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オープンイノベーション2.0とは?1.0との違いとその事例

                   
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公開日:2018.12.31更新日:2023年5月23日

オープンイノベーション2.0とは?1.0との違いとその事例

近年、日本企業でも本格的にオープンイノベーションに取り組む企業が急増している。事例検索をすると、数年前と比較してアクセラレーションプログラムを採り入れている企業が格段に増えてきていることがわかるだろう。これはAIやIoT、Fintechといった新技術の可能性が多くの企業の背中を押し、内製よりも外部連携、買収よりも協調によって新たなサービスや新規事業を生み出すことを模索し始めていると言える。

オープンイノベーションには社内的なクローズドイノベーションから、スタートアップや他業種と共同開発するオープンイノベーション1.0、さらに多くの企業が連携しながら実現するオープンイノベーション2.0がある。今回は、それらの違いを比較するとともに、オープンイノベーション1.0の限界について考察しながら、オープンイノベーション2.0による社会課題解決型の事例を紹介する。

目次

オープンイノベーション2.0以前の考え方

最初に、この記事でテーマにするオープンイノベーション2.0を説明する上で、前身となるオープンイノベーション1.0と呼ばれる取り組みがどういうもので、なぜ「2.0」という考え方が出てきたのかという背景を説明しよう。

オープンイノベーション1.0は、1対1で協業すること

オープンイノベーション1.0は、自社が持たない技術や資源を有する他社やスタートアップなど他者と協業するような形でイノベーションを実現する試みのことを指す。

「他社と協業する」という前提が、社内資源でイノベーションを実現しようとするクローズドイノベーションと異なる点だ。

クローズドイノベーションの限界から、オープンイノベーション1.0へ

1990年代の日本企業のイノベーションに対する基本的な戦略は、自社の経営資源に依存した自前主義の研究開発だった。

しかし、2000年代に入りオープンソース技術が急速に進歩したことにより、資金力だけでは技術優位性を維持できなくなってきた。

そのため、自社独自に有する技術については自前主義を貫く一方で、オープンソース技術の優れた部分については外部リソースを活用するハイブリッドな取り組みが活発化してきた。

オープンイノベーション1.0とはいわば自社資源ありきで戦略を立てるのではなく、市場ニーズを踏まえた戦略ありきで、時に外部リソースも組み合わせながら、イノベーションに取り組むことで、中期的な競争優位を築く取り組みと言えるだろう。

オープンイノベーション1.0とクローズドイノベーションの共通点

そのためイノベーションに取り組む企業は、企業対企業、企業対大学、あるいは研究機関のように多様な組織と協業する様になってきている。それがいわゆるオープンイノベーション1.0と呼ばれる取り組みである。

企業がオープンイノベーション1.0を推進する目的は、技術革新や新規事業のためのR&D、開発の効率化であるため、その点ではクローズドイノベーションと大差はない。

オープンイノベーション1.0の4つの特徴

オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会が発行している「イノベーション白書」 によると、オープンイノベーション1.0の特徴は、上記の内容を含め、以下の点が挙げられている。

  1. 関係:1対1の連携の連携が基本で企業対大学・研究機関、大企業対ベンチャー企業等
  2. 目的:研究開発効率の向上、新規事業の創出
  3. 主導役:企業が主導。ユーザーはイノベーションからの成果 物を得る最終提供先とされそのプロセスへ関与しない。
  4. 重要点:イノベーションの実現は企業活動の一環であるため、連携組織間のWin-Win関係構築が前提

出典:オープンイノベーション白書

オープンイノベーション1.0では、主導するA社が、他社や他の組織の力を借りてクローズドイノベーションと同様に特定の目的に向けて共同研究等を行ない、目的の製品やサービスに関する新たな技術等を開発する。目的が自社のイノベーションである点においてはクローズドイノベーションと変わらないが、他社との共同研究等によって、一部知財を共用・共有していく点に違いが見られる。

