インフルエンサーマーケティングの成功事例と実践ガイド : 成果につなげる3つの実践ステップ
公開日:2019.01.05更新日:2025年7月24日

目次
はじめに
SNSを使ったマーケティング手法が企業にとって必須となった今、特に注目を集めているのが「インフルエンサーマーケティング」だ。InstagramやTikTokなどで影響力を持つ人物(インフルエンサー)に商品やサービスを紹介してもらうことで、企業のブランド認知向上や購買促進を図る手法として、多くの企業が導入を検討している。
しかし、「本当に売上につながるのか」「どこから手をつければよいのか」といった悩みを抱える担当者も多い。本記事では、実際に成果を上げた国内外の事例を紹介しながら、SNSマーケティングで結果を出すために必要な3つの実践ポイントを解説する。マーケティング施策を検討中の担当者や、新たな販促手法を模索している企業にとって、すぐに活用できるヒントを提供したい。
インフルエンサーマーケティングとは?SNSマーケティングとの違い
インフルエンサーマーケティングとは、SNSや動画配信サービスで影響力を持つ人物(インフルエンサー)に商品やサービスを紹介してもらい、ブランドの認知向上や売上増加を目指すマーケティング手法である。近年、InstagramやYouTube、TikTokなどのプラットフォーム上で「共感」や「信頼」に基づいた情報発信が可能になり、消費者の購買判断に大きな影響を与える手段として注目されている。
従来の広告が「企業からの一方的なメッセージ発信」だったのに対し、インフルエンサーマーケティングは「第三者による推薦」を軸とする点が最大の特徴だ。消費者にとって身近で信頼できる人物からの推薦は、企業の宣伝よりも心理的な抵抗が少なく、購買行動につながりやすい。
SNSマーケティング全体の中でインフルエンサーマーケティングは「誰が発信するか」に重点を置いた施策と位置づけられる。企業公式アカウントでの発信もSNSマーケティングの一環だが、それがインフルエンサーによる投稿になることで、より高い反響や拡散効果が期待できる。
特に以下のようなニーズを持つ企業にとって有効な手法となる。商品・サービスの魅力を自然な形で伝えたい、狙った顧客層に効率よくアプローチしたい、ブランドの世界観や使用体験を視覚的に表現したい、といった課題に対する解決策として機能する。
こうした背景から、個人向け商品を扱うBtoC企業だけでなく、法人向けサービスを提供するBtoB企業でも、専門知識を持つインフルエンサーや業界内で影響力を持つ人物の活用が始まっている。マーケティング手法の多様性が求められる現在、インフルエンサーマーケティングは企業にとって重要な選択肢の一つとなっている。
成功事例で見る:インフルエンサー活用のポイント
事例1 SKYY(スカイウォッカ)
SKYYは、米国のスピリッツ企業Campari Americaが製造するウォッカブランドで、比較的早い段階からインフルエンサーマーケティングに取り組んでいる。
注目すべきは、有名ブロガーやインスタグラマーだけでなく、一般ユーザーや小規模事業者との「アンバサダー・コミュニティ」の形成にも力を入れている点だ。
SKYYの施策概要
- ターゲット:ミレニアル世代
- 目的:ファッションとの連携を通じた口コミの拡大、ファン層のライフスタイルへの浸透、アンバサダー・コミュニティによる関係強化
- インフルエンサー:有名ファッションブランド、著名インスタグラマー、YouTuber、ゲームチャンネルの監督など
- プロモーション: ホリデーシーズンに合わせ、ファッションやライフスタイル系のデジタルスターと連携したプロモーションを展開。過度なブランド露出を避け、世界観の自然な発信に注力した。 「SKYWAY」というライフスタイルプログラムを通じて、会員が多様な情報やキーパーソンにアクセスしながらブランドアンバサダーとしても活動できる仕組みを提供した。
