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ヘルスケア分野でのIoT活用用途13選と事例紹介

IoT2018.01.22

Female medicine doctor working with modern computer interface as concept

我が国日本は超高齢化が進む中で、医療費がどんどん増えている。2017年9月の厚生労働省の発表によれば、国民医療費は2015年度の42.3兆円だったのが、2025年度には1.4倍の57.8兆円に増加する見通しだ。医療費負担は1991年から2015年までにすでに2倍以上になっており、危機的状況とも言える。こうした状況の中、IoTやAIを活用する分野としてヘルスケア分野に注目が集まっている。ここではヘルスケア分野におけるIoT活用の背景や理由、具体的な事例・効果、今後期待されるビジネスチャンスなどを考察する。

IoTと医療・介護との関係

IoTとは「モノのインターネット」と呼ばれている。モノがインターネットに接続され、収集された情報から新たな価値を創造し、便益(ベネフィット)を生む形態や仕組みのことである。従来、インターネットに接続する機器といえばパソコンやプリンターなどのIT機器であったが、現代では家電や機械、その他のモノがインターネットに接続され、モノ同士がつながる時代になってきた。

これらIoTは、ヘルスケア分野にも活用されつつある。熱センサーや温度センサー、超音波センサーなどを使い、体温や呼吸数、心拍数、位置などをリアルタイムに測定し、無線やキャリア通信を経由してサーバーに送られ、患者の状態を把握できる様になる。

例えば、トリプルダブリュー社が開発した、排泄を予知するウェアラブルデバイスDFreeを腹部につけることで、自分の意思では排泄がうまくできない患者は、超音波センサーによって、排泄の予兆を知らせてくれる。こうしたデバイスを病院や介護施設などで活用することで、おむつ交換やシーツの交換という業務自体を減らすことができる。

つまり、IoTがヘルスケア分野で価値を発揮するのは次のような業務だ。

  • 一定時間で巡回しなければいけない業務
  • 事が起きてからでは手間がかかる業務

こういった属人で行われるような業務でIoTは、人の目となり耳となり業務負荷を大きく下げる可能性がある。

国を挙げたIoT活用の兆し

ヘルスケア分野におけるIoT化には、政府の後押しにより今後ますます活用が進む。その背景には先述の国民医療費の増加以外に、現場での慢性的な人手不足が背景にある。

例えば、介護職の有効求人倍率は高止まりしていて、将来は200万人以上の介護職員が不足するという推計データもある。

そして平均寿命が高くなれば、当然医療費もかかる。日本の高齢者の死因のベスト3は、癌・心疾患・脳血管疾患であり、これらは生活習慣病といわれ、長い間の生活習慣によって発病する複合要因の疾病である。逆に言うと、これらの生活習慣を改善する事ができれば、国民医療費を削減できる可能性がある。

そこでIoTは、先ほどの入院時の活用だけでなく常日頃の体の状態も把握して、それを本人にフィードバックして行動変容をもたらす可能性があるため、予防分野や重篤化予防分野での活用に大きな期待が寄せられている。

IoT活用をタイプ別に見てみよう。

ヘルスケアの分野でIoT活用事例
1.高品質医療の提供
2.医療事故、ミスの防止
3.人手不足の解消
4.コストダウン
5.治療アプリ

日常生活分野におけるIoT活用事例
6.トイレで健康管理が出来るIoT
7.衣料タイプのウェアラブルシステム
8.患者の服薬状況を監視するケース
9.リストバンドを活用した健康管理システム
10.センサー内蔵ベッド

今後の広がる事が予想される分野
11.医師がアプリで処方
12.ビッグデータの周辺分野への展開
13.ウェアラブル端末の異分野への転用

ヘルスケアの分野でIoT活用事例

まず、医療分野でのIoT活用から見ていく。病院や医療施設でのIoT活用は実証実験から実用まで幅広い用途で検討が進んでいる。

1.高品質医療の提供

患者に装着したウェアラブル端末などから逐次体調データを収集・分析し、的確な診断と治療を行う。

  • 体温計
  • 血糖値
  • 血圧計
  • 心電計

例えば、こういった外部接続医療機器をIoT化して、遠隔からも適切な診断を行う取り組みや試行が始まっている。

また北米では、患者の不整脈を測定するIoT機器を取り付け、装置から医療機関に自動送信されるデータを遠隔モニタリングして、異常時にはサポートが受けられるサービスが行われている。

2.医療事故、ミスの防止

過去にヒヤリハットミスが起きた場所に、看護師が近づくと自動的に注意喚起を行うサービスの実証も行われている。位置情報や人為的なミスのデータを組み合わせることで医療事故の予防やヒヤリハットのミスを軽減することが出来る。

