生成AIの企業活用はここまで進んだ!先進事例と導入成功のポイントをコンサル視点で解説
公開日:2025.06.12更新日:2025年6月12日
目次
はじめに:なぜ今、企業で生成AI活用が注目されているのか?
近年、「ChatGPT」に代表される生成AI(Generative AI)が、ビジネスの現場に急速に浸透しはじめています。
従来のAIが得意とした「予測」や「分類」といった分析処理にとどまらず、新たな文章や画像、音声、動画などを“創り出す”技術として、業務の創造的プロセスに大きな変革をもたらしています。
実際、多くの企業が生成AIを活用して業務効率化やスピードアップを図っており、アイデア出し、文書作成、顧客対応、開発支援など、さまざまな領域で効果を上げています。
一方で、「何から始めればよいのか」「どの業務で使えるのか」といった悩みを抱える企業も少なくありません。
そこで本記事では、まず業務別に生成AIの活用シーンを整理した上で、企業の具体的な導入事例をご紹介します。さらに、導入時に気をつけたいリスクや成功のためのステップについても、コンサルティングの視点からわかりやすく解説していきます。
生成AIで何ができる?業務別の活用シーン
生成AIの特長は、「人の創造的な業務」をサポートできる点にあります。従来の業務自動化ツールと異なり、柔軟で汎用的な対応が可能なため、さまざまな部署・職種で応用が進んでいます。
ここでは、企業内での代表的な活用シーンを5つに分けて紹介します。
1. 企画立案・リサーチ支援
生成AIは、企画フェーズの“たたき台”づくりに特に効果を発揮します。たとえば、新商品やサービスの構想を練る際に、以下のような活用が可能です。
- 顧客ニーズや市場トレンドに基づく仮説の整理
- 提案資料やスライドの下書き生成
- 競合調査結果の要約やポイント抽出
単に時間を短縮するだけでなく、「思考の幅を広げる支援者」として機能することが大きな魅力です。
2. 文書作成・議事録作成の自動化
メール文、報告書、議事録、社内マニュアルなど、日常的に発生するテキスト業務は、生成AIが得意とする領域です。
- 会議録音データから議事録を要約
- 社内通知文や説明資料の自動生成
- ナレッジの形式知化(Q&A集、よくある質問)
定型文の作成はもちろん、文章のトーンや構成まで調整できるため、校正やレビュー工数の削減にもつながります。
3. マーケティング・クリエイティブ制作
生成AIは、マーケティングやプロモーションに必要な「見せるコンテンツ」の制作にも応用されています。
- SNS投稿文、広告コピーの案出し
- 画像、バナー、動画素材の生成
- Webサイトの構成案やLP文案の作成
特にスピードが求められるマーケティング領域では、「ゼロから何かを考える」負荷を軽減するパートナーとして重宝されています。
4. 顧客対応・チャットボット業務
生成AIによる自然言語処理の進化により、カスタマーサポート領域でもAIの導入が進んでいます。
- チャットボットによる自動応答の精度向上
- FAQコンテンツの自動生成・更新
- 問い合わせ履歴の要約と対応提案
単なるテンプレート応答ではなく、より「自然で柔軟な」対話が可能になることで、顧客満足度向上にも寄与します。
5. ソフトウェア開発・ナレッジ支援
エンジニアリングの現場でも、生成AIはプログラミングや情報整理の支援に導入されています。
- コードの自動補完やデバッグ支援
- 技術ドキュメントの作成・翻訳
- 社内ナレッジベースの検索や要約
開発のスピードアップだけでなく、ドキュメント整備や技術共有の効率化も実現し、チーム全体の生産性向上に貢献します。
事例で理解 生成AIを導入する企業の最前線
生成AIは、すでに多くの企業で本格的に導入され、具体的な成果を上げています。特に注目すべきは、単なる業務効率化にとどまらず、「新しい付加価値の創出」や「組織変革の起点」として活用されている点です。
ここでは、業種別に代表的な導入事例を紹介し、どのような目的で活用され、どのような成果が生まれているのかを整理していきます。
製造業:パナソニック コネクト、旭鉄工
パナソニック コネクトでは、社内向けの生成AIチャットボットを導入。業務に関するナレッジ検索や、ドキュメントの要点抽出などに活用され、1日あたり5,000回以上の利用を記録しています。業務の属人化を防ぎ、従業員の自己解決力を高める取り組みです。
