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【対談記事】2年前、AIエージェントの未来を見通していた本を語る──「先見の明」はどこから生まれる?

                   
経営
公開日:2025.12.02更新日:2025年12月2日

 

でじどうラジオは、株式会社フィンチジャパンが配信する、AIエージェントと人が“共に番組を運営する”新感覚の実践型トークシリーズです。「答えるAI」ではなく、番組制作に実際に関わるエージェントを“デジタル同僚”として取り上げることで、「人とAIがどのように一緒に働くのかを体感的に知る」ラジオです。
本記事はフィンチジャパン代表高橋とひげおぢによるポッドキャスト『でじどうラジオ』で『その仕事、AIエージェントがやっておきました。 ――ChatGPTの次に来る自律型AI革命』(技術評論社、西見公宏 著)を読み、二人が語った「人間の役割」と「信頼の速度」に関する対談記事です。

はじめに──2025年から2023年を振り返る

ひげおぢ: デジどうラジオ、第4回です。今日も課題図書を読みながら会話を進めていきます。フィンチジャパンの高橋さん、よろしくお願いします。

フィンチ高橋: よろしくお願いします。

ひげおぢ: 今回取り上げるのは、珍しく2025年発売の「ほやほや」な本ではありません。『その仕事、AIエージェントがやっておきました。ChatGPTの次に来る自律型AI革命』(技術評論社、西見公宏 著)です。これは2023年12月の発売です。2025年の今から、2023年に語られていたことがどうだったかを振り返りたいと思います。
高橋さん、この本を読んで、「2年でだいぶ変わった」と思いますか?それとも、「実は目次に書いてある内容は2年前にすでに議論されていた」ということに驚きましたか?

フィンチ高橋: 今までの課題図書は新刊ばかりでしたが、今回は約2年前の本を振り返るという構成ですね。2023年12月といえば、2022年11月頃にChatGPTが発表されてからわずか1年で、このエージェントの本を書こうという発想があったわけです。
本の帯には「AIエージェントの可能性を示す日本初の書」と書かれていて、当時としては非常に先取りしてエージェントの概念を届けようとしていたことがわかります。骨格や大きな方向性で見ると、西見さんが当時言っていたことはまさにその通りになっていると感じます。

当時の混乱──AIを検索窓と勘違いしていた時代

ひげおぢ: 僕はこれまでと同じように目次と前書きしか読まず、残りはAIエージェントと対話して「読んだ」んですが、「自律的な」というキーワードがすでに入っていて、AIエージェントが新人研修や情報収集を代行し、即戦力の社員になるという描写があったかと思います。2023年時点ですでに、AIエージェントが未来の形として予測されていたのですね。

フィンチ高橋: ありましたね。すごいね、目次しか読んでいないのに本当に読んだ感じが出てるよ(笑)。

ひげおぢ:ありがとうございます。 その後、「ChatGPTすごい」という本がたくさん出ましたが、この本では第2章で「ChatGPTなんか指示待ちだから大したことないよ」というようなことも言われていましたか?

フィンチ高橋: まさにその通りです。本書の前半では、エージェントを使いこなすには「タスクばらし」、つまりタスクを分解することが大事で、それをAIにやらせることで一つの大きなタスクが完了すると述べています。これは、今の言葉でいうワークフローオーケストレーションの概念を、当時の西見さんはすでに提唱し始めていたという点で驚異的な本ですね。

ひげおぢ: 「タスクをばらす」という点で、当時は「AIにお願いしなきゃならない」という、プロンプトエンジニアリングがキーワードになっていたかと思います。当時のユーザーは、ChatGPTの入力窓を検索窓と勘違いしている時期が最も多かったのではないでしょうか。
しかし、西見さんは当時から「検索ではなく、お願いであり指示である」と的確に指摘し、生成AIをビジネスで使うことから脱落していた時期に、「お願いしたいことをChatGPTがわかるように、ちゃんとタスクをばらして伝えなさい」と提言していたのですね。

フィンチ高橋: 書いてありますね。例えば「自動車業界の市場動向を調べて」ではダメで、タスクに分解し、キーワードをピックアップして、分解したタスクを順に実行するように指示すると書かれています。
ただ、面白いのは、2年経った今、私がGeminiなどのAIに「自動車業界の市場動向」と入れると、「それをこういうタスクに分解すればいいですか?」とAI側がタスクばらしをやってくれるようになったことです。

ひげおぢ: そうなんですよね。

フィンチ高橋: 当時、西見さんは「タスクばらしはまだ人の仕事だ」と言っていたのに対し、それすらAI側の仕事になっているのが、この2年間の大きな変化です。

「キャラクター」という先見性──属性、性格、社会的立場

ひげおぢ: 目次で特に印象的だったのが、これまでの本であまりなかった「キャラクター」に関するキーワードです。

フィンチ高橋: まさにこの本の個性であり、西見さんはエージェントにとって大事なものとして「個性、キャラ付け」の話をしています。

ひげおぢ: 当時の「キャラクター」といえば、「○○になりきって聞いてくれ」といった、人間とは違う自由奔放な発想を引き出すために使われていたと思いますが、西見さんの言うキャラクターは少し違うように感じます。

