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クルエルティフリーとは?化粧品業界で注目される背景と“エシカル消費”時代の対応法

                   
ミレニアル世代
公開日:2019.03.12更新日:2025年6月13日

クルエルティフリーとは?化粧品業界で注目される背景と“エシカル消費”時代の対応法

クルエルティフリーとは?注目される理由と背景

 クルエルティフリーの定義と意味

クルエルティフリー(cruelty-free)とは、直訳で「残酷性がない」を意味します。具体的には、化粧品や日用品、医薬品の開発・製造プロセスにおいて、動物実験を一切行わない方針や製品を指します。動物に化学物質を投与して人体への安全性を確認するという行為に対する倫理的な懸念が背景にあります。

この概念は近年、消費者のエシカル意識の高まりやSDGsの浸透とともに再注目されており、商品を選ぶ際の新たな基準として定着しつつあります。

 なぜ今、クルエルティフリーが支持されているのか

現代の消費者、特にミレニアル世代やZ世代を中心に、「社会にとってよい商品を選ぶ」という価値観が広がっています。動物福祉の観点から、動物実験を前提とした商品開発は“残酷”であるという認識が浸透し、クルエルティフリー製品が選ばれる理由になっています。

さらにSNSを通じた発信のしやすさも影響しています。企業の姿勢が可視化されやすくなった今、消費者は企業の倫理的態度をブランド評価に組み込むようになっているのです。

 クルエルティフリーとヴィーガンの違い

「クルエルティフリー」と「ヴィーガン」は混同されがちですが、意味は異なります。

  • クルエルティフリー:動物実験を行っていないこと(製造過程における姿勢)
  • ヴィーガン:動物由来成分を含まないこと(製品の原料に着目)

つまり、クルエルティフリーでも動物由来成分を含むことがあり、「動物実験なし=ヴィーガン」ではない点に注意が必要です。倫理的配慮を重視する消費者にとって、両方の条件を満たす商品がより理想的な選択肢とされます。

クルエルティフリーの歴史と国際動向

 動物実験の歴史と社会的な問題提起

化粧品や医薬品の安全性を検証する手段として、長らく動物実験は“当然の工程”とされてきました。例えば、ウサギの目に化学物質を投与して刺激性を確認するドレイズテストなどが代表的です。

しかし20世紀後半から、こうした実験に対して倫理的な批判や市民運動が世界中で活発化。特に1990年代以降、動物の権利保護団体や消費者団体によるボイコット活動が加速し、企業や政府に対する圧力が高まっていきました。

 欧州を中心とした法規制の進展

クルエルティフリーに関する法的規制の先駆けはヨーロッパです。2013年、EUは化粧品の開発・製造における動物実験を全面的に禁止しました。これは、原料段階から最終製品までの動物実験を含めて完全に規制するという世界的に画期的な措置でした。

加えて、動物実験を行った製品の輸入・販売も禁止対象とし、「倫理に反する商品は市場に出さない」という強い姿勢を打ち出しました。

 世界に広がるクルエルティフリーの波

EUの方針は他国にも影響を与え、現在ではイギリス・スイス・ノルウェー・インド・イスラエル・メキシコなど、多くの国々で化粧品の動物実験が禁止されています。

アメリカでも州単位で法規制が進行しており、カリフォルニア州などは既にクルエルティフリー製品の義務化を進めています。南米のブラジルも同様の法律を施行し、クルエルティフリーはグローバルスタンダードになりつつあるのです。

 

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クルエルティフリー認証の種類と意味

 なぜ認証マークが重要なのか?

クルエルティフリー製品は、見た目やパッケージだけでは判別が難しいため、認証マークの存在が消費者の信頼性を担保する指標となっています。

特に近年では、企業が“クルエルティフリー風”の表示を行うケースもあり、「公式な第三者認証があるかどうか」が重要な判断基準となってきました。

 主な認証マークと特徴

リーピングバニー(Leaping Bunny)

世界的に最も信頼されている認証の一つで、Cruelty Free Internationalが運営しています。特徴は以下の通りです:

  • 製品開発の全工程で動物実験を行っていないこと
  • サプライチェーン全体(原料提供者も含む)の審査が必要
  • 年次更新・監査が義務付けられており、取得のハードルが高い

その厳格さから、企業がこのマークを掲げること自体が「本気で取り組んでいる証拠」となります。

PETA「Beauty Without Bunnies」

動物の権利保護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)が提供する認証。下記の2パターンがあります:

  • 「Cruelty-Free」:動物実験を行っていない
  • 「Cruelty-Free & Vegan」:動物実験なし+動物性成分不使用

企業は申請と署名だけで認証を受けられるため、取得ハードルは比較的低め。ただし、PETAは登録企業リストを公開しており、透明性が高いという特徴があります。

IHTK認証(ドイツ)

IHTKは、動物・消費者・環境保護を重視した認証制度を運営しているドイツの団体です。特徴的なのは以下のような厳しい基準です:

  • 動物実験だけでなく、動物を殺して得る成分も禁止
  • パーム油や一部の自然原料さえも禁止
  • 認証違反には違約金という厳格な制度あり

欧州の中でも特に厳しい基準を誇るこの認証は、企業姿勢を評価するうえでの重要な指標です。

 消費者視点でのチェックポイント

  • 製品に「認証マーク」が印刷されているか?
  • ブランド全体が認証を取得しているか、特定製品のみか?
  • ウェブサイトや店舗でも認証について明記されているか?

