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【対談記事】アフターAI ──「ツール論」の壁を突破し、AIが稼ぐ未来を実装する

                   
経営
公開日:2026.02.12更新日:2026年2月13日

本記事は、フィンチジャパン代表の高橋とひげおぢによるポッドキャスト『でじどうラジオ』第12回の対談記事です 。今回は、投資家・シバタナオキ氏と尾原和啓氏の共著『アフターAI』後編を題材に、AIが物理世界(フィジカル)や企業の意思決定にどう食い込んでいくのかを深掘りします

今回の対談では、AIを単なる「デジタル同僚」として人間をサポートする段階から、自律的に収益を生む「リソース」へと捉え直す、一歩先のパラダイムシフトを提示しています 。自動運転タクシーが「勝手に稼いでくれる」という具体例を軸に、人間とAIのリスク管理の境界線や、振り子のように揺れ動くグローバルな規制の潮流について、多角的な議論を展開しています

「フィジカルAI」によるリソース置き換えの先にあるビジネスモデルから、トランプ大統領令に見るガバナンスの変遷、さらには無料版ユーザーが陥りがちな「幻滅」の正体まで、社会実装の現場で直面するリアルな課題に切り込んでいます。また、多くの企業が陥りやすい「使わないとリスクだから議事録を作る」という思考のループを突破し、業務のあり方を根本から変革するための考え方についても迫ります。

「ツールとしてのAI」という概念を越え、いかにしてAIをビジネスの血肉としていくか 。アフターAIの世界で、単なる効率化ではない真のトランスフォーメーションを実現するための、本質的な「問い」が詰まった内容です

自動運転タクシーが「稼いでくれる」─リソース置き換え論の先

フィンチ高橋:『アフターAI』の7章にはロボットの話が書いてあって、「フィジカルAI」という言葉が出てくる。我々が壁打ちやGeminiで使っているのはまだソフトウェアの世界だけど、これから先はロボットの中にAIが入っていく。わかりやすい例が自動運転タクシー。従来のロボットは工場の中で特定のネジを締めたり荷物を移動させたりと、業務にフィットさせた使い方だった。ところがAIが入ると汎用的になってきて、トラックなど特定の用途から、街中を走る自動運転にまで広がる。

ここで面白いのは、我々は「人間が運転しなくてもAIが代わりに運転してくれる」と考えがちなんだけど、柴田さんの本ではそこに留まらない。自動運転タクシーが勝手にお客さんを乗せて稼いでくれるという発想なんだよね。

ひげおぢ:それはすごい。自分の車が駐車場から出て、お客さんを乗せ、お金を稼いで帰ってくると。

フィンチ高橋:そう。何もしなくても自動運転タクシーは1日200ドル、300ドル稼いでくれるかもしれない。500万円の車を買っても3〜4年で回収できるようなビジネスモデルになると。

「実際には事故を起こすんじゃないか」という懸念もあるけど、本の中では、人間は100万マイルの運転で約6回事故する一方、AIは約2回しか事故しないと書いてある。

ひげおぢ:人間より事故をしないんですね。

フィンチ高橋:つまりAIの方が稼いでくれるし安全だという話にもなる。もはやリソースを人間から置き換える話ではなく、その一歩先に入っている。僕とひげおぢの議論はまだ「デジタル同僚」の世界から抜け出していないけど、シバタさんが見ている景色はリソース置き換え論のもう一歩先の世界を説明してくれている。

「稼いでくれる」という発想をどう持つかが大事。

ひげおぢ:そもそもそういう考え方って変えられるのかなと思うんです。我々はサービスを「おもてなし」だと思っている。「稼いでくる」というよりは「ありがとう」と言われることにやりがいを感じる。自分が提供したものが対価になるという発想がなかなか持てない。

フィンチ高橋:今までやってきたものをAIで置き換えていく発想はイメージが湧く。でも、今までなかった仕事をAIがやってくれるという発想は、どういう思考の筋道を辿ればたどり着けるのか。

ひげおぢ:たぶん新規事業創発ワークショップでは出てこない発想ですよね。どういう考え方をしたらそうなるのかというのは中期的なテーマとして追いかけていきたいですね。

フィンチ高橋:企業の中でも業務効率化や生産性向上のためにAIを使うという話は馴染むわけで、それはツールとして使う話だから。でももう一歩踏み込んで、AIの中身がどうなっているのか、どんな仕組みなのかという核心に触れていかないと、ツールの使いこなしの先にはいけないんじゃないかな。

自動運転タクシーの話をする時は、「このサービスで使っているLLMはなにか?」なんて議論しないでしょう? それが世の中をどう便利にするかという話をしている。なのに、いざ自分たちが使う話になると、「ClaudeとChatGPTの違い」みたいな話になってしまう。議論のし方に何かが足りないんだと思う。

ひげおぢ:めちゃめちゃ深い問いですね。「何かが足りない」というのを今年突き詰めていくのもいいかもしれない。ツール論に行き着いてしまう問題をどうブレイクスルーするか。繰り返しになりますが、「何をトランスフォーメーションしているの?」という話をしないといけない。それを意識づけるにはどうすればいいかを学んでいく必要がありますね。

ガバナンスとセキュリティ─振り子のように揺れる規制

ひげおぢ:日本企業はガバナンスやセキュリティを気にしすぎてAI活用が進まないという話がありますが、この本ではどういうスタンスで書かれていましたか?

