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エスノグラフィーを商品開発に利用するにあたって効果的な3つのポイント

新規事業・商品開発2018.12.10

エスノグラフィーを商品開発に利用するにあたって効果的な3つのポイント

商品開発で成功する上でユーザー調査は欠かせないものだ。ユーザー調査には「定量調査」と「定性調査」の2通りがある。

「定量調査」とは、ユーザーニーズを数字で検証する手法のことで、アンケートが代表的だ。

一方、「定性調査」とは数字だけで表せないユーザーニーズを把握するための調査のことで、グループインタビューやデプスインタビュー、エスノグラフィーがある。

本記事では、定性調査の使い分けについて解説すると共に、エスノグラフィーを商品開発に利用するにあたって効果的な3つのポイントについて説明しよう。

3つの定性調査手法のそれぞれの特徴

先程、「定性調査」とは数字だけで表せないユーザーニーズを把握するための調査のことだと説明した。

これは端的に言えば、定性調査とが「ユーザーから、話を聞いたり観察したりすることで、そのニーズを浮き彫りにすること」というふうに言い換えられる。

そこで、まず3つの代表的な定性調査の特徴とメリット・デメリットを比較しよう。

グループインタビュー(GI)

グループインタビュー(グルイン、GIとも略す)は、何人かのユーザーを集めて座談会形式で進める調査手法である。性別、年齢、消費行動など、一定の共通点を持ったグループを対象として、モデレーターと呼ばれる司会者がインタビューを行うのが一般的だ。

メリット

グループインタビューのメリットは、共通の話題があることで被験者同士の相互作用が働き、参加者同士の意見交換が活発になることだ。
「相互作用」というと難しく感じるが、つまり次のようなことが起こる。

モデレーター「洗剤を使っていて、特に困ったことはありますか?」
ユーザーA「油がちゃんと落ちてるのか神経質に何度も洗っちゃうんですよ」
ユーザーB「あー! わかる! 私もよくこうやって(皿をこするような仕草)」
ユーザーC「そうそう。私もお皿がキュキュッとなるまでやっちゃいますね」

つまり、参加者の思っていることや考えていることを引き出しやすくなることや、実際に参加者のやり取りや雰囲気を観察して、言葉以外の気づきを得やすいことなどがある。

また、複数人へのヒアリングを同時に行うことになるので、定性調査の中でも、全体的にかける時間や費用は比較的短く済むというメリットもある。

デメリット

デメリットとしては、次の3つが挙げられる。

  1. モデレーター(司会)の技術によって成果が大きく変わる
  2. 一人ひとりの思い・考えを深掘りして聞くわけではないので、深層的なニーズを探るのは難しい
  3. 大勢の前で話すことになるので、プライバシーに関わる人に言いにくい話題が主テーマであると、成果が出にくい可能性がある

こうしたユーザーの深層心理や、消費者がすぐに言葉にできないインサイトを探りたいときは、デプスインタビューやエスノグラフィーによる調査を検討する必要がある。

デプスインタビュー

デプスインタビューは一人ひとりの調査対象者に対して、一対一の対話形式で掘り下げながらニーズを探っていく調査手法だ。

メリット

インタビュアーが被験者と信頼関係を築き、リラックスした雰囲気の中で聞き役に徹することで、グループインタビューよりもユーザーの深層心理や当初言葉にできなかったニーズを深掘りすることでき、言いにくいような真のニーズや、本人も自覚していないインサイトにたどり着きやすいというメリットがある。

デメリット

一方、デメリットとしては、大きく2つ存在する

  1. グループインタビューと同様にモデレーターの技術によって、得られる成果に大きな違いができる
  2. 対話形式のため当初立てた仮説通りの方向で調査が進むとは限らない可能性がある

また、統計的な検証をおこなうことが目的ではないため、多くのインタビューを実施したい場合には、コストが見合わないといったこともデメリットになるだろう。

エスノグラフィー

エスノグラフィーとは、調査者が調査対象者の生活の場や実際に商品を使用している現場などに密着し、対象者のありのままの行動や態度、意見などを観察する手法である。

本来は、文化人類学において言語が通じない民族等を取材する際に用いられた手法であるが、それがビジネスの世界でも利用される様になったため、「ビジネス・エスノグラフィー」と呼ばれることもある。

調査手法として説明する時は、「行動観察」「行動観察調査」と呼ぶ。

メリット

エスノグラフィーの最大のメリットは、ユーザーの声なき声である消費者行動から、新しい発見ができることである。

商品開発をおこなう上で重要な情報の一つとして、ユーザーニーズであることに異論はないと思うが、その中でもより重要な情報は、「なぜ、ユーザーはその商品を欲するか?」という「何故」を理解するための情報である。