- 効果: Instagramフォロワー数は約3.2万人にとどまるものの、SKYYに関連する投稿数は12万件超と圧倒的なユーザー生成コンテンツが生まれている。
参考資料:
@SKYYVodka
Join SKYYWAY | By SKYY Vodka
Campari America
3 Ways Brands Are Marketing On Instagram For The Holidays
事例2:S.P.I Group(Stoli)
S.P.I. Groupは、老舗ウォッカブランド「Stoli」の製造元だ。80年以上の歴史を持つこのブランドの刷新のため、インフルエンサーマーケティングを積極的に活用している。
「Elit」という新ブランドの立ち上げでは、Instagram上でスタイル志向の男性層をターゲットに、2人のメンズウェア系ブロガーと連携。ブランドイメージの刷新に貢献した。
S.P.I Groupの施策概要
- ターゲット:グルテンフリー志向の消費者やニューヨーカー
- 目的・効果:グルテンフリーウォッカという新商品の認知拡大を通じて、ブランド刷新と成長市場の需要を取り込む
- インフルエンサー: ① グルテンフリーのフード・飲料系インフルエンサー、配送業者、小売店、バーテンダー、飲食店経営者 ② グルテンフリーの専門家・ニコル氏
- プロモーション: ① 関係者と連携した継続的な情報発信、専任チームによる推進体制を構築 ② ニコル氏が運営するレストランでローンチイベントを実施し、自身の情報ブログでも発信
- 結果: 2015年度、ウォッカ市場全体の販売が伸び悩む中、S.P.I. Groupは約5%の売上成長を達成。消費者・流通・販売現場を巻き込んだマーケティング設計が成功要因と考えられる。
参考資料:
Budweiser, Stoli Raise the Bar (and a Glass!) With Influencer Marketing
How Stoli Streamlined Communication Across In-house and Agency Teams to Cut Spending on Creative Execution by 30%
事例3:メイベリン ニューヨーク(日本法人)
1915年創業の老舗化粧品ブランド・メイベリンの日本法人は、ファッションブロガーとの連携を皮切りに、SNSインフルエンサーとの関係構築を強くしてきた。
現在は、オンラインとオフラインを連動させたプロモーション施策でZ世代へのアプローチを加速させている。
メイベリン日本法人の施策概要
- ターゲット:10代〜20代前半のミレニアル/Z世代女性
- 目的:新作コスメのブランド認知拡大
- インフルエンサー:プロモーションパーティーに参加したモデル、現役女子高生など
- プロモーション: PLAZA全国10店舗で配布された限定冊子や、メイベリンのショールーム「メイベリンハウス」での体験型パーティーを通じて、リアルな場とSNS投稿を融合。 約100名の若年層が来場し、撮影・拡散が自然に生まれる導線設計がなされていた。
- 結果: Instagramでは、ハッシュタグ「#maybellinehouse」の投稿が約200件、「#まつげにガールズパワー」が72件。SNS上での話題づくりと店舗連動による認知拡大に成功した。
参考資料:
「インスタ映え」ショールームでインフルエンサーとの関係深化!ブランドマーケティングに新機軸を打ち出した「メイベリン ニューヨーク」の取り組みとは?
