スタビリティとは?変化の時代に求められる“持続可能な安定”の新しい定義
公開日:2025.05.27更新日:2025年5月27日
目次
はじめに:なぜ今「スタビリティ」が注目されているのか
不確実性が日常化し、変化が加速度的に起きる現代において、「安定」という言葉は、かつてとは違った意味合いを持つようになってきました。経済、テクノロジー、気候、働き方、あらゆる領域で変動が前提となる今、従来の「変わらないこと=安定」という考え方では、むしろリスクを高めてしまうことさえあります。
そんな中で、近年あらためて注目されているのが「スタビリティ(Stability)」という概念です。特にビジネスの世界では、「変化に耐える柔軟性」や「変化に適応しながら持続する力」といったニュアンスで語られる場面が増えてきました。
本記事では、「スタビリティ」とは本来どういう意味なのか、そして今の時代においてどのように再定義されているのかを整理しながら、企業がこれからの不安定な時代を生き抜くためのヒントを探っていきます。
「変わらないためにどう変わるか」
その問いに向き合うことが、これからのビジネスにおいて欠かせない視点になるかもしれません。
スタビリティとは何か?その本来の意味とビジネスへの応用
語源・定義:Stabilityの意味(安定・持続・均衡)
「スタビリティ(Stability)」は、一般に「安定性」「持続性」「均衡状態」などと訳されます。語源はラテン語の「stabilis(動かない、しっかりした)」で、物理的な動きが少ない状態や、バランスが取れて揺らぎが少ない状態を指す概念として用いられてきました。
この言葉は、自然科学や工学、経済学などさまざまな領域で使われています。たとえば、飛行機やロケットの「飛行安定性」、通貨や株価の「経済的安定」、国家や地域の「政治的安定」などが代表的な使用例です。
経済や経営における「スタビリティ」の捉え方
ビジネスの文脈においては、「スタビリティ」はしばしば“リスクを抑え、予測可能性を高める状態”として扱われてきました。特に経営や組織運営においては、以下のような要素と結びつけられることが多いです:
- 財務の健全性(収益の安定・キャッシュフローの見通し)
- オペレーションの安定(生産・サービス提供の継続性)
- 組織の定着力(人材の定着率・社内文化の維持)
しかし、ここで注意したいのは、「変化しないこと」が必ずしもスタビリティにつながるとは限らないということです。変化が前提となる環境において、同じことを続けるだけでは、かえって不安定な状態に陥る可能性すらあります。
安定=停滞ではない。変化とのバランスが鍵
現代のスタビリティとは、「変化に耐える強さ」ではなく、「変化を前提に成長し続ける柔軟さ」を含んだ概念へと進化しています。たとえば、以下のような状態が、持続可能な安定性の具体例として挙げられるでしょう:
- 外部環境が変わっても、価値提供の軸がブレない
- 組織構造や働き方を柔軟に変えながら、文化や理念を維持できる
- 新たなテクノロジーを取り入れながらも、顧客体験や信頼は損なわない
つまり、「安定している状態」とは「変わらないこと」ではなく、「変わりながらも企業の本質となる価値観、思想、事業ドメイン等を守り、持続している状態」を指すのです。
これからのビジネスリーダーに求められるのは、静的な均衡ではなく、動的なバランス感覚だといえるでしょう。
なぜ今「スタビリティ」が経営で重要視されるのか
VUCA時代の不確実性と意思決定スピードの関係
近年、ビジネスの現場では「VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)」という言葉が頻繁に使われるようになりました。市場や顧客のニーズ、技術トレンド、社会情勢はかつてないスピードで変化しており、企業にとっての意思決定はますます難しくなっています。
このような状況において、経営に求められるのは「正解を見つける力」ではなく、「変化を前提に、軸を持って判断し続ける力」です。ここで重要になるのが、環境の変化に振り回されない“スタビリティ”の考え方です。
サステナビリティと表裏一体の「スタビリティ」
SDGsやESG投資など、サステナビリティ(持続可能性)が企業の成長に不可欠な視点として根づきつつある今、スタビリティはその“足場”とも言える存在です。
