Finch
経営や新規事業・商品開発に
役立つ情報を配信するWEBマガジン
Powered by Finch Japan
無料資料 新規事業・商品開発のノウハウ資料

ナレッジマネジメントにおける社内情報管理とは?属人化を防ぎ、情報資産を活用する実践ガイド

                   
事業開発
公開日:2025.06.03更新日:2025年6月3日

はじめに:情報をいかに「経営資源」として活かすか

「ナレッジマネジメント」や「情報資産の活用」と聞くと、少し抽象的な印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、企業にとってナレッジ(知識やノウハウ)は、ヒト・モノ・カネに続く第4の資産とも言える重要な経営資源です。

特に昨今では、働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、「情報が人にひもづきすぎていて引き継ぎがうまくいかない」「同じ失敗を何度も繰り返してしまう」といった属人化の課題に悩む企業が少なくありません。

本記事では、ナレッジマネジメントの基本的な考え方から、情報資産としての社内ナレッジをどのように管理・活用すべきか、実践的なアプローチをご紹介します。経営層の方から現場で情報整理に取り組む方まで、誰もが明日から取り組めるヒントが見つかるはずです。

ナレッジマネジメントと社内情報管理の関係とは

ナレッジマネジメントとは、社員一人ひとりが持つ知識や経験(=ナレッジ)を、組織全体で蓄積・共有・活用し、企業活動の生産性や創造性を高める取り組みのことを指します。

一方で、社内情報管理とは、業務上の文書・マニュアル・データといった情報を、適切に整理・保存・共有するプロセスを指します。両者は一見異なる取り組みに見えますが、実は密接な関係があります。

ナレッジが「人にひもづく知識」だとすれば、それを「活用可能な情報資産」に変えるには、情報管理の視点が欠かせません。たとえば、ベテラン社員の成功事例やトラブル対応の経験談も、記録されなければただの「記憶」で終わってしまいます。しかし、共有しやすい形に落とし込めば、それは次の誰かにとっての「資産」になります。

ナレッジマネジメントを成功させるためには、属人化した知識を社内全体で再利用可能な形にし、業務の中で自然に活用されるようにする──この情報管理の仕組みが基盤となるのです。

ナレッジを「使える形」で管理するための基本原則

ナレッジを組織全体の財産として活かすには、単に「蓄積する」だけでは不十分です。誰もが必要なときに、迷わずアクセスでき、安心して活用できる──そうした「使える状態」に整えることが、ナレッジマネジメントの出発点です。

ここでは、属人化を防ぎながらナレッジを効果的に管理するために、特に大切な3つの原則をご紹介します。

① 情報を一元管理する仕組みをつくる

ナレッジが社内のあちこちに散らばっていては、どれだけ良質な情報であっても意味をなしません。「誰が、どこに、何を持っているのか」をチームや組織で把握できるように、ナレッジの集約場所を明確にしておきましょう。

たとえば、NotionやConfluenceといったナレッジ管理ツールを導入し、「マニュアル」「FAQ」「プロジェクト事例」などのカテゴリごとに構造化された情報をまとめておくことで、探しやすさと整合性がぐっと高まります。

② 暗黙知を形式知に変換するプロセスを設計する

現場の知恵や判断のコツは、多くの場合「言語化されていない知識=暗黙知」として存在しています。これを、文章や図解などの「形式知」に変えることで、他の社員も理解し再現できるようになります。

たとえば、定例会やプロジェクト振り返りの場で「成功の背景」や「工夫したポイント」を発言ベースで引き出し、それを担当者が記録・整理してナレッジベースに反映させるといった手法が有効です。

③ 定期的なレビューとメンテナンス体制を持つ

情報は、一度整えれば終わりではありません。制度や担当者、ツールの変更に伴って、ナレッジも陳腐化していきます。

そのため、定期的に情報の更新状況を確認し、不要なコンテンツは削除する、古い内容は改訂する、といったメンテナンスサイクルを仕組みとして組み込むことが重要です。

このように、「誰でも見つけられる」「誰でも活用できる」「常に最新の状態である」という3つの要件を満たすことで、ナレッジは初めて「活きた情報資産」として機能しはじめます。