フィンチ高橋:基本的にはガバナンスやセーフティに関する課題はあるよという話はしている。ただ一律に「ガバナンスを強化せよ」という論調ではなくて、歴史的な経緯を振り返っているんだよね。

たとえば2020年頃、画像認識でゴリラをヒトと判定してしまって人権問題になったり、自動運転で死亡事故が起きて規制強化に傾いたりした。国際的なガイドラインもできた。ところが今はその反動で、トランプが大統領令でAI活用を推進する方向に舵を切っている。まさに振り子のように行きつ戻りつしながら、適切にセキュリティやガバナンスを見ていくべきだと書いてある。

シバタさんは一貫して、時代と共にどうなってきて、今どういう局面にあり、これからこうなるという時系列の中で語っている。去年7月の時点で「これから反動の時代が来る」と先読みしていて、実際にトランプの大統領令が出た。未来予測のコメントが結構当たっている。

ガバナンスの振り子と人間の受容

ひげおぢ:自動運転で不幸にして人が亡くなる時に、人間は「人間のせいで亡くなる方がまだ許せる」と思っている節がありますよね。

フィンチ高橋:そういう道徳的な話には直接触れていないけど、AIを使った詐欺が出てきたら、今度はその詐欺を発見するAIが登場している。フェイクニュースも人間の目ではもう見分けがつかない動画があるけど、逆にそういったものを見分けるAIも出てくるだろうと。

ひげおぢ:ふと思ったんですが、機械に命を奪われること自体が嫌なわけではないですよね。工場のラインや建設機械で不幸にして亡くなる方はいるけど、だから機械を止めろ、無くせとは誰も言わない。自動運転も、いずれ機械の一員として人間が受け入れたら、工場事故と同じ扱いになるのかもしれません。

フィンチ高橋:この本でも、AIのリスクは実は人間のリスクと重なるところがあるので、人間がやってきたリスクマネジメントが有効な部分もたくさんあるよと書いてある。

ひげおぢ:なるほど。アフターAIでAIが特別視されなくなって、人間の営みと地続きに認知されること自体が、アフターAIの一つの姿かもしれないですね。

フィンチ高橋:そうだね。幻滅期に淡々としっかり社会実装できている企業が勝ち残っていく。「AIって大したことないね」とさじを投げないでやっていくのが大事だというのは、当たり前のこととして書いてある。

無料版のジレンマ─幻滅はどこから生まれるか

ひげおぢ:実はジレンマがあって、無料版を使う人ほどAIの限界に苦しむんですよ。有料版を使っている人はあまりそういうことを言わない。ライト層であればあるほど「プロンプトをきちんと作らなきゃ」と構えてしまうけど、有料版は人に語りかけるように使えば返ってくる。このギャップがちょっとあるかなと。

フィンチ高橋:なるほど。仕事でもやっぱりハルシネーションを気にする話題はあるの?

ひげおぢ:気にする人はもう使わなくなっているという感じですね。一方で、僕も仕事で使っていてハルシネーションは発生しているので、ロジック的な不整合はチェックしています。

「使わないとリスク」と「議事録ループ」のジレンマ

ひげおぢ:日本企業に対して「チャンスはあるけど急ぎなさい」というメッセージは書いてありましたか?

フィンチ高橋:アメリカから見える景色からすると、日本のマーケットの温度感はまだまだ低い。もっと上げていく必要があると。世界はむしろ「使わないとリスク」と言っているぐらいで、「頑張れ」というよりは「やらないとまずいよ」というトーンが各所に出ている。

ひげおぢ:「使わないとリスク」と言って使わせると、結局議事録を作っちゃう。このループはどうやったら抜け出せるんですかね。

フィンチ高橋:今日のビッグテーマだよね。AIを使いこなすにしても、僕らはすぐ「ツール」という言葉を入れてしまう。AIエージェントをワークフォース、リソースとして使うと言っているけど、シバタさんは、自分たちの仕事のし方、業務のし方を根本から変えるようなお題の出し方と解決の仕方を、ちゃんと枠組みを持って捉えなさいと端々で言っている。

ひげおぢ:ものの考え方自体が変わって、「ツールで考えてしまう」ということ自体がなくなった時がアフターAIの世界なのかもしれないですね。

フィンチ高橋:僕らはそう受け止めているけど、シバタさん自身はツールとしてのAIという概念をこの本の中でほとんど使っていないんだよね。

ひげおぢ:それは改めて読んで理解を深めていきたいと思います。

おわりに

ひげおぢ:かなり話してしまいました。『アフターAI』、非常に射程の広い本ですね。高橋さん、ありがとうございました。

フィンチ高橋:ありがとうございました。

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この記事の監修者

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株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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