サステナビリティが「社会的・環境的な責任や長期的なビジョン」を重視する一方で、スタビリティはそれらを支える「日々の業務や組織の基盤」がきちんと維持されているかを問いかけます。
たとえば、脱炭素の方針を掲げるだけでなく、それを実現する社内の体制やサプライチェーンの再構築にまで目を向ける。あるいは、多様性を重視する方針だけでなく、それを支える制度やカルチャーを実装する。そうした「方針を地に足つけて動かす力」こそが、スタビリティの役割です。
従業員の心理的安全性と組織の持続性
もうひとつ、スタビリティが注目される背景には、「人」に関する課題の存在があります。リモートワークの普及、ジョブ型雇用への移行、副業・兼業の広がりなど、働き方が大きく変化する中で、組織としての一体感や信頼関係をどう維持するかは、多くの企業にとって切実なテーマです。
そこで求められるのが、「心理的安全性」というスタビリティの形です。たとえ変化があっても、安心して働き、挑戦し、失敗できる環境があること。それが従業員の定着率やエンゲージメント、ひいては組織の持続力に直結します。
企業のスタビリティは、財務や事業モデルだけでなく、「人と組織のあり方」にまで広がる概念になりつつあるのです。
すなわち、「どんなに環境が揺れても、自社として大切にすべきものは何か」を明確にし、それを軸に意思決定を行っていく。そうした姿勢が、経営のスピードと柔軟性の両立を可能にします。
変革とスタビリティは両立できるのか?
変化を恐れない“柔軟な安定”とは何か?
「スタビリティ(安定)」と「トランスフォーメーション(変革)」は、相反するもののように見えるかもしれません。しかし実際には、変化を受け止めるための“柔軟な安定性”こそが、変革の土台として重要になります。
たとえば、社内制度や文化を完全に固定化してしまうと、環境の変化に追いつけず、かえって組織が硬直化してしまうことがあります。一方で、変化ばかりを追い求めると、組織としての一貫性や信頼性を損なう恐れがあります。
だからこそ、経営や組織に求められるのは、「変化できる柔軟性」と「守るべき軸や価値観」を同時に持つこと。状況に応じて“かたち”を変えながらも、“本質”はぶらさない。その姿勢が、変革とスタビリティを両立させる鍵となります。
「本質を守り、周囲を変える」経営思考の重要性
企業にとっての「本質」とは何でしょうか? それは、事業ドメインかもしれませんし、顧客との信頼関係、企業理念、あるいは人材育成の思想かもしれません。
重要なのは、変革の過程においても、その本質がブレないこと。そして、変えるべきはその周囲——組織構造、プロセス、ツール、スキルセットといった“方法論”の部分です。
たとえば、製造業がデジタル化に取り組む際、顧客との関係性を変えずに、受注・生産・物流のプロセスを再構築する。あるいは、金融機関が信頼性を維持しながら、UI/UXやチャネルを大胆に刷新する。こうした「内と外のバランス感覚」が、スタビリティと変革の両立を可能にします。
実例:構造改革とブランド信頼を両立させた企業事例
実際、多くの企業がこの「両利きの経営」に挑んでいます。
たとえばある老舗食品メーカーでは、創業以来続く製品品質と顧客との信頼関係を「守る軸」としながら、EC販売の導入、パーソナライズドマーケティングの活用、物流体制の見直しなど、大胆な構造改革を進めました。
その結果、既存顧客との関係性を損なうことなく、新たな顧客層の獲得と業務効率化を実現しています。変革を進める際に「何を変えるか」だけでなく、「何を変えないか」を明確にしたことが、結果的に“信頼できる変化”として市場に受け入れられたのです。
フィンチジャパンが提唱する「変革型スタビリティ」の構築方法
フィンチジャパン独自の“経営資源再構成”による安定設計
フィンチジャパンは、これまで多くのクライアント企業と向き合う中で、「変わり続けながら、軸を保ち続ける組織」こそが、持続可能な成長を実現できると確信しています。
私たちがご支援する「変革型スタビリティ」とは、単に変化を受け入れるのではなく、「自社にとって本質的に重要な経営資源(人・組織・知見・文化など)を再構成することで、変化に強い安定性を獲得する」という考え方です。