3.人手不足の解消

日本の医療機関や介護施設は、慢性的な人手不足に陥っている。

例えば、こうした課題解決として、IoT化したスマートベッドの開発が進んでいる。これはベッドに搭載されたIoTセンサーが、患者の身体の動きを感知して、病床から落下しそうになりそうな姿勢を予兆検知したり、床ずれを防止したりするために定期的に体を変える様にアラームを出す。

4.コストダウン

患者を治療する際には種々の症状データを取得する必要があるが、それらを活用するためには、往診をしてさらにパソコンにそのデータを入力する作業が必要になる。IoTにより取得したデータが直接記録できる様にすることで、記録作業や事務作業の削減が期待できる。介護業界では介護記録の自動化にIoTを活用する試みが始まっている。

5.治療アプリ

北米が先行しているが、日本でも2014年の薬事法改正(現、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 ※通称:薬機法)によって、単体のソフトウェアが、医療機器として同法の対象となった。それによりソフトウェアの処方が、薬と同等の効果があれば薬として保険償還される。

北米では、2010年にWelldoc社のBlueStarという糖尿病患者向けの治療補助アプリが大手民間保険会社に保険償還の対象として承認されている。

日常生活分野におけるIoT活用事例

日常生活分野での健康管理にも多くのIoTサービスが登場している。ビジネスモデルの確立にはまだ時間がかかりそうだが、予防分野として大いに成長が期待される市場である。

6.トイレで健康管理が出来るIoT

トイレに設置したセンサーにより、利用者の排泄物から健康状態を把握するシステム。2017年12月にTOTOはNTTコミュニケーションズと共同で、臭いなどを検知するセンサーが付いたトイレで健康管理に必要な情報を収集する実証実験を開始した。日々誰もが使うトイレを健康管理空間にしようという狙いだ。

7.衣料タイプのウェアラブルシステム

洋服に活動量や心拍数などを収集できるセンサーを装着し、無線でスマートフォンに伝送して専用のアプリで確認できるシステム。アパレルメーカーとシステム会社が共同開発している。

8.患者の服薬状況を監視するケース

服薬するべき時間に服薬すべき薬の部分のLEDランプが点灯し、患者に知らせるとともに服薬後は病院や家族のスマートフォンに知らせてくれるシステム。

9.リストバンドを活用した健康管理システム

腕につけたリストバンドから脈拍や体温、活動量などの生体データを取得し、スマートフォンに無線通信することで健康管理が出来るシステム。リストバンドのデザインに工夫を凝らしているため、見た目にも違和感が無いことが特徴である。

10.センサー内蔵ベッド

患者のベッドにセンサーを内蔵し、患者が起き上がろうとしたり、その後一定時間が経過したりした際にナースコールが鳴り、介助や徘徊防止がスムーズに出来るシステム。

今後の広がる事が予想される分野

現在ヘルスケアに活用されるIoT機器や収集されるデータは、患者を治療することや病院運営の効率化を目的に活用されている。しかし今後は、開発が進み高度化・汎用化されるに伴い、新たな手法や、他分野への活用が期待される。

11.医師がアプリで処方

不眠症、偏頭痛など、投薬だけの治療だけでなく、禁煙など生活習慣を含めた治療が有効な場合は、症状を入力することによって患者の状況を把握し、適切なアドバイスを受けるスマートフォンアプリも登場している。

12.ビッグデータの周辺分野への展開

IoTを活用して収集したデータは患者を治療する過程だけでなく、同様の症状に向く新薬の開発や健康食品の開発に役立つ可能性がある。また、既存の薬品を服用して治癒した場合は、そのデータは積極的に販売促進データと成り得る。

13.ウェアラブル端末の異分野への転用

患者の状態を把握するためのウェアラブル端末は、日々進化しており、患者だけでなく健常者や医療以外の分野への転用が可能になる。例えば有名アスリートのトレーニングに伴う体調データはスポーツ関連ビジネスの重要なデータとして活用が期待できる。

ヘルスケア分野でのIoT活用用途13選まとめ

医療分野におけるIoTが必要な背景や導入事例、今後のビジネス展開について考察してみた。ヘルスケア分野におけるIoTビジネスは、医療費の高騰や労働力不足に悩むわが国の重大な課題であると同時に、有望なチャンスが存在する領域でもある。また、介護分野は日本固有のサービスだが、今後高齢化社会が訪れるアジアで注目されている分野の一つである。今後もヘルスケア分野でのIoT活用について注目していきたい。

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