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成果につながる中期経営計画を作るには?実務で使えるフレームワークと設計手順を解説

                   
事業開発
公開日:2025.05.22更新日:2025年5月22日

中期経営計画とは

定義と目的

中期経営計画とは、企業が今後3年〜5年程度の中期的な方向性を明確にし、目指す姿とその実現に向けた戦略・アクションプランをまとめたものです。
経営層が自社のビジョンや市場環境を踏まえて「どこに向かうのか」「どうやってそこへ行くのか」を社内外に示すための重要な指針と言えます。

目的は主に以下の3点です。

  • 企業としての中長期的な成長戦略の明文化
  • 社内の意思統一と目標共有による組織の一体化
  • ステークホルダー(株主・金融機関など)への説明責任の履行

単なる数字の羅列ではなく、自社が何を選び、何に集中するかを言語化するプロセスこそが、中期経営計画の本質です。

短期・長期計画との違い

中期経営計画は、短期(1年単位の予算・計画)と長期(10年スパンのビジョン)をつなぐ“橋渡し”の役割を果たします。

  • 短期計画:予算、目標、アクションが中心。実行管理がメイン。
  • 長期ビジョン:理想像や目標の共有が主。抽象度は高め。
  • 中期経営計画:将来の方向性を具体化しつつ、現実的な戦略を立案。

言い換えれば、中期経営計画は「現実と理想をつなぐ地図」のような存在です。
短期で達成すべきことと、長期で目指す姿の間にある「数年後の現実的な目標」を示すことで、戦略と現場のギャップを埋めることができます。

なぜ今、中期経営計画が求められているのか

近年、外部環境の変化が激しさを増す中で、「従来の延長線では戦えない」と感じる企業が増えています。たとえば以下のような背景が挙げられます。

  • デジタル化や技術革新の加速
  • 市場ニーズや顧客行動の多様化
  • サステナビリティ、ESGへの対応
  • 人材不足や労働環境の変化

これらの変化に柔軟に対応するためには、ビジョンと実行計画を両立する「中計」の見直しが不可欠です。
単なる数値目標ではなく、「何に注力し、どこで勝つか」を明確にすることで、変化に強い企業体制を築くことができます。

策定に必要な基本フレームワーク

中期経営計画の策定では、「なんとなくの感覚」や「過去の延長線」だけで戦略を描くのは危険です。
そこで役立つのが、経営の現状や将来を整理・分析するためのフレームワークです。

フレームワークは、複雑な情報を整理し、意思決定を支える“思考の地図”のような存在。ここでは、中期経営計画の各フェーズで活用できる代表的なフレームを紹介します。

外部環境分析(PEST、ファイブフォース分析)

まずは、自社の外側にある「変化の波」を捉えることが重要です。外部環境の変化に敏感であることは、中期経営計画の質を大きく左右します。

  • PEST分析:政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4視点から、業界や社会の大きな流れを整理します。特に、法規制やテクノロジーの進化は、中計に大きな影響を与える要素です。
  • ファイブフォース分析(5F分析):業界構造における競争要因を5つの力(新規参入、代替品、買い手、売り手、競合)で分析。競争の激しさを客観的に捉えることで、自社の立ち位置や戦略の方向性が見えてきます。

内部環境分析(3C、SWOT、VRIOなど)

次に必要なのは、「自社の強みと課題」を見つめ直すこと。自社を客観視し、戦える領域を見極めます。

  • 3C分析
    Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)という3つの視点で自社の提供価値を分析。とくに競合との差別化ポイントを探るうえで有効です。
  • SWOT分析
    Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を整理し、戦略の立案につなげます。内部と外部の情報をつなぎ合わせる役割を担います。
  • VRIO分析
    自社の経営資源に「競争優位性があるか」を判断するためのフレーム。資源の価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織活用力(Organization)という4軸で評価します。

戦略立案・目標設定に活用できるフレーム(7S、PPM、KPIツリーなど)

