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AI業務改善はなぜ「個人の効率化」で止まる?組織の業務を変える進め方と事例を解説

                   
AI・人工知能
公開日:2026.09.28更新日:2026年9月28日

生成AIを使って、メール作成や資料の要約、情報収集が速くなった。にもかかわらず、「会社全体ではあまり仕事が減っていない」と感じることはないでしょうか。

AIによる業務改善では、個人の作業を速くするだけでなく、業務の流れそのものを見直すことが重要です。

本記事では、AI業務改善が個人利用で止まりやすい理由から、業務を組織単位で変えていくための進め方、実際の事例まで解説します。

AI業務改善が「個人の効率化」で止まりやすい理由

生成AIの導入によって、多くの仕事を以前より短時間でこなせるようになりました。

しかし、「一人ひとりの仕事が速くなること」と「組織全体の業務が変わること」は同じではありません。

生成AIで一人ひとりの仕事は速くなった

生成AIが得意とするのは、文章作成、要約、検索、アイデア出し、データ整理などです。

例えば、これまで30分かけて作成していたメールのたたき台を数分で作ったり、長い会議資料を短時間で要約したりできます。

こうした活用だけでも十分な価値があります。

実際、JCBではMicrosoft 365 Copilotの活用により、よく使われるユースケースの合計で、利用者1人あたり平均約6時間/月の削減効果が確認されています。

参考:Microsoft導入事例

問題は、その先です。

個人が1時間短縮できても、その後に上司確認、別システムへの転記、部署間の承認、定例会議などが残っていれば、組織全体の業務時間は思ったほど減りません。

業務フローや承認プロセスは変わっていない

AI導入後も業務の進め方が以前のまま、というケースは珍しくありません。

例えば報告書作成をAIで速くしても、

担当者が報告書を作る
→ 課長が確認する
→ 修正する
→ 部長へ送る
→ 会議で改めて説明する
→ 内容を別システムへ転記する

という流れが残っていれば、改善できたのは一工程だけです。

この場合、本当に見直すべきなのは「報告書をどう速く書くか」だけではありません。

そもそも報告書は必要なのか、データから自動生成できないか、確認作業を減らせないか、会議と報告書が重複していないか、といった業務全体の問い直しが必要です。

「AIを使うこと」が目的になると成果につながりにくい

AI業務改善で起こりやすいのが、「AIを何人が使ったか」「プロンプトを何個作ったか」といったAI利用自体が目的になることです。

しかし、企業にとって本当に重要なのは、

「AIを使ったか」

ではなく、

「仕事がどれだけ減ったか、速くなったか、品質が上がったか」

です。

AI導入は手段にすぎません。

業務改善の出発点は、AIに何ができるかではなく、現在の業務のどこに問題があるのかを見ることです。

 

AIを使った業務改善とは?

AI業務改善には、大きく分けると二つの段階があります。

一つは、現在の業務をAIで効率化すること。

もう一つは、AIを利用できることを前提として、業務の流れそのものを見直すことです。

AIで既存業務を効率化する

最初の段階では、現在人が行っている作業の一部をAIで支援します。

例えば、

  • 文章を作成する
  • 情報を検索する
  • 議事録をまとめる
  • 資料を要約する
  • データを分類する

といった作業です。

比較的導入しやすく、すぐに成果が見えやすいため、AI業務改善の第一歩として有効です。

ただし、ここだけでは「現在の仕事をAIで少し速くした」状態にとどまります。

AIを前提に業務プロセスを見直す

次の段階では、「現在人が行っている作業をAIに置き換える」という発想から離れます。

例えば毎週作成している報告資料があるなら、

「AIで報告資料を速く作ろう」

ではなく、

「そもそも毎週資料にまとめる必要があるのか」

「必要なデータを自動取得し、必要な人が直接確認できないか」

「異常があったときだけAIが通知する仕組みにできないか」

と考えます。

ここまで踏み込むと、改善対象は「作業」ではなく業務プロセスになります。

業務改善とAI BPRの違い

BPR(Business Process Re-engineering)とは、既存の業務プロセスを部分的に改善するだけでなく、目的からさかのぼって抜本的に再設計する考え方です。

