IoTとは何か?導入の鍵を握る“5つの立ち位置”とビジネス成功の戦略
公開日:2018.01.22更新日:2025年7月24日
目次
はじめに:IoTとは?ビジネスでの活用が注目される理由
近年、製造業やインフラ、農業、医療など多くの分野で注目を集めているのが「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」です。センサーや機器がインターネットにつながり、収集された情報を活用することで、これまでにない効率化や価値創出が実現できる時代になりました。
とはいえ、「IoT=ネットにつながった家電や機械」という表面的な理解で止まっているケースも少なくありません。真のIoTは、単なる“接続”ではなく、集めたデータを有効に活用し、サービスや事業の形に変えていく仕組みにこそ価値があります。
特にビジネスの現場においては、IoTを単なる技術のトレンドとして捉えるのではなく、自社がどう関わるか=“立ち位置”を明確にすることが、導入・展開の成否を左右する重要な視点となります。
本記事では、IoTの基本的な考え方を整理しながら、企業がIoTビジネスに関わる際に担うべき「5つの立ち位置」と、それらを活かしてビジネスを立ち上げていくための実践的なヒントをお伝えします。
IoTの定義と、他の概念(M2M・インターネット家電)との違い
IoT(Internet of Things)とは、モノがインターネットに接続されることでデータを取得・送信し、その情報を活用して新たなサービスや価値を生み出す仕組みです。ただ“インターネットにつながっている”という状態にとどまらず、「収集した情報をもとに何ができるか」に価値の本質があります。
この点を明確にするために、よく混同される以下の概念と比較してみましょう。
■ インターネット家電との違い
たとえば、自宅のエアコンや冷蔵庫がスマホアプリで操作できる「インターネット家電」は、遠隔操作が可能な便利なツールですが、それ自体が情報を収集・分析し、新たなサービスを生み出すわけではありません。これは「IoT」とは異なるカテゴリーに位置付けられます。
■ M2Mとの違い
M2M(Machine to Machine)は、機械同士が通信し合う仕組みで、工場の生産設備などに多く見られます。ただし、多くのM2Mはクローズドなネットワーク内で情報が完結しており、外部との接続やクラウド活用までは行われていないケースもあります。
つまり、IoTは「つながる」ことが目的ではなく、「つながった先で何を生み出すか」が本質です。モノが発するデータを集め、解析し、課題解決や価値創出につなげる。そこにIoTの存在意義があります。
IoTで実現できること:価値を生むデータ活用とは
IoTがビジネスに与える価値は、モノをインターネットにつなげること自体ではなく、そこから得られる“会話”=データをどう活用するかにあります。
たとえば、製造業の現場で機器の稼働状況や異常兆候をセンサーで常時取得できれば、リアルタイムのモニタリングにより生産性の最適化や事故防止につながります。さらに、そのデータを蓄積・分析することで、将来の故障予測や最適なメンテナンス時期の提案といったサービスにも発展できます。
IoTによって「モノと人」「モノ同士」が継続的に会話を交わすことで、現場の課題が“見える化”され、これまで気づけなかった改善ポイントが明らかになります。
さらに、得られたデータを社内に閉じた活用にとどめず、クラウドやAIと連携させることで、事業全体の最適化や新しいサービス開発の基盤にもつながります。
つまり、IoTの導入は“機器のネット接続”という技術的な話にとどまらず、自社がどのような形で価値創出に貢献できるかという視点で捉えることが重要です。
そのためには、自社の立ち位置を明確にし、IoTビジネスにおける役割を把握することが、最初のステップとなります。
IoTビジネス立ち上げのステップ①:自社の立ち位置を明確にする
IoTビジネスは、センサーや機器、クラウド、アプリケーション、データ分析など、幅広い専門領域の技術・ノウハウを組み合わせて構築されます。そのため、一社で完結できるIoTビジネスは、ほとんど存在しません。
重要なのは、自社がこの中でどの役割を担うのか=“立ち位置”を明確にすることです。
たとえば、
- センサーなどのハードウェアを提供するメーカーなのか
- 収集されたデータを分析し、新たな価値に変換するプレイヤーなのか
- 最終的にサービスとして顧客に届けるポジションなのか
…など、自社の強みとリソースを見極めながら、どこに貢献できるかを明文化しておくことが、プロジェクトの成功確率を高めます。
また、立ち位置を明確にすることで、どのような協業パートナーと連携すべきかも見えてきます。
IoTビジネスでは、専門性が異なる複数企業との共創が前提になるため、自社の役割を明確に伝えられること自体が、信頼構築の第一歩にもなるのです。
IoTを導入する目的が「効率化」や「差別化」だとしても、その価値をどこで生み出すのか、どう届けるのかが決まっていなければ、技術だけ導入して終わってしまうケースも少なくありません。
IoTビジネス立ち上げのステップ②:実証実験とノウハウの蓄積
自社の立ち位置を明確にしたら、次のステップはその役割を現場で試し、実績とノウハウを積み重ねていくフェーズです。
IoTビジネスでは、異なる企業同士が連携して価値を共創するため、どの立場でも“実証実験(PoC)への参加経験”が信頼につながります。
たとえば、
- センサーを提供する企業であれば、実際の使用環境で取得したデータの精度や耐久性を確認し、
- データ分析側であれば、収集データの整形・解析・フィードバック設計を試行する
…といった実験を重ねることで、机上の想定と現場のギャップを埋め、自社のスキルと貢献領域を明確化できます。
さらに、PoCを通じてノウハウを蓄積し、その成果や改善点を可視化・言語化しておくことは、将来的な商用化フェーズや新規案件への展開においても大きな武器になります。
IoTビジネスは、「試して終わり」ではなく、「試して学び、改善して伸ばす」ことが前提です。“自社の立ち位置で実験し、成果を語れるようにしておく”ことが、次のビジネスチャンスの扉を開きます。
5つの立ち位置から見る、自社に合った関わり方とは?
