【対談記事】アフターAI ── 「使いこなし」の熱狂を越え、実装のフェーズへ
公開日:2026.02.04更新日:2026年2月4日
本記事は、フィンチジャパン代表の高橋とひげおぢによるポッドキャスト『でじどうラジオ』第11回の対談記事です。今回は、投資家・シバタナオキ氏と尾原和啓氏の共著『アフターAI』を題材に、AIがもたらす真の変革について徹底解剖します。
今回の対談では、生成AIを単なる「便利なツール」として使いこなすブームの段階を越え、企業のビジネスモデルや社会基盤にどう組み込んでいくべきかという、より本質的な議論を展開しています。ハイプサイクルにおける「幻滅期」をあえて前向きに捉え、いかにして技術を産業の中に社会実装し、収益モデルを確立するかという、投資家とコンサルタント双方の視点から鋭く切り込んでいます。
AI変革の全体像を捉える「五つの波」の整理から、汎用AIから特定業界に特化する「バーティカル」へのシフト、さらにはAIをビジネスモデルの核に据えたSHEINの衝撃的な事例まで、これからの実装フェーズに不可欠な視点をご紹介しています。日本企業が陥りがちな「ツールの使いこなし」や「リスク管理」という外堀の議論を突破し、本丸であるビジネス変革へ向かうためのヒントが詰まった内容です。
目次
はじめに─投資家とコンサルタント、二人の著者
ひげおぢ:やってまいりました、デジどうラジオでございます。今日もひげおぢと高橋さんでお送りいたします。
フィンチ高橋:よろしくお願いします。
ひげおぢ:本日の課題図書は、シバタナオキさんと尾原和啓さんの『アフターAI』です。
フィンチ高橋:本屋さんでも平積みになってたね。
ひげおぢ:去年の7月に出た本なので、AIにおいて半年というのをどう評価するかという問題はあるんですけれども、私は相変わらず前書きと目次とあとがきしか読んでおりません。
フィンチ高橋:私はちゃんと全部読みましたよ。
ひげおぢ:実は今日、高橋さんとじっくり話したいのは「アフターAI」というタイトルそのものなんです。アフターAIって何?というところをディスカッションしたい。その前にお約束で、前書きと目次だけでこの本を読み解いてきたので披露させてください。
まずシバタさんは投資家ですね。楽天で新規事業を手がけたり、東大に行ったりと。カテゴリー分類やトレンドのマッピングに長けた方です。
尾原さんの方は東大の院からマッキンゼー、NTTドコモ、Google、楽天と華々しい経歴で、『アフターデジタル』という本でも知られています。新しい動きに対してアンテナの高い方という印象があります。
「アフターAI」とは何か─導入の是非はもう終わった
ひげおぢ:この本が扱う論点の仮説なんですが、生成AIを導入するかどうか考えている段階はもう遅いのではないかなと。どこからどう実装するかを考えなさいという論点で読み解いています。
フィンチ高橋:全体のトーンとしては、エージェントをどう使うかとか、生成AIって何ですかという話はもう終わっていて、むしろそういったものを会社の中に取り込んで社会実装していくことが「できない会社はリスクだ」とシバタさんは言い切っています。
あまたあるエージェント関連の本の中でも、シリコンバレーで投資をして、日本の大手企業で働き、アカデミアにも身を置いてきたマルチタレントな人の本というのはあまりなくて、幅広くて深い知見を400ページ近い本の中でまざまざと見せつけられる書籍になっている。
五つの波─エージェントは変革の一つにすぎない
ひげおぢ:この本はゲストを招いた形式なんですよね。既に生成AIを自社の業務に組み込んで実践している方を呼んで話を聞けるので、まるでカンファレンスに参加しているような気分になれる本だと感じました。
フィンチ高橋:実際に有識者を呼んで対談はしているんだけど、本としては対談形式にはなっていなくて、両方の知見が混ざり合うような構成になっている。だから有識者の意見がどこまでで、どこまでがシバタさんの意見かは判然としない。
ひげおぢ:ひょっとしたら対談をAIがまとめた可能性もあるかもしれないですね。前回『AIエージェント』を読んでから、本はエージェントが書くものだと頭が凝り固まっちゃったんでね。
フィンチ高橋:この本の前半で面白いのは、我々は「次はAIエージェントの時代だ」と言いがちだけど、シバタさんはAIの変革には五つの波があると整理している。一つ目は予測や画像認識、文字認識。二つ目はMicrosoftのCopilotのような伴走型。三つ目が自律的に働くエージェント。四つ目がロボットの協調。そして五つ目がシンギュラリティの先にある人工知能の世界。
エージェントというのはこの五つの波のうちの一つにすぎないという位置づけなんだよね。他の本と比べると、ぐっと視野が広い。
ひげおぢ:おそらくシバタさんが黎明期からテクノロジーを投資家として見てきたからでしょうね。
フィンチ高橋:まさに。AIのライフサイクル全体を見ているから、今どういうステージにあるかを時系列の中で語れている。僕らみたいに、ぽっと出のAIエージェントブームに乗ろうという魂胆とは全然違う。
ひげおぢ:あとがきにも、スマートフォンのように20年かけて熟成していくもので、やっと10年経ったぐらいの長期スパンだと書いてありました。視野が広いんですよね。つまり「アフターAI」であって「アフター生成AI」ではないということですね。
幻滅期を超えて─ハイプサイクルの中の「アフター」
フィンチ高橋:「アフター」を言葉遊びで見ると、この5〜6年で急速に普及してきたAIのブームがどうなってきたかという話が前半に書いてある。柴田さんの頭の中には1000社以上見てきた知見があり、NVIDIAやSkyWaterのような半導体の視点からAIのトレンドを見るコメントも結構あって、本当に投資家目線で視野が広い。
