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売れる化粧品を効率よく生み出すには?化粧品開発プロセスを戦略から見直す実践ガイド

                   
マーケティング
公開日:2025.05.23更新日:2025年5月23日

はじめに:化粧品開発は「戦略」から始まっている

化粧品の開発というと、成分や処方の設計、OEMとのやり取り、容器の選定など、目に見える「ものづくり」の工程を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実際にはそれよりも前の段階、すなわち「戦略の設計」こそが、ヒット商品を生み出す上で最も重要なステップです。

なぜなら、化粧品は単なる消費財ではなく、顧客の価値観やライフスタイルに深く結びついたプロダクトだからです。美しさや心地よさを提供する製品である以上、「誰に、どんな世界観で、どう響かせるのか」という戦略的な設計が、製品そのものの品質と同じくらい重要になってきます。

たとえば、同じ「美容液」でも、価格帯、パッケージ、訴求メッセージによって顧客層や購買理由は大きく変わります。つまり、化粧品開発は「機能」をつくるだけではなく、「共感される物語」をつくる営みともいえるでしょう。

近年では、SNSの普及や価値観の多様化により、開発スピードや柔軟性も求められるようになりました。その中で、「なんとなく良さそう」という感覚だけで企画を進めるのではなく、戦略的にプロセスを組み立てることが、ヒットの確率を高める鍵となります。

本記事では、「化粧品開発の流れ」を丁寧に解説しつつ、戦略的な視点から開発プロセスをどのように設計すべきか、実務のヒントも交えてご紹介していきます。

化粧品開発の流れ:基本フェーズとその目的

化粧品開発は、単なる製造工程ではなく、複数のフェーズが連携しながら価値を創り出すプロセスです。ここでは、大きく分けて3つの基本フェーズをご紹介します。それぞれの段階における「目的」を理解しておくことで、プロジェクト全体の精度とスピードが大きく変わってきます。

1. 企画立案フェーズ

化粧品開発の起点となるのが「企画立案」です。ここでは以下のような問いに答えていくことが重要です。

  • 誰の、どんな課題や願望に応える商品か?
  • どのような市場トレンドや競合環境があるか?
  • 自社ブランドとしてどのようなポジションを築くか?

このフェーズで重要なのは、単なるアイデア出しではなく、戦略的な意図を持ったコンセプト設計です。ターゲット顧客の行動や価値観、競合との差別化ポイントを明確にすることで、後工程のブレを防ぎます。

2. 仕様設計フェーズ(開発)

企画が固まったら、具体的な仕様設計に移ります。ここでは処方開発や容器選定、法規制への対応など、プロダクトの実現に向けた要素を積み上げていきます。

  • 成分の選定と安全性・有効性の検証
  • OEMメーカーとの連携(試作、コスト見積もりなど)
  • 容器やラベル、販促資材の設計
  • 薬機法や表示義務への適合確認

このフェーズは技術的な判断とビジネス的なバランス感覚の両立が求められます。社内外の関係者との密な連携により、コスト・品質・スピードのバランスを最適化することがカギとなります。

3. 製造・量産・納品

最終フェーズでは、実際の製造、検品、納品までを管理します。

  • 製造スケジュールと工程管理
  • 品質チェック・ロットテストの実施
  • 納期や物流の確認、販売チャネルへの納品調整

ここまでのプロセスを通じて、商品としての体裁が整います。発売後のプロモーションや売上動向に直結する工程でもあり、開発と営業・マーケティング部門の密な連携が欠かせません。

それぞれのフェーズで目的が異なるからこそ、全体像を理解し、チームで同じゴールを見据えることが成功の鍵となります。
次のセクションでは、こうした流れをより“成功に近づけるための視点”についてご紹介します。

化粧品開発を成功に導く“3つの戦略視点”

化粧品開発は、工程をなぞるだけでは成功しません。
特に市場環境や消費者の価値観が目まぐるしく変化する今、開発プロセスそのものを「戦略的」に捉える視点が欠かせません。

ここでは、ヒット商品を生み出すために必要な3つの重要な視点をご紹介します。

1. マーケティング視点:市場の変化をどう捉えるか

開発の起点となるのは、顧客理解です。
市場のニーズを掴むには、単なるアンケート結果や販売データだけでなく、生活者の価値観や感性に寄り添ったインサイトの発掘が必要です。