IoTビジネスにおいては、すべての機能を一社で担うのではなく、各社が専門性を発揮しながら連携することが前提となります。そのためには、自社がどのような役割を果たせるのかを知り、必要に応じて補完し合えるパートナーを見つけることが重要です。
以下では、IoTビジネスに関わる際に代表的な5つの立ち位置をご紹介します。自社の強みやリソースに近い領域を見つける参考にしてください。
① IoTサービスを利用する立場(利用者)
最も身近な立ち位置は、IoTサービスを受ける企業側です。業務効率化や予知保全など、導入によって得られるベネフィットを活用することで、コスト削減や生産性向上、差別化が期待できます。
例:
- コインランドリーの稼働状況をIoTで可視化し、需要予測や設備管理を自動化
- 製造業がセンサー付き機械でトレーサビリティを強化
この立場にある企業は、「どんな課題をIoTで解決したいか」を明確にし、導入価値を定義する力が求められます。
② ベネフィットをもたらす“モノ”を提供する立場
IoTは、ハードとサービスが一体化した価値提供が求められるため、“モノづくり企業”にとっては大きなチャンスです。
ただし、単なる製品提供ではなく、「IoTでどう課題を解決するのか」という観点での再設計が必要です。
例:
- 椅子をIoT化して姿勢管理を可視化する→“健康を支えるツール”としての新価値提案
- 日常使いの製品にセンサーを組み込むことで、顧客の利用状況に応じたサポートを提供
③ データを分析・評価・活用する立場
収集したデータに“意味”を与え、意思決定につなげるのがこのポジションです。AIやBIツールを活用しながら、業務改善・サービス強化に向けた示唆を生み出す役割を担います。
例:
- 蓄積された設備データを用いた故障予測モデルの構築
- 顧客行動データからリコメンドエンジンを生成
この立場は、業界知識×分析スキルの融合が求められる領域であり、コンサルティング企業やSIerにとっても強みを発揮できる分野です。
④ センサー・制御装置を提供する立場
情報を取得するためのIoTデバイスやセンサー類を開発・供給する立場です。モノと情報をつなぐ基盤として、IoT全体の価値を左右する重要な領域です。
例:
- 使用者の行動や環境をセンシングする高精度センサー
- デバイスからのデータを収集・処理するゲートウェイ
この立場では、セキュリティ性・耐久性・メンテナンス性など、BtoBの視点での技術設計が求められます。
⑤ データを収集・蓄積・管理する立場
IoT化によって日々膨大なデータが生まれる中で、それらを安全・効率的に保管・整備する役割がこのポジションです。
例:
- クラウド基盤上での分散処理やデータ正規化
- 高度なセキュリティを担保したストレージ構成
また、蓄積したデータを他の立場と連携して活用するためには、連携性やAPI設計の柔軟性も重要な視点となります。
IoTビジネスにおいて、自社が担える立ち位置を見定め、その立場での実証経験を積み重ねていくことで、他企業との連携可能性が広がり、信頼を得る土台が築かれていきます。
今後の展望とまとめ:IoTの可能性を広げるために
IoTは「つなげる技術」から「価値を創出する仕組み」へと進化しています。
データの収集・蓄積・分析・活用までを視野に入れたIoTビジネスは、単なるデジタル化を超えて、社会や業界の在り方そのものを変えていく可能性を持っています。
とはいえ、すべてを一社で担うことは現実的ではありません。
だからこそ、自社がどの立場でIoTビジネスに貢献できるのかを明確にし、ノウハウを蓄積しながら他社と協業していくことが、これからの成長戦略において不可欠になります。
IoT導入の目的は、業務の効率化やコスト削減だけではありません。
それによって得られた「見える化された課題」や「新たな気づき」が、新しいサービスや価値の創出につながり、企業の競争力を高める起点となるのです。
本記事のポイントまとめ
- IoTとは、データの活用によって価値を生み出す仕組み
- ビジネスとして導入する際は、“立ち位置”を明確にすることが成功の第一歩
- 5つの立場(利用者/モノづくり/分析者/デバイス提供者/データ管理者)から、自社に合った役割を見つけよう
- その立場で実証を重ね、信頼とノウハウを積み上げることが、パートナー構築と事業展開の土台になる
IoTはもはや一部の先進企業だけのものではなく、“自社の強みを再定義し、新しい形で活かす”ための起点として、あらゆる業界・規模の企業にとって現実的な選択肢となりつつあります。
まずは自社の立場から、小さな一歩を。
その一歩が、共創による価値創出という大きな変革へのスタートになるはずです。
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この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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