そのため、AI業務改善とAI BPRは完全に別物というより、改善の深さが異なると考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、

「会議の議事録をAIで作る」

なら業務効率化です。

一方、

「会議後の報告・共有・確認まで含めて見直し、そもそも議事録作成という作業自体を減らす」

ところまで進めれば、BPRに近づきます。

重要なのは、すべての業務で大規模なBPRを行うことではありません。

まず小さくAIを活用し、効果が見えた業務について、必要に応じてプロセス全体の再設計へ進むことが現実的です。

 

AI業務改善は何から始める?5つのステップ

AI業務改善では、いきなりAIツールを選ばないことが重要です。

先に業務を見て、その後にAIを考えます。

STEP1|業務を棚卸しして全体像を把握する

まず、自部署で行っている業務を書き出します。

業務名だけでなく、

  • 誰が担当しているか
  • どのくらいの頻度で行うか
  • どれくらい時間がかかるか
  • どのシステムを使っているか
  • 誰の確認が必要か

まで整理すると、改善対象を見つけやすくなります。

「AIで何をしよう」と考える前に、現在何に時間を使っているのかを把握することが第一歩です。

STEP2|ムダ・重複・ボトルネックを見つける

次に、棚卸しした業務から問題を探します。

例えば、

同じ情報を複数のシステムへ入力している
複数人が同じ内容を確認している
承認待ちで作業が止まる
毎月同じ資料を手作業で作っている
特定の担当者しか進められない

といった部分です。

AIが力を発揮しやすいのは、このような反復作業、情報整理、検索、分類、文章生成などが含まれる業務です。

STEP3|まず「やめられる業務」を検討する

AI業務改善では、「何をAI化するか」より前に、「何をやめられるか」を考えることも重要です。

不要な業務をAIで高速化しても、不要な仕事が高速で続くだけです。

例えば、

  • 誰も活用していない定例資料
  • 目的が曖昧になった会議
  • 別の報告と内容が重複している集計
  • 過剰な承認プロセス

などは、AI導入以前に廃止・統合できる可能性があります。

やめる→整える→AIを使う

という順番で考えることで、改善効果を大きくしやすくなります。

STEP4|人とAIの役割を分けて業務を再設計する

残す業務が決まったら、人とAIの役割を考えます。

すべてをAIに任せる必要はありません。

例えば、

AIが情報を収集する
→ AIが内容を整理する
→ 人が重要な判断を行う
→ AIが資料にまとめる
→ 人が最終確認する

という分担も可能です。

特に、顧客への重要な連絡、契約、採用、価格判断など、企業として責任を伴う部分には、人による確認を残したほうがよい場合があります。

AI業務改善では、「AIに任せる仕事」と「人が担う仕事」を設計すること自体が重要な仕事になります。

STEP5|小さく試して、効果を測る

最初から全社展開する必要はありません。

一つの部署、一つの業務から試します。

その際には、

  • 何時間減ったか
  • 処理時間が何日から何日に短縮したか
  • ミスが減ったか
  • 品質が上がったか
  • 担当者の負担が減ったか

など、Before/Afterを測れる指標を決めておきます。

数字で成果を確認できれば、次の業務や他部署へ展開する判断もしやすくなります。

 

AI業務改善の事例|「時短」と「業務再設計」は何が違う?

AI業務改善と一口に言っても、その深さには大きな差があります。

一つの作業を短縮する取り組みもあれば、業務プロセスそのものを見直す取り組み、さらに部門をまたいだ意思決定の仕組みまで変える取り組みもあります。

ここでは、その違いが分かりやすい3つの事例を紹介します。

事例1|JCB:生成AIで日常業務を効率化し、1人あたり月約6時間を削減

JCBでは、Microsoft 365 Copilotをメール作成、会議、情報整理、資料作成など日常業務に活用しています。

2025年11月に公開された事例によると、2025年3月時点で月間平均利用率は83%に達し、利用頻度の高い上位5つのユースケースでは、利用者1人あたり平均約6時間/月の削減効果が確認されました。

この事例が示しているのは、生成AIによる「個人の生産性向上」の効果です。メールの下書き、情報検索、資料作成といった日常業務は、生成AIと相性がよく、多くの社員へ横展開しやすい領域でもあります。