フィンチ高橋: 西見さんは「キャラクター」を、属性、性格、社会的立場という3つの要素に分けて説明しています。

  • 属性:年齢、性別、居住地など
  • 性格:ビッグファイブ理論に基づき、開放性や誠実さなど
  • 社会的立場:どのような立場に立っているか

これらを設定した上でAIエージェントを作るのが大事だと書かれており、これは他の本ではあまり見られないユニークな視点です。
実際、我々がプロンプトを作る際に「あなたはこういう立場のこういう役割で…」と役割を与えたり、「あなたは調査員なので嘘は絶対ついてはいけません」といった制約を設けたりする作業は、まさにここでいう「個性を与える」という作業を、エージェント作成の切り口で説明しているわけです。
西見さんはエージェントに人格を与えるという観点から、かなりの量のページを割いて説明していました。

ひげおぢ: まさに、ユーザーが「あなたはホニャララです」とやっていたことを、3つの要素にブレークダウンしてエージェントにキャラクターを付けましょう、ということをおっしゃっていたのですね。

フィンチ高橋: そうです。今やChatGPTの設定画面で「専門家ですか?優しい感じですか?」とキャラクター付けができたり、ユーザーがGPT-4の「キャラクターが好きだった」と惜しむ状況を、この本は予言しているかのようです。

2年間で変わったもの、変わらないもの

ひげおぢ: この先見の明のある本ですが、当時のソリューションとしてはやはりリサーチ(市場調査など)が中心だったのでしょうか?

フィンチ高橋: 彼が当時見つけた最先端のAIエージェントの具体例として、市場調査、見込み企業の探索、アプローチ方法の検討といった、いわゆる営業アシスタントのような事例が挙げられていました。日立さんのような例と比べると当時は原始的(プリミティブ)ではありますが、すでにサービスとして登場していたのです。

ひげおぢ: 当時、まだ一般ユーザーが正しいアウトプットを得るための方法論を何も知らずに生成AIを触っていて、「ハルシネーションがあるから信用できない」と話していた時期に、西見さんはAIエージェントのレベルとしてすでに活用されていたのでしょうね。

フィンチ高橋: そうですね。当時はハルシネーション(AIが出力時に事実と異なる内容を生成してしまう現象)や出典の有無でAIの能力を比較し選んでいましたが、今となっては「この相談はChatGPT」「この相談はClaude」「画像はGemini」と、自然に使い分けができるようになっています。

ひげおぢ: 人間に個性があるように、AIにも個性が出てきたと感じます。この「個性」という観点から見た先見性は本当にすごいですね。さすがに、AIエンジンそのものの個性を使い分けるところまでは、西見さんも想像できなかったかもしれませんが。

ひげおぢ: この本で使われているプラットフォームやユースケースには、今ではほとんど知られていないサービスAutoGPTなども目次にありました。

フィンチ高橋: 後半にはスタートアップの事例も出ていましたが、ほとんど知らないサービスでした。当時、タケノコのようにたくさんのAIサービスが出ていた中で、この2年で使われ続けることがいかに難しいかを、逆に思い起こさせてくれます。

ひげおぢ: 思想やビジョンが2年たっても色あせていない一方で、実際のユースケースや使っているプラットフォームは様変わりしたという感じですね。

フィンチ高橋: まさに。ユースケースの例として、「コグノシス」というサービスでは、旅行代理店のためのSNSコンテンツカレンダー作成や、指定されたWebサイトのコンテンツと構造の分析といった、シングルタスクの集合体をエージェントのフォーマットで提供し始めていました。
しかし、今やn8nやDifyといったツールで、ノーコードで一連のワークフローが作れる時代です。この2年前は、このようなシングルタスクのエージェントモジュールを提供するということ自体が画期的だったわけです。

ひげおぢ: 特定のタスクをするエージェントという限定されたものしか、まだ市場になかったということですよね。

フィンチ高橋: 最後の「謝辞」を読むと、「エージェントに対する未来予測を信じて、この企画にゴーサインを出してくださった皆様に感謝します」と書いてあるんですね。

ひげおぢ: 「ChatGPTは検索ウィンドウ」「ハルシネーションがあるから使えねえ」と言われていた時代に、一歩飛び越してAIエージェントの可能性にかけた、まさにビジョナリーたちの意志を感じます。

次の2年を見据えて──西見さんからの学び

ひげおぢ: 我々も、次の2年後を示せるようになりたいものです。今読むべきは、おそらくAIエージェントではないキーワードを探ることですね。

フィンチ高橋: 確かに。今読むべきものではなく、次の2年を見据えるようなキーワードを発掘して議論しなければならない。それが、西見さんからの学びです。

ひげおぢ: しかも、それは未来予想ではなく、テクノロジーという制限がついたテーマでなければならない。それが西見さんからのメッセージだと感じます。

フィンチ高橋: はい。ぜひ、そういう観点で次の課題図書を探しましょう。

ひげおぢ: 我々、西見さんのお気持ちを代弁させていただきました。今回もありがとうございました。またぜひ聞いてください。

フィンチ高橋: ありがとうございました。またよろしくお願いします。

 

【でじどうラジオ】

 

【今回の課題図書】

西見公宏 『その仕事、AIエージェントがやっておきました。―ChatGPTの次に来る自律型AI革命』(技術評論社)

https://amzn.asia/d/fZOztC5

 

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この記事の監修者

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株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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