化粧品D2Cの成長戦略を解剖|成功例から学ぶ5つの実践ステップ
公開日:2025.06.05更新日:2025年6月5日
目次
はじめに:なぜ今「化粧品×D2C」なのか?
近年、化粧品業界では「D2C(Direct to Consumer)」モデルが急速に注目を集めています。特に、ブランドと消費者が直接つながり、リアルな声を商品開発やマーケティングに活かせるという点で、大手からスタートアップまで多くの企業がこの手法を取り入れ始めています。
D2Cの最大の特徴は、仲介業者や小売店を介さずに販売することで、顧客との距離が近くなること。この構造により、ブランドの世界観やストーリーを一貫して届けることが可能となり、ロイヤリティの高いファンづくりにもつながります。
また、SNSやインフルエンサーの活用、ECサイト上での購買体験の最適化、パーソナライズされた商品提案といった施策との相性が良く、トレンドに敏感なZ世代・ミレニアル世代を中心に支持を広げています。
特に化粧品業界は、
- 商品の機能性だけでなく「共感」「体験価値」が選ばれる理由になる
- 新しい使用感やパッケージ、香りなど“感覚的な差別化”がしやすい
- リピート購入によってLTV(顧客生涯価値)を高めやすい
といった特徴から、D2Cモデルとの親和性が非常に高い領域です。
さらに、パンデミック以降のオンライン購買習慣の定着や、デジタル広告の高度化も追い風となり、「今こそ、自社のブランドでD2Cに挑戦すべきでは?」と考える企業が増えています。
本記事では、そんなD2Cの成功事例を紐解きながら、単なるブランド紹介ではなく、その裏にある「成功の仕組み」や「再現性ある戦略パターン」に焦点を当てて解説していきます。
D2Cコスメブランドの成功事例:注目の7社から学ぶ
ここでは、D2Cモデルで成功を収めたコスメブランドの中から、特に戦略性・ブランド設計・成長のスピードにおいて注目すべき7社をピックアップしてご紹介します。
それぞれの事例から、どのような「仕組み」や「着眼点」が成果につながったのかを読み解いていきましょう。
1. SHIRO:ブランドコンセプトの一貫性と体験価値の融合
SHIROは、「自分たちが使いたいものをつくる」というシンプルで誠実な思想を軸に、北海道産の自然素材を活かした製品開発を行うブランドです。オンラインストアのUXや実店舗での香り体験、SNSでの世界観表現など、どのタッチポイントでも一貫性あるブランド体験を提供しており、ファンの心をつかんで離しません。
2. DUO:課題起点の商品企画と大規模プロモーション
DUOは「クレンジングバーム」で大ヒットを飛ばしたD2Cブランドです。
特筆すべきは、「毛穴悩み」という明確な課題に対するソリューション提供に徹した点。機能性の高さはもちろん、テレビCMやインフルエンサー施策などを組み合わせた大規模なプロモーション戦略で、一気に市場認知を獲得しました。
3. Fujimi:パーソナライズ戦略と定期購入モデルの巧妙さ
Fujimiは、オンライン診断によって一人ひとりに合ったサプリやスキンケア製品を提供するパーソナライズ特化型D2Cブランドです。美容に関心の高い20〜30代女性を中心に、「自分専用」という体験価値が受け入れられ、定期購入型モデルを通じてLTV向上を実現しています。
4. N organic:ターゲット特化型マーケティングとLTV最大化
N organicは、「忙しい大人の女性」にフォーカスしたプロダクト設計とマーケティングが特徴的です。広告クリエイティブやコピーは、落ち着いたトーンと共感性の高い表現で統一され、ターゲットへの刺さり方に非常に優れたブランドです。サブスク導入により、継続率の高さでも注目を集めています。
5. Glossier:コミュニティ主導型の共創ブランド
米国発のGlossierは、「ユーザーと一緒につくる」を徹底して体現したブランドです。SNSでユーザーの声を集めて商品を開発したり、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を軸にプロモーションを展開したりと、ユーザーとの共創をブランドのコアに据えています。
その結果、強い支持と自然な拡散を生むD2Cの代表格となりました。
6. BULK HOMME:男性市場の開拓とグローバル展開
BULK HOMMEは、男性用スキンケア市場というブルーオーシャンを切り拓いた事例です。デザイン性・成分のこだわりに加え、世界中の百貨店・ECに展開するグローバル戦略も特徴的。D2C×海外展開を視野に入れる企業にとって、非常に示唆に富む成功例といえるでしょう。