たとえば、「忙しい30代女性向け」のスキンケアでも、
・“ながら使い”を重視するのか、
・“自分を丁寧に扱いたい時間”を提案するのか、
によって製品設計やメッセージの方向性は大きく変わります。

生活者目線 × ブランド目線 × トレンド感度を掛け合わせることで、単なる製品ではなく「共感される提案」が可能になります。

2. 組織連携視点:マーケ・開発・製造の一体運営

化粧品開発は複数部門にまたがるプロジェクトです。
マーケティング、商品企画、開発、製造、品質管理…と多くの関係者が関わります。

このときよく起こるのが、
「マーケが描いた世界観を、開発が再現できない」
「製造の都合で仕様が変わり、企画とずれる」
といった部門間のギャップです。

成功している企業の多くは初期段階から多部門を巻き込む「共創体制」を築いています。
情報共有や意思決定のスピードを上げるための「プロジェクトマネジメント体制」も重要な鍵となります。

3. プロジェクト管理視点:成功確率を上げる仕組みづくり

良いアイデアや経験のあるチームだけでは、毎回うまくいくとは限りません。
必要なのは、再現性のあるプロセス設計と仕組みづくりです。

  • コンセプト設計のフレームワーク
  • プロジェクトの進行管理テンプレート
  • 判断ポイントの明確化と社内合意形成のステップ化

これらを整えることで、属人性を減らし、組織としての開発力を高めていくことができます。
特に中堅以上の企業では、担当者が替わってもブレない「ナレッジの蓄積」が、商品力の持続につながります。

このように、「感性」だけでなく「仕組みと戦略」を掛け合わせることで、ヒットの確率は大きく高まります。
次のセクションでは、実際の製品づくりにおいて重要となるOEMの活用とパートナー選びについて詳しく見ていきましょう。

OEM活用とパートナー選びのポイント

化粧品の開発において、多くの企業が活用しているのがOEM(受託製造)パートナーの存在です。特に自社に製造設備を持たない企業にとって、OEMとの連携は製品化を実現するうえで欠かせない要素となります。

しかし、単に「製造を依頼する相手」としてOEMを選ぶだけでは不十分です。
製品の品質・納期・コストはもちろんのこと、ブランドの世界観や商品戦略を実現できるパートナーかどうかが、成功を大きく左右します。

OEM選定で押さえるべき3つのポイント

  1. 得意分野と実績の確認

OEMごとに得意とする製剤(スキンケア、メイクアップなど)や技術領域があります。
自社が求める製品にマッチする技術力を持っているか、過去の製品事例や開発体制を確認しましょう。

  1. 試作〜量産までの柔軟性

開発初期の段階では細かな調整が必要になることが多く、柔軟に試作を重ねられる体制があるかどうかは非常に重要です。また、量産フェーズに入った際のスケール対応力(設備・生産能力)も確認しておくべきポイントです。

  1. コミュニケーションと提案力

仕様を伝えるだけでなく、「この目的ならこの処方がよい」「このパッケージならコストを抑えられる」といった主体的な提案ができるかどうかは、プロジェクト全体のスムーズさに直結します。

OEMは“共創パートナー”として選ぶ時代へ

以前は、「企画は自社・製造はOEM」と明確に役割を分けるスタイルが主流でしたが、現在では共にブランドを創り上げる“共創”の関係性が重視されています。

特にニーズの多様化が進む現代では、OEM側の技術的な知見や市場感覚を開発初期から活用することで、より現実的で売れる製品を生み出すことができます。

また、OEM選びの段階から「長期的に協業できるかどうか」を見極めることも、ブランド構築において大きな意味を持ちます。

信頼できるOEMとの関係構築は、単なる製品開発を超えて、ブランド戦略の一部として機能します。
次は、開発を進めるなかで見落とされがちな「落とし穴」と、それをどう回避するかについてお伝えします。

化粧品開発を進める上での落とし穴と回避策

どれだけ丁寧に戦略を練り、体制を整えても、化粧品開発には思わぬトラブルや“つまずきポイント”が潜んでいます。
実際、多くの企業が似たような理由で開発が遅れたり、期待した成果を得られなかったりしています。