一方で、この段階では既存の業務プロセス自体が大きく変わっているとは限りません。

つまり、AI業務改善の第一歩として個人作業の効率化には大きな意味があるものの、組織全体の生産性をさらに高めるには、前後の工程まで視野を広げる必要があるということです。

参考:JCB boosts work efficiency with adoption of Microsoft 365 Copilot|Microsoft Customer Stories

事例2|UACJ:生成AIを「ツール導入」ではなくBPRの一環として活用

アルミニウムメーカーのUACJでは、KPMGコンサルティングとともに、生成AIを活用した業務改革に取り組んでいます。

特徴的なのは、生成AIを全社へ一斉導入するのではなく、2025年の社内ヒアリングを踏まえて財務、人事、設備などの業務から対象領域を選定し、業務上の負荷が大きい8つのユースケースでトライアルを始めた点です。例えば設備投資の稟議・決裁では、複数段階の会議に向けて大量の資料を作る既存プロセスそのものに着目しています。

2026年8月公開の事例では、8件のユースケースのうち7件が実用段階に達し、削減時間は平均50%、大きいものでは70〜80%が見込まれているとされています。

重要なのは、同社自身がこれを単なる生成AI導入ではなく、BPRの一環として位置付けていることです。

同時に、技術的に使える状態になっても、現場では「失敗したら余計に手間が増えるのではないか」という不安から利用が進まないケースもあったといいます。これはAI業務改善の本質をよく表しています。システムを作れば改革が完了するのではなく、業務手順、現場の心理、上司の支援、KPIまで含めて変えて初めて定着するからです。

参考:UACJとKPMGが挑む、生成AI導入と業務変革。現場で価値を発揮する「生成AI活用」の秘訣とは|KPMG

事例3|カルビー:AIを使って部門をまたぐ意思決定プロセスを再設計

AI業務改善をさらに広げると、「一つの作業を速くする」だけでなく、部門をまたいだ意思決定の仕組みそのものを変えることもできます。

カルビーでは、AIを活用した全社最適シミュレーター「C-BOSS」を開発し、2026年7月から本格稼働させています。

C-BOSSでは、生産能力、ばれいしょの収穫可能量、製造費、輸送費、原材料費、販売見通しなど複数部門にまたがる情報を集約し、売上、利益、在庫、稼働率などを踏まえて供給計画をシミュレーションします。需要予測などには機械学習も活用されています。

従来は、営業、工場、物流など各部門の情報をつなぎ合わせてから判断していたものが、C-BOSS導入後は複数の販売・生産シナリオを損益ベースで比較し、制約条件を踏まえて意思決定できるようになりました。単なる作業時間の削減ではなく、意思決定のタイミングと部門間の連携方法まで変えている点が特徴です。

一方、システムを作っただけで定着したわけではありません。カルビーでは全国の工場や支店で100回以上の説明会を行い、アンバサダーの配置やマニュアル整備を進めています。2026年8月時点では定量的な効果はまだ算出途中とされており、運用しながら継続的に改善している段階です。

この事例から分かるのは、組織レベルのAI業務改善では「AIモデルの性能」以上に、データをどうつなぐか、誰が判断するか、現場へどう定着させるかが重要になるということです。

参考:カルビーが挑むジャガイモ収量の限界――自社開発AIでサプライチェーン最適化|MONOist

 

この3つの事例を並べると、AI業務改善には次のような段階があることが分かります。

個人の作業を速くする → 業務プロセスを組み替える → 部門をまたぐ仕事の仕組みそのものを変える

どの段階が正しいというわけではありません。重要なのは、自社がどの段階を目指しているのかを明確にしたうえで、AI活用の範囲を決めることです。

 

