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INTERVIEW

長野県塩尻市で実証されたNerveNet×デジタルサイネージ活用事例

金子 春雄氏

Haruo Kaneko
塩尻市役所 企画政策部 情報政策課長 CTO

小澤 光興氏

Mitsuoki Ozawa
塩尻市役所 専門幹

長野県塩尻市では、国立研究開発法人情報通信機構(NICT)の「メッシュ型地域ネットワークのプラットフォーム技術の研究開発」の実証実験が行われている。その実証実験の模様を塩尻市役所 企画政策部 情報政策課長CTOの金子春雄氏、専門幹の小澤光興氏、秘書広報課 広報広聴係長の小澤秀美氏に伺った。

災害時を考えた無線ネットワークの構築

塩尻市ではメッシュ型地域ネットワーク(NerveNet)の無線基地局を塩尻市役所、駅前観光案内所、塩尻情報プラザなど市内5か所、デジタルサイネージは市民交流センター(えんぱーく)、塩尻協立病院など市内6か所に設置している。NICTが開発したメッシュ型地域ネットワーク(NerveNet)は、従来の携帯電話や固定電話と異なり、各基地局のサーバーに情報を持ち、かつ基地局同士が網の目のようにメッシュで接続されている。また、自動経路生成機能を持つことにより災害や障害に強く、回線が切断されても分散配置された別のサーバーからサービス提供を継続できる。 ―塩尻市がNerveNetを導入したのは、どのような理由ですか。 情報政策課 金子氏:塩尻市は糸魚川~静岡構造線の真上にあり、構造線はプレート境で、自然環境に厳しい場所なので防災設備や考え方が必要だと思っています。断層帯が集まっているなかで、いつ地震が起きてもおかしくないですね。更に日本列島は防災面のシステムが必要で、光ファイバー網などの有線基盤は脆弱なところがあり、無線システムが必要です。域内の通信を守るという点では光ファイバーは当然ですが、東京までの線が切断する可能性もあるため、無線に着目したNerveNetは通信基盤として魅力的だなと思いました。

「災害時だけでなく、普段から使っていないと災害のときは使えない」

これまで塩尻市は、行政情報や災害情報をHP・メール・SNSを通して市民に配信してきた。しかし通信会社ごとに取り扱いがバラバラであるため、災害情報を入力する市の職員の手間がかかること、また、インターネットが切断されると防災無線のみに頼ることになり、音声のため雨が降ると聞こえないなど、情報伝達に支障をきたす場合がある。 そこで本委託研究では、行政情報や既存の災害情報を、NerveNetと災害情報一斉配信システムを組み合わせて配信することで、平時・緊急時の両面から情報配信の質・量の向上を図ることとした。NerveNetとデジタルサイネージを連携させ、災害時には災害情報告知を行い、平時では市が作成するお知らせや、巡回バスの時刻表やお天気、イベント情報などを配信している。従来の塩尻市の市民への広報活動はWEBと月に1回の広報誌の発行が主だったが、デジタルサイネージはリアルタイムで情報を配信できるツールとして実験が進んでいる。 平時・災害時の両面の利用について、情報政策課の金子氏と小澤氏は次のように説明する。 情報政策課 金子氏:普段から使っているメディアでないと災害時も使えないですね。100年に1回起こる可能性がある災害を想定して、それだけのために維持し続けるのはナンセンスで、普段から使っていて、災害時も普段通り使えるということが重要です。防災や広報にもずっと使えるということがミソだと思っているのでその部分は非常に重要です。 情報政策課 小澤氏:サイネージは都会に行けば当たり前だけど、田舎には無いので、こんこんビジョン(塩尻市設置のデジタルサイネージ)に限らず、サイネージを立って見る人はまだ少ない。都会だとそれを見て情報収集するのが当たり前ですが、インパクトのある、市民に向けた情報を出して、いつも見ればそれで助かるといったことが市民に伝わらないと設置しただけで終わり、災害時の災害情報告知として機能しないですね。

