事業戦略の立て方で成果が変わる!競争優位性を高める企業の共通点とは?
公開日:2025.05.07更新日:2025年5月7日
目次
はじめに:なぜ今「競争優位性」と「事業戦略」が注目されているか
経済環境が大きく揺れ動く今、多くの企業が「これまでの延長線上では勝ち残れない」と感じています。技術革新、顧客ニーズの多様化、業界構造の変化——こうした外的要因に直面しながらも、企業は持続的な成長を目指さなくてはなりません。
その中で改めて注目されているのが、「競争優位性」と「事業戦略」です。
単に売上やシェアを伸ばすだけではなく、「なぜこの会社が選ばれるのか」「なぜこの会社が生き残れるのか」といった“根本的な差”を築くための視点が求められています。
では、なぜ今、それが重要なのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
環境変化と「選ばれる企業」になるための戦略視点
かつては、大きな資本力や販路を持つだけで競争に勝てる時代もありました。
しかし、現在は顧客の価値観が細分化され、ニッチな市場で存在感を放つ企業が次々と登場しています。
つまり「どれだけ自社の価値を明確に打ち出せるか」が、競争優位性のカギになります。
このような時代には、“戦略なき経営”では成果が出づらく、いかに自社らしい戦い方を設計できるかが問われているのです。
中堅企業が直面する現実と打ち手の必要性
特に中堅企業では、既存事業が伸び悩んだり、大手や新興勢力との競争に押されてしまうケースが少なくありません。
「いいモノをつくっているのに売れない」「営業活動が属人化している」「強みがうまく伝わらない」といった課題は、戦略不在が原因になっていることも多いのです。
こうした課題に対処するには、自社の強みと市場のニーズをしっかり見極めたうえで、
“自社ならではの戦略”を描く力=戦略思考力が求められます。
競争優位性とは?持続的に勝ち続けるための基本概念
「競争優位性」という言葉は、ビジネスの現場でもよく耳にしますが、その意味を明確に理解し、実務に活かせている企業は意外と少ないかもしれません。
競争優位性とは、他社と比べて「自社が選ばれる理由」が明確にあり、それを持続的に維持できている状態を指します。
単なる一時的な差ではなく、「中長期的に成果を出し続けられる構造」を持っていることが重要です。
競争優位性の定義と3つの視点(顧客・コスト・組織)
競争優位性を考えるうえでの代表的な視点は、以下の3つです。
- 顧客から見た価値の差(例:他社にない独自機能、デザイン、体験など)
- コスト構造の差(例:サプライチェーンの最適化により低コストで提供できる)
- 組織力・仕組みの差(例:人材やデータ基盤、ナレッジの活用による高い実行力)
これらが複合的に組み合わさることで、競争相手に模倣されにくい強みとなり、持続的な優位性を生み出します。
差別化とコストリーダーの違いとは
競争優位性を築くための基本戦略として有名なのが、マイケル・ポーター氏の「3つの基本戦略」です。
これは次の3つに分類されます。
- 差別化戦略:顧客にとっての独自価値を創出し、価格以外の軸で選ばれるようにする
- コストリーダーシップ戦略:業界内で最も低コストなオペレーションを実現し、価格競争で勝つ
- 集中戦略:特定の市場や顧客に焦点を当て、深く刺さる価値提供を行う
差別化か、コストリーダーか、あるいは集中か──
自社の立ち位置を見極めて、どの戦略を取るべきかを明確にすることが、戦略思考の第一歩となります。
競争優位性を生み出す3つの事業戦略フレームワーク
競争優位性を築くうえで重要なのが、「どのように自社の強みを発見し、それを戦略に落とし込むか」という思考プロセスです。
このプロセスを体系的に進めるためには、戦略フレームワークの活用が有効です。
ここでは、実務で活用しやすく、競争優位性を見える化しやすい3つのフレームワークをご紹介します。
①ポーターの基本戦略(差別化/コスト/集中)
前章でも触れたポーターの「3つの基本戦略」は、事業の方向性を定める出発点になります。
- 差別化戦略:高付加価値な商品・サービスで価格競争を避ける
- コストリーダーシップ戦略:圧倒的なコスト優位で市場を支配する