何故ならば、それがわかれば商品開発から、ユーザーにアピールする様々なマーケティングを一貫してデザインすることができるからだ。

自分ですら気づいていない消費者インサイトを探ることができる

氷山と同様に消費者インサイトはユーザーすらも知らない水面下に多く潜んでいる。特に、本音と建前が顕著な日本においては、用意された質問に回答するアンケートや対面式のインタビューでそこまでの深掘りを行うのは困難を極めるだろう。

ユーザー自身すら気づいていない消費者インサイトを発掘するためには、ユーザーの行動や態度を直接観察するエスノグラフィーが最も適しているのだ。

導入の容易さ

初期のエスノグラフィーでは、ヒアリングをせずとも行動観察と記述によって調査ができるため、ユーザーとの接点を事前に準備しなくても調査を進めることができる。

例えば、飲食店やモバイルショップなどのサービス業であれば、実際に店舗でユーザーと店員の行動を観察して記述すれば、それも調査と言えるだろう。

デメリット

効果的にエスノグラフィーを活用する上では、やはり事前の準備と、効果的な活用について理解しておいたほうがいい。こうした技術は、モデレーターの技術といささか異なるため、別のポイントの理解が必要な点がデメリットと言えるだろう。

エスノグラフィーの魅力

しかし、そのデメリットを補って余りある言語以外のニーズやインサイトを導きたいのであれば、エスノグラフィー調査はうってつけだ。

それでは、エスノグラフィーは実際にどのように行えば効果的なのか、事例を交えながら説明しよう。

エスノグラフィーを商品開発に利用するにあたって効果的な3つのポイント

ポイント1. ユーザーの「ありのまま」を観察する

エスノグラフィーの原則は、「ありのまま」を観察することである。

したがって、グループインタビューやデプスインタビューのように、調査実施者からユーザーへの積極的な働きかけはせずに、むしろ可能であれば、被験者の普段の利用実態や消費実態を観察できたほうがいいだろう。

例えば、家庭用の消臭剤を開発するために、エスノグラフィーを活用する場合には、被験者を訪問して普段の生活の中で、消臭剤を使っている状況を観察した方が多くのことを知ることができる。

調査を実施する側として、「何故、この様なシーンで使うのだろう?」「何故、こんな使い方をするのだろう?」と言った疑問が湧いてくる様な状況を観察することを目指すとよい。

事例:妖怪ウォッチ

行動観察をうまく取り入れている例は、枚挙にいとまがない。意外な例としては、大ヒットアニメである「妖怪ウォッチ」も活用している。

妖怪ウォッチはレベルファイブが提供する、低年齢層に爆発的な支持を誇る、超人気ゲームだが、その戦略は極めて意図的であり、ゲーム販売やテレビアニメ、漫画の連載まで、売れるための仕組みが様々な箇所に仕掛けられている。また子供達だけではなく、保護者層にも支持されているのも特徴の一つであろう。

これらの戦略の源泉の主軸となっているのが、 レベルファイブ内で行われているママさんライターたちによる子どもたちのありのままの行動を観察したエスノグラフィー調査だ。

ごく普通のこどもを主人公にした徹底した日常感にこだわるレベルファイブでは、子ども達を母親視線で行動観察した結果を社内会議で集約し、それを商品に反映することで、こどもの世界の「あるある」を表現するだけでなく、保護者と子どものコミュニケーションまでも実現させているのだ。

出典:半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

ポイント2. 調査対象の選択

行動のありのままを観察することが効果的であると述べたが、その対象も重要である。

妖怪ウォッチのように、メインターゲット層である子どもと、そのサブターゲットである保護者を観察するのは、ターゲット層の深層心理や消費者インサイトを探る上で最も効率的な方法の一つと言えるだろう。

しかし、エスノグラフィーにおける主たる目的は深層ニーズである消費者インサイトをつかむことである。そのため、新たな視点を取り入れることもまた重要だ。

新たな視点を取り入れるには、妖怪ウォッチのようにメインターゲット内における一般的な考えを持ったユーザーではなく、極端な考え方や環境を持つ「エクストリームユーザー」を調査対象にする方法もある。

エクストリームユーザーは、「ヘビーユーザー」とは異なる。エクストリームユーザーは既存商品を、メーカーが全く想定しない使い方をしているような「極端なユーザー」のことを指す。彼ら・彼女らは定量調査や他の定性調査では、軒並みレアケースとして取り扱われてしまう。