7. COLORIS:AI診断×体験設計の最適解
COLORISは、オンラインでのカラー診断を通じて、自分に合ったヘアカラーを提案・提供するD2Cブランドです。AIを活用したパーソナライズ診断と、その結果に基づく製品提案という流れが、ユーザーにとって新鮮な購買体験となり、高い満足度と継続率を実現しています。
これらの事例は、それぞれ異なる切り口や戦略を採用しながらも、共通して「顧客とのつながり方」や「ブランドの届け方」に明確な設計意図があることがわかります。
次章では、これらの成功ブランドに共通する「5つの戦略構造」を整理し、どのように自社に応用できるのかを探っていきます。
成功ブランドに共通する「5つの戦略構造」
先ほどご紹介した7つの成功ブランドには、それぞれ異なるアプローチがある一方で、「戦略的に共通する5つの構造」が見えてきます。
この章では、それらを紐解きながら、自社のD2Cモデルに応用するための視点をご紹介します。
1. 顧客インサイトを起点にした商品開発
成功しているD2Cブランドは例外なく、「誰の」「どんな悩み」に応えるかを明確にしています。
DUOの「毛穴ケア」、Fujimiの「体質に合ったサプリ」、N organicの「忙しい大人向け」など、顧客の声や課題から商品企画をスタートしています。
これはマーケティングの前段階、“商品そのものがマーケティングツールになっている”という状態をつくる重要な要素です。
2. ブランドの世界観を一貫して伝える設計
ブランドのトンマナ(トーン&マナー)やビジュアル表現、コピーライティングまで、一貫性を保つことはD2Cの成功要因として欠かせません。
たとえばSHIROのように、「香り」「パッケージ」「店舗空間」「Webサイト」のすべてが一つのストーリーを語るようにデザインされています。
顧客がブランドに“浸る”感覚をどう設計するかは、購入体験の満足度やファン化に直結します。
3. SNS・インフルエンサー活用による拡散戦略
従来の化粧品マーケティングに比べ、D2Cは「共感」「発見」ベースの拡散設計が重要になります。
SNSでの体験シェアや、自然なレビューを促すインフルエンサー起用がその代表例です。
Glossierはその先駆けとも言える存在で、ユーザーが語りたくなる仕組みを作ることが成長の原動力になっています。
4. データとテクノロジーを活かしたパーソナライズ
FujimiやCOLORISのように、診断×データ活用による商品提案は、D2Cの価値をさらに高める施策です。
「私のために作られた」と感じられる体験は、単なるモノ売りを超えたブランド体験につながります。
加えて、ユーザーの行動履歴やフィードバックを商品改善に反映する仕組みがあれば、PDCAもより早く回ります。
5. LTVを意識したサブスク/定期購入モデル
D2Cは初回購入よりも“継続的な関係性”が重視されます。
そのため、多くのブランドがサブスクリプション形式や定期購入の仕組みを導入し、LTV(顧客生涯価値)を高める戦略を取っています。
ここで重要なのは、「継続してもらう理由」を体験や満足度から設計すること。
定期便にアドバイス冊子を同梱する、LINEで使用状況のヒアリングを行うなど、小さな接点が継続率を左右します。
これらの構造は、ブランドの表面的な見た目ではなく、根本にある“考え方”や“仕組み”です。
自社でD2Cを立ち上げる際も、ここを押さえて設計することで、より再現性のある成功を目指すことができます。
D2Cを成功に導くためのアクション設計(実務者向け)
ここまで、化粧品D2Cブランドの成功事例と共通する戦略構造をご紹介してきました。
しかし、実際に自社でD2Cを立ち上げようとすると、「どこから手をつければいいのか分からない」という声も多く聞かれます。
この章では、実務担当者やプロジェクトリーダーの視点から、D2C立ち上げに向けたアクション設計を解説します。
社内を動かすための視点から、具体的な準備ステップ、外部パートナーの活用までを順を追って整理していきましょう。
社内稟議を通すための説得材料(事例×定量効果)
D2Cは新しい挑戦であるがゆえに、社内での理解や稟議通過が最初のハードルになることがあります。
そのためには、以下のような「説得力ある材料の準備」が重要です。
- 類似事例の成功要因と成果(売上増、LTV改善、SNSフォロワー数など)
- 自社の強みとD2Cの親和性(たとえば既存の顧客接点や開発力など)
- 市場動向データ(D2C市場の成長性、消費者行動の変化など)
- 小さく始めてPDCAを回せるスモールスタート型の提案