旭鉄工では、製造現場における「カイゼン活動」の見える化に生成AIを活用。従来は暗黙知に依存していた改善の知見を、AIが言語化・標準化することで、組織的なノウハウ共有を実現しました。
小売・消費財メーカー:セブン&アイ、日本コカ・コーラ
セブンイレブン・ジャパンは、発注支援AIに生成モデルを取り入れ、天候や地域特性を考慮した発注数を提案。結果として、店舗ごとの発注時間を約4割削減し、精度の高い在庫管理に貢献しています。
日本コカ・コーラでは、広告制作において生成AIを活用。ラベルデザインやキャンペーンビジュアルをAIが提案し、マーケティング部門の制作スピードと創造性を両立させています。ユーザー参加型のプロモーション施策も実現しています。
金融・自治体・教育:SMBC、都城市、ベネッセ
SMBCグループは、稟議資料のドラフト作成に生成AIを導入。数値情報や過去データをもとにAIが提案文を生成し、2秒に1回のペースで利用される業務支援ツールへと成長しました。社員1人あたりの資料作成時間を大幅に短縮しています。
都城市(宮崎県)は、庁内業務に生成AIとRPAを組み合わせた自動化を導入。以前は2週間かかっていた書類作成作業が、わずか2日で完了するようになりました。行政のデジタル化モデルとしても注目されています。
ベネッセホールディングスでは、学習教材の設計や個別アドバイスの生成にAIを活用。生成AIが児童・生徒の理解度に応じたフィードバックを提供することで、教育の個別最適化を加速させています。
活用事例に共通する「3つのポイント」
- スモールスタートからの展開
いきなり全社導入するのではなく、まずは一部門・一業務で試行的に導入(PoC)し、成果を可視化してから展開しています。 - 業務フローとの統合
単体ツールではなく、既存システムやワークフローとの連携を図ることで、実務の中に自然に組み込まれています。 - 利用者教育とルール設計の両立
ガイドラインの整備や活用トレーニングを並行して行うことで、現場の不安を払拭しながら浸透させています。
こうした事例から見えてくるのは、「生成AIの価値は単なる自動化ではなく、“人の仕事の質”を変えること」にあるという点です。
次章では、こうした成功事例を踏まえたうえで、導入時に気をつけたいリスクと、成功のための導入ステップを整理していきます。
導入の落とし穴も?生成AI活用に潜むリスクとその対策
生成AIは非常に強力なツールである一方、企業での導入・運用にはいくつかの注意点があります。
特に「精度の高いアウトプットが出るからこそ」、判断を誤ったり、リスクを見落としたりする可能性もあるため、適切なガバナンスと設計が不可欠です。
ここでは、企業が直面しやすい3つのリスクと、それぞれに対する具体的な対策をご紹介します。
1. 情報セキュリティのリスク 社外API利用によるデータ漏洩の可能性
生成AIの多くはクラウド上で動作し、外部のAPIを通じて処理が行われます。このため、入力した情報がAI提供元のサーバーに送信され、意図せず機密情報が外部に流出するリスクがあります。
対策:
- 社外API利用時のデータ入力範囲を限定
- オンプレミス型やクローズド環境型のAI利用を検討
- 入力データの匿名化・マスキング処理の徹底
また、導入前にベンダーの利用規約やプライバシーポリシーを確認し、社内の情報管理規定と整合するかを精査することも重要です。
2. レピュテーションリスク 誤情報や不適切な表現の発信
生成AIはあたかも正確なことを言っているように見えるアウトプットを出す一方で、実際には誤った情報を生成してしまうこともあります。
特に対外的な発信や顧客対応で活用する場合、誤情報の拡散は企業の信頼を損なう恐れがあります。
対策:
- 生成されたコンテンツは必ず人間がレビュー・確認
- 出力内容のファクトチェック体制を明文化
- 用語やトーン、NGワードをあらかじめ制御するプロンプト設計を導入
生成AIは「参考意見を出すアシスタント」と捉え、最終判断や責任は人間が担う運用フローを徹底することが求められます。
3. 法令違反のリスク 著作権や個人情報に関する法的問題
