぢ:「デジどうラジオ」パーソナリティのひげおぢです。当初「萌子」とAIエージェントの「茜」とで番組をお送りする予定でしたが、これからしばらくの間フィンチジャパンのフィンチ高橋と一緒にポッドキャストをお送りしていきます。今回は城田真琴さんの著書『AIエージェント』(日経文庫)を語り合っていきます。実は、白状すると。僕、この本の前書きと目次しか読んでないんです。あとはプロンプトとDeep Researchで「読んだふり」をして、フィンチ高橋と話をしていくという。このAI時代の知性が、どこまで本を読めるのか。それが今日の裏テーマだったりします。

フィンチ高橋: (笑)。間違ってたら、遠慮なく指摘しますので。

ひげおぢ: よろしくお願いします。で、早速なんですけど、僕がAIに感想を出してもらったら、この本は「マイルドなハラリ」なんですよ。

高橋:ホモ・デウスを書いた、ハラリですか?

ひげおぢ:そうです。歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの人類の未来を描いた本ですね。この『ホモ・デウス』って、みんながアルゴリズムに支配される世界を描いていたじゃないですか。相性も結婚も全部データで決まって、何パーセントの確率で幸せになるか計算される世界。城田さんの本も、2028年のエージェントが生活に入り込んだ未来から始まってるんですよね。

だから、かなりハラリっぽいなと思ったんですけど、「マイルド」と感じたのは──警鐘を鳴らすというよりは、未来のシナリオをいくつか提示して、考える材料を渡してくれる書き方だったからです。

フィンチ高橋: そうですね。私が思ったのは、この本は「エージェント」という言葉に焦点を絞って、過去・現在・未来という時間軸で、生活や社会、職場にどう入っていくのかを、すごく丁寧にイメージしやすく書かれているということです。

城田さんは毎回そうなんですけど、本当に分かりやすい。「こういう本書けたらいいな」って思うぐらい、めちゃめちゃいい本ですね。

 

「道具」から「相棒」へ──それは本当に革命なのか──

ひげおぢ: じゃあ、その「すごくいい本」って、全体的にどんなことが書いてあったんでしょう?

フィンチ高橋: まず最初の入り口で、本の中では「AIは道具なのか否か」という問いから始まるんです。「いやいや、今までは道具だったけれども、これからは相棒になる、仲間になる」と。そういうところから入っていって、道具じゃなく相棒になっていくんだよ──それを「AIエージェント」と呼ぶんだよ、という構成になっています。

そして、ここから考察を深めていったんだけど、僕は「道具か相棒か」って、実は二項対立ではないかと思うんですよ。

たとえば、スポーツ選手が何万回も素振りをして使い込んだバット。あるいは裁縫職人が30年使い続けたハサミ。彼らにとってそれは「道具ですか?」って聞かれたら、「いや、これは相棒です。自分の一部です」って答えると思うんです。

ひげおぢ: なるほど。今はAIエージェントが道具扱いされているけど、それが少しずつ変わっていって、気づいたら「あれ、エージェントって自然に自分たちの生活の中に入ってきてるよね」っていうふうになる──それが城田さんがイメージしてる世界なんじゃないかなと。

フィンチ高橋: 本当、僕もそう思ってます。ただ、唯一違うのは、恐ろしく速い速度でっていうことなんですよね。

さっきハサミの話をしましたけど、ハサミを20年使ってようやく「相棒」って言えるようになる。相棒とか仲間っていうのは、だいたい1ヶ月一緒に働いたから相棒とかって言わないじゃないですか。3年とか5年働いたり、大きなプロジェクトを乗り越えたり、酒を飲んだり──

ひげおぢ: 同じ釜の飯を食う、ってやつですね。

フィンチ高橋: そう。死語かもしれないけど(笑)。そういうのを繰り返して、年単位でそういう関係が築かれる。

でも、AIの場合は、ものすごく短い時間で、ものすごく自分に寄り添ってくれたり、感情や機微を捉えてくれることによって──自分の想像とか、場合によってはコントロールができないほど早く、相棒だったり信頼できる関係っていうふうに、こう……錯覚してしまうというか、考えてしまうというか。そういうところがあるんじゃないかなと思うんですよね。

ひげおぢ: それって、僕みたいに1日何時間もAIに触れてる人だけじゃなく、たとえば30分しか触らない人にも起こるってことですよね?