関係者の視点に立ち、「なぜ今、D2Cなのか?」を納得感のある形で提示することが、スタートラインになります。
D2C立ち上げ時の検討ステップ(企画〜運用)
D2C事業の立ち上げは、下記のようなフェーズごとの設計が求められます。
フェーズ | 主なタスク |
企画 | 顧客セグメントと提供価値の明確化、ベンチマーク事例の調査 |
設計 | 商品開発、ブランドコンセプトの立案、ECサイトと購入体験の設計 |
検証 | 小規模テストマーケティング、KPI設計、定性・定量の評価 |
拡張 | SNS広告、インフルエンサー連携、定期購入やCRMの導入 |
改善 | 顧客フィードバックを活かしたリピート施策・商品アップデート |
特に重要なのは、「検証」と「改善」のフェーズを軽視しないことです。
はじめから完璧を目指すのではなく、最小構成で素早く市場と対話することが、D2Cでは成功の鍵となります。
外部パートナーの活用(開発、マーケ支援、リサーチなど)
自社だけでD2Cをすべて内製するのは、工数的にも知見的にも難易度が高いことが多いです。
そこで、専門パートナーとの連携を前提にした設計が、成功率を高める現実的なアプローチになります。
活用されやすい外部リソースの例:
- ブランド設計や商品企画に強いコンサルタント
- EC構築やUI/UXに長けた開発パートナー
- SNS運用や広告運用の代行支援会社
- 定性・定量リサーチをサポートする調査会社
これらをプロジェクトフェーズごとに組み合わせることで、自社は意思決定と価値判断に集中でき、リソースを最適化できます。
まとめ:事例に学び、構造を理解し、次の一手を描く
化粧品業界におけるD2Cモデルの広がりは、一過性のトレンドではなく、「顧客との関係性の再設計」という本質的な変化の一部です。
今回ご紹介した7つのブランドはいずれも、単に話題性があるというだけでなく、成功するための“構造”を持ち合わせていたことが共通点として挙げられます。
成功を支える5つの構造、すなわち:
- 顧客インサイト起点の商品設計
- 一貫したブランド表現と体験設計
- SNSやインフルエンサーによる共感型拡散戦略
- データを活かしたパーソナライズとユーザー接点の強化
- LTV最大化を目指したリピートモデルの構築
これらは、どんな企業でも再現可能な「型」であり、自社の強みと市場機会を組み合わせることで十分に応用できます。
そして、最初の一歩としては、完璧な戦略や大規模な投資を前提にする必要はありません。
むしろ、「小さく始めて学びながら進める」姿勢こそが、D2Cの本質に合った進め方だといえるでしょう。
このように、成功事例を“模倣”するのではなく、“仕組み”として理解し、自社にあった文脈で実装すること。
それが、今後のD2C施策における確かな差別化と持続的成長につながっていきます。
フィンチジャパンからのご提案|D2C事業を“構造化された成長戦略”として設計しませんか?
私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。
こんなお困りごとはありませんか?
- 自社でもD2Cを展開したいが、どのように商品設計・ブランド構築を始めればいいかわからない
- 既に立ち上げたものの、LTVや継続率が伸び悩んでいる
- SNS戦略やCRM設計など、部門を超えた連携に課題がある
- 成功事例を参考にしているが、自社に合った再現方法が見えない
化粧品業界のD2Cは、感性と論理の両輪で設計される“構造的な戦略”が求められます。成功の再現には、表面的な模倣ではなく、自社の強みと市場ニーズを繋ぐ精緻な戦略設計が鍵となります。
私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。
- 化粧品メーカーL社:予防市場をターゲットとした新サービス開発(1年)
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- 食品メーカーR社:新カテゴリー創出によるD2C展開支援(約2年)
- ITサービスK社:事業投資の意思決定プロセスの可視化と仕組み構築(2年)
D2C戦略の構想段階から、体制整備・プロダクト検証・LTV最大化の仕組み化まで、貴社のフェーズに合わせた支援が可能です。
まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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