AI業務改善で成果を出すためのポイント

AI業務改善では、高性能なAIを導入したかどうかよりも、「どの業務に、どのような形で組み込んだか」が成果を左右します。

特に重要なのは、業務設計、人とAIの役割分担、評価方法、継続改善の4点です。

Point1. AIを導入する前に業務を見直す

AI業務改善でありがちな順序は、「便利そうなAIを見つける→使えそうな仕事を探す」です。

しかし、この順序では既存業務を前提に考えるため、改善が部分最適にとどまりやすくなります。

先に確認したいのは、その業務が何のために存在し、どこで時間がかかり、誰が判断し、どこで待ち時間が発生しているかです。業務の目的と流れが整理できれば、「この工程は廃止する」「この部分はルールベースで自動化する」「ここだけAIを使う」といった選択肢が見えてきます。

AIを導入する工程だけを見るのではなく、業務の入口から出口までを一つのプロセスとして捉えることが重要です。

Point2. 人が判断する仕事とAIに任せる仕事を分ける

AIは、大量の情報を読み、整理し、分類し、文章のたたき台を作る仕事に強みがあります。一方で、最終的な責任を伴う意思決定や、顧客・取引先との関係性を踏まえた判断まで無条件に任せられるわけではありません。

そのため、「AI化できるか」という二択で考えるより、業務を工程へ分解し、どこまでAIに任せるかを決めるほうが現実的です。

例えば稟議業務でも、過去事例の検索、内容の整理、規定との照合はAIが担い、例外的な案件の判断や最終承認は人が行う、といった設計が考えられます。

人が毎回AIの出力を一から確認していては、期待した効率化が得られません。逆に、確認をなくしすぎればリスクが高まります。AIの精度だけでなく、確認プロセスまで含めて設計することが重要です。

Point3. 成果を「利用率」ではなく業務KPIで測る

AI活用では、「社員の何%が利用したか」「プロンプトを何回入力したか」といった指標を追いがちです。

これらは定着状況を把握するには有効ですが、業務改善の成果そのものではありません。

本当に確認したいのは、処理時間、リードタイム、工数、コスト、ミス率、品質、顧客対応時間など、対象業務に直接関係する指標です。

例えば、月100時間かかっていた仕事が50時間になったのであれば、改善効果は明確です。さらに、空いた50時間を営業活動や企画などの高付加価値業務へ振り向けられれば、AI導入を単なるコスト削減ではなく、組織の生産性向上として評価できます。

Point4. AI導入後も業務プロセスを更新する

AI業務改善は、システムを導入した時点で完成するものではありません。

実際に使い始めると、想定していなかった確認作業が発生したり、ある工程を短縮した結果として別の工程が新しいボトルネックになったりします。また、AIの性能向上によって、導入当初は人が担当していた仕事を後からAIへ移せるようになることもあります。

そのため、運用後は「当初設定したKPIが改善しているか」「前後工程に新しい負荷が生じていないか」「人とAIの役割分担は今も適切か」という観点で定期的に見直します。

AI業務改善を一度きりのプロジェクトではなく、業務そのものを継続的に更新する仕組みとして捉えることが重要です。

 

AI業務改善を組織全体に広げるには

一部の社員がAIを使いこなしていても、そのノウハウが個人に閉じていれば組織全体の生産性は大きく変わりません。

次の段階では、「できる人を増やす」こと以上に、成功した使い方を業務の標準へ変えていく必要があります。

個人の工夫を「業務の標準」に変える

ある担当者がAIを使うことで2時間の仕事を30分にできても、その人が異動した途端に元のやり方へ戻ってしまうのであれば、組織としての業務改善とは言いにくいでしょう。

重要なのは、何をAIへ入力し、どのようなアウトプットを得て、どこを人が確認し、次の工程へどう渡すのかを整理することです。

つまり、プロンプトを共有するだけではなく、AIを含めた新しい業務手順として標準化する必要があります。

現場を知る管理職を巻き込む

AIやITの専門家だけでは、業務プロセスを変えきれないことがあります。

なぜなら、実際の業務には「この確認工程は以前の事故をきっかけに追加された」「この資料は実質誰も見ていない」「この作業は隣の部署でも同じことをしている」といった、システムやマニュアルだけでは見えない背景が存在するからです。

こうした情報を把握しているのは、日々その業務を担っている現場と、その業務全体を管理している管理職です。

特にAI業務改善が、担当者個人の作業を超えて承認方法や役割分担の変更に踏み込むほど、管理職の関与は重要になります。管理職にはAIの技術仕様を理解することより、業務の目的を問い直し、「何を残し、何をやめ、何をAIへ任せるか」を判断する役割が求められます。

