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ホラクラシーとは?ティール組織との違い・導入メリット・事例を実務目線で解説

                   
プロセス
公開日:2019.07.25更新日:2025年6月24日

近年、従来のヒエラルキー型組織に代わる新たな組織モデルとして、「自律性」や「柔軟性」を重視したアプローチが注目されています。中でも、注目度が高まっているのがホラクラシー(Holacracy)です。
役職や上下関係ではなく、役割ベースで意思決定を進めるこの仕組みは、変化の激しいビジネス環境において、迅速な対応力と個人の主体性を両立できる手法として関心を集めています。

本記事では、ホラクラシーの基本的な考え方をはじめ、ティール組織との違い導入によるメリット・デメリット実践時のポイントについて、国内外の導入事例も交えながら、実務で役立つ視点で解説します。

ホラクラシー組織とは?基本概念とティール組織との違い

ホラクラシー(Holacracy)とは、従来の上下関係を前提としたヒエラルキー型組織とは異なり、権限や意思決定を役割(ロール)単位に分散させる、自律分散型の組織運営モデルです。組織全体は「サークル」と呼ばれるチーム単位に分かれ、各メンバーは一人で複数の役割を担うこともあります。

特徴的なのは、階層的なマネジメント層が存在せず、現場のロールに裁量を持たせることで、意思決定のスピードと柔軟性を高めている点です。こうしたアプローチにより、変化の多い環境でも素早く対応できる組織づくりが可能になります。

この概念は、アメリカの起業家ブライアン・ロバートソン(Brian Robertson)氏によって提唱され、彼が定めた「ホラクラシー憲法(Holacracy Constitution)」に基づいて制度的に運用されます。

語源となっている「ホロン(holon)」とは、「個であり全体でもある存在」を意味する哲学用語で、ホラクラシー組織が持つ自己組織化(self-organization)思想を象徴しています。

ティール組織・ヒエラルキー型組織との違い

ホラクラシーは、しばしば「ティール組織」と比較されます。両者ともに管理職や指揮命令系統に依存しない自律型組織ですが、重視しているものが異なります。

  • ティール組織は、「個人の内発的動機」や「進化する目的(エボリューショナリーパーパス)」といった”人のあり方”に軸を置く、価値観ドリブンのアプローチです。
  • 一方、ホラクラシーは「役割とルールの明確化」や「プロセスの透明性」に重きを置いた制度・仕組みドリブンのモデルであり、ホラクラシー憲法に則った運営が特徴です。

また、ティール組織は組織文化の成熟度や精神的安全性の高さが求められる一方、ホラクラシーは比較的制度設計から入ることが可能であるため、導入のアプローチも異なります。

このように、ヒエラルキー型組織が「指示・命令による統制」を軸とするのに対し、ホラクラシーとティールは「自律的な判断と責任の共有」を前提としており、それぞれの違いや適性を理解したうえでの導入判断が重要です。

ホラクラシーのメリットと活用シーン

自律性とスピード感:現場主導の迅速な意思決定

ホラクラシーでは、意思決定権が管理職ではなく、各チームや個人の「ロール(役割)」に分散されているため、現場が主体的に判断を下せるのが特徴です。
この構造により、上長の承認を待たずにアクションを起こすことができ、変化の激しい市場や業務環境においても、スピーディかつ柔軟な対応が可能になります。

特に、顧客対応やプロダクト開発など、リアルタイムな判断が求められる現場では大きな効果を発揮します。

多様な働き方と高い柔軟性の実現

ホラクラシー組織では、役割ベースの働き方を採用しているため、勤務時間や場所の自由度が高く、個々の裁量で働き方を設計できます。
また、副業・複業・起業支援などを容認している企業も多く、個人のキャリア形成やワークライフバランスの実現を支援しやすい環境が整っています。