フィンチ高橋: そう、それが怖いんですよ。触ってる時間が30分だった人たちも、その30分の中で、もう分かんないけど、1年ぐらいの関係性を学習されてしまって。あたかも30分で、それこそ「ひとめぼれ」のように、あっという間に運命の出会いになってしまう──そういったことがもう起きそうな気がするんですよね。

だから、自分でコントロールできて、結果的に「同じ釜の飯」になっていくような時代と、自分では意識せずに「もうこの関係性がなければ、LINEも打てなくなる、会話も打てなくなる」っていうのが、年単位どころか数日、数ヶ月でエージェントと相棒・信頼関係・依存関係のような“深い関係性”を持ててしまうような気がするんです。

 

「プロンプトエンジニアリング」はもう古い?

ひげおぢ: 本の中で、未来像として具体的にどんなことが書かれてたんですか?

フィンチ高橋: いくつかあるんですけど、一つは「プロンプトエンジニア」という言葉についてです。こんな言葉が流行ったのも、もうわずか1、2年前ですよね。でも城田さんが言うには、それはもう既に古いと。

ひげおぢ: え、もう?

フィンチ高橋: そうなんです。つまり、プロンプトに命令文を書いて、その命令通りにAIを起動させるっていう時代から、もっと曖昧に──「明日、来週忙しいんだけど、出張の予定大丈夫かな?」みたいな感じで、非常に曖昧な感想を言った時に、実際その本人のカレンダーやメールの内容を見ながら、「これはフィンチ高橋は来週忙しいから、水曜日、木曜日の大阪出張のことを指してるな」って文脈を推測して、「それは来週の大阪出張のことですね。それでしたら、実際に予約とかもやっていきましょうか」と。

そういったところまで、すぐに来るし、もう既に来てるよ、と。そんなような話をしていました。

ひげおぢ: それ、僕もすごく実感してるんです。実は今回、この対談の準備も、AIと「相談」して進めたんですよ。1年前ならプロンプトでがちがちに縛って、「箇条書きにしろ」とか「役割はこうだ」とか、細かく指示してたのに。今は普通に相談して、ゴールまで一緒に辿り着けた。

だから、プロンプトにこだわるのって、もう古い使い方なんじゃないかって感じてます。

フィンチ高橋: それはあると思いますね。

 

「司令官」としての人間──問いを設計する時代へ

ひげおぢ: じゃあ、そういう自律的なAIが当たり前になったとき、人間の役割って何になるんでしょう?

フィンチ高橋: 本の中で繰り返し出てくるキーワードが「司令官」なんです。つまり、自分で手を動かして仕事をする時代から、まさに司令官となってAIを動かすような形の立場にならないとダメだよ、というのが前半で書かれていました。

たとえば僕なんかもそうなんですけど、一生懸命レポートを書く──自分で手を動かして、汗をかいてレポートをまとめるところから、「どうやってエージェントを動かしてレポートを書かせるのか」っていうところに思考が移るんです。

なので、どういう問いをそのエージェントに投げかけると、より独創的で創造的なレポートが書けるのか──その問いの設計自体が、人の役割として出てくるよね、みたいなことを言ってたかな。

ひげおぢ: 「問いの設計」って、すごくこれからのキーワードですよね。「プロンプト」って言い方じゃなくて、「問いの設計」って言った方がいい気がする。

人間って、結構実は自分の願いを言うのが苦手なんですよね。それが、AIを使うことで、文字にすると分かったりする。

 

「汗かいた価値」は消えるのか──AI生成への信頼──

ひげおぢ: もう一つ気になるのが、「汗かいた価値」みたいなものなんです。

今って、同じ内容の文章でも、「これ、生成AIが書いたんだ」ってバレた瞬間、信頼度が勝手に下がったりしませんか?

