ビジネスモデル作りに使う3つのフレームワークとその使い分け

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新規事業を考えるときに「その事業のビジネスモデルは?」という質問を受けたことがないだろうか。
ビジネスモデルという言葉をよく知らないと、その質問に適切な回答をするのは意外と難しい。
- 「ピクト図解」
- 「9セルフレームワーク」
- 「ビジネスモデルキャンバス」
本記事では、ビジネスモデルを作るときに使えるフレームワークとして3つを取り上げ、その内容と使い分け方などを説明する。
その1:ピクト図解
ピクト図解はビジネスの仕組みを図で簡単に「見える化」するためのフレームワークだ。
ピクトとは、Pictograph(ピクトグラフ)の略で、一般的には絵文字や絵単語を指し、ビジネスモデルを絵文字などのサインを用いて表現する。ピクト図解ではビジネスモデルを「モノとカネの交換」ととらえて、「誰が」「誰に」「何を」「いくらで」渡すのかを図解する。
- 誰が(Who)
- 誰に(Whom)
- 何を(What)
- いくらで(How much)
この4つの要素の関係をシンボル記号で示すため、難解そうなビジネスでもその構造をシンプルに理解することができるため、儲けの仕組みを直感的に理解しやすい。
よく知られるピクト図解のルールには3つ記号がある。
- エレメント
- コネクタ
- オプション
それぞれの理解すれば誰でも書くことができるのが特徴だ。
1.エレメント
エレメントとは、ビジネスで欠かせない構成要素を指す記号だ。
1-1.プレーヤー
人や企業の記号。
人はトイレのようなマーク、企業は□で描くのが一般的だ。
1-2.モノ
プレーヤー間を往来する商品やサービスのこと。
シンプルに○や◇でわかりやすく表現する。
1-3.カネ
プレーヤー間を往来する価格や売上。
¥や$の記号で現すのが一般的だ。
2.コネクタ
コネクタは、モノとカネの流れを示す矢印記号のことを指す。それによってビジネスの関係性が表現される。
モノを販売する場合の流れでは矢印の先端が黒色で塗りつぶされる。逆に支払う場合のカネの流れでは矢印の先端は塗りつぶされない。
また、カネの流れの矢印には「インカムライン」と「アウトカムライン」の2つの呼称があり、事業主体の収入になるほうが「インカムライン」で、支出の場合は「アウトカムライン」となる。
3.オプション
オプションはピクト図を見やするための補助ツールで、記号には「まとめ(中カッコ)」「タイムライン」「補足(フキダシ)」の3つがある。
ピクト図解のまとめ
1人のプレーヤーに対して2つ以上のモノ・カネの流れが生じている場合に使用される記号で中カッコが使用される。
タイムライン
時間の流れを示す場合に使用する記号で、矢印とその横にTimeのTの字が記される。
補足
エレメントやコネクタなどに説明を加えたい場合での使用となる。
ピクト図解のメリットとデメリット
メリットは次のとおりだ。
- ビジネスの仕組みが図で表現でき視覚的に捉えられるので文章よりもまとめやすい
- 「誰が誰に何をいくらで売るか」の視点でビジネスをシンプルに表現できる。
- ビジネスの知識に左右されにくく使い勝手がよい
一方で、デメリットは次のようになる。
- ビジネスが複雑な場合はその内容が抽象的に感じられやすい。
- 利用経験のない人には図の説明が必要となる。
その2:9セルフレームワーク
続いて、9セルフレームを紹介しよう。
9セルフレームワークは、9個の質問に答えることでビジネスモデルを論理的に見える化・分解できるフレームワークだ。
9個の質問は3×3のマスから構成されており、縦にはビジネスの構成要素、横にはビジネスのコンセプトがとられる。
ビジネスの構成要素が3行。
- 顧客価値
- 利益
- プロセス
そして、コンセプトが3列となっている。
- who(誰に)
- what(何を)
- how(どのように)
9個の質問内容
(1)顧客価値の行
- Who:課題やニーズを持っている人は誰か。誰の命題を解くのか。
- What:解決方法として何を提供するか。
- How:どのように実現するのか。
(2)利益の行
- Who:誰から利益を得るのか。
- Who:何で利益を得るのか。
- How:どうやって利益を得るのか。
(3)プロセスの行
- Who:誰と組むのか。
- What:役割分担は何か。強みは何か。
- How:どの様な流れや手順で展開するのか。
9つの質問の答え方
まず、顧客価値に関する(1)の3つの質問に回答していく。
次に、前の段階で得られたビジネスの内容をもとに、利益の観点から(2)の3つの質問に答える。
最後に、(1) (2)の答えに対して、それらを実現する自社のプロセスを描くため(3)の3つの質問に回答する。
回答の順番
回答の順序としては、一般的には(1) (2)の顧客価値と利益はWho→What→Howの左から右の順で答える。
ただし、最後の(3)のプロセスは反対に、How→What→Whoの右から左の順で答えるのが定番となっている。
注意点は、9個のマス答えをバラバラに扱わず、一貫性のある1つのストーリーとしてまとめることである。
9セルフレームワークのメリットとデメリット
先程のピクト図解と同じく、メリットとデメリットをまとめておこう。
メリットは次のとおりだ。
- 9個の質問に答えるという受け身でも簡単にビジネスの仕組みが作れる
- 質問に答えた結果を評価し、ビジネスとしての有効性、不足点、実現性などがチェックできる
デメリットは以下のようになる。
- ビジネスの流れ(事業者→製品→顧客)がやや掴みにくい
- 質問に対する答えるだけの内容に止まり、異なる考えは出にくい