オープンイノベーション1.0の課題と行き詰まり

こうした「より効率的なイノベーションを起こそう」という目論見のもと始まった、オープンイノベーション1.0が抱える課題と行き詰まっている原因を分析したい。

こうすることで、オープンイノベーション2.0は何をすることなのかということが理解しやすくなる。

【関連記事】オープンイノベーションの現状の課題と解決方法

デジタルトランスフォーメーションは1対1の関係では対応できない

デジタルトランスフォーメーションが加速する昨今では、IoTの進展やビッグデータの活用、AIの発展、多様なロボット・RPAの導入などが社会の様々な分野で実現されるようになってきた。その結果、高度なカスタマイズ生産、シェアリングエコノミーサービス、人に代わる機能や支援の提供、高度なサプライチェーン管理などが次々と実現されている。

この様に、様々な技術とプレーヤーが絡み合って、前例のない製品・サービスを実現することが、外部組織と取り組む際の大前提になってくると、クローズドイノベーションはもちろんのこと、1対1の関係を前提として開発を進める オープンイノベーション1.0では、方法として対応しきれない場面が出てくるようになってきた。

技術そのものの低価格化

またAIやIoTを制御する様々なソフトウェアやクラウドサービスが非常に低価格で、時には無償で提供されてきてため、少数のエンジニアが少額の投資によって驚くほど高度なシステムを開発したり、高度な解析したりすることことが可能となった。そのため、資本力に勝る大企業よりも、特定の領域においては技術力に勝るスタートアップが日本国内でも次々と登場してきた。そのため特定企業と排他的に連携して共同開発に取り組んでいる間に新たなサービスが登場する脅威も無視できなくなってきている。

「誰」のためのイノベーションか?

技術的な動向に加えて、世界中の企業がSDGsの達成に向けてダイナミックな取り組みを進めてきていることも、オープンイノベーション1.0を次のステップにレベルアップさせる大きな要因になっている。

つまり、多くのステークホルダーを巻き込んだイノベーションが市場から期待されてきているのである。

そうなると、特定企業を第一人称として取り組むオープンイノベーション1.0では、優れたエンジニアやエバンジェリスト、アントレプレナーを集めることが難しくなってきたのだ。

そこで既存のOIのやり方に過度に固執せず、特手の社会課題を掲げて、多様なステークホルダーと多様な技術を組み合わせて、前例のないアプローチで社会課題の解決を目指した方が結果的にイノベーションを早く実現できる可能性が出てきたと言える。

そのイノベーションは「何」を達成するか?

実際のオープンイノベーション1.0の取り組みでは、特定企業の経済的利益獲得が目的の大部分を占めるため、主導する企業は投資に対する期待リターンを定める。一方、一般的にスタートアップや新サービスが短期的に経済的な利益を創出することは難しいので、大企業と協業企業との認識ギャップがオープンイノベーションを実現する上で大きな障壁になることが多い。

結局、短期的なリターンを狙ったサービスでは前例に重きを置かざるをえず、結果として社会課題を解決しうるイノベーションを実現することが難しくなる。

こうした点からもオープンイノベーション1.0をもって、SDGsの様な大きな目標を達成するイノベーションを実現することは難しくなってきているという背景がある。

オープンイノベーション2.0と社会課題解決

先述の通り、オープンイノベーション1.0の目的は、研究開発効率の向上や新規事業の創出などである。しかし、オープンイノベーション2.0における主たる目的は社会課題の解決である。

イノベーションを経済的利益追求の手段としてだけでなく、社会課題の解決に活用するために実施するという点がオープンイノベーション2.0の大きな特徴といえるだろう。

多種多様なエコシステムの構築

大企業対スタートアップ等の1対1の関係であるオープンイノベーション1.0と比較すると、オープンイノベーション2.0では多対多の連携関係がみられる。オープンイノベーション白書では、「企業、大学・ 研究機関、政府・自治体、市民・ユーザーなど多様な関係者が多層的に連携・共創し合う循環体制」と表現している。