生成AIは学習データに基づいてコンテンツを生成しますが、その過程で既存の著作物に酷似した出力が生まれることもありえます。また、個人名やプライバシーに関する内容を含んだ生成物は、個人情報保護法や著作権法に抵触する可能性もあります。
対策:
- 社内での利用ルール(AI活用ポリシー)を整備
- 生成物の二次利用に関する判断基準を明確化
- 政府や関係省庁からのガイドラインを参照し、運用指針に反映
特に法務・情報セキュリティ部門との連携を密にし、コンプライアンスの視点から運用ルールを整えることが、企業の持続的な活用にとって不可欠です。
これらのリスクは、生成AIが企業活動に深く関わるほど顕在化しやすくなります。
しかし、適切な対策を講じれば、むしろ生成AIは安心して使えるビジネスツールとして定着させることが可能です。
次章では、実際に企業が「成果につなげる導入」を実現するために踏むべきステップや、成功のポイントを解説していきます。
成功する導入のためのステップとポイント【コンサルが解説】
生成AIの導入を成功させるには、単に「ツールを導入する」だけでなく、ビジネス全体の中で“どう活かすか”を設計する視点が欠かせません。
フィンチジャパンでは、さまざまな企業の生成AI活用を支援する中で、「導入がうまくいく企業」と「途中で止まってしまう企業」には明確な差があることを確認しています。
ここでは、生成AIを活用して成果を出すためのステップと、ポイントを5つのフェーズに分けて解説します。
1. 業務の棚卸しとインパクトの試算
まず最初に必要なのは、「自社の業務プロセスを見える化」することです。どの業務が生成AIに向いていて、どれが向いていないのかを冷静に見極めましょう。
チェックすべきポイント:
- 人手と時間がかかっている業務
- 出力にバリエーションが求められる業務(企画・文章・画像など)
- 属人化しており標準化が進んでいない業務
それらをもとに、「導入すればどの程度の効果が見込めるか(時間短縮/コスト削減/品質向上)」を試算しておくと、社内の説得材料にもなります。
2. PoC(概念実証)でスモールスタート
インパクトが大きそうな業務が見つかったら、いきなり全社展開を目指すのではなく、小さく始めて早く回すのが鉄則です。
実行のポイント:
- 1部門、1業務、1ユースケースに絞って始める
- 数週間〜1ヶ月程度で効果検証可能なテーマを選ぶ
- 利用者からフィードバックを収集する体制を整える
この段階では、「成果が出た/出なかった」という判断だけでなく、「どんな使い方ならうまくいくのか」「現場がつまずく点はどこか」を把握することが重要です。
3. 活用ガイドラインとルール設計
生成AIの活用が進むと、社内のさまざまな部門で独自に使われ始めます。だからこそ、「安心して使える環境」を整えるために、共通ルールの設計が欠かせません。
整備しておくべき内容:
- 入力・出力データに関する注意事項(個人情報、機密情報など)
- 利用禁止事項(業務外利用、特定ジャンルの出力制限など)
- 出力物の扱いに関するガイドライン(チェックフロー、責任範囲)
また、社員にとって読みやすく実践しやすい形式にすることが、ガイドライン定着のカギとなります。
4. 社内リテラシーの底上げとナレッジ共有
生成AIは、使いこなすことで初めて価値が発揮されるツールです。リテラシーや活用スキルにばらつきがあると、部署によって成果に大きな差が出てしまいます。
推奨施策:
- 導入時に全社向けの基礎研修を実施
- よくある使い方・プロンプト事例をナレッジとして共有
- 成功事例の共有会などで、社内横断の学習機会を提供
生成AIを一部の“先進部門の専用ツール”にとどめず、「全社的に活用できる素地」を育てることが、中長期での成果につながります。
5. 成果の可視化と継続的な改善
最後に重要なのが、「実際にどんな成果が出たのか」を定量的・定性的に見える化し、社内で共有することです。
これにより、導入を迷っている部門の背中を押す効果も期待できます。
成果の例:
- 文書作成時間の◯%短縮
- チャットボット対応数の増加と満足度向上
- 提案資料作成の質向上やバリエーション拡大
また、一度で完璧な活用方法にたどり着くことは稀です。運用中のフィードバックをもとに、「プロンプトの改善」「対象業務の追加」「ツールの切り替え」など、継続的に調整する仕組みを持つことで、生成AIを“使い続けられる”状態にできます。