ひげおぢ:アフターAIって、じゃあ何なんでしょう。私の仮説は、AIが道具ではなく、もう業務プロセスの前提になる世界。PoCで止まらず、運用責任まで組み込んだ状態がアフターAIだと読み解いているんですが。
フィンチ高橋:半分は合ってる。柴田さんが言っているアフターAIというのは、もちろん技術が各業界に導入されていく話もあるんだけど、すごく面白いのは、これから先AIは順調に幻滅期に入るよと言っていること。
つまりハイプサイクルですよ。過剰にブームとして盛り上がってきて、ある意味「大したことなかったね」と幻滅される。すると、そういった技術はひっそりと社会実装されていく。マネタイズされていくと。この幻滅期をどう乗り越えて、ちゃんと産業の中に社会実装されていくのかを勝ち抜いた企業が収益モデルを確保する。
まさに健全に幻滅期に入って、どういう企業がどのように生き残っていくのかを業界別に整理しているような本だ。
ひげおぢ:なるほど。過度な期待があって熱狂している「その後」という意味もあるんですね。
熱狂の正体─万能論からバーティカルへ
ひげおぢ:じゃあ熱狂の時って何が起きているかというと、それこそ我々みたいに表面的にデジタル同僚だと飛びつく人が出てくる。
フィンチ高橋:耳が痛い。
ひげおぢ:まあ僕もそうですけど、いじってみて生成させてみて、そこで止まっちゃう。
フィンチ高橋:熱狂の中でいくつか柴田さんが説明しているのは、まず「何でもできる万能論」。議事録も書けるし、ミーティングにも参加できるし、顧客対応もできますよねと、過剰な期待がある。
それから、我々も「デジタル同僚」なんて言っちゃってるけど、ワークフォースを置き換えてくれるというリソース的な話。柴田さんはそういう夢物語の部分を「過剰なブーム」と言っていて、前半で結論を出してくれている。これからは「何でも使える」というところから、ヘルスケアではこう使う、営業やマーケではこう使うといったバーティカルがトレンドになっていると。
シリコンバレーでは「何でもできます」は開発トレンドとしてもう終わっていて、業界・業務に深く入っていけるスタートアップが注目されている。実務的・実践的なことができる世界にアメリカはもう入っているという話をしている。
SHEINの衝撃─AIをビジネスモデルのどこに組み込むか
ひげおぢ:一方で今、企業は汎用の生成AIを導入して「何でも使ってください」と。推進側のKPIは業務時間の削減で、みんなあくせくしている。議事録など、ホワイトカラーの可処分時間を捻出するという議論ではなくて、具体的にこういうことができましたとなっていくのがアフターAIということですね。
フィンチ高橋:そう。この本は表面的に生成AIやエージェントが世の中をどう変えるかという議論よりも、業界・業務の中でどのような課題解決ができるかに話があって、どの市場でどういう戦い方をするのか、コスト削減なのか付加価値創出なのかという、通常のスタートアップ投資と同じ目線でもうシリコンバレーは動いていますよ、と。
ひげおぢ:ところが結局、GoogleやGeminiが直接クラウドで解決できるよとなって、スタートアップが生き残れるのかという疑問もあります。
フィンチ高橋:確かにAppleも地味にAI機能を強化していて、この本の中ではほとんど触れられていないけど、大きなプレイヤーの動きは侮れないよね。ただ、この本で印象的だったのはSHEINの事例だ。
SHEINはAIをCopilotやGeminiの使いこなしとして使っているんじゃなくて、ファッショントレンドを世界中から見つけてきて、それを製造パターンに落とし込むところにAIを使っている。だからトレンドキャッチから製造までが驚くほど速い。みんなが「いいな」と思ったものがSHEINを開くと1,000円のワンピースになっている。圧倒的な競争力がある。
柴田さんが言っているのは、自分たちのビジネスモデルのどこにAIを組み込むと競争力の源泉になるかを紐解いて実装できた人たちが勝つということ。ところが日本の現場では、どうしてもAIツールの使いこなしが壁になる。
ひげおぢ:僕も今ちょっと胸が痛いです。どうしてもAIそのものをどう使うかという話になっちゃう。
外堀を埋めてから本丸─日本企業のまだるっこしさ
ひげおぢ:汎用ツールをどうやって社員に使いこなさせるかという議論が、まだ多いですよね。
フィンチ高橋:この本の中でもアメリカと日本の温度差がすごくあると書いてある。アメリカは熱狂的で、日本は温度感が低いとのこと。ただ僕の感覚では、日本の大手もかなり全社的にシフトしてAI活用を進めている。問題は、自分たちのビジネスモデルをどうAIドリブンにトランスフォーメーションするかという議論の3歩くらい手前で、ツールの使いこなしやリスクの議論をして外堀を埋めている段階だということ。真ん中の本丸の議論にまだたどり着けていない。柴田さんからすると、それがまだるっこしいんだろうなと。
ひげおぢ:DXをやっていた頃からずっと課題だったことが、AIでもそのまま続いている気がします。デジタルのことを考えてしまって、本当の目的であるトランスフォーメーション—自社のビジネスの価値をどう向上させるか—までいかない。
フィンチ高橋:日本企業のいいところでもあるんだけど、手触り感のあるものを使いこなしていく器用さはある。一方で、根本から自分たちの価値を見直して前例を崩して変えようという議論は基本的に苦手。自己変革というのは、やっぱりなかなか難しいところがある。
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この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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