小さな成功を「横展開できる型」にする

全社改革を最初から設計すると、対象業務も関係者も多くなり、検討に時間がかかります。

そのため、まずは対象を絞り、小さな業務で成果を作る方法が現実的です。

ただし、「A部署で成功しました」で終わらせず、成功した理由を分解することが重要です。対象業務の特徴、AIへ任せた工程、人が確認した箇所、必要だったデータ、導入前後のKPIまで整理すれば、他部署でも応用できる「型」になります。

横展開とは、同じAIツールを配ることではありません。成功した業務設計の考え方を再利用することです。

 

AI業務改善でよくある失敗

AI業務改善が期待した成果につながらない場合、原因はAIの性能そのものより、導入の進め方にあるケースが少なくありません。

ここでは、特に注意したい4つの失敗パターンを整理します。

ケース1. AIツールを導入して「活用は現場任せ」になる

全社員へ生成AIのアカウントを配布し、研修を行ったものの、その後は「各自で使ってください」という状態になるケースです。

この方法でも、一部の社員は自発的に活用し、作業時間を短縮できるでしょう。しかし、どの業務でAIを使うべきかが定義されていなければ、活用の度合いは社員の関心やスキルに依存します。

結果として、「AIを使いこなす人」と「ほとんど使わない人」が生まれ、会社として業務プロセスは変わりません。

AI活用を組織的な業務改善につなげるには、利用促進だけではなく、具体的な業務を選び、その業務のやり方自体を変えるところまで設計する必要があります。

ケース2. 非効率な業務を、そのままAI化する

既存業務をそのままAIへ置き換えることも注意が必要です。

例えば、毎週ほとんど読まれていない30ページの報告書がある場合、「AIで30ページを短時間で作る」という改善案は一見合理的に見えます。

しかし、本来考えるべきなのは「30ページの報告書が本当に必要なのか」です。

5ページにできるかもしれませんし、重要な変化だけを通知する仕組みにすれば報告書自体をなくせるかもしれません。

ムダな業務を自動化すると、「ムダを高速化する」結果になりかねません。 AIを当てる前に、その仕事の目的と必要性を問い直すことが重要です。

ケース3. AI化した工程だけを見て、前後のボトルネックを見落とす

一つの工程をAIで高速化しても、業務全体の処理時間が同じだけ短くなるとは限りません。

例えば資料作成を4時間から30分へ短縮しても、その後の上司確認に3日かかっているのであれば、顧客への回答速度はほとんど変わりません。

むしろ、上流工程を高速化したことで確認待ちの案件が一気に増え、新たなボトルネックが発生することもあります。

したがって、AI業務改善では「AIを使った工程の削減時間」だけでなく、業務全体のリードタイムがどう変化したかを見る必要があります。

ケース4. 現場の負担を考えずに新しい業務フローを導入する

AIを導入すれば最終的には業務が楽になるとしても、導入直後は、新しい操作を覚える、データを整備する、AIの結果を確認するといった追加作業が発生します。

この移行コストを無視すると、「今のやり方のほうが早い」という反応が生まれます。

実際、UACJの事例でも、削減効果が見込めるユースケースであっても、現場には「うまくいかなければリカバリー作業が増える」という不安があり、利用定着が課題になっています。

参考:KPMG

新しい仕組みを定着させるには、AIの機能説明だけでは足りません。導入時の負担を軽くすること、上司が試行を支えること、失敗したときに元へ戻せることなど、変化を受け入れやすい環境まで含めて設計する必要があります。

 

フィンチからの提案|AI導入ではなく、業務の再設計から考える

生成AIやAIエージェントの性能が高まるほど、「何をAIにやらせるか」に目が向きやすくなります。

しかし、AI業務改善で本当に問われるのは、ツールの性能ではありません。

重要なのは、現在の業務を分解し、「そもそも必要な仕事か」「人が行う必要があるか」「前後の工程とどうつながっているか」を考え直すことです。

フィンチジャパンでは、AI業務改善を進める際にも、まず現状業務を可視化し、ボトルネックを見極め、不要な業務を減らしたうえで、人とAIの役割を再設計することが重要だと考えています。