スマートフォンを持っていなくても、テレビを見ている感覚で情報を見ることができる

―NerveNetとデジタルサイネージを活用した広報の可能性について教えてください。 秘書広報課 小澤氏:こんこんビジョンを設置したことでICTに興味を持ってくれる人が増えると思います。誰でも見ることができるので、スマートフォンを持っていなくてもテレビを見ている感覚で、自分が見たい情報を見ることができます。紙や張り紙などの文字情報からだけでなく、映像として見るという感覚を持った人が少しずつですが、増えていると思います。見ている間に画面が展開し、写真が出たり、動画が出たり、刺激がある情報も入ってくるという意味でICTを難しく感じることなく取り入れることが出来たと思います。視覚的な見せ方を上手くすることで、多くの人に見てもらうことに繫がると思います。 設置施設からは、施設に関する催しなどの情報をデジタルサイネージに流していきたいという要望があり、今は秘書広報課が作成した番組を流しているが、今後そういった施設の事業や催しに関するお知らせを流すようにしていけたらと思います。市民にとっては病院の順番やバスの待ち時間を活用してイベント情報を確認し、気軽に参加することができると思います。 塩尻市内の中心部だけではなく、松本市境に設置して、お互いの情報を交換するようなことが出来れば、どこにいてもタイムリーに情報が手に入るので行政の活動に参加してもらうことに繫がると期待しているという。 ―今後どのような場所での設置を考えていますか。 秘書広報課 小澤氏:今後設置するとしたら、人が集まる場所が基本になると思います。あとは人の目に留まりやすく、人が多く集まる商業施設。支所や商業施設に設置できれば、情報もある程度の範囲まで行き届くと思います。商業施設は子供連れのお母さんも見て、イベント情報など子供が気になるものは分かりやすい絵等で発信するのが良いと思います。

「市民に合わせた情報発信の機会を増やすことで、塩尻市への愛着に繋がる」

行政から市民への情報発信の頻度や量が増えることで塩尻市に対する理解が深まり、市への愛着に繋がると小澤氏は説明する。 秘書広報課 小澤氏:市が運営する行事への参加や情報として見る機会が増えると、市民が行事を自分達のものとして認識し、SNSを活用して自分たちの口コミのなかで拡散していくことに繫がると思います。行政発信ではなく、市民自らが発信していくことが重要だと思います。市の施策は外に知ってもらうことから始めないといけないと思いますので、まずは市民に理解していただき、それが段々浸透すると外に広がっていくと思います。そうすると更に塩尻の認知度が上がると思いますね。市民に知ってもらうと塩尻市に対して愛着を持つことに繋がると思います。

設置場所やターゲット層に合わせた情報配信

今はオールマイティーに誰が見ても同じ情報を受け取るようになっているが、デジタルサイネージであれば場所やターゲット層に合わせた情報提供が出来るという。設置施設や市民の方々からの要望を吸い上げ、番組内容に反映させるなど各施設での活用を進めることを考えている。 ―現状感じている課題と今後の取り組みについて教えてください。 秘書広報課 小澤氏:こんこんビジョンは動画から静止画まで対応できるので、季節感があるものや新しいものを上手く番組として編集していきたいと思っています。若者向けや年配者向けといった年代や性別によって情報の受け取り方はそれぞれ違うと思いますので、広報課としても全庁的にそういったターゲット別で情報発信する方向性で、と考えています。また、その場所にどんな年代の方が来られるのか、把握がある程度出来ていないと情報の区分けが難しいです。そこに至るまでが人手が必要な部分であり、今後取り組んでいきたいところです。ターゲットを絞って情報提供していくノウハウを持っている企業や、広報課の要望に対して+αで提言いただける企業とは一緒に組んでやっていきたと思います。 ※本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究「メッシュ型地域ネットワーク(NerveNet)のプラットフォーム技術の研究開発」により得られたものです。

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※本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究「メッシュ型地域ネットワーク(NerveNet)のプラットフォーム技術の研究開発」により得られたものです。

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