たとえば、これまで主力だった事業ドメインを軸に据えながらも、そこにデジタル技術や異業種との共創を融合させることで、新たな価値創出に踏み出す。既存の枠組みを否定せず、その強みを再定義する形で組織変革を進めることが、フィンチジャパンのアプローチです。
戦略と現場の「ズレ」を埋める組織デザイン
変化がうまく進まない企業の多くは、「戦略は立てられるが、現場がついてこない」「現場は動いているが、経営とビジョンが噛み合っていない」といった、“認識のズレ”を抱えています。
フィンチジャパンでは、こうしたズレを構造的に可視化し、解消するための「対話設計」や「権限移譲の仕組みづくり」「ナレッジの再配置」といった支援を通じて、戦略と現場が一体で機能する組織デザインを提案しています。
この取り組みにより、環境変化に応じた柔軟な意思決定が現場レベルで可能となり、日々の業務が変革と安定の両立を支える土台になります。
継続的な価値提供を支える支援体制の紹介
私たちは、単発の変革施策を提供するのではなく、「持続可能な運営と学習の仕組み」をクライアントの中に組み込むことを重視しています。
- 社内人材を変革の中核に据えるための“共創型プロジェクト設計”
- 自律的に改善を続けられるよう、定着・内製化フェーズまでを見据えた伴走支援
- 複数の部門・拠点間でノウハウを循環させるナレッジマネジメントの仕組み化
こうした一連の取り組みにより、フィンチジャパンは「変革の起点」だけでなく「持続可能なスタビリティの運用体制」までを整える支援を行っています。
私たちは、変化を一時的なイベントで終わらせるのではなく、企業が自走し続けるための“仕組みづくり”を共に考え、共に構築していきます。
まとめ スタビリティとは、“未来に耐える柔らかさ”である
変化のスピードが増し、不確実性が常態化する現代において、「安定であること」は以前にも増して大きな意味を持つようになりました。
ただし、ここで言う「安定」は、固定された静的なものではありません。むしろ、「揺れながらも折れない」「動きながらも軸を持ち続ける」といった、動的でしなやかな安定こそが、これからのスタビリティの本質です。
それは言い換えれば、「未来に耐える柔らかさ」とも言えるでしょう。
企業にとってのスタビリティとは、外部環境がいかに変化しようとも、自社らしさを見失わずに価値を提供し続ける力であり、経営資源を柔軟に再構成しながらも、中長期的な視点で事業と組織を育てていく意志のあらわれでもあります。
こうした視点に立ったとき、「スタビリティの構築」は決して守りの戦略ではなく、「攻めるための基盤づくり」であることが見えてきます。
フィンチジャパンからのご提案|「スタビリティ」の再構築で、変化に強い組織を育てるために
私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。
こんなお困りごとはありませんか?
「変化のスピードに追いつけず、社内の安定性が揺らいでいる」
「変革を進めたいが、守るべき軸が曖昧で、迷いが生じている」
「スタビリティを保ちつつも、組織や事業をしなやかに進化させたい」
今、企業に求められるのは、“動きながらも折れない”しなやかな安定性。変革とスタビリティの両立に向けた視点と仕組みが欠かせません。
私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。
- エネルギー企業O社:DX推進における業務プロセスと組織再設計(約3年)
- 食品メーカーX社:カテゴリーマネジメント体制の再構築と運用支援(2年)
- 化粧品メーカーI社:ブランドマネジャー制度の設計・定着により、組織の柔軟性と安定性を両立(約8ヶ月)
「守るべき価値」と「変えるべき仕組み」の見極めこそ、これからの企業成長の鍵です。
まずは構想段階から、お気軽にご相談ください。
共に考え、共に動く――それが私たちのスタイルです。
- 新規事業の事業計画書サンプル
- 新規事業を成功させる22のステップ
- 新規事業・商品開発
コンサルティングの成功事例 - など
この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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