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モビリティ変革の最前線:自動運転ビジネスモデルの進化と収益化戦略を読み解く

                   
事業開発
公開日:2025.05.28更新日:2025年5月28日

はじめに:自動運転は「技術」から「ビジネス」へと進化している

モビリティ業界は今、かつてないほどの転換期を迎えています。とりわけ「自動運転」は、技術革新の象徴として注目されてきましたが、近年では単なる技術領域にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出源として期待が高まっています。

たとえば、米国ではWaymoをはじめとする大手プレイヤーがロボタクシーの商用展開を進める一方で、地方自治体と連携し地域課題を解決する自動運転スタートアップも増加中です。国内でも、MaaSやV2G(Vehicle to Grid)などとの連携により、モビリティの事業化=収益化の構造が徐々に見え始めています。

とはいえ、まだ多くの企業が「自動運転でどう儲けるか?」という問いに明確な答えを出せていないのも事実です。本記事では、グローバルで進行する自動運転の収益モデルと社会実装の動きを俯瞰しながら、ビジネスとしての成功要因を読み解きます。

自社の成長を牽引するモビリティ戦略のヒントを探している方は、ぜひ参考にしてみてください。

世界の自動運転ビジネスモデル最前線

世界のモビリティ市場では、すでに自動運転を軸とした多様なビジネスモデルが登場しはじめています。米国を中心に、商用化が加速する都市型ロボタクシー、地方部と連携する公共交通モデル、そしてアプリ連携によるマネタイズなど、収益化を狙った動きが活発化しています。

Waymo、Zoox、Mobileyeなどトッププレイヤーの戦略

Google傘下のWaymoは、フェニックスやロサンゼルスなどでロボタクシーの商用運行を拡大し、独立採算モデルを追求しています。対応車種も拡充し、吉利(Geely)傘下のZeekrやヒュンダイのIONIQ5をベースとした車両も導入。高性能BEVの大量導入によるスケーラビリティと電費改善の両立が課題となっています。

一方、Amazon傘下のZooxは「運転席を持たない自動運転車」という独自設計で注目されており、2025年にラスベガスでのサービスインを計画。ただし、米運輸省(NHTSA)から安全性認証に関する指摘もあり、制度面でのハードルが収益化に影響する例としても注目されています。

イスラエルのMobileyeは、VWや日本の商社などと提携し、グローバルOEMとの連携による自動運転タクシーの展開を進めています。

自治体連携・公共交通モデルの台頭(May Mobility/Glydwaysなど)

トヨタやNTTが出資するMay Mobilityは、米国内の地方都市や郊外地域での自治体連携によるBtoG型のモビリティサービスを展開。病院や高齢者施設への送迎、買い物支援などのユースケースに特化し、社会課題の解決と実証を重ねながら、持続可能な公共モビリティモデルの構築を目指しています。

同様に、スズキが出資する米Glydwaysは、専用レーンを活用した公共交通モデルを提案。都市計画と連携する必要がある一方、地域の交通政策との合致によりスムーズな展開が可能となる点が特徴です。

アプリ連携・オンデマンド化による収益最大化

米国では、UberやLyftと提携する自動運転プレイヤーが急増中です。アプリ連携により、ユーザーとの接点を確保しつつ、既存のプラットフォーム経済圏に組み込まれることで初期顧客の獲得と利用率向上が期待されるためです。
このような「オンデマンド型の移動×自動運転」の融合は、今後の主流モデルの一つになる可能性を秘めています。

自動運転で利益を出すには?3つの収益モデル比較

自動運転が実用化に近づく中、企業が直面する最大の課題の一つが「いかにして収益化するか」という問いです。技術的な進展に比べ、ビジネスモデルの確立には依然として多くの試行錯誤が続いています。ここでは、現在注目されている3つの収益モデルを整理し、それぞれの特徴と課題を比較していきます。

プラットフォーム型(API連携、サブスク)

最も広がりを見せているのが、プラットフォームを通じたAPI連携やサービス提供によるモデルです。代表例としては、自動運転車両を自社で保有せず、他社のアプリ(UberやLyft)と連携し、サービスとして提供する形態があります。

  • メリット:既存プラットフォームのユーザーベースを活用でき、初期投資を抑えられる
  • デメリット:自社ブランドの露出が薄く、価格やUXの主導権を握りにくい

また、一部プレイヤーは月額課金制(サブスクリプション)モデルを導入し、定額でロボタクシーを利用できる仕組みを構築しています。

インフラ協業型(V2G、専用レーン運用)

自動運転技術を交通インフラと結びつけ、地域の都市開発やスマートグリッドと一体で展開するモデルも注目されています。たとえば、BEV車両の蓄電池を活用したV2G(Vehicle to Grid)連携では、移動中でない時間を「電力供給源」として活用する収益化の仕組みが生まれています。

  • メリット:交通以外の領域と結びつくことで収益源が多様化
  • デメリット:制度整備や自治体連携が不可欠で、導入までに時間と労力がかかる

さらに、都市計画とセットで専用レーンを導入することにより、定時性や走行効率を担保しながらBtoG型の公共サービスとして展開する試みも進んでいます。

BtoG型(行政との協業モデル)

May Mobilityなどが実践しているのが、行政との協業によって自動運転を地域課題の解決手段として提供するモデルです。主に高齢化や移動困難地域を対象とし、通院や買い物といった生活ニーズに応じた “公共サービス的な移動手段”として展開されています。

  • メリット:社会的ニーズに合致し、補助金や政策支援を得やすい
  • デメリット:市場原理だけではスケーラビリティに限界がある可能性

このように、自動運転の収益化は「技術の活用先」次第で大きく変わるため、自社の強みやパートナーシップに応じて戦略的に選択することが求められます。

 

注目される「地域特化戦略」:成功するユースケースとは?