つまり、オープンイノベーション2.0では様々な参加者のアイデアや技術等によりイノベーションが推進され、今までにない技術の開発、ユーザー視点の製品・サービスの開発が実現され、さらに社会課題の解決が実現されるのである。

このように、オープンイノベーション2.0はオープンイノベーション1.0と異なり、利害の異なる複数の参加者が同一目標に向かってイノベーションを進めることになるため、参 者の共創を実現するためのオーケストレーション力(全体の調和を整える組織能力)が重要となる。

オープンイノベーション2.0の鍵となるユーザー

オープンイノベーション1.0ではイノベーションにおける鍵は参加企業であったが、オープンイノベーション2.0では、参画する複数の企業やコミュニティその代わりを担う。

この時、ユーザーの考えやニーズを起点として、社会課題を設定して、複数の企業やコミュニティによって解決をしていく。その結果、得られた経済的利得を役割に応じて配分していくことになる。

場合によってはユーザー自らが参加することによって、 意見・アイデアが適宜研究開発等に反映され、イノベーションが推進されることになる。

つまり、オープンイノベーション2.0ではユーザーのニーズが極めて重要であり、ユーザー視点にもとづいた社会課題の解決が鍵となるわけだ。

オープンイノベーション2.0によって進められている社会課題解決型の事例

それでは、オープンイノベーション2.0のような形でサービス開発や社会課題解決に取組んでいる事例を紹介しよう。

【関連記事】新規事業の成功例と押さえておきたいイノベーションのジレンマの考え方

Google

Googleはイノベーションを外部の力を利用して実現することに注力している。同社は世界の様々な社会課題の解決のために「Google X Lab」を設立し、革新的な技術や製品 の開発に取り組んでいる。

また、X Labから誕生した「Solve for X」という革新的なアイデアや社会課題解決のためのソリューションを世界中の個人・法人から募集するWEBプラットフォームを提供している。

X Labから誕生した製品としては、眼鏡型デバイスである「Google Glass」が有名だが、社会課題の解決としては「気球によるネットワーク接続の提供」や「自動車の自動運転の Google driverless car」などがある。

運輸デジタルビジネス協議会 (TDBC)

TDBCは、運輸業界の問題をICT等の力を利用して解決し、社会に貢献することを目的に設立された組織である。

同協議会のワーキンググループでは様々な企業の協力を得て交通事故の撲滅や乗務員の健康増進、人材不足の解消といった社会への影響の大きな課題の解決に取り組んでいる。

例えば、交通事故の撲滅については、交通事故の削減で実績を有する事業者の事故管理の仕組みを基に事故履歴管理システムの構築に取り組んだ事例がある。過去の事故データやドライブレコーダーのヒヤリハット映像を基に分析し、ドライバーの安全教育に役立てている。

また、AIを活用してヒヤリハット映像を分析し、ドライバーの危険運転行為の検出に成功した。その成果を小規模事業者でも導入しやすいクラウド利用の安全管理システムへとつなげている。

上記の取り組みではドライブレコーダーメーカー、ITソリューションベンダー、AIによるデータ解析を行う企業などが業種の枠を超えて、課題解決のために共創している。

まとめ

オープンイノベーション1.0はクローズドイノベーションと異なり、大企業対スタートアップのように他者の力を借りてイノベーションを実現する。一方、オープンイノベーション2.0は様々な関係者が参加し、連携することでイノベーションを共創する。

また、オープンイノベーション1.0の主目的は新規事業の創出や経済利益の獲得であり、イノベーション実現の鍵は企業にあるが、オープンイノベーション2.0は社会課題の解決に主眼を置き、結果的にイノベーションや経済利益の獲得を実現する。オープンイノベーション2.0におけるイノベーションの鍵となるのはユーザーあり、その視点に基づいて社会課題を解決しようという企業の姿勢にあるといえる。

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この記事の監修者

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株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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