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CAGRとは?計算式をエクセルで簡単に使いこなす実務向けテンプレート付き

                   
経営
公開日:2025.05.07更新日:2025年5月7日

はじめに

「この売上、何年でどのくらい伸びてるの?」 「中計資料、成長率も入れておいてくれる?」

経営企画や事業企画の現場では、そんな”ざっくりだけど正確な数字”が求められる場面が少なくありません。特に中長期の成長を見える化する指標として重宝されているのが、CAGR(年平均成長率)です。

しかし、CAGRは計算式が一見複雑に見えるうえ、Excelでの実装方法に悩んで作業が滞る…という声もよく耳にします。

この記事では、

・CAGRの意味と活用シーン

・正確な計算式とその背景にある考え方

・Excelでの実践的な計算方法(コピペOKの式付き)

・実務で役立つ分析例と注意すべきポイント

などを、わかりやすく解説します。実務ですぐに使えるテンプレートや応用テクニックも紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

 CAGR(年平均成長率)とは?

CAGR(Compound Annual Growth Rate/年平均成長率)は、特定の期間における数値の平均的な成長率を示す指標です。日本語では「年平均成長率」と呼ばれ、企業の売上や利益、ユーザー数、投資リターンなど、様々な成長性評価に広く活用されています。

例えば、ある事業の売上が5年間で100万円から180万円に増加したとします。この場合、「毎年平均して何%のペースで成長してきたのか?」を単一の指標で表現できるのがCAGRの強みです。

なぜ単純な「平均成長率」ではなく「年平均成長率」が必要なのか?

年ごとの成長率を単純に平均しただけでは、成長のばらつきや急激な変動により、実態を正確に把握できないことがあります。

一方、CAGRは”複利”の考え方に基づいた幾何平均で算出されるため、毎年一定の割合で成長したと仮定したときの「均された成長率」を示します。

 ポイント:CAGRは、一定期間の成長を「一定のリズム」に置き換えて評価できる実用的な指標です。

 CAGRの計算式と意味の理解

 CAGRの基本計算式

CAGRは、次の計算式で求められます:

CAGR = (最終値 ÷ 初期値)^(1 ÷ 年数) − 1

例えば、5年前に100万円だった売上が、現在180万円になっている場合:

CAGR = (180 ÷ 100)^(1 ÷ 5) − 1 ≒ 0.1247(=約12.47%)

この結果は、「5年間で毎年約12.47%のペースで成長した」と解釈できることを意味します。

 それぞれの項目の意味

項目 意味
最終値 対象期間の最後の数値(例:今年の売上)
初期値 対象期間の最初の数値(例:5年前の売上)
年数 測定する期間の年数(例:5年)

この計算式では、”毎年一定の成長率”を前提としているため、各年の成長率にばらつきがあっても、CAGRは均された平均成長率として表されます。

 どんな場面で活用されるか?

CAGRは、次のような場面で特に役立ちます:

  • 中期経営計画(中計)や予算策定:売上や利益の成長率を明確に示すため
  • IR資料や投資分析:投資家に事業の成長性を効果的に伝えるため
  • 複数事業や市場の比較評価:異なる事業や競合との相対的な評価に最適

 CAGRを使った分析の実例(中計や報告書に)

CAGRは単なる計算式ではなく、説得力のある資料作成に不可欠な「ストーリーの軸」として機能します。ここでは、実務でよく見られる活用シーンを紹介します。

 売上推移の成長率把握

中期経営計画や年次報告で、売上の伸びを簡潔に示したい場合、CAGRは非常に効果的です。

例えば:

  • 「2019年から2024年の売上は、年平均8.2%で成長」
  • 「5年間で1.5倍に拡大しており、安定した成長基調を維持」

このように、一目で傾向を把握できる表現が可能です。

 複数事業の比較分析

異なる事業部・サービス・拠点の成長性を比較する際、単年度の成長率ではばらつきが大きく、判断が難しいことがあります。

CAGRを活用すれば:

  • 各事業の同一期間における成長を公平に比較
  • 成長の安定性を評価する指標として活用

例えば、A事業とB事業がともに売上1億→1.5億となっていても、CAGRを算出することで「成長の質」を比較できます。

 投資効果の中長期予測

CAGRは投資効果の測定やシナリオ分析にも有効です。

  • 「今後5年で○%成長すると仮定した場合の将来予測値」
  • 「KPI達成に必要な年平均成長率の算出」

といった逆算にも応用できるため、定量的な意思決定の根拠として重要な役割を果たします。

 実務のポイント: CAGRは、数字を”わかりやすく伝える”ための手段です。数値の正確さだけでなく、資料の読み手にとって「理解しやすい表現」であることが大きな価値です。

エクセルでのCAGRの求め方【コピペOK】

CAGRはエクセルで簡単に計算できます。ここでは、「算術演算子」「関数(POWER・RRI・GEOMEAN)」の3種類の方法を紹介します。用途に合わせて使い分けてください。

 方法①:算術演算子で求める

最もシンプルな方法は、数式を直接入力する方法です。以下のExcel数式で計算できます:

=(終値/初値)^(1/年数)-1

 使用例:

= (B2 / B1) ^ (1 / B3) – 1

セル 内容
B1 初期値(例:100)
B2 最終値(例:180)
B3 年数(例:5)

 POINT: 計算結果を「パーセンテージ」形式に設定すれば、見やすくなります(例:12.47%)。

 方法②:POWER関数を使う

エクセル関数に慣れている方には、POWER関数を使った方法も便利です。

=POWER(終値/初値, 1/年数) – 1

 使用例:

= POWER(B2 / B1, 1 / B3) – 1

POWER関数は「べき乗(累乗)」を計算する関数で、指数計算が必要なCAGRと相性が良いです。

 方法③:RRI関数を使う(金融関数)

RRIはエクセルに組み込まれている投資リターン専用関数です。

=RRI(年数, 初期値, 最終値)

 使用例:

= RRI(B3, B1, B2)

 RRI関数は年率(CAGR)を直接返すため、非常に直感的です。ただし、Excelのバージョンによっては利用できない場合があるので注意してください。

 方法④:GEOMEAN関数を使う(複数年の年次成長率がある場合)

年ごとの成長率(例:110%、115%、105%、…)が判明している場合は、幾何平均を計算するGEOMEAN関数で実質的なCAGRを算出できます。

=GEOMEAN(1年目, 2年目, …, n年目) – 1

 使用例:

= GEOMEAN(1.10, 1.15, 1.05) – 1

この方法は成長率が年ごとに異なる場合に特に有用です。

 補足: どの方法を選択しても、CAGRの意味と使い方は変わりません。実務では「再利用のしやすさ」や「説明のわかりやすさ」で選ぶと良いでしょう。

テンプレで一発計算!CAGR自動計算シート

CAGRの計算式を理解していても、「毎回セルに数式を入力するのは手間」「入力ミスやセル参照の誤りが気になる」という方も多いでしょう。

そこで便利なのが、CAGRを自動計算するExcelテンプレートです。

 入力するだけで結果が出る、シンプル構造

次のように、3つのセルに数値を入力するだけで、CAGRが自動計算されます:

A列 B列(入力欄)
初期値 100
最終値 180
年数(年) 5
CAGR(年平均成長率) =POWER(B3/B2,1/B4)-1

※ 表示形式を「パーセンテージ(小数点第2位)」に設定するとより見やすくなります。

コピペで簡単に利用可能

  • この記事内の式をコピペして、自分のシートに貼り付けるだけでも利用可能です。

カスタマイズのヒント

  • グラフと連動させて、期間ごとの成長率比較を視覚的に表現
  • 過去実績と目標を並べて表示し、目標CAGRを逆算する機能を追加

など、業務フローに合わせた「実用的な分析ツール」として発展させることもできます。

注意点と落とし穴に気をつけよう

CAGRは非常に便利な指標ですが、使い方を誤ると実態とかけ離れた判断につながるリスクがあります。ここでは、実務でよく見られる注意点を2つ紹介します。

 イレギュラー年がある場合の対処法

CAGRは「一定の成長率が続いた」という仮定に基づいているため、例えば1年だけ大幅な成長や下落があった場合でも、平均的に”均される”特性があります。

 例:

  • コロナ禍などの外部要因で一時的に売上が急増/急減した場合
  • 新規事業の立ち上げ直後など、数値変動が激しい時期

このようなケースでは、年次の詳細データとあわせてCAGRを提示することで、より正確な理解を促せます。

 過去の数値に過度に依存しない

CAGRは過去の実績に基づく指標のため、将来予測に用いる際には注意が必要です。

  • 過去5年間が好調でも、市場環境や内部要因の変化により再現性が低い可能性がある
  • 市場の転換点や競合状況の変化など、「外部環境の変化」を考慮しないと誤った判断につながる可能性も