【企業担当者に聞くSMM最前線】- SMMLab(ソーシャルメディアマーケティングラボ)
成果につなげる3つの実践ステップ(設計・選定・体制)
インフルエンサーマーケティングは体系的な手法が確立されておらず、「何から始めるべきか分からない」という声も多く聞かれる。そこで参考になるのが、従来のコミュニケーション戦略の考え方だ。ここでは、成果を出すために押さえておきたい3つの基本ステップを解説する。
ステップ1|ターゲットと目的の明確な設定
まず最も重要なのは、「誰に何を伝えたいのか」を明確にすることだ。たとえば、「フルーティーなマティーニを飲みたいと思っている20〜35歳の女性」といった具合に、具体的なターゲット像を描くことが出発点となる。
インフルエンサーのフォロワーの中には、自社の商品に興味がある人もいれば、そうでない人もいる。商品に関心があっても、購買機会がない層も存在する。だからこそ、単に「人気のあるインフルエンサー」に依頼するだけでは効果が出にくい。
次に設定すべきは、情報を届けた結果として「どう行動してもらいたいのか」という目的だ。商品・サービスの認知を高める、好意や信頼を醸成する、購買行動へと促す、継続的なファンになってもらう、といった目的によって、起用すべきインフルエンサーや投稿内容、使用するSNSチャネルが大きく変わってくる。この段階での設計の精度が、後の成果を大きく左右する。
ステップ2|インフルエンサーとチャネルの適切な選定
ターゲットと目的が明確になったら、次は「誰に依頼するか」「どのメディアで展開するか」の選定だ。インフルエンサーといっても、年齢や性別、得意ジャンル、フォロワー属性、使用SNSなどが異なる。
ビジュアル訴求が重要ならInstagramやTikTok、説明や比較が必要な商品ならYouTubeやブログ、BtoBや専門性が高い商材ならLinkedInやnoteといった具合に、目的に応じたメディアの使い分けも戦略上重要だ。また、同じインフルエンサーでも、発信するメディアによって効果が異なる点にも注意が必要である。
注意すべきなのは、すべての商材にSNSが適しているわけではないということだ。高齢者をターゲットとする商品であれば、SNSよりもテレビや新聞、あるいは地域情報誌などが効果的なケースもある。自社の商品特性とターゲット層の行動パターンを十分に分析した上で、最適なチャネルを選択することが求められる。
ステップ3|社内外を巻き込んだ運用体制の構築
インフルエンサーマーケティングで成果を出すためには、「インフルエンサーに任せきり」にしない運用体制が不可欠だ。商品の特徴やストーリー、使用方法などを分かりやすくまとめた資料の提供、撮影用の画像素材や動画、ビジュアルガイドラインの準備、投稿タイミングやハッシュタグの設計といったサポートをインフルエンサーに提供することで、彼らの創造性を活かしながらも、企業として狙った方向にメッセージを導くことが可能になる。
そのためには、インフルエンサーマーケティングを推進する社内チームの明確な役割分担と、外部パートナー(代理店や制作会社)との連携体制の整備が必要だ。加えて、物流・営業・カスタマーサポートといったサプライチェーン全体も巻き込めると、さらに成果は高まる。この3ステップを意識することで、場当たり的なPRではなく、継続的な成果を生むマーケティング施策としてインフルエンサーマーケティングを設計できるようになる。
インフルエンサー活用の最新トレンドとは?(Instagram、TikTok、BtoB)
インフルエンサーマーケティングは急速に進歩している。かつてはInstagramを中心とした「フォロワー数重視」の施策が主流だったが、現在ではより多様で戦略的な活用が求められている。ここでは、今押さえておきたい3つのトレンドをご紹介する。
① マイクロインフルエンサーの活用が拡大
フォロワー数数千〜数万人規模のマイクロインフルエンサーは、エンゲージメント率が高く、特定のターゲット層に強く訴求できる点が評価されている。特にZ世代や趣味・嗜好の明確なコミュニティに向けては、「共感」と「親近感」が重視されており、著名人よりも効果的な場合もある。企業側としては、複数人のマイクロインフルエンサーを組み合わせて起用することで、幅広い層に自然な形でメッセージを届けることが可能だ。
また、マイクロインフルエンサーは著名人と比較してコストを抑えやすく、長期的な関係構築もしやすい特徴がある。単発のキャンペーンではなく、継続的なブランドアンバサダーとして活用することで、より深いブランド理解と愛着を育むことができる。
② プラットフォーム別の最適活用(Instagram・TikTok・YouTubeなど)
