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スタートアップと大企業がオープンイノベーションを目指す5つの関わり方

M&A、投資2018.01.22

startup business people group working everyday job at modern office

昨今、大企業がスタートアップとの協業などによりイノベーションの実現に取り組むケースが多くみられる。つまり、大企業の開発方針が大きくオープンイノベーションへシフトしつつあるのだ。

ここでは大企業がイノベーションを起こして生き残るための将来像を、スタートアップとの関わり方を通じて紹介しよう。

スタートアップとの関わり方の5つのタイプ

大企業がスタートアップと協業・連携するための手段には以下のようなタイプがある。

  1. スピンオフ
  2. コワーキングスペース
  3. アクセラレータープログラム
  4. スタートアップコンベンション、イベント
  5. 投資等

そこで、今回は各タイプの紹介を事例と合わせて説明しよう。

1.スピンオフ

スピンオフとは既存の事業の一部、未利用の研究開発成果や知財等をその企業から独立させ、別企業として新事業を推進することだ。メリットとしては、別会社化による意思決定の短縮化で迅速な新規事業の推進が期待できる。

スピンオフの推進には社内ベンチャー制度が利用されるケースが多い。社内で新規事業に関する募集を行い、採用した者に現物出資などの支援を行いスピンオフさせるケースが一般的だ。

スピンオフの事例

古くは、積水化学工業から分類した積水ハウス、富士電機から分離した富士通、豊田自動織機から独立したトヨタ自動車などスピンオフの成功事例は多い。他にもNTTドコモ、Yahoo!JAPANなど業界トップクラスの企業に発展しているケースもある。

社内ベンチャー制度を積極的に推進している企業も多い。

  • パナソニックの「パナソニック・スピンアップ・ファンド」
  • SONYの「Seed Acceleration Program」

こうしたベンチャー制度が運営され、社員の起業が組織的にサポートされている。

2.コワーキングスペース

コワーキングスペースとは、多様な個人や事業者が集まり、仕事、情報交換、ノウハウの共有などを行う協働の場である。この共有環境で個人は独立して働くが、利用者が情報やアイデアを交換・共有することで相乗効果が得られるため新たな価値の創出が期待できる。

コワーキングスペースの事例

  • パナソニックの「100BANCH」
  • Yahoo!JAPANの「LODGE」
  • 三井不動産社の「KOIL」
  • コクヨの「MOV」

国内では企業主導のコワーキングスペースが多数存在する。

Yahoo!JAPANではLODGEを社員同士の繋がり、社員と外部との繋がりを得る場として期待している。三井不動産社ではKOILをイノベーションの実現のためだけでなく街づくり事業にも活用したいと考えいる。

世界的なコワーキングスペースといえば、「WeWork」が挙げられる。

WeWorkはソフトバンクが出資したことにより日本市場での展開も間近となっている。Microsoft社やゼネラル・エレクトリック社といった大企業もWeWorkを活用しているのだ。それはWeWorkがレンタルスペースではなく、スタートアップとの接点となり、新たな事業開発の拠点となりうるからに他ならない。

3.アクセラレータープログラム

アクセラレータープログラムは、大企業などがスタートアップ等を対象に出資や支援などを通じて事業共創を行うためのプログラムだ。大企業自身や、或いは他の事業主体との連携による運営などでプログラムが開催されている。

  • 事業計画の募集
  • 選定
  • 出資
  • 支援
  • 評価・デモデー
  • 協業開始

プログラムはこういった内容で構成され実施される。数カ月間などの短期間で支援者やメンターがスタートアップに集中的にサポートするのが特徴だ。

アクセラレータープログラムの事例

米国のNIKEやディズニーなどは米国の代表的支援事業者のTechstarsを利用している。TechStarsの支援メニューはアクセラレーター運営に必要な、WEBサイトの構築及び運用、サポート先の募集、メンタリング、審査、デモ運営などの業務が揃っている。そのためプログラム運営の経験の浅い企業でも容易にプログラムを推進しやすい。

JR東日本は「JR東日本スタートアッププログラム」を運営している。対象領域は同社関連事業で、交通、観光、インバウンド、小売、流通、飲食、サービス、まちづくり、IT、決済などになる。

トヨタ自動車は「クルマの利用促進、移動の不安を払拭する安全・安心のサービス」などを募集テーマとする「TOYOTA NEXT」を運営しサービスの開発や協業を目指している。