その3:ビジネスモデルキャンバス
そして、ビジネスモデルキャンバスを紹介しよう。
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの仕組みを重要な9つの要素で視覚化し、その要素がどのように関わりあってビジネスとして成立するかを描くツールである。
ビジネスの仕組みが簡潔かつ視覚化されるので、複雑そうに見えるビジネスでも容易に全体像を捉えることが可能だ。
漠然としたアイデアでも、ビジネスモデルキャンバスを利用し9つの要素で一つずつ埋めていくと、ビジネスとしての全体像が浮かび上がりビジネスモデルへと形成されていく。
既存のビジネスの場合でもこのツールに当てはめると、全体像が俯瞰でき改善の分析に利用できる。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素
1.顧客
生み出した価値を届ける対象。(個人、企業、ニッチ市場、マス市場など)
2.価値提案
顧客の問題を解決するもの。(利便性、価格、デザイン、ステータス、リスク低減など)
3.チャネル
顧客が要求する価値を届けるルート。(対面、訪問、店頭、テレビ、WEB、卸売、配送など)
4.顧客との関係
顧客との関係を構築・維持・発展するための取り組み。(個別対応、セルフサービスなど)
5.収入
顧客に価値を提供した際に受け取れるお金。(販売価格、広告収入、売り切り、レンタル、リース、仲介手数料など)
6.キーリソース
上記の要素を提供するために欠かせないリソース。(人、モノ、知的財産、資金など)
7.主要活動
提供する価値を創出する主な活動。(生産、販売、管理、サポートなど)
8.キーパートナー
自社だけで補えないリソースを提供してくれる協力者。(仕入先、ジョイントベンチャー、外注先など)
9.コスト
ビジネスモデルを運営していくためのコスト(リソースの調達や主要活動等にかかるコスト)。(原価、固定費、変動費など)
ビジネスモデルキャンバスのメリットとデメリット
メリットは以下の通りだ。
- 複数人でブレーンストーミングしながら作成が進められる。
- 海外の大手企業、行政機関や大学での利用実績があり信頼度が高い。
デメリットは次のようになる
- ビジネスの構成要素などの知識がないと扱いづらく、初心者には適さない。
- アイデアの創出に意欲的でないと汎用的なビジネスモデルに落ち着いてしまう。
3つのフレームワークの使い分け
ここまでビジネスモデルを描く上で便利な3つのフレームワークを紹介してきた。これから上記3つのフレームワークの使い分けを紹介しよう。
いずれか1つのフレームワークを選ぶ場合
1つのフレームワークを選ぶ場合は各フレームワークの特徴や利用者との相性に応じて選ぶ必要がある。
(1)ピクト図解が適している利用シーン
少ない記号でシンプルにビジネスを視覚化できるので、文章でその仕組みを説明・まとめるのが苦手な人やはじめての人に適している。
ビジネスの構成要素などを使ってビジネスの仕組みを考えた経験が少ない場合でも取り組みやすい。
(2)9セルフレームワークが適している利用シーン
図でビジネスを考えるのが苦手で、ビジネスの構成要素なども頭に浮かびにくい人は9セルフレームワークが適している。
このフレームワークは9個の質問に回答するだけでビジネスモデルをまとめられるので作図も必要なく、ビジネスの構成要素等に関する知識が少なくても利用しやすい。
(3)ビジネスモデルキャンバスが適している利用シーン
作図は苦手だがビジネスの構成要素についての一定の知識があり、意欲的にアイデアを出していきたい人などはビジネスモデルキャンバスが適している。
ピクト図解のように記号を使った表示などの視覚化はないが、1枚のキャンバスに重要なビジネスの構成要素をピクト図解などよりも詳細に文章で記述できる。
複数のフレームワークを選ぶ場合
3つのフレームワークの各々の長所・短所、利用者との相性などを考えた場合、複数のフレームワークを利用することも有効である。
例えば、ビジネスの仕組みを直感的に伝えたい部分にはピクト図解を利用し、ビジネスの具体的な仕組みについては、ビジネスモデルキャンバスを利用して別途詳細を伝えるという方法だ。
また、3つとも利用するという手もある。
例えば、最初にピクト図解でシンプルなビジネスモデルを考え、次に9セルフレームワークで一貫性のあるモデルへと具体化及び精査していく。そして、最後にビジネスモデルキャンバスで独自のアイデアをもとに各ビジネスの構成要素の内容を充実させまとめるという方法である。
まとめ:フレームワーク使用時の注意点
ビジネスモデルを考える場合、フレームワークとして3つが挙げられる。
- ピクト図解
- 9セルフレームワーク
- ビジネスモデルキャンバス
3つのフレームワークには各々メリットとデメリットがあり、利用する際にはそれらの特徴と利用する者との相性を考えて利用することが重要である。必要に応じて、1つのフレームワークだけに頼らず、複数を必要に応じて使うのも有効だろう。
注意点としては、これらのフレームワークは優れた長所を持っているのは確かだが、まとめ上げたビジネスモデルは実際に進めてみないと結果はわからない。そのため、まとめたモデルの推進に当たってはリーンスタートアップを心がけ、ケースによってはピボット(方向転換)を決断することも必要だ。
あくまでもこれらのツールはビジネスモデルの確認のためのものであるため、競争優位性や顧客とのコミュニケーションはどうとるかなどといった点については、別途他の分析ツール、例えば3C分析などを利用する必要がある。
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