【ビジネスモデルづくりのコツ】フレームワークの使い分け方を解説
公開日:2018.06.05更新日:2023年5月23日
新規事業の立ち上げには、アイデアや考えを整理し事業内容の軸を定めたうえで、ビジネスモデルの構築が不可欠だ。
ビジネスモデルをしっかり固めるためのコツは、適切なフレームワークを適切な場で使うことである。
本記事では、ビジネスモデルを作るときに使えるフレームワークを、「アイデア創出」「マーケットの調査」「事業構築」「事業内容の改善」などそれぞれの過程ごとに紹介し、その内容と使い分け方などを説明する。
新規事業の立ち上げでフレームワークを使うメリット
新規事業の立ち上げでフレームワークを活用するメリットは、次の3つである。
- アイデアの思考や考えの整理が視覚的にできる
- 抜け漏れなく内容検討を行える
- 仲間と戦略や方向性をシェアできる
最初のメリットとして、フレームワークを通して考えを書き出すことにより、頭の中にある考えを視覚的に整理しやすくなることが挙げられる。
実際に書き出すことで自分の中にはどういった考えがあるのか視認でき、書き出したものを整理することで、数多くのアイデア間にある関係性や類似性を理解できる。
つぎに、フレームワークでは書き出す項目や流れにルールがあるため、その規則に沿ってアイデアを書き出すことで取りこぼしなくすべてのアイデアを拾い上げられる。
アイデアを数多く書き出しすぎると情報過多になり整理や選別が難しくなる恐れがあるが、まずは抜け漏れなくすべての考えを書き出す作業が重要だ。
最後にフレームワークを使うことで、視覚的な情報としてアイデアを共有でき、情報伝達の際の齟齬を防げることがメリットとして考えられる。
【関連記事】新規事業とは?立ち上げで重要なビジネスアイデアの探し方と6つの行動
新規事業立ち上げまでのステップ
新規事業の立ち上げまでのステップは、以下の4つである。
- マーケットの調査・分析
- アイデアの創出
- 事業構築
- 改善
4つのステップに沿った新規事業の立ち上げ方法について、詳しく紹介する。
ステップ①マーケットの調査・分析
新規事業を立ち上げるためには、新規事業を取り巻く現状を正しく把握する必要がある。
対象となる市場の規模や市場の成長性について、的確に現状を把握する。
マーケットの分析ではターゲット市場を選別するために必要な情報を集める。
ステップ②アイデアの創出
新規事業に関するアイデアを創出する際には、幾つかの観点から考え始めるとよい。
【関連記事】新規事業のアイデアはどのように生み出す?考え方を徹底解説
市場の兆しの観点
自社が参入を検討している市場や領域、テーマが、市場で活況になっているのかという観点でアイデアを創出する。
さらに詳しく見ると、アイデアが出始めているのか、市場が盛り上がり始めているのか、まさに盛り上がっている真っ只中なのかという具合に、市場の段階を見極めることで、どのような市場に参入するアイデアを創出するのかを考える。
顧客のペインポイントの観点
立ち上げを検討している新規事業が、なぜ利用されるのかを洗い出す。
いわゆるニーズのことだが、「あったら便利」といったニーズや「困っていることが既にわかっているので利用している」というユースケースにとどまらず、「この痛みを取るためならば、対価を支払うほうが安い」と感じるペインポイントの発見を通じて考えると良い。
【関連記事】ビジネスで重要なペインポイントとは?顧客ニーズとの違いと具体例を解説
社内リソースの観点
自社がこれまで、時間やお金をかけて行ってきたことを洗い出すことで、新規事業に活かす武器が見えてくる。
既存事業を推進する中で培った社内リソースをそのまま新規事業に転用するだけでなく、新規事業を具体化する上で「自社が他社からどう見られているか」「他社にとって自社の強みはどこか」といった観点で考えると良いだろう。
利益率の観点
競合他社などを参考に、その事業が利益を生むものになるかどうかということを考慮していきたい。
いきなり大規模な利益を生むことが難しいのであれば、撤退ラインを設けながらのミニマムスタートを切り、徐々に軌道に載せていくことといった進め方そのものを考えると良い。
ステップ③事業構築
アイデアが集まったら実際に事業構築の段階に移る。
売れる仕組みや業務を標準化するための業務改善、事業リスクに対処するためのリスクマネジメントを行う。
事業構築において不安点が生じた場合は情報収集やアイデア創出の段階に立ち戻る必要がある。
ステップ④改善
事業構築が終わったら最終的に事業化を行う段階に進む。
事業化に進展があればユーザーの要望に応えられるような内容の改善を検討する。