 補足: 将来シミュレーションとして活用する場合は、複数の前提条件を設定してシナリオ別のCAGRを比較検討するのが効果的です。

 実務ポイントまとめ:

「CAGRは万能ではない」という認識を持ち、あくまで”傾向を把握するためのツール”として、補足情報や前提条件を明確にすることが重要です。

応用Tips:逆算して目標CAGRを求める方法

CAGRは「過去の成長評価」だけでなく、将来目標から必要な成長率を逆算する際にも有効です。

例えば、「5年後に売上を現在の2倍にしたい」という目標がある場合、”毎年どの程度の成長が必要か”をCAGRで計算することで、具体的なアクションプランの策定に役立ちます。

 計算式(目標逆算バージョン)

逆算の場合も基本的なCAGR計算式と同じです:

CAGR = (目標値 ÷ 現在値)^(1 ÷ 年数) − 1

 使用例:

  • 現在の売上:5億円
  • 5年後の目標:10億円

= (10億 ÷ 5億)^(1/5) − 1 ≒ 0.1487(=約14.87%)

 この結果から、「5年で売上を倍増するには、年平均14.87%の成長が必要」と導き出せます。

 活用シーンの例

  • 中期経営計画:最終年度の目標値から、KPI設計や行動計画を具体化
  • 営業・事業部別予算:必要な成長率を明確にし、月次・四半期目標に落とし込み
  • 社内プレゼン資料:「この成長目標を達成するには○%のCAGRが必要」という客観的な根拠を提示

 ポイントまとめ: 目標からCAGRを逆算することで、「実現可能性」と「必要な施策」を具体的に議論できるようになります。経営層への提案資料にも効果的です。

 まとめ|CAGRは武器になる

CAGR(年平均成長率)は、売上や利益の伸びを一貫したペースで評価できる指標として、経営判断や資料作成の現場で幅広く活用されています。特に中長期の成長性を説明する場面では、CAGRを活用することで、数字に一貫性と説得力を持たせることができます。

Excelでの計算方法も、数式や関数を適切に理解すれば、確実に再現できます。コピペ可能な計算式やテンプレートを活用することで、業務効率も向上します。

CAGRを適切に使いこなすことは、ビジネスにおける信頼性の高いデータ提示につながり、意思決定の質を高める重要な要素となるでしょう。

 よくある質問(FAQ)

Q1. 何年分のデータがあればCAGRを計算できますか?

  1. 最低限初期値・最終値・期間(年数)の3つがあれば計算できます。中間年のデータは必須ではありませんが、分析の精度を高めたい場合は年次の実績も併せて確認することをお勧めします。

Q2. マイナス成長のときもCAGRは使えますか?

  1. 初期値より最終値が小さい場合(マイナス成長)でもCAGRの計算は可能です。ただし、値がゼロやマイナスになると計算自体が成立しません(ゼロ除算・負の累乗など)。その場合は別の指標を検討する必要があります。

Q3. CAGRと単純平均の違いは何ですか?

  1. 単純平均は年ごとの成長率を足して割る計算で、変動の影響を受けやすい特徴があります。一方、CAGRは複利原理に基づく幾何平均であり、「毎年同じ割合で成長したと仮定した場合」の数値を算出するため、長期的なトレンド把握に適しています。

Q4. CAGRはどんなときに使うべきですか?

  1. 以下のようなケースでの活用が効果的です:
  • 中長期(3年以上)の成長傾向を評価したいとき
  • 年ごとの変動が大きい数値を、平均的な成長率で表現したいとき
  • 複数事業や市場を横並びで客観的に比較したいとき

ビジネス成長を支援するパートナーとしてのご提案

CAGRの基本からExcelでの活用方法までご理解いただけたかと思います。数値の裏づけを持ち、論理的な資料作成や成長戦略の立案を進めたいとお考えの方に、最後にひとつご提案があります。

フィンチジャパンは、事業開発、DX推進を支援するコンサルティング会社です。

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実効性のある成長戦略の立案と実行支援を行なっており、CAGRの高い市場の探索を行なっています。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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