ナレッジマネジメントの導入手順と社内定着の工夫

ナレッジマネジメントの重要性は理解していても、「実際にどうやって始めればいいのか」「ツールを入れても浸透しなかった」という声は少なくありません。

ここでは、社内にナレッジマネジメントを導入し、形骸化させずに根づかせるためのステップと、現場でよくあるつまずきポイントへの工夫をご紹介します。

ステップ1:まずは「目的」を明確にする:

ナレッジマネジメントの導入において、最も大切なのは「何のためにやるのか」を明確にすることです。

たとえば「属人化を防ぎたい」「新人の立ち上がりを早めたい」「問い合わせ対応を効率化したい」といった現実的な課題を整理しておくと、関係者の理解も得やすく、施策の方向性がぶれにくくなります。

ステップ2:小さく始めて、小さな成功体験をつくる

ナレッジマネジメントは、全社一斉導入よりも「スモールスタート」がおすすめです。たとえば、ある部署だけでまず使ってみて、「FAQが整備されたことで問い合わせが減った」「マニュアルがあって新人が早く戦力化できた」などの具体的な成果を出すことができれば、社内での共感と信頼が生まれます。

この「成功体験」を横展開することで、自然な広がりと社内浸透を図ることができます。

ステップ3:投稿・共有を「日常の行動」にする仕掛けをつくる

ナレッジを貯める場所があっても、誰も投稿しなければ意味がありません。そこで重要になるのが、投稿や活用を自然な行動にする仕組みづくりです。

たとえば、

  • 月例会議で「今月のナレッジ投稿ランキング」を紹介
  • ナレッジ共有をした人に社内ポイントを付与
  • Slack連携などで投稿・検索が「ワンクリック」で完結する導線を設ける

といったように、業務フローの中にうまく組み込むと、無理なく運用が続けられます。

ステップ4:定期的に振り返り、改善を重ねる

一度仕組みを整えたら終わり、ではありません。実際に使ってみて「使いづらい」「誰も見ていない」といった声があれば、それは改善のチャンスです。

アンケートを取ったり、各部署の活用事例をヒアリングして反映したりと、少しずつ調整を加えることで、組織の「ナレッジ文化」は育っていきます。

ナレッジマネジメントは、単なるIT施策ではなく「人と組織の学びを支える仕組み」です。だからこそ、業務の一部として自然に定着させる視点が欠かせません。

次章では、そうして整備されたナレッジを「情報資産」としてどのように活用していくか、活用シーン別に具体的にご紹介します。

情報資産としてのナレッジを活用するには

ナレッジを「整理して蓄積する」だけで満足してしまっては、本当の価値は引き出せません。大切なのは、蓄積されたナレッジを「情報資産」として業務に活かし、組織全体の成果につなげていくことです。

ここでは、ナレッジ活用の代表的なシーンと、それによって得られる具体的なメリットを見ていきましょう。

1.業務効率の向上とミスの再発防止

過去のトラブル対応や業務改善の記録がナレッジとして残っていれば、同じ課題に直面した際、ゼロからの調査や試行錯誤を省くことができます。

たとえば、「前回の類似案件で使った資料はここにある」「この仕様変更では〇〇に注意が必要」といった情報がすぐに参照できれば、手戻りやミスの防止につながり、時間の節約にもなります。

2.顧客対応力・提案力の強化

営業やカスタマーサポートの現場では、「誰がどんな提案をして成功したのか」「よくある問い合わせにどう対応しているか」といったナレッジをチームで共有することが、対応品質の向上に直結します。

とくにBtoBの提案型営業では、過去の事例や競合比較の情報がすぐに引き出せる状態は、商談のスピードと説得力を高める武器になります。

3.人材育成・オンボーディングの効率化

ナレッジが整っている組織では、若手や中途入社社員が「先輩に毎回聞かなくても、自分で学べる」環境が整います。

教育コストの削減だけでなく、新人が短期間で戦力化しやすくなるため、組織全体の成長スピードにも好影響を与えます。

4.意思決定の質とスピードの向上

ナレッジは現場だけでなく、経営判断の場面でも重要な情報資産になります。たとえば「過去に似た施策を行った際の効果」「複数部署から上がった課題の傾向」などを踏まえて意思決定できれば、精度も納得感も高まります。