- 集中戦略:特定の市場ニーズに特化して独自ポジションを確立する
特に中堅企業では、「すべてを狙う」よりも「自社の強みが活かせる一点突破」の視点で、集中戦略をベースに展開するケースが増えています。
②VRIO分析で「社内の強み」を見える化
「自社の競争優位性が何か分からない」という声は少なくありません。
そんなときに役立つのが VRIOフレームワーク です。以下の4観点で社内資源を評価します。
項目 | 質問 | 意味 |
V(Value) | 価値はあるか? | 顧客にとっての価値がある資源か? |
R(Rarity) | 希少性はあるか? | 競合が簡単に持てない資源か? |
I(Imitability) | 模倣困難か? | 簡単に真似できないか? |
O(Organization) | 組織が活用できるか? | 組織的に活かせているか? |
この4条件すべてを満たす資源こそが、「持続可能な競争優位性の源泉」となります。
③バリューチェーンで競争優位の源泉を特定する
もう一つ、競争優位性の発見に有効なのが バリューチェーン分析 です。
自社の活動を「価値を生むプロセス」として捉え、どこで差別化やコスト削減ができるかを見つけます。
バリューチェーンは大きく以下の2つに分類されます。
- 主活動(物流、製造、販売、サービスなど)
- 支援活動(調達、人事、技術開発、インフラなど)
たとえば「技術開発力」「サービスの手厚さ」「物流スピード」など、どの活動が他社より優れているのかを細かく見ていくことで、自社の“本当の強み”が浮かび上がってきます。
補足:5フォース分析と市場構造の読み解き方
自社の内部に目を向けるだけではなく、外部環境の構造的な理解も重要です。
ここで使えるのが、ポーターの 5フォース分析 です。以下の5つの力を分析します。
- 業界内の競合他社の強さ
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
これにより、自社がどのような市場環境に置かれているかを俯瞰し、戦略上のリスクとチャンスを見極めることができます。
競争優位性を実現した企業事例
理論やフレームワークを学んでも、「実際にどう活用されているのか」がわからなければ、自社で応用するのは難しいものです。
ここでは、実際に競争優位性を確立し、成功している企業事例をご紹介します。中堅企業から大手企業まで幅広く取り上げることで、業種や規模に関係なく戦略的視点を持つヒントになります。
事例① 製造業:ニトリのサプライチェーン戦略
株式会社ニトリは「お、ねだん以上。」というキャッチフレーズに象徴されるように、低価格かつ品質の高い商品を安定供給する体制で知られています。
その競争優位性の核となっているのが、自社で調達から販売までを一貫管理する垂直統合型のサプライチェーンです。
- 海外工場の自社運営
- 国内物流の自動化と効率化
- 店舗ごとの需要予測に基づく在庫最適化
これにより、他社には真似できないコスト優位とスピード対応を実現しています。
事例② サービス業:スノーピークの体験価値提供
株式会社スノーピークの展開するアウトドアブランド「スノーピーク」は、単なる商品販売ではなく、「自然とつながる体験」を重視したブランド価値の創造によって差別化を図っています。
- キャンプ場の運営や会員制コミュニティの展開
- 商品と体験を一体化させた「共感ベース」の戦略
- ブランドストーリーとデザインの一貫性
機能だけでなく“体験や感情”に訴えることで、ファン顧客の高いロイヤルティを維持しています。これは他社が模倣しにくい強みです。
事例③ IT業界:freeeのスモールビジネス集中戦略
クラウド会計ソフト「freee」で知られるフリー株式会社は、中小企業・個人事業主といった小規模事業者に特化したプロダクト戦略で急成長しました。
- ITリテラシーが高くない層でも使えるUI/UX
- 自動化・連携機能の豊富さで業務効率化を支援
- 会計だけでなくバックオフィス全体をサポートする拡張性
類似サービスを展開する弥生株式会社や株式会社マネーフォワードが広い層を狙う中、「スモールビジネスに最適化されたサービス設計」で明確なポジショニングを確立しました。
共通する成功の要因とは?