近年注目される「自律的キャリア」や「多様な生き方」にも親和性が高く、人材の定着やエンゲージメント向上にもつながります。

情報の透明性:属人化を防ぎ、再現性を高める

ホラクラシーでは、情報共有の透明性が組織運営の前提とされており、会議体や意思決定プロセスもオープンに管理されます。
これにより、特定の個人に依存した「属人化」や、経験や感覚に頼る「暗黙知」の運用が排除され、組織全体の再現性や効率性が向上します。

情報が可視化されることで、ナレッジの蓄積や引き継ぎもスムーズに進み、結果として組織の持続的な成長を支える基盤となります。

こうしたメリットを最大限に活かすためには、自社の文化や業務特性に合わせて、ホラクラシーの仕組みをどう適用するかが重要なカギとなります。

ホラクラシーのデメリットと導入時の注意点

ホラクラシーは自律性や柔軟性を高める組織モデルとして注目されていますが、導入・運用には慎重な設計と継続的な見直しが欠かせません。制度面の整備が不十分なまま運用を始めると、かえって組織の混乱や非効率を招く恐れもあります。以下では、実務上よく指摘される課題とその対策について解説します。

統率力の欠如と責任の所在の曖昧さ

ホラクラシーは上司・部下という明確な指揮命令関係が存在しないため、緊急時の意思統一や迅速な意思決定が難しくなるリスクがあります。
また、メンバーが複数のロールを兼任している場合、「誰が何に責任を持つのか」が曖昧になりやすいのも課題です。

このため導入時には、各ロールの責任範囲と意思決定権限を明確に定義し、ドキュメントとして可視化しておくことが重要です。
特に、クロスファンクショナルなチームが多い企業では、ロール設計の精度が運用の成否を左右します

情報公開に伴うセキュリティリスク

ホラクラシーの基本原則として、組織内の情報は原則オープンに共有されることが求められます。
これにより、属人性の排除や透明性の向上といった利点がある一方で、機密情報の取り扱いには慎重さが求められます

たとえば、社内の全メンバーが意思決定に関わる情報にアクセスできることで、外部への情報漏洩リスクや誤用の可能性が高まるケースもあります。
このため、情報管理ポリシーの明文化と、情報レベルに応じたアクセス制限の設計・運用が不可欠です。

判断のばらつきと意思決定の質の低下

意思決定が個人やチーム単位で行われるホラクラシーでは、判断基準の統一が難しく、方針のばらつきが生まれやすいという課題があります。
特に導入初期など制度や文化がまだ成熟していない段階では、全体方針とのズレや衝突が発生しやすくなります。

これを防ぐためには、意思決定のルールや優先順位の明確化定期的な振り返り(リフレクション)や共有の場の設置によって、判断の質を一定に保つ仕組みづくりが求められます。

向き不向きがある:人材タイプの偏り

ホラクラシーでは、高いセルフマネジメント力や自律的な思考・行動が求められるため、すべての人材がフィットするわけではありません。
「指示を受けて動く」スタイルに慣れた人にとっては、不安感やパフォーマンスの低下を招くことがあります。

そのため、導入前には人材の適性評価やスキルセットの棚卸しを行い、必要に応じて段階的な導入プロセスやトレーニング機会を設けることが望ましいでしょう。

このように、ホラクラシーの導入には魅力と同時に乗り越えるべき課題も多く存在します。成功させるには、制度だけでなく、人・文化・運用設計の三位一体のアプローチが不可欠です。

ホラクラシーの導入ポイントと成功条件

スモールスタートと制度設計の工夫

ホラクラシーは全社一斉導入ではなく、まずは一部の部門やプロジェクト単位で試験導入することが推奨されています。実務の中で仕組みを検証しながら、組織に合った形で徐々に制度設計を進めていくことが重要です。特に、役割(ロール)の設計や意思決定のルールは、業務特性に応じてカスタマイズしていく必要があります。

セルフマネジメントできる人材の採用と育成がカギ
ホラクラシーは制度以上に“人”が成功の決め手になります。自律的に動ける人材、目的志向が強い人材をいかに確保・育成するかが、導入成功の成否を分けます。採用時点から適性を見極め、社内でも段階的に自己管理力を育てる支援が不可欠です。