こうしたポイントを確認することで、安心して選べるクルエルティフリー製品を見極めることができます。

 クルエルティフリー市場の成長とミレニアル世代の影響力

 若年層を中心に広がる“エシカル消費”の価値観

かつてはニッチな選択肢だったクルエルティフリー製品ですが、近年ではミレニアル世代やZ世代の価値観の変化によって、急速に広がりを見せています。

彼らは商品そのものの価格や品質だけでなく、「どんな背景でつくられたか」「社会にとって良い選択か」という倫理的基準(エシカル消費)を重視します。これは“安ければ良い”という従来の消費行動からの大きな変化です。

 SNSによる価値観の波及とブランド選定への影響

ミレニアル世代はSNSを日常的に活用しており、彼らの“買い物”は単なる個人行為ではなく、「自分の価値観を発信する行為」にもなっています。

例えば、インスタグラムやYouTubeでクルエルティフリー商品を紹介するインフルエンサーの影響力は非常に強く、「このブランドは動物実験をしていない」という情報が広まることで、一気に認知と売上が拡大するケースも少なくありません

つまり、企業がクルエルティフリーに対応することは、倫理的配慮に加えてマーケティング戦略としても有効なのです。

 市場の数値で見る広がり

例えばイギリスでは、ヴィーガンの人口が2014年から2023年にかけて3倍以上に増加しており、その多くがミレニアル世代です。また、欧州におけるクルエルティフリーコスメ市場は年々成長を続けており、2025年までに30億ドル規模に達すると予測する調査もあります。

このように、消費行動の変化に呼応して、企業が倫理性に対応できるかどうかはブランド価値に直結するようになってきているのです。

【事例】世界・日本のクルエルティフリーブランド紹介

 海外ブランドの先進事例

MAC(米国・エスティローダーグループ)

MACは、メイクアップブラシに動物の毛を使わないことをSNSで公表し、クルエルティフリーへの積極姿勢を打ち出しています。同社は合成繊維の高品質化に成功し、使用感と動物福祉の両立を実現しました。

米国本社では全面的な動物実験廃止には至っていませんが、市場ニーズとミレニアル世代の影響力を先読みしたブランド戦略が評価されています。

https://seekingalpha.com/article/4113577-unilever-invests-beauty-bakerie-millennial-beauty-products

The Body Shop(英国)

クルエルティフリーの代名詞とも言えるThe Body Shopは、1989年から動物実験反対運動を展開。現在では、世界中の全製品がリーピングバニー認証を取得しています。さらに、政治的なロビイングを通じて法制度の整備にも貢献しています。

bareMinerals(米国)

“スキンケアできるミネラルファンデーション”で知られるbareMineralsは、ヴィーガン・クルエルティフリー両対応の製品ラインを拡充。自然派志向の顧客から高い支持を得ており、透明性の高い原料開示が消費者との信頼関係構築に繋がっています。

 日本国内ブランドの取り組み

ナチュラグラッセ(ネイチャーズウェイ)

日本国内において数少ないクルエルティフリー対応ブランドのひとつであるナチュラグラッセは、動物実験フリー+天然素材使用を掲げています。化粧品ブランドとして、国内での普及啓発の役割も担っています。

コスメキッチン取り扱いブランド

オーガニック&ナチュラル系製品を多く扱うコスメキッチンでは、認証付きの海外ブランドを積極的にセレクト。販売スタッフによる啓発や、店頭でのポップ表示などを通じて、消費者の意識醸成にも貢献しています。

 フィンチジャパン的視点:事例に学ぶブランド戦略

これらの事例に共通しているのは、「倫理的配慮と技術革新の両立」です。

  • ただ動物実験を止めるのではなく、それに代わる品質担保手法を用意している
  • クルエルティフリーをブランディング要素にまで昇華させている
  • SNSや店舗体験を通じて、消費者との共創型の価値提供を行っている

これは単なる消費トレンドではなく、企業の姿勢が問われる時代の「当たり前」となりつつあるのです。

日本企業はどう対応すべきか?今後のアクション指針

 日本の現状:まだ“追従”の立場にある

現在、日本の化粧品業界では動物実験を禁止する法制度は整っておらず、企業ごとの判断に任されているのが実情です。そのため、海外市場に製品を輸出する場合には、EU向けにクルエルティフリー製品を作り、他地域には従来製品を供給するという“分岐戦略”を取る企業も存在します。

しかし、こうした表面的な対応では、消費者や投資家からの信頼を維持することは今後ますます困難になります。クルエルティフリーへの対応は「選択肢」ではなく「前提条件」になりつつあるのです。