国内ではアクセラレータープログラムを提供するCrewwやゼロワンブースターなどの支援事業者も増えており、利用する企業も多い。

4.スタートアップコンベンション、イベント

企業や自治体などにより開催されるイベントでは、スタートアップによる製品・サービス等の出展やプレゼンテーション、ビッチコンテストなどが行われる。このイベントが有望な技術や協業先となるスタートアップとの出会いの場、商談の場として機能しているのだ。

スタートアップコンベンション、イベントの事例

米国では世界最大級のテクノロジースタートアップカンファレンスのTiEconやTechstars のFounderCon、北欧フィンランドではSLUSHなどがある。日本でも企業、自治体やアクセラレーターなどによるさまざまなイベントが開催されている。

5.投資等

連携・協業を目的とした投資も増えている。企業自身が行う直接投資のほか、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立して戦略的・継続的にスタートアップへ投資する例も増加している。また、自社が対象とする事業領域のスタートアップ等を投資対象とするベンチャーキャピタル(VC)へ出資する形態も多い。

短期間に事業課題を解決するためや将来の成長に備えるために有望なスタートアップへの投資やM&Aが実施されている。

投資等の事例

海外では以前から盛んだが、日本でも積極的に投資する事例が増えてきた。

例えば、資生堂は2017年11月に米国のギアランというベンチャーを買収した。ギアランはAI技術を利用したスマホ等の画面上でのメーキャップや肌色判定などの技術を有する。資生堂はギアランの技術を、各個人に応じた化粧品開発、ネット上での利用体験、カウンセリングなどへの利用に考えている。

CVCの事例も多い。武田薬品工業は「武田ベンチャー投資株式会社」を設立し、バイオベンチャーへの投資拡大を進めている。

オープンイノベーションへの戦略的推進

海外ではスタートアップとの連携・協業等で複数の手段が使用されるケースが多い。イベント、コンテストやスタートアッププログラムなどの開催、コワーキングスペースの運営や投資など、目的や企業の状況などに応じて使い分けられているのだ。今後、日本の企業でも複数の手段を戦略的に進める取り組みが増えていくだろう。

1. BMW

ドイツの自動車メーカーのBMWグループは、オープンイノベーションの実現に向けて3つの手段を講じている。

  1. BMW i Ventures
  2. URBAN-X
  3. BMW Startup GARAGE

「BMW i Ventures」は、先端技術を有するスタートアップに出資してBMWグループとの協業を促進する。

また、BMWはアクセラレータープログラム「URBAN-X」を運営し、スマートシティなど自動車以外の分野での新規事業の創出にも取り組んでいる。

さらに「BMW Startup GARAGE」というプログラムでは、技術・製品の試作ユニットなどを提供できるスタートアップをBMWのサプライヤーとして取引できるようにしている。

各プログラムは段階の異なるスタートアップが対象で、先端技術や自動車以外の新領域の探索、既存の自動車開発に直ぐに役立つサプライヤー開拓など、戦略的に使い分けられている。

2.ユニリーバ

消費財メーカーのユニリーバは「The Unilever Foundry」を設置してオープンイノベーションを継続的に推進している。ファウンドリーは自社内のスタートアップアクセラレーター組織だ。

  1. 小売り
  2. メディア・広告
  3. ブランドとコンテンツのイノベーション
  4. データ・知見・パーソナライズ
  5. サステナビリティ・社会的影響

この5分野でスタートアップから協業アイデアを募集してサービス・プロダクトの実証実験を推進している。

また、ファウンドリーは「LEVEL3」というワークスペースをシンガポールに設置している。LEVEL3は、ファイヤーサイドチャット(炉辺談話)、イベント、メンタリングなどが実施され各業界の専門知識を共有する起業家のネットワークが存在する。そこでスタートアップはファウンドリーのプログラム、ユニリーバのチームから特定のビジネス課題を解決する機会が与えられる。LEVEL3は単なる共同作業スペースではなく同じ物理的空間で協力してイノベーションを実現するコミュニティーとして機能しているのだ。

このようにユニリーバはファウンドリーを、同社、創業者、スタートアップ等が協力してイノベーションを実現するためのグローバルプラットフォームとして活用している。

まとめ

上記のようにスタートアップとの関わり方はさまざまである。どれを採用するかは、その企業の協業に対する考え方、企業文化、事業の状況や規模、緊急度、資源・資金の余裕度、協業の経験値などによって異なるだろう。

そのため各企業の状況に応じたスタートアップとの協業等への取り組みや使い分けが必要であり、戦略的な取り組みが求められる。

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