組織文化との適合度チェック

従来の管理型文化から大きく転換する場合、価値観の衝突や不安が生じることがあります。導入前に、現状の文化や組織課題を整理し、ホラクラシーが“解決策になりうるか”を見極めることが求められます。制度だけを上から導入しても根づかず、最終的に反発や形骸化を招くリスクがあるため、移行の段階設計が重要です。

ホラクラシー導入企業の事例

ザッポス社の挑戦と課題

米国の大手オンライン靴販売企業ザッポス(Zappos)は、ホラクラシーをいち早く全社導入した代表的な事例として知られています。
2014年、同社はマネージャー職を廃止し、全社員が役割ベースで自律的に業務を遂行する体制へと大胆に移行しました。

この取り組みにより、創造性やオーナーシップの促進階層にとらわれないフラットなコミュニケーションが進み、一定の効果を上げた一方で、さまざまな課題も浮き彫りとなりました。

特に、

  • ホラクラシーに適応できない社員の離職
  • 情報共有・意思決定プロセスの複雑化
  • ガバナンス不全や責任の不明確化

といった問題が顕在化し、導入には綿密な移行プロセスと支援体制が不可欠であることが示されました。
この事例は、ホラクラシーの導入が単なる制度変更ではなく、組織文化・人材観・働き方全体に関わる変革であることを象徴しています

日本企業の実践例

日本でも、近年ホラクラシーを導入・応用する企業が徐々に増えています。たとえば、

  • アトラエ(ピープルアナリティクス事業など)
  • OKAN(福利厚生サービス)
  • ダイヤモンドメディア(不動産テック)

など、ベンチャーや新規事業領域を担う先進企業において導入が進められています。

これらの企業では、以下のような特徴を活かし、ホラクラシーのメリットを実務に取り込んでいます:

  • 変化の激しい事業環境に迅速対応
  • 少人数組織における意思決定の効率化
  • 組織の柔軟性と個人の裁量を両立

特に、新しい価値を生み出すプロジェクトが多い組織では、高い自律性とスピード感が求められるため、ホラクラシーの思想との相性が良いとされています。

まとめ:ホラクラシーはすべての企業に適しているのか?

ホラクラシーは、「自律性」「柔軟性」「透明性」といった、現代の組織運営における重要課題を解決する可能性を秘めた組織モデルです。
意思決定の分散や役割ベースの運用は、変化への迅速な対応や個人の主体性を引き出すうえで、一定の成果を上げています。

しかしながら、ホラクラシーの導入には、慎重な制度設計と、土台となる組織文化の整備が不可欠です。ティール組織をはじめとした他のフラット型モデルとの違いや特徴を正しく理解し、自社にとって最適な組織形態を見極めることが求められます。

ホラクラシーは“万能解”ではないが、有力な選択肢のひとつ

ホラクラシーは、すべての企業に適しているわけではありません。むしろ、特定の条件下でこそ効果を発揮するアプローチです。たとえば、

  • 新規事業開発
  • スタートアップやスモールチーム
  • 知識労働者が中心の組織

といった、変化対応力と創造性が求められる文脈では、高い親和性を示しています。

一方で、制度や人材、文化面の準備が不十分なまま導入を進めると、混乱やモチベーション低下を招くリスクもあります。
そのため、導入ありきではなく、「いま自社に必要な組織の在り方は何か?」という根本的な問いを立てることが重要です。

「強いトップダウン」か「自律性の解放」か──自社の経営課題に向き合う契機に

ホラクラシーを検討することは、単なる制度の見直しではなく、組織そのものの在り方を再考する絶好の機会でもあります。
今の自社にとって必要なのは、「統率力を高める強いトップダウン」なのか、それとも「個人の自律性を活かす分散型の意思決定」なのか。

その問いに向き合うことで、ホラクラシーは“流行”ではなく、自社の成長ステージや経営課題に合わせた一つの選択肢として、より現実的に評価されるはずです。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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