フィンチ高橋: 僕も今まではそう思ってたんですよ。でも最近、ディープリサーチでまとめた文章とか、あるいはPowerPointを作ってくれるツールでスライドになったりするものを見ると、もう正直、読んで勉強になっちゃうわけで。

そうすると、「生成AIが作ったからだめ」じゃなくて、「参考になる話だからいいわ」って思っちゃうから、もうその境目は、僕の中ではかなり薄い感じがするんですよね。

ひげおぢ:境界ですか。

フィンチ高橋:ここの境目というのは「人間が作ったもの」と「AIが作ったもの」の価値の差とか判断基準みたいな意味ですね。

ひげおぢ: なるほど。僕もだんだんそう思うようになってきました。直接目の前に人がいない著作物──録音だってそうかもしれないし、音楽もそうだし、文章もそう──もうちょっとで、多分人間よりもAIが作った方が、人間は快感を覚えたりとか、いいなと思う時代がやっぱり来るってことですよね。

フィンチ高橋: 来ると思います。来ると思う。ちょっと分かんないけど。

この本も、僕は読んで「これ、城田さんが書いてるな」と思う。なんとなく城田さんっていう人が何らかの思いを持って書いてるな、と今は思うけれども──じゃあ、3年後に同じような本が出てきた時に、その人が書いたものとAIが書いたもので、自分の感動に差が出るのかと聞かれたら……わかんない、自信がない。

ひげおぢ: 書かれたものだけ、っていう前提だと、自信ないですよね。

フィンチ高橋: 自信ない。出来上がった成果物だけ見て、それこそAIが作った映画を見て、もう泣ける自信あるもん。もうそういうのをすぐやってくるような気がするし、もうやってるんじゃないかなと。

 

第4章に書かれた「5つの問い」──責任と思考の行方──

ひげおぢ: せっかく本を読んでいただいたので、ちょっと特定の章を深めたいんですけど。第4章に、「動くAI」が生まれたときに5つの問いが生まれてくるって書いてあるんですよね。

  • 責任は誰が取るのか?
  • この考えは自分のものなのか、誰のものか?
  • 使いこなしてる人と使いこなしてない人のデジタルデバイド
  • プライバシーは存在するのか?
  • 自分を超えた存在を人間は信頼に足るのか?

で、その中で、「人間の思考は退化しないか」っていう危惧が書かれてました?

フィンチ高橋: さすが、ひげおぢ、本読んでないのがわかるね(笑)。

まず、責任に関しては、AIは取れない、取らないっていうことが明確に出ています。それから、実際にAIに思考を委ねていくことによって、どのぐらい思考が衰退するか──これも、実際に研究がなされていて、その研究の結果からすると、もう衰退するということが分かってる、だそうですよ。

それは、AIに限らず過去の例で、GPSが使われるようになったことによって、実際に地図とか道路の場所も覚えなくなったみたいなことがあって。そこから発展して、いくつかの話の中でも、まさにその思考がAIに委ねていくことによって、どんどん衰退しているという研究結果が出てる話を例に挙げていましたね。

ひげおぢ: それはもう、避けられないことなんですね。でも、AIエージェントだけに起きてることではない、と。

フィンチ高橋: そうです。だから、どうするっていう話でいうと、途中で話したみたいに、人としてやるべきことの役割が変わる。先ほどの「司令官」であったり、あるいはキャリアの考え方が変わるっていうことを言っていて、ある意味、自分たちが思考を外に出したり委ねることによって、逆に強化するべき思考があるということが後半書かれていたような感じがしますね。

ひげおぢ: 強化すべき思考──それが「問いの設計」であり、「司令官」としての思考法なんですね。

 

責任と「AI株式会社」の思考実験

ひげおぢ: もう一つ、責任問題について。結局、人間が全て取るべきだって書かれてましたか?