ここでは、化粧品開発の現場でよく見られる3つの落とし穴と、それを未然に防ぐための実践的な対策をご紹介します。

1. コンセプトと仕様のズレ

最も多いのが、「企画で描いた理想」と「最終製品の仕様」がかけ離れてしまうケースです。

たとえば、

  • 想定していた使用感と実際の仕上がりが違う
  • 原価の制約から訴求成分を削らざるを得なかった
  • 法規制や表示ルールにより表現が制限された

こうした事態を防ぐには、企画段階での仕様イメージをより具体的に共有し、開発側とすり合わせる仕組みが必要です。
「この処方にしたい理由」「この世界観で訴求したい背景」など、言語化しにくい感覚も丁寧に共有することでズレを防げます。

2. 社内外の連携ミス

開発には複数部門や外部パートナーが関わるため、情報伝達や意思決定のスピードが遅くなったり、伝言ゲームのような状態に陥ったりすることがあります。

特に多いのが、

  • 社内での意思決定に時間がかかる
  • OEMや資材メーカーとの仕様確認が遅れる
  • 担当者間の認識がずれていたまま量産フェーズに入ってしまう

こうしたリスクを回避するためには、プロジェクト管理の役割を明確化し、定例ミーティングや共有ドキュメントなどで情報を一元管理する体制が有効です。

3. “売る仕組み”との乖離

開発に集中するあまり、販売やプロモーションといった「売る仕組み」との接続が弱くなるケースも少なくありません。

  • 商品が完成しても訴求軸が整理されていない
  • 店頭POPやECページの準備が間に合わない
  • 営業部門が商品の魅力を正しく伝えられない

これを防ぐには、開発段階から販売側の関係者(営業・マーケティング)を巻き込むことが有効です。
“つくる”と“売る”を切り離さず、ブランド体験として一貫性を持たせることが、成功の近道となります。

このように、化粧品開発では「工程」だけでなく、「連携」「体制」「販売設計」までを視野に入れることが、トラブルの防止につながります。

次は総まとめとして、変化の激しい市場における開発体制のあり方を整理していきましょう。

まとめ:変化の激しい時代に、確かなプロセス設計を

化粧品業界は今、これまで以上に変化のスピードが速まっています。
トレンドはSNSを通じて一気に広がり、顧客のニーズはますます多様化しています。そんな時代だからこそ、感性に頼るだけではなく、再現性と柔軟性のあるプロセス設計が求められています。

本記事でご紹介したように、化粧品開発は「商品をつくる」ことにとどまらず、

  • 誰にどんな価値を届けるかを見極める戦略
  • 社内外の連携を支える体制づくり
  • 感性と理性をバランスよく活かす共創の仕組み

といった視点を取り入れることで、その成功確率は格段に高まります。

特に、開発と販売を分けて考えるのではなく、ブランド全体の体験をどう設計するかという観点で取り組むことが、ヒット商品への道を切り開いてくれます。

今後の化粧品開発においては、単発的な成果ではなく、組織として“つくり続ける力”がより重要になってくるでしょう。
変化にしなやかに対応できるプロセスとチームの在り方を、ぜひ見直してみてください。

フィンチジャパンからのご提案|売れる化粧品を生み出す「戦略的開発プロセス」の構築に向けて

私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

こんなお困りごとはありませんか?

  • 開発初期のコンセプト設計が曖昧で、製品化までに何度も手戻りが発生してしまう
  • マーケ・開発・製造が連携しきれず、情報伝達や意思決定に時間がかかる
  • OEM選定に迷いがあり、ブランドの世界観と一致した製品が作れない
  • 感性頼みの開発に限界を感じており、再現性ある仕組みに移行したい

化粧品開発における成功の鍵は、「誰に、何を、どう届けるか」を戦略的に設計し、それを確実に実行できる体制とプロセスを構築することにあります。

私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。

  • 化粧品メーカーL社:予防市場の新サービス開発(1年)
    ブランド価値に沿った顧客インサイトの再定義と、開発~販売連携の強化による商品設計支援。
  • 化粧品メーカーD社:研究開発プロセス改革(約3年)
    部門横断の開発体制整備とプロジェクトマネジメント導入により、開発リードタイムを短縮。
  • 化粧品メーカーI社:ブランドマネジャー制度の設計・定着(約8ヶ月)
    企画~販売までの一貫推進体制を整備し、新商品ヒット率の向上を実現。

フィンチジャパンでは、業界特有の構造とニーズを深く理解した上で、御社の化粧品開発に最適な“仕組みと戦略”をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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