AI BPRは、人が行っている仕事を一つずつAIへ置き換えることではありません。

例えば、これまで「担当者が作る→課長が確認する→部長へ報告する→別の資料へ転記する」という流れで進めていた業務なら、その一工程をAI化するだけでなく、「そもそも誰が、どの情報を、何のために確認するのか」まで戻って考えます。

その結果、AIがデータを常時監視し、例外が起きたときだけ人へ知らせる仕組みに変われば、業務プロセスそのものが短くなる可能性があります。

AIが進化するほど、企業側に求められるのは「AIを使う能力」だけではなく、AIを前提として仕事を設計し直す能力です。

「生成AIを導入したが、社員ごとの活用で止まっている」「AIで時短はできたが、組織全体の生産性が上がった実感がない」という場合は、新しいツールを増やす前に、一度業務プロセス全体を見直すことが次の一歩になります。

フィンチジャパン公式はこちらから

 

よくある質問

AIを使った業務改善とは何ですか?

AIを活用し、業務時間の削減、品質向上、コスト削減、意思決定の高度化などを目指す取り組みです。

文章作成や要約など個別作業の効率化も含まれますが、より大きな成果を目指す場合には、AIを前提として業務フローや役割分担そのものを見直します。

AI業務改善は何から始めればよいですか?

最初に行いたいのはAIツールの選定ではなく、対象業務の棚卸しです。

業務の目的、担当者、工数、頻度、承認工程、利用データなどを整理し、ムダや重複、待ち時間が発生している場所を把握します。そのうえで「やめる」「簡素化する」「AIへ任せる」という順番で検討すると、AI導入そのものが目的になることを防ぎやすくなります。

AI業務改善とBPRの違いは何ですか?

AI業務改善は、AIを活用して業務の効率や品質を高める幅広い取り組みです。

一方、BPR(Business Process Re-engineering)は、既存の業務手順を前提とせず、業務の目的からプロセス全体を抜本的に見直す考え方です。

AI業務改善の中でも、人とAIの役割、承認方法、業務フローまで再設計する取り組みは「AI BPR」と捉えられます。

生成AIを導入するだけでは業務改善にならないのですか?

生成AIの導入だけでも、文章作成や情報検索、要約などでは十分な時短効果を期待できます。

ただし、個人の作業が速くなっても、その後に複数の承認、転記、会議、報告などが残っていれば、業務全体のリードタイムは大きく変わらない可能性があります。

個人の生産性向上から組織の生産性向上へ進むには、前後の工程まで含めて見直す必要があります。

AIに任せやすい業務にはどんなものがありますか?

大量の情報検索、文章作成、要約、分類、データ整理、定型的な問い合わせ対応などは比較的AIを活用しやすい領域です。

ただし、「業務全体をAIに任せられるか」ではなく、「業務のどの工程を任せられるか」で考えるほうが実践的です。

例えば顧客対応でも、問い合わせ内容の整理や回答案の作成はAIに任せ、重要顧客への最終回答は人が確認する、といった役割分担が考えられます。

AI業務改善で管理職は何をすべきですか?

管理職には、AIの技術そのものを開発する役割より、業務をどう変えるか判断する役割が求められます。

具体的には、改善対象となる業務の選定、不要な工程の廃止、人とAIの役割分担、部下や他部署との調整、成果指標の設定などです。

現場の業務を理解しながら、組織として仕事の進め方を変えられる立場だからこそ、AI業務改善では管理職の関与が重要になります。

AI業務改善を組織全体に広げるにはどうすればよいですか?

まず一部の業務で小さく試し、工数、リードタイム、品質などの変化を確認します。

成果が出た場合は、使用したAIツールだけを共有するのではなく、「どの業務をどう分解したか」「AIと人をどう役割分担したか」「どこを確認工程にしたか」まで整理します。

そうすることで、個人の成功事例を、他部署でも再現できる業務改善の型へ変えることができます。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』

PR Times記事

『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』

ZUU online記事

『https://zuuonline.com/authors/d7013a35』

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