情報に基づいた判断は、組織における「後戻りの少ない意思決定」を可能にします。

このように、ナレッジを活用することで得られる価値は、業務の現場から経営層まで幅広く存在しています。つまり、「情報を整理する」こと自体が目的ではなく、その先にある「成果に結びつく使い方」が、ナレッジマネジメントの真のゴールなのです。

活用を促進する仕組みとKPI設計

ナレッジを組織の情報資産として活かすには、「ナレッジを共有することが当たり前の文化になる」ような仕組みづくりが不可欠です。そして、取り組みが形骸化しないよう、客観的に効果を測るKPI(指標)の設計も重要になります。

この章では、ナレッジ活用を日常業務に根づかせるための具体策と、効果測定のポイントをご紹介します。

1.「行動」が自然に生まれる仕組みを設計する

ナレッジ活用を定着させるためには、個人の善意に頼るのではなく、自然と行動につながるような仕掛けがあると効果的です。

たとえば:

  • 社内ポータルやチャットに「おすすめナレッジ」「最新更新」を自動表示
  • ナレッジ投稿者や活用者に対して社内表彰やポイント制度を導入
  • 会議や朝会で「今週の共有ナレッジ」を紹介

といった工夫を通じて、「見る・書く・使う」が日常の延長線にある状態を目指します。

2.KPIで「使われているか」を可視化する

ナレッジマネジメントの効果を測るには、以下のようなKPIを設けておくと、運用状況や改善ポイントが見えやすくなります。

  • ナレッジの投稿数・更新頻度
  • ナレッジの閲覧数(部署別・テーマ別など)
  • 活用例の数(FAQ引用、資料再利用、提案反映 など)
  • 関連業務の効率化指標(問い合わせ数減少、教育期間短縮など)

定量データに加えて、定性フィードバック(「役に立った」「探しやすかった」など)も定期的に集めることで、ナレッジの質と運用の改善に活かすことができます。

3.トップダウンと現場主導を「両輪」で動かす

ナレッジ活用を組織文化として定着させるには、経営層の後押しと、現場の自走の両方が必要です。

経営層には「組織の競争力を高める戦略」としての意義を伝え、リーダー層には「日々の業務改善につながる実用性」を意識してもらうことで、全社的な動きとして広がりやすくなります。

また、部署ごとに「ナレッジリーダー」を任命し、小さな成功事例を社内に発信していくことで、「やってみよう」「続けよう」という空気をつくることができます。

ナレッジマネジメントは、一気に仕上げるものではなく、日々の試行錯誤の積み重ねで育てていくものです。効果を「見える化」し、小さな改善を続けながら、無理のない形で社内に根づかせていきましょう。

情報資産の活用を支えるツールと活用術

ナレッジマネジメントを組織で実践するうえで、「情報をどこに、どうやって蓄積し、活用していくか」は非常に重要なポイントです。ツール選定はその基盤を支えるものであり、運用設計次第で効果に大きな差が生まれます。

ここでは、ナレッジ管理を支える代表的なツールと、それぞれを「活用できる」状態にするための工夫をご紹介します。

1.ツールは「目的」によって選ぶ

ナレッジ管理ツールは多種多様ですが、選定時には「自社で実現したいことは何か?」を明確にしておくことが大切です。

目的別の例:

  • 情報を一元管理したい → Notion、Confluence、Qast
  • 社員間の投稿・共有を促したい → Kibela、Scrapbox
  • 顧客対応やFAQに活用したい → Zendesk、Freshdesk
  • プロジェクトナレッジや進捗を管理したい → esa.io、Docbase

必ずしも高機能なツールが正解ではありません。「誰が、どのように使うか」という利用シーンを想定し、自社の文化やITリテラシーに合ったものを選びましょう。

2.「使いやすさ」と「探しやすさ」は両立させる

ナレッジ管理の成功において意外と盲点になりがちなのが、「入力しやすさ」と「検索しやすさ」のバランスです。

入力ハードルが高いと投稿が続きませんし、構造が複雑すぎると検索に時間がかかります。以下のような工夫で、両立を目指しましょう:

  • 投稿時にタグやカテゴリを必須にする
  • テンプレート化してフォーマットを統一する
  • 見出し・箇条書き・図解を活用し、読みやすさを重視する
  • 検索バーや絞り込み機能を活用して「引き出しやすさ」を担保する

ツールは「導入して終わり」ではない

ナレッジツールは、導入後の「運用ルール設計」と「周囲の巻き込み」が成否を分けます。

たとえば:

  • 誰が更新するか(オーナー設定)
  • 投稿/更新の頻度はどのくらいか(週間?月間?)
  • 投稿内容の質や形式に関するガイドラインはあるか
  • 現場からのフィードバックをどう受け止めて改善するか

このような観点をあらかじめ整理しておくことで、ツールが「使われる資産」として組織に根づいていきます。

ナレッジ管理ツールは、情報を「眠らせない」ための強力な味方です。ただし、真の価値を発揮するのは、使い手と運用設計がしっかりしているときだけ。ツールに頼るのではなく、「ツールを活かす」意識を持つことが、成功の鍵となります。

まとめ: 情報を「価値ある資産」に変えるには

ここまで、ナレッジマネジメントと社内情報管理の関係性、属人化のリスク、そしてナレッジを情報資産として活用するための考え方と実践法についてお伝えしてきました。

ポイントは、「ナレッジを残すこと」自体が目的ではなく、それを誰もが使える形で整理し、組織の成果につなげること。そのためには、情報を「探せる・読める・使える」状態に保ち、現場の行動と意思決定に活かす仕組みをつくることが欠かせません。

本記事でご紹介した実践ポイントを振り返ると──

  • 情報の一元管理と構造化
  • 暗黙知の形式知化と再利用設計
  • 継続的な更新・メンテナンス体制の構築
  • 活用行動を生む仕掛けづくりとKPI設計
  • 自社に合ったツールと運用ルールの整備

こうした取り組みを地道に積み重ねていくことで、ナレッジは単なる個人の知識から、組織全体の競争力へと姿を変えていきます。

まずは、社内に眠る「誰かの知恵」や「過去の成功・失敗」の価値を再発見することから始めてみてください。そして、それを「資産」として育てていく意識があれば、ナレッジマネジメントはきっと自社の未来を支える力になります。

フィンチジャパンからのご提案|イネーブルメントの構築・定着を現場とともに

私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

「イネーブルメントを取り入れたいが、自社に合ったやり方がわからない」「仕組み化したいが、属人化した知見の整理に手間取っている」といった課題をお持ちではないでしょうか?

特に、部門ごとに文化やプロセスが異なる大企業や、変革期にある中堅企業では、「育成の仕組み」を全社的に整えることは簡単ではありません。私たちは、そうした状況にある企業と数多く向き合い、伴走してきました。

私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。

  • 化粧品メーカーI社:ブランドマネジャー制度の設計・定着(約8ヶ月)
  • 製薬メーカーP社:新商品開発プロセス改革(約1年)
  • ITサービスK社:事業投資のゲートマネジメント構築(2年)
  • エネルギー企業O社:DX改革(約3年)
  • 食品メーカーX社:カテゴリーマネジメント体制の定着(2年)

イネーブルメントの導入には、現場の理解と納得を得る「プロセス設計」と、それを回す「仕組みの内製化」が不可欠です。私たちは、戦略設計から仕組みの定着まで一貫して支援可能です。ご興味がある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

新規事業・商品開発に関する無料資料
  • 新規事業の事業計画書サンプル
  • 新規事業を成功させる22のステップ
  • 新規事業・商品開発
    コンサルティングの成功事例
  • など
新規事業・商品開発に関するノウハウや事例などをまとめた資料をダウンロードできます。
資料ダウンロード(無料)はこちら
こんな記事が読みたい!
FINCHへのリクエスト
経営や事業について相談したい!
FINCHJAPANへ無料相談

この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

オススメの記事

最先端 業界インタビュー
  • 新規事業の事業計画書サンプル
  • 新規事業を成功させる
    22のステップ
  • 商品開発の成功事例
  • 新規事業の事業拡大成功事例
こんな記事が読みたい!
FINCHへのリクエスト
経営や事業について相談したい!
FINCHJAPANへ
無料相談
人気記事ランキング
Finch
Powered by Finch Japan
新規事業・商品開発のノウハウ資料