発信プラットフォームも目的に応じた選定が必要だ。Instagramは世界観・ビジュアル訴求に強く、ブランド構築に有効である。TikTokはZ世代を中心に拡散力が高く、エンタメ性や短尺動画での訴求に向いている。YouTubeは商品説明やレビュー、BtoB向け情報発信にも適しており、長尺コンテンツに強みを持つ。
これらの特性を踏まえて、キャンペーンごとに適したメディアを使い分ける必要がある。同一のインフルエンサーでも、プラットフォームによって投稿内容や表現方法を変えることで、それぞれのメディアの特性を最大限に活用できる。また、複数のプラットフォームを連携させることで、より広範囲への情報発信と相乗効果を狙うことも可能だ。
③ BtoB企業のインフルエンサー活用も加速
「インフルエンサー=BtoC領域」と思われがちだが、近年ではBtoB企業でもインフルエンサー施策の導入が進んでいる。業界内で信頼されている専門家やコンサルタントによる情報発信、noteやLinkedInを活用した専門性の高い記事やインタビュー、ウェビナーや展示会におけるインフルエンサー登壇による集客・信頼構築といった事例が増えている。
BtoB領域では、単なる「拡散」ではなく、「信頼」と「意思決定支援」が重要になる。そのため、フォロワー数よりも「誰に届くか」「どのような影響を与えるか」が問われる領域だ。専門知識を持つインフルエンサーからの情報発信は、購買担当者や決裁者にとって価値の高い情報源となり、長期的な信頼関係の構築にもつながる。
このように、インフルエンサーマーケティングは今や「特別なプロモーション」ではなく、「戦略設計された常設施策」としての重要性を増している。企業は自社の事業特性やターゲット層に合わせて、最適なアプローチを選択することが求められている。
まとめ|インフルエンサーマーケティング成功の鍵は「設計」と「共創」
インフルエンサーマーケティングは、単なる話題づくりにとどまらず、SNSを中心としたブランド戦略の中核として重要性を増している。成功事例に共通するポイントは以下の3つだ。
第一に、ターゲットと目的の明確な設定である。誰に、どんな反応を起こしてもらいたいのかを具体的に設定することが成功の前提となる。第二に、適切なインフルエンサーとチャネルの選定だ。フォロワー数ではなく、共感と影響力の質を重視する必要がある。第三に、社内外を巻き込んだ運用体制の構築である。協力体制と継続的な改善により、マーケティング効果を最大限に引き出すことができる。
また、Instagram・TikTok・YouTubeといったプラットフォームの使い分けや、BtoBにおける専門性重視のアプローチなど、活用の幅も広がっている。マイクロインフルエンサーの活用拡大、プラットフォーム別の最適活用、BtoB企業での導入加速といったトレンドも押さえておく必要がある。
インフルエンサーマーケティングを成功させるには、一過性の施策ではなく、ブランドとユーザーの共創関係を育てていく視点が欠かせない。ターゲットに寄り添い、価値観を共有する発信こそが、これからのSNSマーケティングで成果を生む鍵となるだろう。企業には、長期的な視点での戦略設計と、継続的な関係構築への取り組みが求められている。
フィンチジャパンからのご提案|インフルエンサーマーケティングを戦略施策として成功に導くために
私たちフィンチジャパンは、2006年創業以来、400件を超える新規事業の立ち上げと事業成長を支援し、また150社以上の既存事業の再成長支援、DX/AI推進、経営戦略の立案・実行支援を行ってきた。
こんなお困りごとはないだろうか。インフルエンサーマーケティングに取り組んでみたが、ブランド戦略との整合性がとれていない。SNS施策が一過性のキャンペーンに終わり、継続的な成果につながらない。自社にとって本当に価値のあるインフルエンサーの選定が難しい。
私たちフィンチジャパンは、一例として以下のようなコンサルティング実績がある。新規事業の立ち上げを検討される際はご相談いただきたい。化粧品メーカーL社では予防市場の新サービス開発を1年間支援した。化粧品メーカーI社ではブランドマネジャー制度の設計・定着を約8ヶ月で実現した。飲料メーカーC社では健康市場向け新商品開発を約6ヶ月で完了させた。
ブランド戦略やプロモーション、顧客体験まで一貫した設計で、話題づくりにとどまらないマーケティングの成果創出を私たちと一緒に目指してみないだろうか。お気軽にご相談いただきたい。
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この記事の監修者

株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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