事業には「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのサイクルがあることも重要である。
マーケットの調査・分析に使えるフレームワーク
マーケットの調査・分割に使えるフレームワークは次の5つである。
1つ目は「ポジショニングマップ」であり、意味の異なる2つの軸から4領域を形成し、自社・競合他社の商品・サービスを配置することで市場における商品の位置を確認する。
市場の全体像を把握できれば市場における自社商品のポジションが明確になり、くわえて空いているポジションに自社商品を配置できれば競合他社にはない強みをもった商品として他の商品との差別化を図れる。
軸として商品の仕様や機能を設定でき、ほかにも顧客ニーズやサービス利用の機会なども軸に使用できる。
競合との差別化を目的に、競争優位性のある商品の開発に効果を発揮する手法である。
また、2つ目は「VRIO分析」であり「経済価値(Value)」「希少性(Rality)」「模倣可能性(Imitability)」「組織(Organization)」の4つの指標から新規事業における商品の強みを理解することに役立つ。
経営資源を判断材料としてVRIO分析を行うことで、客観的に経営資源の強みを測定できる。
3つ目はPEST分析であり、「政治的要因(Politics)」「経済的要因(Economy)」社会的要因(Society)」「技術的要因(Technology)」の4つの要因からマクロ環境を分析する。
PEST分析では自社でコントロール不可能な外的要因に対し、どのような事業展開が可能かを検討する。
4つ目は「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」について客観的分析を行う3C分析だ。
3つのCについて分析することで、成功要因を発見できる。
このとき、自社と競合他社を正確な基準で比較するために、客観的視点を意識する必要がある。
最後に5つ目はSWOT分析であり、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの観点から自社のビジネス対象や市場全体において強み、機会、脅威にあたる要因を探る。
SWOT分析は業種を問わず幅広い分野に実用可能な手法である。
市場を取り巻く外的環境とサービスの品質や価格などの内部環境を客観的に分析できる。
アイデア創出に使えるフレームワーク
アイデア創出に使えるフレームワークには5つの手法がある。
1つ目はMVVと呼ばれ「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Values)」を明確に定義化し、共有することで新たなアイデア発掘を目指す。
バリューはビジョンの土台、そしてビジョンはミッションの土台になる性質をもつ。
つまり、ミッション達成のためのビジョンを設定し、ビジョン実現のための具体的価値基準としてバリューを定める必要がある。
新規事業立ち上げに関するプロジェクトがミッション・ビジョン・バリューの観点において方向性が一致していることを確認し、自社の求めるアイデアを思索する。
また、2つ目はオズボーンのチェックリストである。
オズボーンのチェックリストはアイデアを多角的に捉えるために「転用」「応用」「拡大」といった9項目に沿ってアイデアに潜在するいくつもの要素を割り出す方法だ。
オズボーンのチェックリストを用いることで多角的な視点からアイデアの本質を分析できる。
3つ目はオズボーンのチェックリストを改良したSCAMPERという手法である。
「代用可能性(Substitute)」「相乗効果の期待性(Combine)」「応用可能性(Adapt)」などの7つの問いに関してアイデアや発想を発展させる。
SCAMPER法を実践するためには質より量を重視して多くのアイデアを洗い出す過程が必要である。
また、7つの項目に沿って短時間でワークを行えば、強制的にアイデアを生み出すサイクルが発生し、スピーディーなアイデア創出が可能になる。
4つ目はブレインストーミングであり、もっとも広く浸透している知名度の高い手法である。
アイデアは1人よりも2人、2人よりももっと多くの人数で出し合ったほうが、よいものが発見される可能性が高まる。
実際にブレインストーミングを行う際には「他の人の意見を否定しない」など円滑にワークを進めるためのルールが設定される。
最後の5つ目はKJ法である。
KJ法ではポストイットなどにアイデアを書き出したあと、類似するアイデアで相関図をつくることでアイデア間の関係性を明確化し、グループ名や相関を文書化することで新たなアイデアを生み出す。