 対応を進めるための3つのステップ

自社製品の棚卸と原料・工程の見直し

まずは製品群の中で動物実験が関与している可能性のあるラインを棚卸し、製造工程・サプライヤーの透明化を進めることが第一歩です。

認証取得の検討とガイドライン整備

次に、リーピングバニーやPETAなどの信頼ある認証の取得を目指しましょう。これは単なるステータスではなく、対外的な信頼構築の武器となります。
あわせて、社内でのクルエルティフリーに関する方針ガイドラインの明文化も重要です。

ブランドメッセージ・PRとの連携

最後に、取り組みを単なる裏方業務で終わらせず積極的にストーリーとして発信していく必要があります。例えば:

  • 「動物にも、あなたの肌にもやさしい」
  • 「未来世代のスタンダードを、今から。」

このようなビジョンと一貫したPRメッセージを設計することで、共感を軸にしたブランドファンづくりが可能になります。

 クルエルティフリー対応がもたらす“経営的メリット”

  • 市場拡大への対応(海外展開・ミレニアル層の獲得)
  • ESG評価向上(投資家へのアピール)
  • 炎上リスク回避(非対応ブランドへの批判リスク軽減)

これらの視点からも、クルエルティフリーへの対応は単なる倫理の問題ではなく、経営戦略の一環として重要度を増しています。

まとめ:社会課題としての「動物実験」から未来の企業像を考える

 クルエルティフリーは一過性のトレンドではない

動物実験の廃止は、単なる一部の感情的な主張ではなく、倫理・環境・経済が交差する“未来の当たり前”となりつつあります。
欧州ではすでに法規制が進み、アメリカや南米、アジア諸国にもその動きは広がっています。

こうした背景を受け、クルエルティフリーは“差別化の武器”から“対応していなければリスク”へと変化しています。

 日本企業が問われる「社会との接続力」

今、日本企業に求められているのは、商品そのものの品質を超えた、社会課題への姿勢です。

  • 「なぜこの製品をつくるのか」
  • 「どうやってつくっているのか」
  • 「誰のためになるのか」

こうした問いに対して、企業が自らの言葉で語れるかどうかが、ブランドの信頼性と持続性を左右します。

 未来を見据えたクルエルティフリー対応を

クルエルティフリー対応は、単なる対応義務ではなく、未来志向のブランド構築の一環としてとらえることが重要です。

  • 「技術革新をどう活かすか」
  • 「透明性あるサプライチェーンをどう築くか」
  • 「どんな社会貢献の形を描けるか」

これらを踏まえて行動する企業こそが、消費者・投資家・社会から信頼される企業として成長していくのではないでしょうか。

企業としてクルエルティフリーに取り組むなら、今がその第一歩

本記事を通して見えてきたように、クルエルティフリーは単なる製品開発の選択肢ではなく、企業の姿勢やビジョンを映し出す社会的なメッセージでもあります。
「どのように社会と向き合うか」がブランドの価値となる今、クルエルティフリーへの対応は、未来志向の企業づくりと強く結びついています。

このような変化に対応し、企業として一歩踏み出すための戦略設計や実行支援を行っているのが、私たちフィンチジャパンです。

フィンチジャパンは、DXや新規事業開発、既存事業の再成長など、企業が社会変化に適応しながら“持続的に成長する”ための支援を専門としています。
クルエルティフリーを含むサステナブルな事業戦略においても、経営戦略・商品開発・マーケティング支援を一貫してサポートしており、企業の変革を伴走型で後押ししています。

新たな価値を市場へ届けたい、社会課題をビジネスチャンスとして捉えたい——
そんな思いをお持ちの企業の皆さまと、“次のスタンダード”を共に描いていくことが、私たちの使命です。

 

フィンチジャパンからのご提案|クルエルティフリー戦略を経営の武器に

私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

こんなお困りごとはありませんか?

  • クルエルティフリー対応を進めたいが、どこから着手すればよいか分からない
  • 海外市場向けに倫理性の高いブランドを構築したい
  • ESG対応をビジネス戦略にどう組み込むべきか悩んでいる
  • サプライチェーンや認証の透明性をどう担保するか不安がある

クルエルティフリー対応は、単なる商品開発の話ではありません。企業の姿勢が問われる今、「どう取り組むか」は経営課題そのものです。フィンチジャパンでは、こうした複雑なテーマを“経営戦略”として位置づけ、構想から実行までを伴走型で支援しています。

私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。

  • 化粧品メーカーL社:予防市場の新サービス開発を支援(1年)
  • 化粧品メーカーD社:研究開発プロセスの改革支援(約3年)
  • 化粧品メーカーI社:ブランドマネジャー制度の設計と定着支援(約8ヶ月)

サステナブルな取り組みを「一過性の対応」で終わらせず、事業とブランドを成長させる戦略に変換する——私たちはそのための“次の一手”をご一緒に描きます。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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