自動運転の社会実装において、近年注目されているのが「地域特化型戦略」です。特定エリアの課題やニーズに応じたカスタマイズを行うことで、現実的かつ段階的に自動運転の受容と収益化を実現する手法です。以下では、代表的なユースケースを紹介します。

高齢化・過疎地域向け移動サービス

日本を含む多くの先進国で共通しているのが、高齢化と公共交通の衰退という課題です。こうした地域では、通院や買い物といった「生活に不可欠な移動手段」が確保されにくくなっています。

May Mobilityや地方自治体と提携した実証実験では、自動運転車を「地域の足」として位置づけ、高齢者の移動支援やコミュニティバスの代替として活用されています。行政支援を得られやすい点も特徴です。

観光/空港連携型モビリティ

観光地や空港周辺では、大量輸送よりも快適さ・導線の最適化が重視される傾向があります。
この領域では、ホテル〜観光スポット間や空港〜バス乗り場などの限定エリアでの小型自動運転シャトルの導入が進められています。

観光産業との連携により、移動時間そのものを“体験価値”に転換できる点もポイントです。エンタメ性や地域ブランディングと親和性が高く、地方創生の文脈でも注目されています。

企業内送迎・クローズドエリアの最適化事例

自動運転導入の“第一歩”として有効なのが、クローズドエリアでの運用です。
工場内、研究所、キャンパス、テーマパークなどでは、敷地内の移動や荷物の搬送に自動運転車を用いることで、安全性と効率を両立できます。

こうした事例は、外部交通との連携が不要で導入ハードルが低いため、実装スピードが速いことが特長です。また、社内での成功体験を基に、次フェーズで外部展開を見据える企業も増えています。

このように、地域特化戦略は「規模拡大」よりも「解像度の高い課題解決」を重視するアプローチとして有効です。
限られた環境でもしっかりと“成功体験”を積むことで、自動運転の社会実装に向けた信頼と知見を着実に蓄積できます。

自動運転×MaaSの次フェーズ:「移動を超えた体験価値」

従来の自動運転のビジネスモデルは、「安全に人やモノを運ぶ」ことを主目的としてきました。しかし近年では、自動運転とMaaS(Mobility as a Service)の融合が進む中で、「移動そのものに新たな付加価値を持たせる」という考え方が広まりつつあります。

このフェーズでは、単なる移動手段から一歩進み、「移動中の時間をどう活用するか」が新たな収益源やUX向上のカギとなります。

移動中のコンテンツ提供とサービス内課金

自動運転車両では運転操作が不要となるため、乗客は完全に「自由な時間」を手に入れます。この特性を活かし、エンタメ・学習・広告などのサービス提供による新たな収益化が進められています。

たとえば、移動中に動画視聴やオンライン会議、EC利用を促す「移動型プライベート空間」の提供や、目的地に応じたレコメンド・プロモーションなど、サービス内課金との親和性が非常に高い領域です。

広告プラットフォームとしての可能性もあり、「人が集まる空間としてのモビリティ」という捉え方は、小売業やエンタメ業界との連携によって拡張性を持ちます。

移動を中心としたライフプラットフォーム構想

一部のプレイヤーは、「移動そのもの」ではなく「移動を起点としたライフスタイル全体」に価値を見出し始めています。
これは、移動する住空間”や“移動するオフィス”といった概念に近く、自動運転車両を中心としたモバイル空間の最適化を目指すものです。

この構想が現実化すれば、以下のような多用途展開が期待されます:

  • リモートワーク対応のモバイルオフィス
  • 診療・予防接種に対応したモバイルクリニック
  • プライベートフィットネスやサロンなどの移動型パーソナルサービス

こうした展開は、単なる移動コストの回収を超えて、「時間価値の最大化=顧客体験の革新」を可能にします。

このように、自動運転とMaaSが融合する先には、 “移動そのものを収益化する”のではなく、“移動中の時間をどう設計するか”という視点が求められます。
今後のビジネス展開では、テクノロジーだけでなく、UXデザイン・サービス設計の視点を持つ企業が競争優位を握ることになるでしょう。

日本企業の挑戦とフィンチジャパンの視点

自動運転を活用したビジネスは、海外を中心に加速度的に広がりを見せていますが、日本企業にとってはまだ“これからの勝負所”です。法制度や社会受容性といった制約に加え、確実性が求められる国内企業文化においては、ビジネスモデルの設計と実装に一層の慎重さが求められます。

そのような中で、自動運転を活かした事業変革や新規事業開発に挑む日本企業にとって、今何が課題で、どのような打ち手が有効なのでしょうか。

まとめ:自動運転ビジネスモデルの未来をつくるために

自動運転は、単なる技術革新を超え、「移動の在り方そのもの」を再定義する存在となりつつあります。そして今、企業に求められているのは、“どの技術を使うか”ではなく、“どの社会課題をどう解決し、どんな収益モデルで持続可能にするか”という視点です。

海外では、都市型・郊外型・BtoG型など多様な事業モデルが生まれ、プラットフォーム連携やオンデマンド活用を通じて現実的な収益化が進んでいます。一方、日本でも高齢化や地方の交通問題といった社会的ニーズに応じた実装が着実に進行中です。

今後は、「小さな成功から、大きな構造転換へ」という段階的なアプローチが重要になります。自動運転が本当に人々の生活に根付くためには、技術だけでなく、戦略、共創、そして実行力が不可欠です。

フィンチジャパンからのご提案|ビジネスモデルの構想から実装まで一貫支援します

私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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