事業構築に使えるフレームワーク
事業構築に使えるフレームワークとして、次の5つが挙げられる。
1つ目はビジネスロードマップである。
ビジネスロードマップでは目標達成に必要な事項や目標達成までに予想される困難について時系列に沿って大まかに書き出す作業を行う。
ビジネスロードマップの作成によって目標達成までにいつなにをすればよいか、どのような困難が考えられどのような対処策が有効かなど、目標達成に至るまでの事業の全体像を掴める。
ビジネス構造を具体的に把握できるほか、実際のアクションについて視覚的に把握できる特徴がある。
ビジネスロードマップの時間軸や項目は企業の目的によって異なるが、未来から逆算し中間目標を掲げることも効果的である。
2つ目はバリューチェーン分析である。
事業活動によって生み出される価値を1つの流れとして捉えられる。
事業を「主活動」「支援活動」に分類し、どの工程において付加価値が生まれるかを検討する。
バリューチェーン分析により自社商品がいかなる過程でどのような価値創造に寄与しているか把握できる。
3つ目は4C分析である。
「費用(Cost)」「価値(Customer Value)」「利便性(Convenience)」「情報伝達(Communication)」の4つの観点から事業を分析し、ユーザーにとって受け入れやすい事業構築を図る。
4C分析を活用することで競合他社との差別化や顧客ニーズを掴んだ商品開発が可能になる。
4つ目は4P分析である。
4P分析では「商品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販売促進(Promotion)」の4要素について事業を分析する。
4P分析によって「何をいつどのようなかたちで販売するか」が明確になる。
4P分析を成功させるためには4つの要素の整合性を意識することが重要である。
最後に5つ目は5フォース(ファイブフォース)である。
5フォースは競合他社や業界全体の背景・全容を把握する過程において、自社の収益性を上げるための施策を検討する方法である。
5フォースでは「業界内の競合」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」の5つの項目に関して検討し、自社商品が収益面において優位性を維持できるかを検討する。
改善に使えるフレームワーク
新規事業の改善に使えるフレームワークは、次の3つである。
1つ目はPLCサイクルだ。
PLCサイクルは今後の市場を予測するうえで分析参考を作成するために活用される。
「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのフローに分けてそれぞれのフローで何が起こったかを可視化する。
発生した事象を把握したうえで、どのような施策が解決策として有効にはたらいたか、どのような経緯で衰退期に遷移したかなど、フローごとに相関を割り出す。
2つ目はECRSである。
ECRSは「排除(Eliminate)」「分離と結合(Combine)」「入れ替えと代替(Rearrenge)」「簡素化(Simplify)」の頭文字を取った言葉で、事業における状況をこれら4つの項目にあてはめることで、現状把握できる課題に対する解決策を検討する方法だ。
最後に3つ目はPDCAサイクルである。
「計画(Plan)」「実行(Do)」「測定・評価(Check)」「対策・改善(Action)」の順序で課題に対する解決策を導く手法だ。
継続的な活用が前提であるため「Action」から「Plan」に立ち戻る過程も重要である。
新規事業にフレームワークの視点を
新規事業の立ち上げには数多くのアイデアをもとに事業内容の軸を定め、プロジェクト全体を通して一貫した目標に向かって事業内容を検討する必要がある。
根底にある主軸を忘れずに思い描く「あるべき姿」を実現するためには、適切な方法を用いてアイデアや考えをしっかりと整理しながら精密な事業設計を行い、ユーザーが必要とする商品・サービスの開発に努めることが重要である。
また、新規事業の立ちあげの際には「アイデア創出」「マーケットの調査」「事業内容の改善」などのそれぞれの過程に即したフレームワークの活用が重要だ。
フレームワークの概要・特性を正しく理解し、必要な場面で適切な手法を使い分けよう。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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