これらの企業に共通しているのは、「何を軸に戦うか」が極めて明確だという点です。
- コスト優位に徹する(株式会社ニトリ)
- 顧客体験を重視したブランドづくり(株式会社スノーピーク)
- ニッチ市場に特化して深く刺す(フリー株式会社)
これらはすべて、戦略思考によって導き出された「競争優位性の選択と集中」の結果です。
競争優位性を維持・強化するための実践ポイント
競争優位性は一度確立すれば永続するものではありません。
市場環境や顧客の価値観が変化すれば、いかに強固に見えた戦略も陳腐化する可能性があります。
だからこそ、「築くこと」以上に「維持し、進化させること」が重要です。
ここでは、競争優位性を長期的に保ち続けるために実務で意識したいポイントを紹介します。
自社資源を磨き直す「再定義」の重要性
戦略の成功体験があると、過去の強みに固執しがちです。
しかし、それが今の市場でも有効とは限りません。
そこで必要になるのが、自社の価値や強みを「再定義」する視点です。たとえば:
- 「製品力」ではなく「技術応用力」だった
- 「営業力」ではなく「顧客理解の深さ」だった
- 「価格の安さ」ではなく「選定のしやすさ」だった
このように、定性的な視点も含めて強みを捉え直すことで、変化に適応した戦略へと再構築できます。
組織力とナレッジの継承が鍵
戦略は組織が動いてこそ意味を持ちます。
どれだけ優れた戦略を立てても、実行する「人と組織」が育っていなければ継続性は担保されません。
- ナレッジやノウハウの形式知化
- 横展開しやすい仕組みの整備
- 戦略意図の共有と現場の納得感醸成
こうした取り組みが、戦略の“属人化”を防ぎ、競争優位性を組織に根付かせる基盤となります。
パートナーとの連携によるエコシステム型戦略
近年は、自社だけで完結する競争力には限界があります。
多様なプレイヤーと連携し、価値共創を行う「エコシステム型戦略」が注目されています。
- オープンイノベーションによる開発スピード向上
- 異業種連携による新たな顧客体験の創出
- データ共有による全体最適の実現
これらは、自社単独では難しかった競争優位性を生み出す可能性を広げてくれます。
特に中堅企業にとっては、「自社にない資源を借りる」という発想が、現実的な成長手段になり得ます。
まとめ:競争優位を生み出す戦略思考の第一歩を踏み出そう
これまで見てきたように、「競争優位性」と「事業戦略」は、企業が中長期的に生き残り、成長を続けるための土台です。
特に、変化の激しい市場においては、「何を軸に勝負するか」を明確にし、戦略的に取り組むことがこれまで以上に重要になっています。
- 自社の“選ばれる理由”を整理し
- 市場環境と照らし合わせて優位性を分析し
- フレームワークを用いて具体的な戦略に落とし込む
この一連の流れを繰り返し実行することが、競争力のある企業体質をつくります。
決して大企業だけのものではなく、中堅・中小企業こそ、自社にしかできない戦い方を見つけることが成長の鍵となるのです。
まずは、今回ご紹介したフレームワークをもとに、「自社の強みはどこにあるのか?」「その強みは今の市場で活かせるのか?」を見つめ直すことから始めてみてください。
それが、競争優位性を築く第一歩になるはずです。
フィンチジャパンからのご提案:競争優位性を実現する戦略立案を共に
本記事では、競争優位性を築くための事業戦略について、基本の考え方からフレームワーク、成功事例、そして実務のポイントまでをお伝えしてきました。
とはいえ、「理論はわかったが、自社ではどう活かせばいいのか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。そこで私たちフィンチジャパンでは、こうしたお悩みに対して実践的かつ伴走型の戦略支援を提供しています。
提供する戦略支援の特徴
- 自社の強みや資源の再評価からスタートし、「どこで戦うか」「どう勝つか」を明確化
- ポーターやVRIO、バリューチェーンなど、実務に即したフレームワークで分析と戦略設計を支援
- 新規事業開発、DX推進、既存事業の再成長といったフェーズに応じたカスタマイズ支援を実施
- 一過性のアドバイスにとどまらず、実行・改善フェーズまで伴走するスタイル
私たちは、お客様のミッションに心から向き合い、あたかも自社の戦略を一緒に描くような立場で取り組んでいます。
「自社にとっての競争優位性とは何かを一緒に考えたい」
「次の打ち手を描くにあたり、フレームワークを活用しながら整理したい」
「既存事業をもう一度見直し、再成長の軌道に乗せたい」
そんな課題や関心をお持ちの方は、当社までご相談ください。変化の多い時代において、確かな意思決定と行動を支える戦略パートナーとなります。
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- 新規事業・商品開発
コンサルティングの成功事例 - など
この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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