フィンチ高橋: 書いてありました。それは裁判だったりそういったもので、一応そういう判断がされているという、事実ベースで書かれていました。ただ、それも恒久的にそうなっていくのかどうかというのは、もっともっといろんな事象が出てくるんじゃないかなと思いますけどね。

ひげおぢ: でも、この生成AI時代で最後に残る人間の仕事って何だろうっていうところで、ある人は「政治だ」って言うんですよね。言うことを聞かない人間をどうなだめるか、と。

でも、今日、フィンチ高橋の話聞いてると、「AI株式会社」にはそういうロジックも存在しないじゃないですか。政治が存在しない会社。そうすると、もう責任かなと思ったんですけど。

フィンチ高橋: そうですね。その「AI株式会社」ができた時に、その株式会社に今のところ人が出資してるのであれば、株主責任みたいな形で議論がされていて、執行責任自体をAIが取れないとすると、まさにその経営責任は株主が取っていくっていうような話も、過渡期ではあるかもしれないけど──じゃあ、株主がAIだった場合に……

ひげおぢ: そうですね、どんどん思考実験でいうと、マトリョーシカみたいな話になりますよね(笑)。

フィンチ高橋: どんどんそのマトリョーシカみたいな話になるので、もうそれは、どこまで人で、どうなるかっていう話はあるかもしれないですね。

ひげおぢ: まず手始めには、多分僕らは、人間の著作物とAIの著作物の区別がつかなくなるだろう、と。で、責任という言葉が人間の手を離れるかは、また来年か2年後ぐらいに話しましょう。全然、多分、変わってる話だと思うので。

フィンチ高橋: 変わってると思いますよね。

ひげおぢ: ぜひ、また2年後ぐらいにこの話も振り返るとか。その頃にはもう、このポッドキャストも二人の仮想のAIが話してるかもしれないですけどね。

フィンチ高橋: 本当だよね(笑)。全然、そういう風になってるかもしれない。

 

フィンチ高橋が語る「この本の3つの良さ」

ひげおぢ: 最後に、フィンチ高橋がこの本を読んで思った感想を聞かせてください。

フィンチ高橋: すごくいい本だったって冒頭で伝えましたけど、私から見ると、まず3つ良いことがあって──

1つ目は、この「生成AI」という言葉と「エージェント」という言葉をきちんと区分けして、エージェントにテーマを絞って書かれているところ。生成AIのことを書いているのか、エージェントのことを書いているのかが分からなくならないように、エージェントの話にちゃんと絞って書いているところが、すごく発見もあったし、学びもあったなと。

2つ目は、技術的な話──たとえばAIの技術とか、エージェントの技術ということにはほとんど触れずに、そういったエージェントの登場が、自分たちの仕事や職場、業務にどのようなインパクトがあるのかっていう、そのインパクトに関する想像、解像度を上げるっていうことに、かなり丁寧に注力しているところ。これは初めて読む人たちからすると、とても分かりやすいなと思います。

3つ目は、途中にもお伝えしましたけども、それがいいことなのか悪いことなのか、善なのか悪なのかっていうような話には、おそらく意図的に触れずに──評価はそこではしてないんですけど、「こういう未来があるよ」というシナリオの提示をして、「今から我々が考えたり議論していくための材料をお出しする」っていうところに自分の役割を置いていただいてるので、それもすごく良かったなって思いますね。

ひげおぢ: ぜひ、これ聞いてる皆さん、読んでください。ちなみに僕は買ってますからね、読んでないんだけど(笑)。そこは礼儀として。

この収録終わってから、ぜひフィンチ高橋の言ったことも踏まえながら読んでみたいと思います。

 

おわりに──次回も別の本を選んでディスカッションを──

ひげおぢ: かなりすごいいい話が聞けて、僕も楽しかったです。また課題図書も何冊か用意してますので、また別の本でお互いいい話ができたらなと思ってます。

改めて、ありがとうございました。

フィンチ高橋: ありがとうございました。

 

でじどうラジオ

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000053478.html

 

【今回の課題図書】

城田真琴『AIエージェント』(日経文庫)

https://amzn.asia/d/aTQmRBM

 

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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