現状を整理したら、次は「どう進むか」を明確にするフェーズです。戦略の具体化や数値目標の設定に使えるフレームを紹介します。

  • 7S(セブンエス)フレームワーク
    ハード(戦略・構造・制度)とソフト(スキル・人材・価値観・スタイル)のバランスを見直し、戦略と組織の整合性を図る際に有効です。
  • PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
    自社の事業や製品を「市場成長率」と「市場シェア」の2軸で分類し、成長戦略や資源配分の方針を定めます。
  • KPIツリー
    最上位目標(売上、利益など)を達成するために必要な要素を分解し、各部門やチームの行動と成果をつなげる設計図として使えます。

これらのフレームワークを状況に応じて組み合わせることで、戦略の抜け漏れや独りよがりな判断を防ぎ、論理性と実行性を備えた中期経営計画を構築することができます。

中期経営計画の作成ステップ

中期経営計画は、一度つくって終わりの「資料」ではなく、組織の未来を導く「実践の設計図」です。
そのためには、戦略思考と現実性の両立が求められます。ここでは、計画策定の4つの基本ステップをご紹介します。

ステップ①:現状把握と課題の抽出

はじめに取り組むべきは、自社を取り巻く環境と内部状況の整理です。
ここでは前章で紹介したフレームワーク(PEST、3C、SWOTなど)を活用することで、定量・定性的に課題を浮き彫りにできます。

  • 社会や業界の動向はどう変わりつつあるか?
  • 自社の強み・弱みはどこにあるのか?
  • 現場から見えるボトルネックは何か?

こうした問いを投げかけながら、関係部署との対話も交え、「何が成長を阻んでいるのか」「どこにチャンスがあるのか」を言語化しましょう。

ステップ②:戦略ドメインの設定と重点領域の決定

次に、「何に集中するか」を明確にする必要があります。
この段階では、経営資源の選択と集中がカギを握ります。

  • 成長が期待できる市場や顧客層は?
  • 注力すべき商品・サービス、地域は?
  • 競合と差別化できる自社の強みは?

ここで有効なのがPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)や戦略キャンバスなど。
これらを用いて事業ポートフォリオを見直し、資源の再配分方針を戦略ドメインとして定義します。

ステップ③:数値目標の設計(売上・利益・KPIなど)

戦略を実現するためには、明確な数値目標の設定が不可欠です。
「なんとなく成長を目指す」ではなく、実行を後押しするリアルな指標を立てましょう。

  • 売上・利益・ROEなどの経営指標
  • 顧客数や単価といった事業別KPI
  • 部門ごとのプロセス目標(例:提案数、リード獲得件数)

ここで活用されるのがKPIツリーやバランスト・スコアカード(BSC)など。目標同士が整合しているかを確認しながら、全社→事業→部門→個人の連動を意識して設計します。

ステップ④:実行計画・組織体制・進捗管理の仕組み化

中期経営計画が“絵に描いた餅”にならないためには、実行の設計まで落とし込むことが重要です。

  • いつ、誰が、何をするのか(アクションプラン)
  • 誰が進捗を管理し、どのタイミングで見直すのか
  • 必要な組織再編や人材育成の方向性

ここではガントチャートやOKR(Objectives and Key Results)といった実行管理手法が役立ちます。
また、部門横断で戦略を推進する体制づくりも中計成功のカギになります。

この4つのステップを通して、企業の“理想”と“現実”を橋渡しする計画が完成します。
中計は「戦略の言語化」だけでなく、「行動の明確化」まで一体で考えることで、初めて機能します。

よくある課題と対策

中期経営計画は、しっかりと時間をかけて策定したにもかかわらず、「結局、使われなかった」「現場に浸透しなかった」といった悩みも少なくありません。
ここでは、中期経営計画でよくある課題と、その対策方法について解説します。

計画倒れを防ぐための工夫

「策定しただけで満足してしまう」――これは多くの企業が陥りがちな落とし穴です。
とくに数値目標ばかりが先行し、戦略の背景や優先順位が不明確なまま現場に丸投げされてしまうと、計画が機能しなくなります。

対策ポイント:

  • 目標と施策のひも付けを明確にする(KPIツリーの活用)
  • アクションプランを「いつ・誰が・何をするか」まで具体化する
  • 進捗確認のタイミングをあらかじめ設け、柔軟に見直せる体制を作る