しかし、エスノグラフィー調査では、エクストリームユーザーこそ重要な意味を持つ。

事例2:花王のアンチエイジング

ここで花王が半年間かけて行ったエスノグラフィー調査について見てみよう。

ユーザーがアンチエイジングに取り組む理由を探るために、花王がこの調査で対象としたのは、白髪染めの使用をやめた40代の女性を含むアンチエイジングに対してマイナスな感情をもつエクストリームユーザー達だ。

花王は調査結果を社内のグループディスカッションを通じて徹底的に分析し、ユーザーがエイジングを行う理由を下記のように捉えた。

「エイジングとはアイデンティティの変化に対する機制(リアクション)である」

花王は、アンチエイジングを環境変化や病気などのイベントが引き金で自身に変化が訪れた際、それに向き合う意味で発生するものと結論づけた。それは、従来の加齢対策的なアンチエイジング商品ではなく、イベント毎に発生する環境変化に対する支援をメインコンセプトとするアンチエイジング商品へと花王が方向転換するきっかけとなったという意味で重要な意味を持ったのである。

出典:日経xTECH 消費者調査にエスノグラフィー手法を導入

ポイント3.調査結果をどう分析するか

どんな調査でも、その分析が重要になってくるが、ユーザーが明確な回答をしないエスノグラフィーではよりその重要性が増す。

実際にレベルファイブの事例でも花王の事例でも、集めた調査結果をデブリーフィングと呼ばれる結果の棚卸しと気づきを引き出すワークショップを繰り返しおこない、「どういうニーズから来る行動なのか。」を整理していく。最終的には商品開発だけでなくマーケティング活動でも利用できる形にまで落とし込んでいく。

それでは、実際にどのように分析すればいいのか、吉野家の「吉吞み」の分析を例にしてみてみよう。

事例:「吉呑み」

「家飲み」が流行り、苦境に陥ってる居酒屋業界を背景に、吉野家が「吉吞み」を始めたが、その試みが成功するどうかユーザーの視点から、ニーズを把握するために調査すべく、吉野家の実験店に直接足を運んだ事例だ。

実際の店舗内はまだ実験店であったため簡素ではあったが、店内は程なく満席となり和気あいあいとアルコールを飲むユーザーの姿が多く見られ、以下のような観察結果を得た。

  1. 22時30分で閉店(When)
  2. “家飲み”のような気安い雰囲気(Where)
  3. 20歳代中心の仕事帰りのお客(Who)
  4. 高価な食事よりも手頃な食事(What)
  5. たくさん飲むより楽しく飲む(How)

出典:半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

上記の客観的な観察結果から得た分析は、「家呑みが流行り、居酒屋の需要が減ったが、それは単に節約的に家で呑みたいからというのではなく、家にいるような飾らない雰囲気且つリーズナブルな価格帯でリラックスして呑めるのであれば、家呑みのメリットを有しているのと同様なので、家で呑むことにこだわらないのではないか」ということである。

表面的なニーズから更に真意を組む

これは花王のアンチエイジングの調査と同様で、本質的な消費者インサイトがどこにあるかを分析したものである。

つまり、単に「節約したいから」「加齢対策したいから」といった表面的な消費者ニーズより一歩踏み込んだ内容になっている。

この本質的な分析結果を商品改善や新規商品開発に活かすことで、対象となった「吉吞み」よりもさらに効果的な商品改善や商品開発が可能になるだろう。分析時に最も重要なポイントは、当初想定していない因果関係に気づくことなのだ。

まとめ

エスノグラフィー調査は定性調査の一つで、ユーザーの行動を観察してその結果を元に行動の「なぜ」を見つける調査だ。
この調査を成功に導くポイントは、3つ。

  1. 調査実施者がいかに自然にユーザーに関与して、普段のユーザーのありのままの行動を観察できるかどうか
  2. ユーザー選定も重要で、テーマに応じて適した対象者を選ぶことができるかどうか
  3. 得られた観察結果から予想しなかった因果関係に気づき、消費者ニーズの本質がどこにあるのかつかむことができかどうか

今後、インバウンドの訪日外国人のニーズを把握したり、3500万人シニア時代の多様なライフスタイルを把握する上で、エスノグラフィーを活用した調査はますます大きな役割を担うと考えられる。ユーザーの声にならない声である消費者インサイトを知る上で、行動観察にフォーカスしたエスノグラフィーは有効な調査手法といえるだろう。

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