生成AIは、導入すればすぐに成果が出る“魔法の杖”ではありません。
しかし、段階を踏んで導入・教育・改善を積み重ねることで、企業全体の業務と発想を変える起爆剤となり得ます。
次章では、こうした全体像を踏まえて、記事のまとめに入ります。
まとめ:生成AIは「導入すること」より「使い続ける仕組み」が鍵
生成AIは、企業の業務を効率化するだけでなく、発想力や表現力といった“人の創造性”を拡張するツールとして、今後ますます注目されていくでしょう。
本記事では、生成AIの活用シーンから先進企業の導入事例、そしてリスクと導入のステップまでを俯瞰しました。
その中で見えてきたのは、生成AIの導入で成果を出している企業には、以下のような共通点があるということです。
成功する企業に共通する3つの特徴
- 導入目的と活用業務が明確である
単なる流行ではなく、自社の課題に対する具体的な打ち手として生成AIを位置づけている。 - PoC(試行導入)を経て、着実に展開している
小さく始めて、早く学び、スピード感を持って活用範囲を広げている。 - 使い続けるための体制づくりに力を入れている
社内ルールの整備、教育、成功事例の共有など、「人と組織」の観点からも生成AI活用を支えている。
ツールの選定や業務の自動化だけでなく、「どう使い続けるか」「どんな文化をつくるか」という視点が、今後はより重要になっていきます。
生成AIは、業務改革のゴールではなくスタートです。
小さな成功体験を積み上げながら、部門を越えて全社に展開し、継続的に改善できる仕組みを整えることで、初めて“自社らしい活用”へと育っていきます。
このような取り組みを通じて、生成AIは単なる「業務効率化ツール」から、「企業の成長戦略を支える重要な資産」へと進化していくはずです。
次章では、こうした生成AIの実装・定着に向けた支援を行うフィンチジャパンのご提案をご紹介します。
フィンチジャパンからのご提案|生成AI活用を成果につなげるために
私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。
こんなお困りごとはありませんか?
- 「生成AIの可能性は感じているが、具体的なユースケースが見つからない」
- 「PoCは試したが、現場への定着やスケール展開に課題を感じている」
- 「社内で使い方に差があり、活用が一部部署に偏ってしまっている」
- 「ガイドラインやガバナンスをどう整備すればいいかわからない」
生成AIの活用は単なる“導入”ではなく、「業務変革」や「企業文化の刷新」といった本質的な変化につながる取り組みです。だからこそ、構想から導入・教育・定着まで、一貫した設計と推進体制が欠かせません。
私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。
- エネルギー企業O社:DX改革(約3年)
部門を横断したDX支援とAI活用のユースケース提案、運用体制の定着までを伴走支援。 - ITサービスK社:事業投資のゲートマネジメント構築(2年)
AIを含む新技術の活用判断と、投資判断基準の可視化・定量化を推進。 - 製薬メーカーP社:新商品開発プロセス改革(約1年)
属人的だった知見やプロセスを構造化し、活用体制を構築。 - 飲料メーカーC社:健康市場向け新商品開発(約6ヶ月)
健康市場向け新商品開発支援。
生成AIを“ただのツール導入”で終わらせないために、業務・人材・組織の3軸からしっかり設計したい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。導入前の壁打ちからPoC、社内展開、定着化まで、実践的にサポートいたします。
- 新規事業の事業計画書サンプル
- 新規事業を成功させる22のステップ
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コンサルティングの成功事例 - など
この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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