「動かす前提でつくる」ことが、計画を“絵に描いた餅”にしないための第一歩です。

現場とのギャップを埋める方法

経営層の描く戦略がどれほど理にかなっていても、現場の納得感や共感がなければ実行には至りません
「知らないうちに方針が決まっていた」「計画の意図が伝わらない」という声が、現場のモチベーションを下げる要因になります。

対策ポイント:

  • 早い段階から各部門のキーマンを巻き込み、戦略の背景を共有する
  • 現場ヒアリングを通じて、リアルな課題や成功要因を反映する
  • 計画の目的や意義を「自分ごと化」できるよう伝える

中期経営計画は、“会社の計画”から“自分たちの計画”へと変換されて初めて意味を持つのです。

中計を“使われる戦略”に変える視点

策定した中期経営計画がそのまま放置されてしまうのは、「管理指標」として活用されていないからかもしれません。
目標や戦略が日常業務と結びついていないと、計画は「単なる報告資料」に留まってしまいます。

対策ポイント:

  • 目標進捗を定期的に見える化し、改善サイクルを設ける
  • 役員・部門長レベルで「中計レビュー会議」を運用する
  • 日々の活動との関連性を意識し、「現場で活きる指標設計」を行う

中期経営計画を“棚にしまう資料”ではなく、“毎月見返す実務のガイドライン”へと昇華させることで、企業の方向性が社内に定着していきます。

このような課題をあらかじめ認識し、対応策を講じておくことで、計画が実行される状態=戦略が動く組織をつくることができます。

まとめ:フレームワークを活かして実行可能な中期経営計画を

中期経営計画は、企業が未来に向けて戦略的に動いていくための「地図」であり、「エンジン」です。
しかし、それが単なる理想論や数値目標にとどまってしまうと、計画としての意味は薄れてしまいます。

本記事では、中期経営計画の基本的な考え方から、実務に役立つフレームワーク、そして具体的な作成手順とよくある課題への対策までをご紹介してきました。

ポイントは以下のとおりです:

  • 中期経営計画は、短期と長期をつなぐ実践的な戦略設計
  • フレームワークを使えば、抜け漏れなく、論理的に方針を導ける
  • 計画の策定だけでなく、「現場で動かす仕組み化」まで設計することがカギ

不確実性の高い時代だからこそ、「今あるリソースで何に集中するか」「どのように競争優位を築くか」を明確にする必要があります。
そして、その答えを導くには、現実と理想を行き来しながら、戦略と実行を結びつける視点が不可欠です。

中期経営計画は、企業の未来に責任を持つすべての人にとっての“戦略のコンパス”です。
ぜひ本記事の内容を参考に、貴社らしい実行可能な中期計画の設計にお役立てください。

フィンチジャパンからのご提案|成果につながる中期経営計画の策定と実行を支援します

私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行なってきております。

こんなお困りごとはありませんか?

  • 中期経営計画を策定したものの、現場で活用されていない
  • フレームワークを使っても、具体的な施策やKPIに落とし込めない
  • 経営層と現場の間に温度差があり、合意形成が進まない
  • 既存事業の限界が見えてきて、新たな戦略軸を模索している

本記事でご紹介したとおり、中期経営計画は“絵に描いた餅”では意味がありません。重要なのは、計画を動かし、成果につなげる「実行力」と、それを支える「現場との一体感」です。

私たちフィンチジャパンは、一例として以下の様なコンサルティング実績があります。新規事業の立ち上げを検討されている際はご相談ください。

  • エネルギー企業O社:DX改革(約3年)
    経営層と部門を巻き込み、段階的に施策を展開。戦略と現場実行の接続を支援しました。
  • 化粧品メーカーD社:研究開発プロセス改革(約3年)
    現場の声をもとにR&D戦略を再構築。戦略ドメインの再定義と反映を実施。
  • ITサービスK社:事業投資のゲートマネジメント構築(2年)
    中計に基づく新規事業評価体制を構築。資源配分の最適化とガバナンス強化を実現。

「計画を策定するだけで終わらせない」それが、フィンチジャパンの中期経営計画支援の本質です。ぜひ一度、貴社の状況をお聞かせください。共に“実行される戦略”をつくっていきましょう。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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